love memory〜君といた時

浅葱凍夜

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現在と過去

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ここはとある県にある山に囲まれた町。その町には地元でも有名な二人がいた。
その二人とは麻倉晴一と小林めぐみの高校生だ。

晴一は町で一番の旅館の息子で、めぐみはこの町の町長の娘で、二人は幼い
頃に晴一の家の旅館で出会い、すぐに仲良くなり恋人同士になった。
それは両方の親同士も認め、将来は夫婦になる事も約束されたが、めぐみには
ある秘密があった。

それは病名のわからない病(やまい)で、たまに発作が起き倒れてしまうという
厄介な病気だった。それでも晴一はめぐみの事が好きなので一生懸命
看病したりした。それもあってめぐみは発作が起きる回数は減っていったが
油断はできない状態でもあった。

そんな二人は現在高校二年生で、地元高校に通っている。その学校は丘の上に
あり、旧校舎と新校舎の二つがあった。

学校の後ろには社や石碑があったりしていかにも田舎の様な所だが、晴一は
それが好きで、よくその石碑がある場所にいた。
登校の時も二人はいつも一緒に行き、教室に入る。そこでも夫婦揃っての
登校だと茶化されるが、それは悪い意味ではなく、良い方の意味で言われて
いた。二人は隣同士の席で、それもこのクラスの担当の先生が決めた事で
二人はこの町の幸せなシンボルの象徴でもあった。

そんなある時、晴一に異変が起きた。

いつも規則正しく、真面目な晴一は授業も真剣に聞いているのだが、まだ午前中の
10時になる五分ぐらい前にそれは起こった。

先生に問題を解くように言われたので席を立ち、黒板に向かおうとした時だった。
晴一は急にめまいの様な感覚に襲われ、ふらついた。

「どうした麻倉?体調でも悪いのか?」
「いえ、そんなはずはないんですが、なんか急にめまいが」
「せいちゃん!大丈夫」

めぐみも気づいて晴一に駆け寄る。ちなみにめぐみは晴一をせいちゃんと
呼んでいる。

その晴一は膝をついてしまったが、まだ堪えていた。

「なんだ、これ。めまい、じゃない。眠気?」
「せいちゃん!」
「大丈夫だよめぐちゃん。なんか少し眠いだけ・・・・・・だから」

そう言って晴一は倒れた。慌てて先生が晴一を抱え、めぐみと一緒に保健室に
行き、ベッドに寝かせた。めぐみはどうにかして起こそうとしたが、晴一は
起きる気配がなかった。



それからしばらくして晴一は目を覚ました。しかし、それは教室でだった。

「ここは?教室!そういえば僕は倒れた様な」

そう考えていると誰かに声をかけられた。

「りょうちゃん!りょうちゃん!」

声をかけてきたのは隣の女の子だった。しかも、その子はめぐみに似ていたので
思わずいつもの様に話した。

「めぐちゃん!僕は」
「めぐちゃん?めぐちゃんって誰?私を名前を間違えるなんて」
「そうだぞ涼介!自分の恋人の名前を間違えるなんて」
「間違える?涼介?あの、僕は麻倉晴一なんだけど。それに君も」
「もしかして寝ぼけてる?あなたは麻倉涼介よ。それで
私は小林凛よ」
「凛ちゃん?でも、容姿はめぐちゃんにそっくりだ。それに、僕は!?」

晴一は窓を見た。そこにはいつもの外とは違った風景があり、しかも
その窓に映る自分の姿も違っていた。さらに、着ている制服も教室の
中もどこか古い感じがした。

「なんだろうこの違和感・・・・・・!?あれって」

晴一は黒板に書かれている日付を見た。その日付は確かに同じだったが
その上には昭和四年と書かれていた。現在は1999年だったはずと
晴一は思い返す。席を立ち、その日付を見に行く。横にいる先生に
聞いた。

「あの、今は平成じゃぁ」
「平成?なんだそれは?今は昭和になって四年目だぞ」
「昭和四年?七十年も前?もしかして夢?じゃない。どうなってるんだ?」

晴一は混乱していたが、とりあえず落ち着こうと先生に顔を洗ってきます
と言って教室を出た。ここは見覚えのない場所のはずなのに水道の
あるところはすぐにわかった。廊下も木造で本当に昔の様な感じだった。
顔を洗い、どうなっているのか考えているとそこにめぐみではなく、凛が
やってきた。

「りょうちゃん大丈夫?」
「うん。大丈夫。でもごめん。僕はそのりょうちゃんじゃないよ」
「何言ってるの?その姿も声も私の好きなりょうちゃんだよ!私が間違える
はずないよ」
「そうかもしれないけど、その、僕の名前は麻倉晴一。苗字は一緒だけど
名前は違うんだ。それと、どうして僕がここにいるのかもわからなかくて、今
少し混乱してる」
「晴一?本当にりょうちゃんじゃないの?」
「ごめん。もしかしたら魂が入れ替わったとかなのかな?でも、ここは僕の
知ってる時間じゃないし」

そう考えていると凛が涼介に泣きついてきた。

「私のりょうちゃんをどうしたの?返して!私はりょうちゃんがいないと」
「ごめん。僕もどうしていいかわからなくて。それに!?」

晴一に泣きついていた凛が急に咳き込み、倒れ込んだ。それを見て晴一はすぐに
凛を保健室に運んだ。その保健室に場所もどうしてかわかっていた。
すぐにベッドに寝かせて、晴一はそこにいた保険の先生に凛の事を聞いた。
それには先生も驚いていたので晴一は自分の事を説明した。

「本当に君は別人なのか?」
「はい。どうしてかわからないんですけど、この体の元の人格では
ないんです。苗字や容姿は似てるんですけど」
「それを彼女が知って倒れたと。それは倒れるのもわからないではないな」
「すいません。どうしてこうなったのかもわからなくて。どうしたらいいのか」
「それなら元に戻る前では涼介、元の人格の様に振る舞うんだな。それが
彼女の為でもある」
「元の人格のように。そうですね。それで彼女が落ち着くならそうします。そう
しながら僕は元の世界?に帰れる方法を見つけます」

そうして晴一は凛が起きるまでそばにいて、凛が起きてから事情を説明し
凛を落ち着かせれる事ができた。それから凛も休みの時間に図書室で
晴一の状態の事が載っていないか調べたりしたが、手がかりはなかった。

そうしているうちにその日の授業が終わり、晴一も帰ろうとした時あの
めまいの様な感覚に襲われた。

そして同じように倒れ込み、しばらくして目を覚ますとそこは見覚えの
ある部屋だった。
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