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第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛
ラベンダー 母のまなこで子を見つめ
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最近の裕子は、何か変だ。
来夢をあの事件に巻き込みたくないと、あれほど言っていたのに、先々週の水曜日の夜、来夢に無理なハッキングさせると言い出した。さらに、もう完治してカウンセリングも不要になったからと、再び、私の寝室で朝を共に迎えるようにもなった。
先週の土曜日なんて、セックス日でもないのに、突然、抱いて欲しいなんて言ってきた。
もう一人の裕子に違いないと疑ったくらい、本来の裕子らしからぬ行動をしてくる。
もう一人の裕子に訊いても、その心境変化の理由を教えてくれないので、自分でその理由をかんがえるしかないが、その理由が全く分からない。
今日の退院祝いのパーティーもそうだ。
来夢が嫌がっているのに、無理やり、二人の婚約披露パーティーに仕立て上げた。
自分が、無茶なハッキングをさせた所為で、来夢が報復を受けることになり、安にあんな大怪我を負わせることになり、その責任を感じて、安の望む様にしてやりたいという意向は分かるが、娘の意志を完全に無視するなんて、裕子らしくない。
何が原因で、裕子らしくない行動をとらせているんだと、裕子を見ると、じっと来夢を心配そうに、注視していた。
さっきまでとは、打って変わって別人のようだ。
「お前、本音の裕子だろう」
「うん。流石、良く見てるね。裕子、自分でも何をしているんだろうと、集中が弱ってたから、でてこれたの。本当は彼女の中でも、激しく葛藤しているよ」
「やはりそうなんだ。で、来夢は、婚約を望んでないみたいだけど、どう思う」
「それを確認しに出てきたの。本人に聞いてみる」
裕子は、来夢に話し掛け、二人で部屋に戻ってしまった。
夕実も片づけを終え、子供の様子を見てくると、二階に戻り、安と二人きりになってしまった。
「安、結婚は相手の人生に責任を持つって事だ。お前にその覚悟が本当にあるのか」
「覚悟はあります。ですが、彼女はアメリカの会社の副社長なので、何をどうすればいいのか、まだ分かりません。ですが、彼女と一緒に生活したいし、彼女を幸せにしたいのは確かです。彼女は年齢差を気にしていて、仕事にも責任を感じていて、結婚に踏み切れないでいる。俺も、自分の未熟さを気にしていて、彼女の夫として相応しくないと負い目を感じている。それでも、婚約して遠距離恋愛していれば、二人で乗り越えられる気がしています」
「歳の差なんてのは気の持ちようだし、君が英語を習得し、アメリカに便利屋昴の支店を出せば、仕事の問題もなんとかなる。未熟の至らなさも努力してりゃ直ぐに埋まる。でも、そんなんじゃなくて、どうも来夢自身に、その気がないみたいに見えた。この間の今で、結婚を切り出すなんて卑怯じゃないか?」
「その通りです。でも、今じゃなきゃ、彼女は婚約に同意してくれない。卑怯でも今じゃなきゃダメなんです」
「ちゃんと分ってて、敢えてそうしたのら、私は何も言わない。早く一人で便利屋を運営できるほどの男になって、来夢を幸せにしてやってくれ」
「ニューヨークに便利屋昴の支店を開くなんて、全く考えていませんでしたが、一刻も早くそれを実現できるように頑張ってみせます」
その時、裕子が戻って来て、自分を呼んだ。
直ぐに、彼女の方に歩いて行ったが、既に本来の裕子に戻っていた。
「あの子、今度は、来夢を私から奪おうとしてるみたいなのよ。どうしよう」
「なにがあったの?」
「分らない。意識が戻ったら、彼女が泣いていたので、『安君は良い人だから、きっとあなたを幸せにするわ』って言ったのよ。そうしたら、『裕ちゃんなんて大嫌い。やっぱりママの方が良い』だって」
「じゃあ、今日、彼女に聞いとくよ」
「えっ。どういう意味」
「私ともうひとりの裕子との秘密だから」
彼女は、これで毎晩の密会を悟ったはずだ。裕子が、どう出るのか、たのしみだ。
そして、関係者全員を招集し、リビングのTVに私のノートPCを繋いで、安にこれまでの経緯や、来夢が、襲われるようになった理由をプレゼン形式で説明した。
来夢に説明した時は、ここまで仕上げることができなかったが、三十四枚にも及ぶ猿でもわかる広範囲な説明の超大作で、アニメーションや、動画も引用できるようにして、終わった時には拍手喝采。
安にも、しっかりと理解してもらえたらしい。
「今の俺では全く役には立てないかもしれないけど、是非、協力させてください。なんでもします。楯にも、囮にでも、何でもなります。協力させてください」
「調査経過の説明はしてやるが、今は足手まといだ。完治するまでは参加させない」
安は、想定通りの事を言ったが、磯川も、想定通りの回答を返した。
その後、磯川から、胸と左手のギブスが取れるまで、探偵業務はさせないが、通院日以外は、事務所に出て、事務仕事や、勉強をしろと、厳しい指導があった。
流石に、あと一週間ぐらいは、休暇を与えてもいいのではないかと思ったが、安の指導者は磯川だ。
その夜、もう一人の裕子から、来夢に何を言ったのかを訊くつもりでいたが、昨日、今日と、安の分を担当したので疲れていて、私が先に寝ることになり、訊けずに終わった。
来夢をあの事件に巻き込みたくないと、あれほど言っていたのに、先々週の水曜日の夜、来夢に無理なハッキングさせると言い出した。さらに、もう完治してカウンセリングも不要になったからと、再び、私の寝室で朝を共に迎えるようにもなった。
先週の土曜日なんて、セックス日でもないのに、突然、抱いて欲しいなんて言ってきた。
もう一人の裕子に違いないと疑ったくらい、本来の裕子らしからぬ行動をしてくる。
もう一人の裕子に訊いても、その心境変化の理由を教えてくれないので、自分でその理由をかんがえるしかないが、その理由が全く分からない。
今日の退院祝いのパーティーもそうだ。
来夢が嫌がっているのに、無理やり、二人の婚約披露パーティーに仕立て上げた。
自分が、無茶なハッキングをさせた所為で、来夢が報復を受けることになり、安にあんな大怪我を負わせることになり、その責任を感じて、安の望む様にしてやりたいという意向は分かるが、娘の意志を完全に無視するなんて、裕子らしくない。
何が原因で、裕子らしくない行動をとらせているんだと、裕子を見ると、じっと来夢を心配そうに、注視していた。
さっきまでとは、打って変わって別人のようだ。
「お前、本音の裕子だろう」
「うん。流石、良く見てるね。裕子、自分でも何をしているんだろうと、集中が弱ってたから、でてこれたの。本当は彼女の中でも、激しく葛藤しているよ」
「やはりそうなんだ。で、来夢は、婚約を望んでないみたいだけど、どう思う」
「それを確認しに出てきたの。本人に聞いてみる」
裕子は、来夢に話し掛け、二人で部屋に戻ってしまった。
夕実も片づけを終え、子供の様子を見てくると、二階に戻り、安と二人きりになってしまった。
「安、結婚は相手の人生に責任を持つって事だ。お前にその覚悟が本当にあるのか」
「覚悟はあります。ですが、彼女はアメリカの会社の副社長なので、何をどうすればいいのか、まだ分かりません。ですが、彼女と一緒に生活したいし、彼女を幸せにしたいのは確かです。彼女は年齢差を気にしていて、仕事にも責任を感じていて、結婚に踏み切れないでいる。俺も、自分の未熟さを気にしていて、彼女の夫として相応しくないと負い目を感じている。それでも、婚約して遠距離恋愛していれば、二人で乗り越えられる気がしています」
「歳の差なんてのは気の持ちようだし、君が英語を習得し、アメリカに便利屋昴の支店を出せば、仕事の問題もなんとかなる。未熟の至らなさも努力してりゃ直ぐに埋まる。でも、そんなんじゃなくて、どうも来夢自身に、その気がないみたいに見えた。この間の今で、結婚を切り出すなんて卑怯じゃないか?」
「その通りです。でも、今じゃなきゃ、彼女は婚約に同意してくれない。卑怯でも今じゃなきゃダメなんです」
「ちゃんと分ってて、敢えてそうしたのら、私は何も言わない。早く一人で便利屋を運営できるほどの男になって、来夢を幸せにしてやってくれ」
「ニューヨークに便利屋昴の支店を開くなんて、全く考えていませんでしたが、一刻も早くそれを実現できるように頑張ってみせます」
その時、裕子が戻って来て、自分を呼んだ。
直ぐに、彼女の方に歩いて行ったが、既に本来の裕子に戻っていた。
「あの子、今度は、来夢を私から奪おうとしてるみたいなのよ。どうしよう」
「なにがあったの?」
「分らない。意識が戻ったら、彼女が泣いていたので、『安君は良い人だから、きっとあなたを幸せにするわ』って言ったのよ。そうしたら、『裕ちゃんなんて大嫌い。やっぱりママの方が良い』だって」
「じゃあ、今日、彼女に聞いとくよ」
「えっ。どういう意味」
「私ともうひとりの裕子との秘密だから」
彼女は、これで毎晩の密会を悟ったはずだ。裕子が、どう出るのか、たのしみだ。
そして、関係者全員を招集し、リビングのTVに私のノートPCを繋いで、安にこれまでの経緯や、来夢が、襲われるようになった理由をプレゼン形式で説明した。
来夢に説明した時は、ここまで仕上げることができなかったが、三十四枚にも及ぶ猿でもわかる広範囲な説明の超大作で、アニメーションや、動画も引用できるようにして、終わった時には拍手喝采。
安にも、しっかりと理解してもらえたらしい。
「今の俺では全く役には立てないかもしれないけど、是非、協力させてください。なんでもします。楯にも、囮にでも、何でもなります。協力させてください」
「調査経過の説明はしてやるが、今は足手まといだ。完治するまでは参加させない」
安は、想定通りの事を言ったが、磯川も、想定通りの回答を返した。
その後、磯川から、胸と左手のギブスが取れるまで、探偵業務はさせないが、通院日以外は、事務所に出て、事務仕事や、勉強をしろと、厳しい指導があった。
流石に、あと一週間ぐらいは、休暇を与えてもいいのではないかと思ったが、安の指導者は磯川だ。
その夜、もう一人の裕子から、来夢に何を言ったのかを訊くつもりでいたが、昨日、今日と、安の分を担当したので疲れていて、私が先に寝ることになり、訊けずに終わった。
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