2 / 116
天空よりのマレビト2
しおりを挟む
マレビトの中には、先住民である「人間」の存在を快く思わない者もいた。
すらりと均整のとれた体躯に雪のような白い肌と髪、そして深紅の瞳を持つ、その男は「ニクス」と呼ばれていた。
彼は、マレビトたちの中でも最も強い力を持ち、また様々な技術を生み出してきた天才でもあった。
ニクスにとって、「人間」は姿かたちこそ自分たちに似てはいるものの、脆弱で愚かな、虫けら程度の生物に過ぎなかった。
そして、愚かな「人間」たちは、やがて、この「楽園」を汚染し食い尽くしてしまうだろう――それが、ニクスによる未来予測だった。
ニクスは、「人間」を殲滅し、自分たちマレビトが「楽園」を永遠に清浄なまま管理すべきであると主張した。
他のマレビトたちが、彼の主張を受け入れることはなかった。
マレビトたちの考えは、自分たちは間借りさせてもらうだけの存在でしかなく、この地は、あるがままにされるべきというものだった。
ニクスも、他のマレビトたちも「楽園」を愛することに変わりはなかった。
ただ、その扱いについて意見が対立してしまっただけだった。
しかしニクスが、その力を以て「人間」を殲滅しようとする事態に至り、ついに「人間」を守ろうとするマレビトたちとの間に争いが起きた。
大地が裂け海の一部が干上がるほどの壮絶な戦いののち、マレビトにも数多の犠牲を出しながらニクスは「討伐」された。
ニクス討伐の後、マレビトたちの多くは、惑星の大地と一体化し自然の一部となることを望んだ。そして、中には「人間」と番い、子を成す者もいた。
「彼ら」の血と力は「人間」たちの中に受け継がれた。
かつて、人間を滅ぼさんとする悪神を、他の神々が討伐し、地上に平和が訪れた――
「楽園」において、はるか後世に伝わる神話の一つである。
すらりと均整のとれた体躯に雪のような白い肌と髪、そして深紅の瞳を持つ、その男は「ニクス」と呼ばれていた。
彼は、マレビトたちの中でも最も強い力を持ち、また様々な技術を生み出してきた天才でもあった。
ニクスにとって、「人間」は姿かたちこそ自分たちに似てはいるものの、脆弱で愚かな、虫けら程度の生物に過ぎなかった。
そして、愚かな「人間」たちは、やがて、この「楽園」を汚染し食い尽くしてしまうだろう――それが、ニクスによる未来予測だった。
ニクスは、「人間」を殲滅し、自分たちマレビトが「楽園」を永遠に清浄なまま管理すべきであると主張した。
他のマレビトたちが、彼の主張を受け入れることはなかった。
マレビトたちの考えは、自分たちは間借りさせてもらうだけの存在でしかなく、この地は、あるがままにされるべきというものだった。
ニクスも、他のマレビトたちも「楽園」を愛することに変わりはなかった。
ただ、その扱いについて意見が対立してしまっただけだった。
しかしニクスが、その力を以て「人間」を殲滅しようとする事態に至り、ついに「人間」を守ろうとするマレビトたちとの間に争いが起きた。
大地が裂け海の一部が干上がるほどの壮絶な戦いののち、マレビトにも数多の犠牲を出しながらニクスは「討伐」された。
ニクス討伐の後、マレビトたちの多くは、惑星の大地と一体化し自然の一部となることを望んだ。そして、中には「人間」と番い、子を成す者もいた。
「彼ら」の血と力は「人間」たちの中に受け継がれた。
かつて、人間を滅ぼさんとする悪神を、他の神々が討伐し、地上に平和が訪れた――
「楽園」において、はるか後世に伝わる神話の一つである。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ユウ
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
もしもゲーム通りになってたら?
クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが
もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら?
全てがゲーム通りに進んだとしたら?
果たしてヒロインは幸せになれるのか
※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。
※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。
※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。
転生リンゴは破滅のフラグを退ける
古森真朝
ファンタジー
ある日突然事故死してしまった高校生・千夏。しかし、たまたまその場面を見ていた超お人好しの女神・イズーナに『命の林檎』をもらい、半精霊ティナとして異世界で人生を再スタートさせることになった。
今度こそは平和に長生きして、自分の好きなこといっぱいするんだ! ――と、心に誓ってスローライフを満喫していたのだが。ツノの生えたウサギを見つけたのを皮切りに、それを追ってきたエルフ族、そのエルフと張り合うレンジャー、さらに北の王国で囁かれる妙なウワサと、身の回りではトラブルがひっきりなし。
何とか事態を軟着陸させ、平穏な暮らしを取り戻すべく――ティナの『フラグ粉砕作戦』がスタートする!
※ちょっとだけタイトルを変更しました(元:転生リンゴは破滅フラグを遠ざける)
※更新頑張り中ですが展開はゆっくり目です。のんびり見守っていただければ幸いです^^
※ただいまファンタジー小説大賞エントリー中&だいたい毎日更新中です。ぜひとも応援してやってくださいませ!!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
※新作です。アルファポリス様が先行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる