99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

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第13話:【閑話】ジーク様の視点

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 私の名はジークフリード。
  
ミューザス王国の第二王子ジークフリード・ザン・ミューザスだ。
 今は身分を隠し、ファルマの街の聖剣学園に騎士として通っている。

学園生活は悪くはない。
騎士として自分の力を磨きつつ、スキルを会得してきた。

祖国のために、誰よりも強くなる必要がある私にとって、最良の環境。
孤独は人を強くする。

ラインハルトという強引な奴以外は、友人を作らないようにしていた。
乙女指揮官ヴァルキリア・コマンダーとも無視して学生生活を過ごしてきた。

このまま誰とも絡まず、何の事件もなく、無事に卒業していくと思っていた。



だが私が二年生なった時、"変な女”に出会う。
 
 その者の名は、マリアンヌ。

今年の新入生であり乙女指揮官ヴァルキリア・コマンダーの一人だ。

彼女を初めて見たのは、つい数日前のこと。
騎士と乙女指揮官の《顔合わせ会》の時だった。

顔合わせ会の会場で、ちょっとした騒ぎあった。
庶民と令嬢同士が、何やら揉めていたのだ。

私は他人の揉め事には、興味はない。
少し離れた所から、冷笑しながら見ていた。

だが、その時だった。
あの女……侯爵令嬢マリアンヌが、颯爽と騒ぎの中心に登場したのだ。

会場の騒動を見事な演説で収めて、彼女は風のように去っていった。

「マリア⁉」

 私の隣にいた学友のラインハルトが、彼女を見て叫ぶ。

「知っているのか、あの令嬢を?」

「ああ……オレの幼なじみのマリア……マリアンヌだ。でも、何で、あんな事をしたんだ? 昔は、あんな奴じゃなかったんだがな」

ラインハルトは彼女のことを教えてくれた。

幼い時から、神童と呼ばれていた令嬢だと。

十歳を越えたくらいから、傲慢ごうまんさが出てきてしまったと。

なるほど。
侯爵令嬢のマリアンヌか。

私の目から見た評価は、普通のレベル令嬢だ。
特筆することはなかった。

だが先ほどの演説。
あの言葉が……氷のような私の心を、魂を揺さぶっていた。

その日を境にして、私は何故か彼女のことが気になる。

「ライン。もしも良ければ、キミの幼馴染を紹介してくれないか?」

「ん? マリアのことか? ああ、もちろんいいぜ!」

 だからラインハルト頼み彼女に、実際に会ってみることにした。



当日、食堂の外から遠目に見たマリアンヌは、やはり“変な女”だった。

 彼女は上位貴族令嬢であるにも関わらず、下級貴族たちと同じように食堂で昼食をしていた。
かなり身分に対して無頓着なのであろうか?

 あと凄まじい大食漢だった。
三人前ものランチを、一気に空にしていた。

ん?
彼女の後ろに控える若い執事が、オレの視線に気が付いた。

ほほう。
あの執事はタダ者でないな。
これには感心する。

その後、ラインハルトに呼ばれて、彼女と話をした。

だが会話をして残念な気分になった。
令嬢マリアンヌは他愛のない、普通の女だったのだ。

あの時の私の魂の高揚感は、幻だったのかもしれない。

会話しながら、そう失望した時。

――――次の彼女マリアンヌの一言で、驚愕へと変わる。

『ジークフリード様……もしかしたら、貴方様は、ジークフリード=スザミ……様でございますか、あの?』

そう尋ねてきた。

(なっ⁉ 何だと⁉)

心の臓の鼓動が一気に早くなった。
そして脳裏に疑問が浮かぶ。

(なぜ、この者は私の名の……“真の発音”を知っているのだ⁉)

学園での私の仮の名は“ジークフリード・スザミ”。
それは多くの者が知っている。

だがマリアンヌが口にした『スザミ』の発音は、ミューザス王族だけが知る秘密の発音だったのだ。

特殊なイントネーションのために、その場にいたラインハルトですら気が付いていなかった。

いや、当たり前だ。
あの特殊な発音は、普通の者は聞き取れないイントネーションなのだ。

(マリアンヌ……この者は、一体何者だ?)

私の中の彼女に対する失望感は、驚愕へ。
驚愕は、疑念へと変化していった。
 
(まさか、私の身分が、漏れていた……いや、そんなハズはない)

私の身分を知るのは、学園長ただ一人。
あの賢人が、まさか口を滑らすとは思いえない。

では、いったいなぜ、彼女は? 

(令嬢マリアンヌ……油断ならざる者だな)

もしかしたら食堂での不可思議な言動も、演技の可能性もある。
マヌケ者のふりをして、実は裏があるのかもしれない。

この学園や大陸の運命を握る、重要人物である可能性もある。

彼女のことは今後も調べていく必要がある。
ラインハルトに頼んで、今後もマリアンヌとの機会を作ってもらった。

「マリアンヌ……か」

私はいつの間にか彼女の名を、口にするようになっていた。
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