99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

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第11話:疑念の視線を回避するために

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食堂で令嬢ヒドリーナさんと、無事に友だちになった。

直後、“壁ドンなオレ様”ことラインハルトがやって来た。

更に彼の紹介で姿を現したのは、銀髪のクールな美男騎士ジーク様だった。



――――通称“ジーク様”

学園内での彼の名はジークフリード=スザミ。

本名は“ジークフリード=ザン=ミューザス”。

ゲームだと隣と国ミューザス王国の王子様で、身分を隠して学園に入学している設定。

 この学園都市ファルマは周囲を、三つの国に囲まれている。

 一つは“帝国”……私やヒドリーナさんはここに属している。

 二つ目は"共和国”……庶民であるジャンヌちゃんはここ。

 そして最後の一つが"王国”……正式にはミューザス王国であり、“隠れ王子”ことジークフリード・ザン・ミューザスが王族である国だ。

三カ国の中間にあるファルマの街は、中立都市である。

ここは全人類の宿敵である妖魔ヨーム
対抗するため、三カ国が出資して設立された中立都市なのだ。

各国で騎士と乙女指揮官ヴァルキリア・コマンダーの才能ある若人が、候補者としてファルマ学園に送られる。
 
三年間の厳しい訓練と実戦を経て、無事に卒業したら各国に帰国。

これは乙女ゲーム《聖剣学園》の設定。
滅びの運命にある大陸を守るために、国籍と性別の垣根を越えて戦い、成長してゆく青春ストーリーなのだ



(うわー、どうしよう……でも、“あのジーク様”が目の前にいるんだ……本物だよ……)

 そんな中なゲーム中で“隠れ王子”ことジーク様は、ファンの間では一、二を争う人気キャラである。

 超レアキャラという事もあり、作中での性能は上位クラス。
 特殊な固有スキルもいつくか所有。

仲間《ゲット》にできたならば、最終戦までバリバリ第一線で活躍しちゃう美男騎士。

素敵なのは見た目の、イケメン偏差値の高さだけではない。
そのクールな美声が、プレイする乙女心(乙女じゃないご婦人も)をくすぐり、人気なの。

 もちろん私も大好きな美男騎士の一人!
 炎天下の夏コ○のビックサイ○に命がけで並んで、ジーク様の限定タペストリーもゲットした猛者だし。

 そんな訳でジーク様は凄いの。
 生の実物に対面できて私は感動していたの!

 ぜえぜえ……興奮しすぎて、過呼吸になっちゃった。
深呼吸しないと。

 ふう……あれ?

 でも、やっぱりこんな序盤で、ジーク様は出てこないはずなのに?
 どうしてだろう?

とにかくボロを出さないように、冷静に対応しないと。

「マリアンヌ様……一つ、お聞きしてよろしいですか。なぜ、私の“スザミ”の姓をご存知でしたのですか?」

ジーク様のクールな瞳が、さらに妖しく光る。
私のことを明らかに疑っていた。

「これは失礼いたしました、ジーク様。はい、ご存知でございました」

「ん? なんだ、マリア、ジークのことを知っていたのか?」

ラインハルトも話に入ってきた。
これは流れを変えるチャンスだ。

「実は私の若執事ハンスから、"名前だけ”聞いたことがありましたの。優秀な騎士がいらっしゃると。誤解を与えて失礼いたしました、ジーク様」

「いえ、恐れ入ります。こちらこそ名を知っていただき恐縮です」

ジーク様から氷のオーラが消える。

ふー、よかった。
何とか誤魔化すことに成功できた。

「なんだ、名前だけ知っていただけのか! それならマリアに紹介し甲斐があるな、コイツのことを!」

ラインハルトの方も納得して、いつもの勝気な表情に戻る。
こっちはけっこう単純な性格で助かる。
 
正直な私の個人的な好みだと、このラインハルトも嫌いではない。
いつもは自己中心的で距離が近い"壁ドンくん”だけど、純な性格は母性本能をくすぐるんだよね。
あと顔もかなりイケメンだし。
 
でもラインハルトとは、今回はあまり仲良く出来ない。
ゲームの展開的に彼と親密が高くなると、私の死亡フラグがどんどん進んじゃうだ。


「バルマン侯爵家のマリアンヌ……様か」

おっと、ジーク様から、また氷のようなオーラが発せられる。
まだ私のことを警戒しているのかな?
 
これはマズイな。

何とかしてジーク様の警戒を、急いで解かないと。
変な死亡フラグが立っちゃう前に。

よし、ちょっとアホなフリをして、警戒を解いてみよう。

「そういえば皆さん知っていましたか? この食堂の食事は、大変美味しゅうございますわ、オッホホホ……」

「ん?」

 ジーク様の目が一瞬、点になる。
これでよし。

 私の意味不明なおバカさん風な演技に、ジーク様の警戒も解除された感じだ。
 
でも、ちょっと痛い子だったかも。
今度からこれは、あまり多用はしないようにしよう。

「なぁ、マリア。お前は昔に比べて、少し変わったか? まあいい、ところで今は暇か?」

 幼なじみのラインハルトですら、私の見事な演技に騙されている。
もしかしたら私には女優の才能あり?

 そして続いて問われている。『今は暇か?』と。

 ええ、自慢じゃありませんけど、かなり暇です。
今日は時間が沢山ある。

 何しろ本格的な学園生活は、明日以降。
面倒くさい手続きや準備は、有能な若執事や侍女たちが済ませてくれる。

だから今は本当に暇。

これからの予定は、食後のお茶とお菓子を食べることくらいかな?
何しろ、ここはお菓子も食べ放題だからね!

あっ、でも食べ過ぎたら、体型がプニプニになっちゃうのかな?
この辺の設定は現実的(リアル)系なのか、それともゲーム的なのか、ちゃんと確認しないと。

太めの悪役令嬢なんて、嫌だからね。

あっ、そうだ。
ラインハルトに答えないと。

本当は暇だけど、少しだけ勿体ぶっておこう。

「本当はいろいろと忙しいですが、『どうしても』というのなら、多少の時間はございますわ、ラインハルト様?」

「おお、そうか! それだったら俺とジークと一緒に、《修練場しゅうれんじょう》に行かないか? 学園内の案内のついでに、どうだ?」

「修練場ですか……」

 ゲームで聞きなれたその言葉。
反応して、深く思慮すること一秒。

「……仕方がありませんわね。こちらのドルム伯爵家のヒドリーナ様も、ご一緒でもよければ参りますわ」

私は即決する。

「えっ、私も同伴してよろしいのですか!」

 いきなりの指名に、ヒドリーナさんの驚きの声をあげる。

「ああ、別に構わないぞ! では、四人で行くか!」

「あ、ありがとうございます!」

ヒドリーナさんはさっきまで、貝のように口を閉ざしていた。
けど今はとっても嬉しそう。
 
何しろラインハルトとジーク様は学園のエリート騎士で、全女子の憧れるある蒼薔薇騎士ブルーローゼス・ナイツの一員だからね。

 食堂内にいた他の令嬢たちも、うらやましそうヒドリーナさんを見てくる。

でも、そんな中でも、私マリアンヌは冷静を装う。

「では参りますか。食後のお散歩がてらに」

上級貴族令嬢として余裕の態度。

――――でも心の中では、私のガッツポーズを連発していた。

 何しろ《修練場》に行くのだ!

 ということは“あのシーン”が見られるかもしれない。
 
ゲーム内の《修練場》には、特殊なビジュアルシーンがあった。

それを見るためだけに、《聖剣学園》プレイするする自称乙女たちも多いのだ。

もちろん私のそう!

 むふふふ……

 えへへ……
 
楽しみだな。

「さぁ、いくぞ。ジーク!」

「ああ、わかった」

「あとマリアたちも遅れるなよ!」

こうしてラインハルトとジーク様の二人のイケメン騎士に先導されながら、私はヒドリーナさんと"修練場”に行くのであった。
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