99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

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第30話:ランチデート?

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 ジーク様と庭で偶然出会った日。
その翌日のランチ・タイムになる。

私は約束通り、ひと気のない中庭の外れに来ていた。

「なんだ、先に来ていたのか、マリアンヌ?」

ジーク様がやって来た。
今日も相変わらずクールで、美声な王子様だ。

「ええ、午前の授業が、思いのほか早く終わりまして」

――――というのは、私のウソ。

実は午前は大変だった。
何しろ大陸英雄史の筆記のテストがあったのだ。
クラスの誰もが嫌いな、暗記地獄の歴史テストである。

今後のクラス分けにも、影響を与える重要な試験。
テストの結果で、“上級士官コース“にいけるかどうかも決まるのだ。

 だからクラスの乙女の誰もが気合満点。

そして私の別の意味で、私も気合い満タンだった。
何故なら『早くランチ・デートに行きたい!』だったからだ。

だから私は早くテスト終わらせきた。
強い思いで誰よりも試験を早く終わらせ、ここに先に来ていたのだ。

 えっ? 『大事なテスト捨てて、デートに来るなんて、不謹慎だ』って?

 ノンノン、あまいな、諸君。

 私は『試験を早く終わらせてきた』のよ
 そう……全問正解で、教室を立ち去ってきたのだ。

 でも今思い返して、アレは不思議な感じだった。
 『ジーク様に早く会いたい!』その一心で、私の集中力は、かつてなく高まっていたのだ。

お蔭で難解なはずの大陸英雄史のテストが、凄く簡単に思えた。
『答えが天から降ってくる』というのは、あんな感じなのであろう。

スラスラと終わらせて、教官に確認して退出してきた。
でも、あまりにも早すぎたために、教官にその場で確認されてしまう
結果は満点だった。
 
そんな集中力の幸運もあった、私は早く来ていた。
予定よりも一時間早く、この待ち合わせ場所にいたのだ。

――――ジーク様は待ち合わせ場所にはいなかった。

 よく考えたら当たり前のこと。

 ジーク様も学園の学び者である騎士。
 大陸の平和を守るソードと成るべく、午前はみっちりと稽古していたのだ。

 だから私は午前の授業が終わるまで、ここでぼっちに待っていた。
 今さら校舎には、恥ずかしくて戻れなかったし。

 昨日、拾った幸運の“木の棒くん”で遊びながら、ここで一時間待っていたのだ。

――――という恥ずかしい話は、もちろんジーク様には内緒にしておく。

「では、お昼をいただきましょうか、ジーク様?」

そんな苦労も報われる時が来た。
いよいよ待望の昼食会が幕を上げたのだ。

「勝手にしろ。オレはこっち食べているぞ」

私たちはランチ・ボックスを食べ始める。

頂きます!
 もぐもぐ……もぐもぐ……。

あら、このテイクアウト用のランチ・ボックス、けっこう美味しいね。
さすがは一流シェフが作ってくれた、お弁当ね。

もぐもぐ。
うん、美味しい!

ん?
あれ、でも、何か変な感じだぞ。
 確かにこの場にいるのは、私とジーク様の二人きり。

でも互いに微妙に距離を空いている。
しかも何の会話もなく、私たちは無言で食べているのだ。

 なんだ、これ。おかしいな?
 自分が想像していたランチ・デートと、かなり違っていた。

イメージでは、まずは一枚の敷物の上に、男女が恥ずかしがりながら座る。
そして楽しい会話をしながら、ランチ・ボックスを食べているイメージだった。

 だが現実は大きく違う。
少し離れながらの、二人で無言に食べている。

これでは赤の他人がたまたま同じ場所で、昼飯を食べている感じ。
昼休みに公園で、コンビニ弁当を食べているサラリーマンみたいなだ。

ぜんぜんランチ・デートっぽくない!

 むむ。これはいかん。
 せっかくの憧れのジーク様とのランチ会なのに。

なんとかしないと!

 あれ、でも、どうすればいいのかな?
誰かに相談したくて、ジーク様以外はいない。
親友であるヒドリーナさんも、帰郷でいない。
愚かな今の私は、今日はノープランで来てしまっていた。

 例えるならば、武器を持たず、戦場に放り込まれてしまった新兵状態。
 もしくは、マニュアルを読まずに、初デートに挑んでしまった男子高校生だ。

ど、どうしよう……。

あっ、そうだ。
とにかく、何か会話をしよう。
早く会話をしないと、ジーク様は完食してどこかに行ってしまうぞ。
 
でも話題は、何がいいんだろう?
考えろー、マリアンヌ。
 
話題……話題……。
この年ごろの男の子が好きそうな話題……とは?

 クールなイケメンが、興味ありそうな話?

 うっ……だめだ。
何も気の利いた話題が、浮かんでこない。

そういえば年ごろの男の人と、二人きりで会話した経験がないのだ。
前世でも今世でも。

 むむ。これは困った。
 早くしないとジーク様が完食しちゃう、美味しそうなお弁当を。
 
  ああ、本当に美味しそうだ、ジーク様のお弁当も。
私とメニューが違って。
 
「あら、ジーク様……そのお料理は、何ですの?」

悩んでいた私は、思わず質問してしまう。
ジーク様のランチ・ボックスの中身に、見たことない料理があった。
食いしん坊な私は、思わず聞いてしまったのだ。
 
「これか? これは我が国ミューザスの郷土料理だ」

 おお、そうか。ミューザスの郷土料理だったのか。
 何でも学食にいるシェフにリクエストして、作ってもらったという。

「という事は、そちらの魚料理も?」

「これはミューザスの家庭料理だ。自分も幼い頃に、よく母が作ってくれた」

 そっか。
ジーク様のお母様の思い出の、家庭料理なんだね、それは。

ん?
あれ、なんか変だぞ。
 
ジーク様は大国ミューザスの王子様。
つまりお母様といえば王妃様で、かなり高貴な方だ。

 普通はそんな高貴な方は、自分で料理なんてしない。
 我が家だって料理は、シェフや侍女が作ってくれていたのだ。

でも、どうしてジーク様のお母様は、料理を作っていたのだろうか?

「不思議そうな顔をしているな? 実は私の母は、“とある貴族”のめかけだ。そして私は隠し子……故に私は生まれた時は、田舎の庶民として育ったのだ」

えっ⁉
ジーク様は実は妾の子で、隠し子で、最初は庶民育ちだった⁉

自分が王族という事実を隠しているために、ジーク様はあえて“とある貴族”という言葉を使っている。

とにかく全てが初めて聞く、驚愕の事実だ。
ゲームにも、そんな設定はなかったはず。

どうなっているのだろう?

「私は“とある貴族”……実の父を打ち倒す力を得るために、このファルマ学園に来たのだ」

更なる衝撃。
ジーク様の実の父は、現ミューザス国王。

それを打ち倒すために、ジーク様は学園に入学していた⁉

(ジーク様……)

プレイヤーであった自分ですら知らなかった、ジーク様の衝撃の事実。

私の心の中に響いでいくのであった。
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