俺がラスボスになった件

浅葱凍夜

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Dランクvs Dランク?

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職員室から教室に戻ると男子達がおらず女子達が着替えていた。楓が入ってきて声を上げるが
そこまで大声ではなかった。

「あ、朝霧君まさか覗きに?」
「いや、なんで着替えてるんだ?」
「次体育だからだよ。男子は皆着替えに行ったし」
「そうか。邪魔したな」
「ねぇ朝霧君」
「なんだ?」
「女の子の着替え見てなんともないの?」
「?着替えてるだけだろ。俺も着替えてくるから話しかけるな」

そう言って楓は平然と教室を出た。女子達は逆に少しざわついた。楓は容姿がとにかく
良いとクラス内だけじゃなく学園内の女子達にも話題になっていて、そんな楓に
なら見られたいと思う女の子も少なくないが、その本人はあの性格なので見せても
反応すらないので女子達はどうすれば気にかけてもらえるかを考える様になった。

更衣室で楓も着替えて体育館に向かった。授業が始まるが楓は壁にもたれながら座って
サボっている。他のクラスとの合同で、試合をしていた。しかし、楓のクラスも
相手のクラスも Dランクなので試合としてはそこまで大した感じではなかった。

「やっぱりこの程度か。せめてやる気のあるやつがいればな」

そうぼやいてるのは女性の体育教師である佐々木沙苗だ。褐色肌でジャージの上からでも
分かるほどの豊満な胸をしているが性格はきつい。この学校の平均ランクは低いので
彼女はそれをあげようとしているが、 Dランクになってしまった生徒はその時点でもう
あまりやる気がない生徒ばかりだ。だからこの学校もレベルが下がってきてしまっていた。

「さてと次は、お!こいつがいたか。朝霧出ろ」

楓が呼ばれたが本人は壁の方にいるので聞いてなかった。沙苗はそれを見つけ、楓の
前に行く。

「おい、起きろ。お前の番だ」
「なんですか?番って」
「見てなかったのか?試合だ。ちゃんと授業は受けろ。一年だろ」
「俺には関係ない。と言いたいが、流石に暇なんでな。仕方ないからしてやるよ」
「本当に生意気だな。まぁそれを治すのが私の仕事だからな。ほら早くいけ」

楓は立ち上がり、中央に向かった。その後沙苗は他のクラスから対戦相手を
選んだ。その相手は女の子だった。

「それじゃぁ始めるぞ。三組、朝霧楓、二組、霧沢亜美(きりさわあみ)試合開始」

沙苗の合図で試合が始まる。能力での試合は相手を倒すか負けを認めるかで勝敗が
決まる。組み合わせも男女別にはならず、男子対女子になることもある。

そんな試合は始まっているが、二人はまだ動いていない。相手の女の子、亜美も
様子をうかがってるみたいだ。楓もズボンのポケットに手を入れたまま動く
様子もないが、その楓から亜美に話しかけた。

「どうした来ないのか?」
「迂闊に行ったら消されそうだから。あなたの能力はテレビで見たわ。何の
能力からわからなかったけど。人が消えるなんてそんな危ない力に迂闊に
近づけないから」
「そうか。まぁあれは使わん。だから遠慮なく来な。暇だしな」
「わかったわ。じゃぁお願いね」

そう言って亜美が攻撃を仕掛けた。しかも Dランクとは思えない早さで。でも
楓もその攻撃を難な食い止める。その光景に他の生徒達が驚いていた。それは
沙苗も同じで、Dランクでこんな試合になるとは思ってなかったようだ。

「何なんだあいつら?本当に Dランクか?」

その言葉の通り、亜美と楓はすごい速さで戦っていた。

「風の能力か。どうりで早いわけだ」
「ええ当たりよ。でも、その私より早いなんて、あなた Dランクじゃないわね」
「いや、ちゃんと Dだ。成績は悪いからな」
「それは本当かしら。ちょっと見たくなったわ。少し本気で行くわね」
「お!」

亜美が手をかかげると体から風が巻き起こった。しかもそれはまるで台風の様な
形をして館内が暴風に襲われた。他の生徒達は飛ばされないようにしゃがんだり
していた。

「この力を止めれるかしら」
「どうかな。試しにやってみるか」
「じゃぁ行くわね。サイクロン」

亜美の攻撃が楓に襲い掛かるが直前まで避けようとはしない。それどころかその
風が楓に当たる前に押し返されていた。

「意外と強いな」
「やっぱり押されてる。もう少し強くするわ」

亜美が力を上げるがそれでも楓は動じず風を押し返す。

「あ、あいつらどうなってんだ?」
「先生、あの二人」
「ああ。あいつらは Dランクじゃない。あれはAランクだ」

沙苗達が驚いてる中、亜美が力を入れていくが楓には通じない。でも
さらに力を入れるとやっと楓にかすり傷を負わせた。

「お!ここまでになったか。じゃぁそろそろ消すか」
「簡単にはさせないわ」
「いや、させてもらうぞ」

楓はそう言って力を少し出した。するとその風がどんどん押し返され、ついに
亜美の手前にまで押し返された。亜美に命中する手前でその風が吹き飛んだ。
それに亜美も驚いて、動きが止まり、そこに楓が一瞬で現れ、亜美を押し倒した。

「ジ・エンドだ」
「そうね。私の負けよ。ありがとう久しぶりに力を出せたわ」
「お前も訳ありみたいだな」
「あなたもね」

楓は手を出し、亜美を起こした。とんでもない試合に他の生徒達はしばらく呆然と
していて、沙苗もこの後他の生徒に試合をさせる事はしなかった。その二人の事を
沙苗は後で学園長に報告をした。

放課後、楓はしばらく教室にいた。するとそこに亜美がやってきた。

「まだ帰らないの?」
「俺の勝手だ。何かようか?」
「少し聞きたい事があって。どこか行かない?」
「まぁいいが。俺はタダじゃ動かないぞ」
「そうね。じゃぁコロッケ一ついかが」
「?」

楓は亜美に連れられてとある店に入った。そこで亜美はコロッケを二つ買い一つを
楓に渡した。外に出て亜美はそれを食べる。

「これ安いけど美味しいよ。食べて見て」

言われた通り楓はコロッケを食べた。普段はこういうのは食べないので新鮮な感じ
だったが楓はそこまでではなかった。まずくはなかったが。
その後二人は公園に向かった。そこのベンチに座り、亜美が話しかけた。
色々聞こうとしたが、楓はそこまで話さなかった。亜美も全部を聞くきでは
なかったのでここまでにした。

「なんかあなたとはうまくやっていけそう」
「どうだかな。俺は誰とも仲良くなる気はない。俺が動くのは暇な時と」
「対価をもらう時ね。それでもいいからこれからも付き合いましょう。よろしくね」

亜美も楓のようにあまり表には表情を出さないが、この時は少し笑って手を出した。

家に戻り、楓はいつも通り家事をした。あそこまで自分に接してきたのは久しぶりと
思いながらその日は眠った。

翌日、学校で楓は先生に呼び出された。しかも担任ではなくこの学園の一番偉い人物
学園長にだ。楓は仕方なく行った。本来は入学式で見ているはずの学園長だが
楓は寝ていたので見ていなかった。部屋に入るとそこには体育教師の沙苗と座って
いる女性がいた。それがこの学園の長である三島たえだった。
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