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【最終話】:新たなる復讐へ

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女神の使徒ダークスとの戦いから、日が経つ。
ボクは勇者候補ラインとして、前と同じようにミナエルで学園生活を送っていた。

「それでは、これより授業を始めるわ」

「「「はい、ライザール先生!」」」

今日も魔法の授業を受けていた。担当は“レイチェル=ライザールの姿をした存在”だ。

あれは前回と同じ様にベルフェの魔道人形。
ボクの特殊能力の【性質創造リ・クリエイト】も併せて発動。魔道人形を“レイチェル=ライザールそのもの”に変質させたものだ。

今までの記憶を有して、戦闘能力もほとんどレイチェル=ライザールと同じ。勇者同士でも気がつかないコピー体だ。

今回も性格は、ボクの方で改造していた。特にやつの裏の顔……狂気の研究者な性質は全て消去している。

あとレイチェル=ライザールの研究室の痕跡も、物理的に消去。洗脳状態にあった生徒も、今は記憶を消して解放済みだ。

そのため今のレイチェル=ライザールは普通の女教師として、毎日を送っている。
性格は前と同じく高飛車だが、他人は害を与えないようにプログラムしている。今後は誰にも怪しまれることなく、ミナエル学園で仕事をしていくだろう。



授業が終わり休み時間になる。同じクラスの《嫉妬しっとのレヴィ》が、声をかけてきた。

「そういえばライン様、“今度”はどうする予定ですか?」

周りに聞かれないように、今度の復讐計画について話し合う。ちなみ《怠惰たいだのベルフェ》の本体は、しばらくは自室で休暇中。
『先日の第二地獄で働き過ぎたので、怠惰を回復するために休みます』というヤツらしい理由だ。

「“今後”か……そうだな。もう、このミナエル学園には用はない」

ミナエル学園にいた勇者はバーナード=ナックルとレイチェル=ライザールの二人だけ。

情報によると残りの四人は、別の街の勇者学園で教師をしている。つまりミナエル学園に留まる必要はないのだ。

「それなら他の学園に潜入するのですか、ライン様は?」
「ああ、そうだ。だがいきなり“勇者候補ライン”が姿を消したら怪しまれる。その為の“種まき”も済んでいる。ほら、ちょうどきたぞ」

こちらに近づいてくる教師がいた。学年主任の男性教師だ。レヴィとの会話を中断する。

「ライン君。先日の“王都学園への短期留学の話”だが、考えてくれたかな?」
「はい。ありがたく受けさせていただきます!」
「そうか。それなら先方にも連絡をしておきますね」

――――これが“勇者候補ライン”の経歴を消さずに、他の学園に怪しまれずに潜入する方法だ。

作戦としてボクは特別留学生として、王都にある“王都勇者学園”に、短期留学することしにした。
もちろんこれは偶然ではなく、ボクが狙って選ばれたもの。

短期留学制度は前から情報を仕入れていた。留学者の資格は、各学年で成績優秀者が一名だけ。

ミナエル学園の一回生で、ボクの座学の成績は常にトップクラス。
また選抜戦でも優勝していたから、文句なしに特別留学生の資格を獲得。学年主任に以前から申請していたのだ。

「さて。留学の準備をするか」

――――そして数日が過ぎ、王都学園に出発する日がやってきた。



王都学園に出発する当日となる。

だが特にミナエル学園として、特別な見送り式などはない。
勇者学園の本分は、“真の勇者”を育成することであり、友情を楽しむ学園ではないのだ。

「さて、王都に向かうとするか」

自室で準備を終えて、学生寮から出ていく。
短期留学ということで、名目上はまた戻ってくる。荷物も最低限必要な物だけ持っていき、他は部屋に置いていく。

「また、戻って来る……か」

実際のところはどうなのだろう。
六人の全ての勇者への復讐が終わったら、勇者候補を続ける理由は一つもない。
もう二度とミナエル学園に、この部屋に戻らない可能性もあるのだ。

「そう考えると、少しだけ寂しいかもな。人の感情的には……」

学園の敷地内を歩きながら、ふと感慨深くなる。

ミナエル学園は自分にとって、生まれて初めての学び舎。母さんが惨殺されて後は、魔界で地獄のような数年間を過ごしていた。
だからミカエル学園は久しぶりに、“人らしい生活”をした安息の場なのだ。

「まぁ。それでも色々と“濃い”期間だったな、ここも」

ミナエル学園の校舎を横目にしながら、入学した当時を思い出す。

「まずはバーナード=ナックルか……」

最初のターゲットである《剣帝》バーナード=ナックルは、初対面からゲスな教師だった。
ヤツは新入生の女生徒の肉体が大好きな、性欲の塊。しかも制服姿が何よりも興奮する性癖だった。

だから《怠惰たいだのベルフェ》と女体化したボクで、ヤツを罠にハメやった。
自分が騙された、と気がついた時のバーナードのマヌケ顔は、本当に傑作。今思いだしても笑みが抑えられない。

バーナード=ナックルは《怠惰たいだのベルフェ》の丸の飲みによって、何度も地獄の苦しみを与えてやった。
最後は“色欲大鬼ラブ・オーガ”の男根によって昇天。今でも地獄の底で、永遠の苦しみを味わっている最中だ。

「そしてレイチェル=ライザールか……」

その後に、第二のターゲットである《大賢者》レイチェル=ライザールとも遭遇。
奴もバーナード以上に裏の顔がある、最低なヤツだった。

ボクは優秀な生徒のフリをして、ヤツの研究室に潜入。罠にハマったフリをして、義体で逆に罠にハメてやった。

その後は地獄のパーティーの始まり。
怠惰たいだのベルフェ》と生き返った魔族衆のお蔭で、最高のレイチェル=ライザールの断末魔を楽しむことができた。

「だがダークス……か」

パーティーの最中に乱入してきたのは、白髪の少年“女神の使徒”ダークスだった。
ヤツは本当に異質な存在。大牛の本性を現していないとはいえ、《怠惰たいだのベルフェ》を圧倒したのだ。

結果としてボクの機転で、ダークスの秘密の能力を丸裸に。圧倒的な【第七剣セブンス・ソード】で存在ごと消してやったのだ。

だがダークスとの戦いでは、多くの謎が残っていた。全て解明するには、勇者への復讐以上に困難を極めるだろう。

「ふっ……面白くなってきたな」

だがボクは笑みが溢れてきた。
愛する母を、残虐な勇者パーティーに惨殺されたのだ。

このまま簡単に復讐が終わってたまるか。復讐相手は勇者の残り四人だけではない。

まずは母さんの住処の情報を、勇者共に売った裏切り者。
他にも裏で暗躍していた者と、勇者を支援していた国。

そして全ての元凶である存在“女神”ですら、ボクの復讐のリストに入っているのだ。
下手したら世界と魔界の全てを、敵に回す可能性もある。

それを考えたら、今までの勇者二人への復讐は序章。
大いなる復讐劇の本章は、今ようやく幕開けしたと言って過言でない。

本番はこれから……そう確信したからこそ、自然と笑みがあふれ出てしまったのだ。

「さて、王都まで“勇者候補らしく”移動していくか」

特殊能力を使えば、王都まで一瞬で転移可能。だが自分の足で移動することを、あえて選択する。

何故ならその方が“面白い”から。
道中で何か……復讐相手に関する情報を、手に入れることが出来るかもしれないからだ。

「ふっふっふっ……待っていろよ、世界の全てよ!」

こうしてボクはミカエルを旅立つ。



復讐に燃える少年ラインが向かう先は、大陸でも有数の大都市“王都”

待ち構えるは、更にゲスで強大な力を有する二人の勇者。

加えて立ちはだかるは、全ての勇者学園を裏で操る“謎の組織”。

そして介入してくる新たな“女神の使徒”と、暗躍する裏切り者の魔族たちだ。

「待っていてね、母さん。全てヤツの断末魔を、天国に捧げるから!」

こうして最強の魔の力を手にするラインの復讐は、本章へと突入していくのであった。






































最後まで読んで頂きありがとうございます。

なんとか今のボクで書けるところまで、書ききることが出来きました!
このお話は、ここで一度完結になります。

今後の予定は未定です。
でも、書籍化したいので、色んな編集部に持ち込みをして、コンテストにも応募もする予定です。

万が一、成功した時は、また報告します!
ボク的には、この作品は好きなので、もっと書きたいです!



応援していただけると、私も嬉しいです。

あなたの評価と応援が、今後の作者の励みと力になります!


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感想 7

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みんなの感想(7件)

のらねこ♂
2020.06.23 のらねこ♂

うーん 未完成って事かな? アイデアとしてはゲス勇者の神器を奪って仲間の武器で復讐をしていくなんて方が良かったのでは そうすれば『女神の使徒』が神器を回収する理由も分かりやすく 半人半魔の主人公の強みに出来たのでは? ストーリーは面白かったから一気読み出来た 個人的には母(叔父さん)が初期戦闘を教え 父(不明)だけど半人って言われてたから仇を取るのに神器を使う事で主人公の憎しみが分かりやすく伝わると思う

次回作も期待してるので頑張って下さい。 

解除
胼胝
2020.06.22 胼胝

僕の復讐はまだこれからだ!ってフラグ( ̄▽ ̄;)

解除
Mottu
2020.06.04 Mottu

剣帝倒したのは、怠惰じゃなく嫉妬だったはずです。間違いがあったので感想で書きました。
楽しく読ませていただきありがとうございました。

解除

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