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第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛
蟷螂生る 数多の悪戯湧きにけり
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やはりもう一人の裕子とセックスしたのは、不味かったみたいだ。朝晩のハグも、会話もしているが、普段の様に楽しそうにどうでもいい話をしなくなった。
火曜日の夜、裕子の所に夜這いに行って、ちゃん謝罪したが、それでも追い返された。
今日の金曜日も、裕子と夕食を一緒に食べようと、早めに帰宅したのに、ほとんど会話してこない。
普段なら、直ぐに機嫌が直るのに、一週間も機嫌が悪いとは、よほどのことだ。
私の浮気相手が、自分自身でもあるので、怒るに怒れず、ただ自分のなかに、怒りをため込んでいる状態の様に思える。なんとか彼女の怒りが収まる感動的な出来事を考えないといけないが、なにも思いつかない。
なにかないかと考えながら部屋に戻ろうとしていると、突然、来夢の部屋の扉が開き、私を中に呼び入れた。
初めて彼女の部屋に入ったが、飾り気のまるでない男の部屋のようだった。
壁や装飾も特に女性らしいものはなく、自分が貸したPCが机の上にでんと据えてある。
ベッドの上には、お風呂の準備なのか、パンティーとブラジャーとパジャマがそのまま出しっぱなしなっている。
「ここに座って」
下着を見られるのを全く気にしないみたいで、下着の横に座る様に指示してきた。
「お義父さんに、お願いしたいことが二つあるの。一つは、蛇口孝光さんのこと」
孝光と言う名前は知らないが、蛇口なんて、珍しい苗字の人間は、私の知る限り、横浜国大教授で、東大の同期のあの男しかいない。
呼び込まれた時は、例の調査の進展を訊きたいのだろうと思っていたが、彼女に初めて出会った時に、雑談した光ルーターの件だと理解した。
「ダッドの言ってたエバネッセントのルーター応用研究を、日電通の研究所で見つけたの。その研究者に、何度もメールしてるのに無視されて、先週、やっとメールが来た。社外秘なので見学や面会は一切できませんだって。で、その上司の蛇口さんにメールしたら、一昨日、丁寧な断り状が届いた。今はルータ研究をしていないし、日電通とも全く無関係なので、協力できないって」
「まさか、自分に、日電通の装置を見学させてくれるように、協力要請してるんじゃないよね」
「流石は、ダット。正解です。お願い、日電通の装置見学は無理でも、山田さん、今の日電通の研究者ね、その人と、直接面談させてもらえる様にお願いして貰えないかな。最悪、蛇口さん本人とでいいから。ねっ、お願い」
こんな可愛い美人の娘にお願いされたら、嫌と言える訳がない。
「仕方ないな、一応、頼んでみるけど期待しないでね。で、今までのメールを一式、転送して。それを参考に戦略を考えるから」
「分かった。で、もう一つ。ママと会わせて。ママと毎日会ってるって言ってたでしょう」
ママとは本音のエッチな裕子の事らしいが、それはできない相談だった。
「今の裕子じゃ、相談できないことなの?」
「だって、私と翔とを結婚させたがってるんだもの。ママはそんな事、考えてないから」
裕子が、無理に結婚させたがっていた理由は、ママ裕子のヒントから分った。裕子は、身寄りの無い安を、自分の子供にしようと奔走していたのだ。そこに、来夢が帰ってきて、安を好きだと気づき、結婚させる方針に切替えた。勿論、安と一緒になるのが娘の一番の幸せと確信しているからで、娘の気持ちを無視している訳ではない。
でも、自分もそうだったが、背景をしらないと誤解され、冷たい母親と思われてしまう。
「ちょって、下ネタまじりの下品な話になるけど、構わないかな」
来夢は、黙って頷いた。
「安の退院祝いの日、君がママに逢った日、裕子にママとの秘密を話してしまったんだ。毎晩、裕子が寝た後に、二人で話をしているって。そしたら、君のママが約束を破ったと怒って、それがたまらな可愛くて、お詫びの印にと、ママとエッチした。ママは、すっかり機嫌を直してくれて、その日もいろいろとお話できた。でも、裕子にとっては、それは浮気になるんだ。私が、君のママと知っててエッチしたのは、その日が初めてだったんだが、何度も浮気してたと誤解してしまって、どんなに説明しても信じてくれない。未だに絶縁状態なんだよ。だから、その後は、君のママとも会っていないんだ」
「じゃあ、裕ちゃんをレイプしちゃえばいいじゃない。きっと、裕ちゃんの機嫌も直るし、その後、浮気しなければ、ママとだって会えるでしょう」
嫌がる裕子を無理やり抱くなんて、したくはないが、何も打開策が見いだせない今は、名案のような気もする。裕子だって、単に、引くに引けない意地の張り合いになってるはずだから。
「今晩、隣の部屋で、うるさい出来事が起こるかも知れないけど、我慢できる?」
「ママにもう一度会えるなら」
「約束はできないけど、もし君のママに会う事が出来たら、君の部屋に行くように言っとくから」
ママを呼び出すには、裕子を意識朦朧となるまで行かさなければならないが、策はある。
それにしても、レイプしろなんて発想する来夢に呆れてしまった。
火曜日の夜、裕子の所に夜這いに行って、ちゃん謝罪したが、それでも追い返された。
今日の金曜日も、裕子と夕食を一緒に食べようと、早めに帰宅したのに、ほとんど会話してこない。
普段なら、直ぐに機嫌が直るのに、一週間も機嫌が悪いとは、よほどのことだ。
私の浮気相手が、自分自身でもあるので、怒るに怒れず、ただ自分のなかに、怒りをため込んでいる状態の様に思える。なんとか彼女の怒りが収まる感動的な出来事を考えないといけないが、なにも思いつかない。
なにかないかと考えながら部屋に戻ろうとしていると、突然、来夢の部屋の扉が開き、私を中に呼び入れた。
初めて彼女の部屋に入ったが、飾り気のまるでない男の部屋のようだった。
壁や装飾も特に女性らしいものはなく、自分が貸したPCが机の上にでんと据えてある。
ベッドの上には、お風呂の準備なのか、パンティーとブラジャーとパジャマがそのまま出しっぱなしなっている。
「ここに座って」
下着を見られるのを全く気にしないみたいで、下着の横に座る様に指示してきた。
「お義父さんに、お願いしたいことが二つあるの。一つは、蛇口孝光さんのこと」
孝光と言う名前は知らないが、蛇口なんて、珍しい苗字の人間は、私の知る限り、横浜国大教授で、東大の同期のあの男しかいない。
呼び込まれた時は、例の調査の進展を訊きたいのだろうと思っていたが、彼女に初めて出会った時に、雑談した光ルーターの件だと理解した。
「ダッドの言ってたエバネッセントのルーター応用研究を、日電通の研究所で見つけたの。その研究者に、何度もメールしてるのに無視されて、先週、やっとメールが来た。社外秘なので見学や面会は一切できませんだって。で、その上司の蛇口さんにメールしたら、一昨日、丁寧な断り状が届いた。今はルータ研究をしていないし、日電通とも全く無関係なので、協力できないって」
「まさか、自分に、日電通の装置を見学させてくれるように、協力要請してるんじゃないよね」
「流石は、ダット。正解です。お願い、日電通の装置見学は無理でも、山田さん、今の日電通の研究者ね、その人と、直接面談させてもらえる様にお願いして貰えないかな。最悪、蛇口さん本人とでいいから。ねっ、お願い」
こんな可愛い美人の娘にお願いされたら、嫌と言える訳がない。
「仕方ないな、一応、頼んでみるけど期待しないでね。で、今までのメールを一式、転送して。それを参考に戦略を考えるから」
「分かった。で、もう一つ。ママと会わせて。ママと毎日会ってるって言ってたでしょう」
ママとは本音のエッチな裕子の事らしいが、それはできない相談だった。
「今の裕子じゃ、相談できないことなの?」
「だって、私と翔とを結婚させたがってるんだもの。ママはそんな事、考えてないから」
裕子が、無理に結婚させたがっていた理由は、ママ裕子のヒントから分った。裕子は、身寄りの無い安を、自分の子供にしようと奔走していたのだ。そこに、来夢が帰ってきて、安を好きだと気づき、結婚させる方針に切替えた。勿論、安と一緒になるのが娘の一番の幸せと確信しているからで、娘の気持ちを無視している訳ではない。
でも、自分もそうだったが、背景をしらないと誤解され、冷たい母親と思われてしまう。
「ちょって、下ネタまじりの下品な話になるけど、構わないかな」
来夢は、黙って頷いた。
「安の退院祝いの日、君がママに逢った日、裕子にママとの秘密を話してしまったんだ。毎晩、裕子が寝た後に、二人で話をしているって。そしたら、君のママが約束を破ったと怒って、それがたまらな可愛くて、お詫びの印にと、ママとエッチした。ママは、すっかり機嫌を直してくれて、その日もいろいろとお話できた。でも、裕子にとっては、それは浮気になるんだ。私が、君のママと知っててエッチしたのは、その日が初めてだったんだが、何度も浮気してたと誤解してしまって、どんなに説明しても信じてくれない。未だに絶縁状態なんだよ。だから、その後は、君のママとも会っていないんだ」
「じゃあ、裕ちゃんをレイプしちゃえばいいじゃない。きっと、裕ちゃんの機嫌も直るし、その後、浮気しなければ、ママとだって会えるでしょう」
嫌がる裕子を無理やり抱くなんて、したくはないが、何も打開策が見いだせない今は、名案のような気もする。裕子だって、単に、引くに引けない意地の張り合いになってるはずだから。
「今晩、隣の部屋で、うるさい出来事が起こるかも知れないけど、我慢できる?」
「ママにもう一度会えるなら」
「約束はできないけど、もし君のママに会う事が出来たら、君の部屋に行くように言っとくから」
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