大好きだけど

根鳥 泰造

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第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛

入梅の窓の滴が頬流れ

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 これで漸く自慰できる。
 夜、早速出そうとしていると、ノック音がした。
 俺は慌ててパジャマを直し、「どうぞ」と声をあげる。
「入っても良いかしら?」
 やはり、来夢だった。シルクのパジャマ姿で、しかもノーブラらしく、透け乳が浮かんでいる。
 お風呂で、意味深な事を言ってきたので、そんな気もしていたが、本気だったみたいだ。

 俺が頷くと、大胆にもベッドに潜り込んできた。
「溜まってるのよね。下の世話に来ました」
「ちゃんと、意味は分かってたんだ」
「私を幾つだと思ってるの?」
 そう言って彼女は、パジャマを脱いで、パンツも脱いで全裸になった。
 俺も脱ぐことにしたが、寝ていると、左腕が曲げられないので、なかなか脱げない。
 来夢がパンツごと脱がしてくれた。
 いよいよ、その時が来た。そう思ったが、その前に確認しておきたい。
「ねぇ、俺ら、婚約してるって事で良いんだよね?」
「何、言ってんの。私は嫌って言ったでしょう。これは貴方へのお詫び」
 来夢はそう言って、俺のを咥えてきた。
「止めて」
「えっ」
「もう良い」
「分かった。そうよね。もうこんなに元気なんだから」
 来夢は、俺の意図を理解していないみたいで、騎乗位になって、結合しようとしてきた。
「いいから、何もしなくて。ここに来て話を聞いてくれないか?」
「えっ?」
 未だに俺の意図を理解してないみたいだが、胸のギプスに、彼女の乳房を重ねる様にして、横たわった。
 ちゃんと学習していて、腕に当たらない様に注意もしてくれた。
「俺、君の事が欲しいって言ったけど、君の心も含めて全てだから。身体だけが欲しい訳じゃない。身体だけの君なら、要らない」
「私は、あなたの事が大好きよ。でも私の会社はニューヨークなの。ニューヨークに帰らないとならない。だから、セックスはするけど、結婚はしない。そう決めたの」
「分かった。やはりデビットが好きなんだね?」
「なんで、そうなるの? 裸を見せ合って、キスまでしているのに、そんな愚問を言う? この間も言ったけど、彼とは本当に単なる仕事仲間。確かに、彼のハッカーとしての技術は尊敬している。でも恋愛感情は無いから」
「御免。でも俺は真剣に、君との結婚を考えてる」
「それはよく分かってるけど、御免なさい。私も翔のことが大好きだけど、私はあなたより仕事が好きなの。だから、結婚はできない。来週の日曜日に帰ることに決めた。でも、あなたとは遊びにしたくない。今日からの十日間、身も心も、あなたに差し出すつもり。その思い出を胸に、私は生きていくことにした」
「帰るって……。でも、来月、また帰省するんだろう」
「御免なさい。それもやめた。もうこの家には一生戻らないつもり。私はアメリカに永住して、アメリカ国籍を取るつもりなの」
 頭の中が真っ白になった。家族と絶縁してでも、アメリカに戻る覚悟をしている。ずっと悩み続けて出した結論なので、おそらく何を言っても、覆したりはしないだろう。
「御免、そんなこと言われると、俺、馬鹿だから分らなくなる。君としたい。でも、今日は帰ってくれないか? 下の世話は必要ない。俺は、純粋に、君の全てが欲しいだけだから」
「そう。じゃあ、今日は帰るね」
 来夢はベッドを降りて、パジャマを着て、「おやすみなさい」と笑顔を向けて出て行ったが、その目は潤んでいた。
 
 俺はどうすればいいんだろう。俺より仕事が好きだなんて言われたら、もうどうにもならない。
 婚約さえしてしまえば、遠距離恋愛となっても、彼女と結婚できると考えていたが、永住するなんて言ってきた。
 所長がいうように、俺もアメリカに渡り、便利屋稼業を始めるしかないが、英語も話せないし、経営の知識もまるでない。肝心な探偵業務だって、事前確認工程や最終確認工程もまだ全く任せてもらえない半人前だ。それに、昴システムは車社会のアメリカでは役に立たない。
 来夢を困らせたり、泣かせたりしてはならないのに、俺はどうしていいのか分からず、途方に暮れた。



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