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新たな道へ
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外出から戻ってきたフェリクスとセレスティアに、ナタンはリリエと話し合ったことを伝えた。
「そうか。それが、君たちの選択なら、何も言うことはない」
「少し早いかもしれませんが、幸せになってくださいね」
まるで、そうなることは分かっていたとでも言うように、フェリクスとセレスティアは、ナタンたちを祝福した。
「ところで、君がやりたいことというのは何なのか、聞いてもいいか?」
フェリクスが、ナタンに問いかけた。
「『無法の街』に、発掘人による護衛の紹介所みたいなものを作りたいんだ。でも、今の俺では何をどうすればいいのかも分からないし、まずは勉強しなくちゃいけないと思ったから、故郷に帰って経済とか政治とか色々な勉強をしようと思ってる」
「なるほど。紹介所で悪質な者を篩にかけることができれば、詐欺などに遭う者も減るかもしれないな」
「そうだね。それに、発掘人同士が繋がりやすくなれば、『帝都跡』の探索も捗ると思うんだ。簡単にはいかないと思うけどさ」
「ナタンなら、きっと、やりとげられると思いますよ」
セレスティアが、ナタンを励ますように言った。
「私たちは『無法の街』を出る訳ですが、そうなると、フェリクスさんたちは、どうされるんでしょうか?」
少し心配そうに、リリエが言った。
「そうだな。俺たちは、もう少し『無法の街』に残ろうと思う」
フェリクスが、そう言ってセレスティアを見ると、彼女も頷いた。
「『無法の街』も、住み慣れれば、いいところですから」
「俺たちのような者には、居心地がいいからな。それに、君たちも、いずれは戻るのだろう?」
そう言って、フェリクスは微笑んだ。
「もちろんさ。今度は、飢え死にしかけてフェリクスたちに拾われるようなことがないようにするよ」
ナタンは、からからと笑った。
数日後、移動の準備を終えたナタンとリリエが「無法の街」を離れる時が来た。
長らく世話になった「躍る子熊亭」の主人デリスと、その妻であるカヤに挨拶をした後、ナタンとリリエは、乗り合い車両の停車場へと向かった。
「そうだ。フェリクス、これを渡すのを忘れるところだったよ」
ナタンは、見送りに来ていたフェリクスに、一つの封筒を差し出した。
「これは?」
フェリクスが、首を傾げた。
「初めて会った時の、食事代と宿代だよ。返すって、約束しただろ?」
「そうだったな。別に、構わないんだが……」
「あの時、フェリクスたちに助けてもらわなければ、俺は、どうなってたか分からないし……こういうの、きちんとしたいんだ」
二人の様子を見ていたセレスティアが、微笑みながら言った。
「ナタンの、そういう真面目なところは好ましいですね。フェリクス、受け取っておきましょう」
彼女の言葉に、フェリクスも頷いた。
「では、ありがたく受け取っておこう。これで、借金の回収は完了だ」
そこへ、ラカニが走ってきた。
「ああ、間に合ったな。今日、発つって聞いたからさ」
「忙しいんじゃなかったの? でも、来てくれて嬉しいよ」
ナタンは、ラカニと握手を交わした。
「先に言っとくぜ。結婚おめでとうってな」
ラカニが言って、片目を瞑ってみせた。
「ま、まだ早いよ! でも、ありがとう」
ナタンとリリエは、揃って顔を赤らめた。
仲間たちに見送られながら、ナタンはリリエと共に乗り合い車両へ乗り込んだ。
初めて「無法の街」を訪れた日よりも、彼の胸は高鳴っていた。
「そうか。それが、君たちの選択なら、何も言うことはない」
「少し早いかもしれませんが、幸せになってくださいね」
まるで、そうなることは分かっていたとでも言うように、フェリクスとセレスティアは、ナタンたちを祝福した。
「ところで、君がやりたいことというのは何なのか、聞いてもいいか?」
フェリクスが、ナタンに問いかけた。
「『無法の街』に、発掘人による護衛の紹介所みたいなものを作りたいんだ。でも、今の俺では何をどうすればいいのかも分からないし、まずは勉強しなくちゃいけないと思ったから、故郷に帰って経済とか政治とか色々な勉強をしようと思ってる」
「なるほど。紹介所で悪質な者を篩にかけることができれば、詐欺などに遭う者も減るかもしれないな」
「そうだね。それに、発掘人同士が繋がりやすくなれば、『帝都跡』の探索も捗ると思うんだ。簡単にはいかないと思うけどさ」
「ナタンなら、きっと、やりとげられると思いますよ」
セレスティアが、ナタンを励ますように言った。
「私たちは『無法の街』を出る訳ですが、そうなると、フェリクスさんたちは、どうされるんでしょうか?」
少し心配そうに、リリエが言った。
「そうだな。俺たちは、もう少し『無法の街』に残ろうと思う」
フェリクスが、そう言ってセレスティアを見ると、彼女も頷いた。
「『無法の街』も、住み慣れれば、いいところですから」
「俺たちのような者には、居心地がいいからな。それに、君たちも、いずれは戻るのだろう?」
そう言って、フェリクスは微笑んだ。
「もちろんさ。今度は、飢え死にしかけてフェリクスたちに拾われるようなことがないようにするよ」
ナタンは、からからと笑った。
数日後、移動の準備を終えたナタンとリリエが「無法の街」を離れる時が来た。
長らく世話になった「躍る子熊亭」の主人デリスと、その妻であるカヤに挨拶をした後、ナタンとリリエは、乗り合い車両の停車場へと向かった。
「そうだ。フェリクス、これを渡すのを忘れるところだったよ」
ナタンは、見送りに来ていたフェリクスに、一つの封筒を差し出した。
「これは?」
フェリクスが、首を傾げた。
「初めて会った時の、食事代と宿代だよ。返すって、約束しただろ?」
「そうだったな。別に、構わないんだが……」
「あの時、フェリクスたちに助けてもらわなければ、俺は、どうなってたか分からないし……こういうの、きちんとしたいんだ」
二人の様子を見ていたセレスティアが、微笑みながら言った。
「ナタンの、そういう真面目なところは好ましいですね。フェリクス、受け取っておきましょう」
彼女の言葉に、フェリクスも頷いた。
「では、ありがたく受け取っておこう。これで、借金の回収は完了だ」
そこへ、ラカニが走ってきた。
「ああ、間に合ったな。今日、発つって聞いたからさ」
「忙しいんじゃなかったの? でも、来てくれて嬉しいよ」
ナタンは、ラカニと握手を交わした。
「先に言っとくぜ。結婚おめでとうってな」
ラカニが言って、片目を瞑ってみせた。
「ま、まだ早いよ! でも、ありがとう」
ナタンとリリエは、揃って顔を赤らめた。
仲間たちに見送られながら、ナタンはリリエと共に乗り合い車両へ乗り込んだ。
初めて「無法の街」を訪れた日よりも、彼の胸は高鳴っていた。
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