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第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛
彼の為と決めし深夜の風涼し
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救急車に乗って、翔に付いて行こうしたら、母に止められた。
「あなたは、シャワーを浴びて、着替えてから、お義父さん達と来なさい」
確かに服は血みどろ。それに、義兄さんとダッドに、お礼を言わなくちゃ。
「磯川さん、お義父さん、有難う」
「ありゃ、安のお手柄だ。公安も酷い手にでやがった」
「えっ?」
公安って、警察だよね。なんで、そんな酷い事をするの。
「あの藤峰の奴か、内調か、公安警察かは分からない。でも、政府が、君が凄腕のハッカーだと気付いて、ヤクザのチンピラを雇い、君を襲わせて、この件から手を引かせようとしたのは、確かみたいだ」
「この手口は、公安警察で間違いないと思うがな」
私の所為で安君が重傷になったっていうの?
感情は恐怖から怒りへと変わっていた。
家に戻り、服を脱ぐと、クビと胸に火傷の痕があった。
シャワーを当てると、沁みるように痛い。でも、安君の事を考えると、こんな泣き言は言えない。
居間に戻ると、皆が私を待っていた。
「そろそろ出かけよう。安が待っている筈だから」
車に乗り、隣の義父に聞いてみた。
「どうして分かったの? 私たちが襲われてるって」
「うちの固定電話に電話してくるのは、来夢しかいないって、裕子がでようとしたら、切れただろう。それで、何かあったと思ったみたいだ。一瞬、意識を失いそうになって、突然、飛び出して行ったんだ」
うちの固定電話は着信履歴も残らないけど、母は、ちゃんとわかってくれていた。
でも、あの時の母は、必死だったからだと思うけど、私の母とは思えなかった。
「なんか、裕ちゃん、普通じゃなかった」
「髪の毛掴んで、顔面、膝蹴りだもんな。流石の俺も、ビビった」
ダッドは、暫く悩んで、母の秘密を話し始めた。
「今まで、ずっと二人だけの秘密にしてたが、これからの事もあるから、話しておく。実は、年末のあの事件で、多重人格になってしまったんだ。素直で優しい本音の裕子と、気の強い頑張り屋の裕子。そして、さっきの凶暴な裕子。普段は、気の強い昔の裕子なんだが、その裕子の意志が弱まると、本音の裕子が目を覚ます。彼女とは、ここんとこ、毎晩会って、お話ししてる。ただ、もう一人の裕子は、どう言う時に発動するのか理解できていなくて、謎なんだ。私も今日で三回目。裕子が言うには、小学校五年生までの彼女らしい。なんとなくわかるが、小学校時、彼女は番長だったらしい。でも女性の身体になってきて、その彼女を自分で封印して、別人に変わったんだと言っていた。私も、二度、彼女に殺されそうになった」
二重人格と聞いていたのに、三重人格で、母がスケ番だったとは、知らなかった。でも、母が封印してきた三世代の母が、別人格として現れるのなら、分かるような気がする。
そして、もう一人の人格を、素直で優しい本音の裕子と言ってくれたのがとてもうれしかった。
母から、あの日封印したママなんだと聞いていたけど、エッチなことばかりしていて、会いたいとは全く思わなかった。でも、いつもニコニコしていて、優しかったママとなら、会ってみたい。
「俺は、二重人格って奴を、信じちゃいねぇんだ。医者は訳の分からん説明をして別人格だと主張するが、本人がこうなりたいと思い込み、演技してるだけだと思ってる」
「みんな、いろいろと言いたい事はあると思うが、今は安君の安否確認だ」
救急受付に行くと、母が待っていた。
「どうだ」
「右手が、予想以上に酷い状態ね。橈骨骨幹部粉砕骨折で全治三か月だって。そのまま手術しない方法も可能って話だけど、それだと半年以上掛かるて言うから、明日、手術して、プレート固定してもらう方で、お願いしました」
「頭は?」
「頭は凄い出血だったけど、脳は異常ないだろうって。一応、経過観察するみたい。あと肋骨が二本骨折。といっても、ひび程度。左腕は肘脱臼だけで骨折はしてないって。でもMRIで調べると靭帯が損傷していて、当分は絶対安静と言う話。最悪の場合には、後日、靭帯修復手術が必要になるかもって」
「まぁ、あれだけ腫れてりゃ、骨も逝ってるとは思ったが、粉砕骨折かぁ。やっかいだね、参ったわ」
「で安は?」
「ついさっきまで悲鳴を上げて、泣いていたけど、もう出て来るんじゃない」
「肘は脱臼したことねぇから判らんが、膝脱臼を入れる時は、俺でも泣いた。まぁ、脱臼だけなら、一週間もありゃ完治するが、靭帯損傷となると、これも厄介だね」
でも、当分の間、両手が使えない。着替えや食事やトイレも大変そう。
あれ? お風呂って、入れるの? 身体を拭くことしかできないのかな。
いろいろ調べて、私が、彼の面倒をきちんと見るから。
「あなたは、シャワーを浴びて、着替えてから、お義父さん達と来なさい」
確かに服は血みどろ。それに、義兄さんとダッドに、お礼を言わなくちゃ。
「磯川さん、お義父さん、有難う」
「ありゃ、安のお手柄だ。公安も酷い手にでやがった」
「えっ?」
公安って、警察だよね。なんで、そんな酷い事をするの。
「あの藤峰の奴か、内調か、公安警察かは分からない。でも、政府が、君が凄腕のハッカーだと気付いて、ヤクザのチンピラを雇い、君を襲わせて、この件から手を引かせようとしたのは、確かみたいだ」
「この手口は、公安警察で間違いないと思うがな」
私の所為で安君が重傷になったっていうの?
感情は恐怖から怒りへと変わっていた。
家に戻り、服を脱ぐと、クビと胸に火傷の痕があった。
シャワーを当てると、沁みるように痛い。でも、安君の事を考えると、こんな泣き言は言えない。
居間に戻ると、皆が私を待っていた。
「そろそろ出かけよう。安が待っている筈だから」
車に乗り、隣の義父に聞いてみた。
「どうして分かったの? 私たちが襲われてるって」
「うちの固定電話に電話してくるのは、来夢しかいないって、裕子がでようとしたら、切れただろう。それで、何かあったと思ったみたいだ。一瞬、意識を失いそうになって、突然、飛び出して行ったんだ」
うちの固定電話は着信履歴も残らないけど、母は、ちゃんとわかってくれていた。
でも、あの時の母は、必死だったからだと思うけど、私の母とは思えなかった。
「なんか、裕ちゃん、普通じゃなかった」
「髪の毛掴んで、顔面、膝蹴りだもんな。流石の俺も、ビビった」
ダッドは、暫く悩んで、母の秘密を話し始めた。
「今まで、ずっと二人だけの秘密にしてたが、これからの事もあるから、話しておく。実は、年末のあの事件で、多重人格になってしまったんだ。素直で優しい本音の裕子と、気の強い頑張り屋の裕子。そして、さっきの凶暴な裕子。普段は、気の強い昔の裕子なんだが、その裕子の意志が弱まると、本音の裕子が目を覚ます。彼女とは、ここんとこ、毎晩会って、お話ししてる。ただ、もう一人の裕子は、どう言う時に発動するのか理解できていなくて、謎なんだ。私も今日で三回目。裕子が言うには、小学校五年生までの彼女らしい。なんとなくわかるが、小学校時、彼女は番長だったらしい。でも女性の身体になってきて、その彼女を自分で封印して、別人に変わったんだと言っていた。私も、二度、彼女に殺されそうになった」
二重人格と聞いていたのに、三重人格で、母がスケ番だったとは、知らなかった。でも、母が封印してきた三世代の母が、別人格として現れるのなら、分かるような気がする。
そして、もう一人の人格を、素直で優しい本音の裕子と言ってくれたのがとてもうれしかった。
母から、あの日封印したママなんだと聞いていたけど、エッチなことばかりしていて、会いたいとは全く思わなかった。でも、いつもニコニコしていて、優しかったママとなら、会ってみたい。
「俺は、二重人格って奴を、信じちゃいねぇんだ。医者は訳の分からん説明をして別人格だと主張するが、本人がこうなりたいと思い込み、演技してるだけだと思ってる」
「みんな、いろいろと言いたい事はあると思うが、今は安君の安否確認だ」
救急受付に行くと、母が待っていた。
「どうだ」
「右手が、予想以上に酷い状態ね。橈骨骨幹部粉砕骨折で全治三か月だって。そのまま手術しない方法も可能って話だけど、それだと半年以上掛かるて言うから、明日、手術して、プレート固定してもらう方で、お願いしました」
「頭は?」
「頭は凄い出血だったけど、脳は異常ないだろうって。一応、経過観察するみたい。あと肋骨が二本骨折。といっても、ひび程度。左腕は肘脱臼だけで骨折はしてないって。でもMRIで調べると靭帯が損傷していて、当分は絶対安静と言う話。最悪の場合には、後日、靭帯修復手術が必要になるかもって」
「まぁ、あれだけ腫れてりゃ、骨も逝ってるとは思ったが、粉砕骨折かぁ。やっかいだね、参ったわ」
「で安は?」
「ついさっきまで悲鳴を上げて、泣いていたけど、もう出て来るんじゃない」
「肘は脱臼したことねぇから判らんが、膝脱臼を入れる時は、俺でも泣いた。まぁ、脱臼だけなら、一週間もありゃ完治するが、靭帯損傷となると、これも厄介だね」
でも、当分の間、両手が使えない。着替えや食事やトイレも大変そう。
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