99%断罪確定の悪役令嬢に転生したので、美男騎士だらけの学園でボッチ令嬢を目指します

ハーーナ殿下

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第5話:《顔合わせ会》に潜入

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 前世の記憶を取り戻した私は、ゲームのメイン場となる聖剣学園に入学。

 悪役令嬢としての死亡フラグを折るため、裏ワザ狙いで主人公の元に向かう。

 でも幼馴染なオレ様系のイケメン騎士ラインハルトに、邪魔をされちゃう。

 お蔭で主人公と会えず。

 次なる作戦の場、騎士との《顔合わせ会》で絶対に主人公ちゃんを見つけないと。

 ◇

 庶民宿舎での一件から、少し時間が経つ。

 私マリアンヌは若執事ハンスの待つ、自分の寮室に一旦帰還。

 着替えや化粧を直す。

 よし、これ準備はOK。

 いざ、次なる戦場である《顔合わせ会》にいくぞ。

「ここが騎士様との《顔合わせ会》の会場なのですわね」 

 ハンスをお供にして、私は会場に到着した。
 ここは学園の中にある大きな建物一つ。中にある“騎士の間”という大広間だ。

「随分と賑やかなところね?」

 会場に入って、ちょっとビックリした。
 広間は相変わらずの豪華なゴシック様式。

 そして広間を華やかに飾っているのは、数百人の若い男女。

 華麗なドレスで着飾った令嬢。
 聖剣学園の制服のイケメン騎士たち。

 色彩美に溢れた圧倒的な迫力。
 まるで映画に出てくるような優美な光景だ。

「それにしてもハンス。早くも混雑しておりますわね、ここは?」

「さようですね、マリアンヌ様。何故なら《顔合わせ会》すでに始まっておりますからです」

 うつ……こいつ、痛いところ突いてくるな、本当に。

 そう――――私は《顔合わせ会》に遅刻しちゃったのだ。

「お嬢さまの準備が、もう少し早く済めば、間に合ったのですが」

「し、仕方がありませんわ。何しろ大事な騎士の皆様との、初の顔合わせ会なのですから。身だしなみは大事ですわ」

「…………」

 無言で私にプレッシャーを与えてくる、若執事ハンスの言葉は間違っていない。

 今回の遅刻の原因は、完全に私。
 お化粧直しや着替え選ぶのに、手間取っていたからだ。

 でも、遅刻といっても、ちょっとの時間でしょ。

「…………」

 そ、そんな目で見ないでよ、ハンス。

 だって《顔合わせ会》は運命の“パートナー騎士”を選ぶ、大事なイベント。

 誰だって自分を素敵に、見せたいと思うでしょ?
 普通の女の子だったら。

 だから、少しの遅刻も仕方がない?

「………………」

 いや、すみません、ハンスさん。

 やっぱり、どんな理由があっても、遅刻はよくないね。
 特に今回は自分の死亡フラグを、回避しなきゃいけなかったのに。(反省)

 よし、ハンスに目線で謝ったところで、気持ちを転換。

 《顔合わせ会》に参戦するぞ。

「それではマリアンヌお嬢様、この会場内にいる騎士様の中から、“パートナー騎士”をお選び下さいませ」

「そうですわね。任せてちょうだい」

 遅刻はギリギリセーフ。
 ちなみに《顔合わせ会》の流れは、ゲーム的に説明すると次のような感じだ。

 ――――◇――――◇――――

 1:この“騎士の間”には、私マリアンヌを含めて、指揮官適性のある新入生の乙女が百人近く集まっている。
 ↓
 2:騎士適正のある美男騎士も数百人いる。
 ↓
 3:あとはカップルマッチングみたいに、最初の相棒“パートナー騎士”を探す。
 ↓
 4:基本的に指名権は、指揮官である乙女が持っている。あとは騎士と契約を結び、無事に完了となる。 


 ☆基本的には私たち指揮官一人に対して、最初に契約する騎士は一人だけ。
でも学園生活をしていけば、契約する騎士の数は段々と増えていく。

 ☆最初のパートナー騎士は、補正が付くので最初から強くなる。自分との相性も考え、慎重に選ぶ必要がある

 ――――◇――――◇――――

 ゲーム的に説明すると、こんな感じだ。

 ハンスに聞いてみたところ、実際の《顔合わせ会》もほとんど同じ。

 うーん、不思議。
 この世界はリアル世界だけども、こういう設定だけ妙にゲームしてる。

 まあ、乙女ゲームの世界の中? だから仕方がないかも。

 あんまり気にしないでおこう。

 あと最初の“パートナー騎士”のことを、もう少し簡単に説明しておく。

 わかりやすく説明すると、"ポケットモンス○ー”の最初のアレだ。

 はじめのお供のポ○モンを、三匹のうちから一体だけ選ぶ感じかな。

 それがイケメン騎士になった感じ。

 とにかく私たち乙女な指揮官は、直接的な戦闘能力を持たない。
 だから敵と戦うには、彼ら騎士の戦闘力が必要。

 あと騎士たちも、私たち乙女な指揮官の補正がないと、本来の力が出せない。
 お互い支え合って、これから敵と戦っていく感じだ。

 あっ“敵”に関しては、今度ゆっくり説明するから。

 私はこれから主人公ちゃんを、探さないといけない。
 一刻も早く友好的に挨拶して、私の死亡フラグを消去しないと。

 それじゃ、さっそく、この男女数百人の中に突撃じゃ!

「これはバルマン侯爵家のマリアンヌ様!」

「マリアンヌ様、ご無沙汰しております!」

 でも、私の突撃は、第一陣で防がれてしまう。
 私の前に数人の騎士たちが、立ち塞がってきたのだ。

 えーと、彼らは、たしか。
 美男騎士の人たちで、あんまりメインではない人たち。
 ゲーマーとしての私も、そこまで印象はないキャラたちだ。

 あとマリアンヌさんの令嬢としての記憶だと。
彼らは貴族のダンスパーティーや晩餐会で、面識がある人たちだ。

「これはご機嫌、うるわしゅうございますわ……」

 マリアンヌさんの記憶と私のゲーマー記憶。
 二つを組み合わせ、彼らの名前を思い出しながら、こちらも丁寧に挨拶をする。

 本当は全員無視して、早く主人公ちゃんを探しに行きたい。
 でも今の私は貴族令嬢。
 お家のためにも一応は挨拶されたら、返事をしていかないと駄目なの。

 あと私が名前を忘れてしまった時も、大丈夫。
陰のように控える若執事ハンスが、そっと耳打ちをして教えてくれる。

 暗記帳みたいで、すごく助かる。

 なんでも全ての貴族と騎士の名前と顔を、ハンスは暗記しているという。
 自分と同じくらいの年なのに、こいつは本当に超有能だ。

 まぁ、でも少し堅物で小言が多いのが、玉にキズかな?
 小言を言わなければ、けっこういい男なんだけども……というか、かなりの美形かな、うちのハンス?

 あっ、やばい。
 またハンスに睨まれたので、ちゃんと騎士たちに返事しないと。

「オッホッホ……それではわたくしは、先約があるので失礼いたします」

 挨拶してきた騎士たちとの挨拶は、適度(適当)に済ませておく。
 よし、これで自由の身になれた。

 あとは早く主人公ちゃんを探さないと。

 うーん、それにしても凄い人の数。
 この中から、たった一人の女の子を見つけるのは、かなり難儀だな。

 それにしてもこうして眺めていると、騎士たちは本当にイケメンだらけだ。
 さすが美男騎士という名称だけあって、皆さん素晴らしいお顔の持ち主。

 圧倒的なイケメン集団の圧力。
 前世の私だったら、間違いなく足がすくむ状況だ。

 でも今は大丈夫。
 マリアンヌさんの令嬢パワーで、平然していられるのだ。

 それにしても、こうして考えるとマリアンヌさんって、かなり有能かも。
 どんなイケメンに迫られても、さっきから平然としている、男子の受け流しも上手い。

 そういえばマリアンヌの家族の男性陣は、全員いい男だらけ。
 もしかしたら“イケメン耐性”があるのかもね、マリアンヌさんには。

 ふう……それにも、主人公ちゃんが、なかなか見つからないな。

 もう少し奥の人だかりを、確認に行きたい。
 けど私があんまり動けば、また騎士に捕まっちゃう。

 あっ、そうだ。
 こんな時はウチの有能な若執事に、動いてもらおう。

「ハンス、お仕事よ。この会場の中で“違和感がある”乙女な子を、探してちょうだい」

「“違和感”ですか、お嬢様? 具体的には、どのようなですか?」

「視界に入れば、すぐに分かると思いますわ。その子は」

「……かしこまりました。では、探してまいります」

 私の曖昧あいまいな指示に、ハンスは何かを察して動いてくれる。

 普段は私に対して小言が多い若執事。
 でも幼い頃からの付き合いであり、彼は執事の中でも有能。

 私の言葉の意味を理解して、きっと主人公ちゃんを探し出してくれるはずだ。

(早く見つかるといいな……"あのイベント”が起こる前に、早く主人公ちゃんに接触しないと……)

 気持ちが焦る。
 とりあえず自分でも会場内を動き回る。

 でも、やっぱり動き回ると、騎士たちに捕まってしまう。
 マリアンヌさんの令嬢スキルで、何とか受け流して、また捜索再開。

 うーん、でも、やっぱり、なか見つからないなー。

「マリアンヌお嬢様、あちらに対象者おりました」

 ハンスが戻ってきた。

 おお、ナイスタイミング!
 さすがウチのハンスは有用だ。ありがとう。

「では、その者の所まで案内してください、ハンス」

「承知いたしました。ですがお嬢様、"あのような者”と会ってどうする、おつもりですか?」

「それはアナタには関係はありませんわ。さぁ、案内を」

「……承知いたしました」

 ハンスが渋る理由は、分かっている。
 何故なら主人公ちゃんは、私とは身分が圧倒的に違う。

 普通は上級貴族である侯爵令嬢から、庶民には挨拶にいかない。
 たとえ学園の校則で生徒は平等とあっても、それはあくまでも名目上。

 この世界では身分の差は、予想以上に大きいのだ。

「ハンス、これから私がその子に、どんなことをしても、アナタは絶対に口を挟んではいけませんわよ? よろしくて?」

「……承知いたしました」

 ハンスに釘を刺しておく。
 これから私は主人公ちゃんに、令嬢らしからぬ態度で会いにいく。

 どんな手段を使って、たとえ土下座をしてでも、私は死亡フラグを回避するのだ。

「お嬢様、あの集団の中です、目的の方は」

「わかったわ」

 ようやく到着した。
 主人公ちゃんがいる場所に。

 ん?
 でも、何かがおかしいぞ。

 ハンスの指さすに先には、かなりの人だかり。
 すごく騒然としている。

 何かあったのかしら?
 ちょっと険悪な空気がする。

 あの人の輪の中で、何が起きているのかな?
 ちょっと近づいて確認してこよう。

野次馬根性を発動だ。

「失礼いたしますわ。私を通していただいて、よろしいかしら?」

「ん? なんだと、後ろから無礼な……あっ⁉ こ、これはバルマン侯爵家のマリアンヌ様。大変失礼いたしました!」

「マリアンヌ様、どうぞお通りください」

 上級貴族の身分は、こんな時はとても便利。
 群がっている人たちは、みんな私に道を譲ってくれる。

 みなさん、ありがとう。
 ごめん、あそばせー。

 さて、お蔭さまで、何とか騒ぎに近づけた。

 うーん、でも、前の人が邪魔で、まだ見えないな?

 本当に、この騒ぎ、いったい何が起きているのであろうか?

 あと主人公ちゃんは、この輪のどこにいるのかな?

「……ん? あれは?」

 そんな時。
 私は気が付く。

 この騒ぎの中心人物を。
 輪の中心にいたのは、一人の少女であった。

 豪華絢爛ごうかけんらんなこの場に似つかわしくない、みすぼらしい格好の女の子だ。

(あれは……主人公の……ジャンヌ……ちゃん?)

 彼女の愛称のテンプレ名、思わず心で叫ぶ。
 あの浮いた雰囲気は、間違いない

(ようやく見つけた! よかった! あれ? でも、この騒ぎの中心って、あの主人公ちゃんなの⁉)

 こうして《聖剣乱舞》の主人公を、私は無事に発見するのであった。

 ――――あっ、でも、この騒ぎの状況は、明らかに無事にじゃない感じかも。

 どうしよう……。
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