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第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛
薔薇は棘 刺さるは覚悟 でも痛し
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目が覚めると、来夢が覆いかぶさるように、抱きついて泣いていた。
もうだめだと思ったが、なんとか拉致される事態は防げたらしい。
自分でも、来夢を守り抜けたと嬉しかったが、息苦しいし、腕が痛い。
来夢に悪気がないのは分かっているが、大きな胸で顔面が圧迫されて、腕ごと抱きついている。
「分かったから、そんな腕を強く押さえないでくれないか、意識がまた飛びそうになる」
「御免なさい。御免なさい」
来夢は本当に天然で、今度は、腕を勢いよく離した。
その衝撃で、右腕が地面に激突して、また激痛。
「安。良くやった。お手柄だ。両腕ともやられたので、当分、絶対安静で、飯もトイレも苦しいぞ。でも本当に良くやった」
「安、大事な娘を守ってくれて、有難う。君が時間稼ぎしてくれたから、間に合う事ができた。本当に有難う」
磯川部長と所長が、来夢の救出に来てくれていた。俺じゃ、全然かなわなかったが、奴らを蹴散らして、無事救出したらしい。
「こっちです」
裕ちゃんが、サイレンを切った救急車をひきつれて現れ、救急隊員が担架を持って駆けて来た。
俺は、「歩けるから」と立ち上がろうとすると、裕ちゃんは私の頭を手で押さえつけた。
「車から落ちた時、頭も強く打ってるの。そのままにしてなさい」
止む無く、担架に乗せられて運ばれることになったが、乗せる時に、また腕が担架の端に強くぶつかり、激痛が走り、散々だった。
付き添いは、来夢がよかったが、救急車に乗り込んで来たのは裕ちゃんだった。
「今、来夢の方が良かったのにって思ったでしょう」
不思議ちゃん発動だ。
「あの子は、一旦家に戻って、服を着替え、磯川さんの運転で、後から来るから。でも、本当に有難う。まさか来夢を狙って来るって、思わなかったのよ」
「えっ、俺が狙われたんじゃないの。あいつら、以前に見た事がある。山田組のチンピラだ」
「そうみたいね。磯川さんも、車の中に、山田組の代紋の付いた駐車許可証が有ったって言ってたから。でも、狙いは来夢。あの子に、私達の捜査から手を引かせるための嫌がらせが目的。もう二度と協力したくない、一刻も早くアメリカに戻りたい、そう思わせられればと言う暴挙だったみたい」
「何の事かわからない」
「着いたみたい。ここはみんな良い先生ばかりだから。家に帰れるようになったら、全て話す。今は、一刻も早く、身体を直してね」
そう言って、彼女が先に救急車をおり、僕もストレッチャーに乗せられて運ばれたが、裕ちゃんが、別れ際に、意味深な事を言ってきた。
「来夢は、貴方に任せるけど、あの子を悲しませたら、この程度で済まないから」
これって、俺の嫁にくれるという事?
腕がじんじん痛かったが、俺はもう痛みなんて、どうでもいい程有頂天になっていた。
もうだめだと思ったが、なんとか拉致される事態は防げたらしい。
自分でも、来夢を守り抜けたと嬉しかったが、息苦しいし、腕が痛い。
来夢に悪気がないのは分かっているが、大きな胸で顔面が圧迫されて、腕ごと抱きついている。
「分かったから、そんな腕を強く押さえないでくれないか、意識がまた飛びそうになる」
「御免なさい。御免なさい」
来夢は本当に天然で、今度は、腕を勢いよく離した。
その衝撃で、右腕が地面に激突して、また激痛。
「安。良くやった。お手柄だ。両腕ともやられたので、当分、絶対安静で、飯もトイレも苦しいぞ。でも本当に良くやった」
「安、大事な娘を守ってくれて、有難う。君が時間稼ぎしてくれたから、間に合う事ができた。本当に有難う」
磯川部長と所長が、来夢の救出に来てくれていた。俺じゃ、全然かなわなかったが、奴らを蹴散らして、無事救出したらしい。
「こっちです」
裕ちゃんが、サイレンを切った救急車をひきつれて現れ、救急隊員が担架を持って駆けて来た。
俺は、「歩けるから」と立ち上がろうとすると、裕ちゃんは私の頭を手で押さえつけた。
「車から落ちた時、頭も強く打ってるの。そのままにしてなさい」
止む無く、担架に乗せられて運ばれることになったが、乗せる時に、また腕が担架の端に強くぶつかり、激痛が走り、散々だった。
付き添いは、来夢がよかったが、救急車に乗り込んで来たのは裕ちゃんだった。
「今、来夢の方が良かったのにって思ったでしょう」
不思議ちゃん発動だ。
「あの子は、一旦家に戻って、服を着替え、磯川さんの運転で、後から来るから。でも、本当に有難う。まさか来夢を狙って来るって、思わなかったのよ」
「えっ、俺が狙われたんじゃないの。あいつら、以前に見た事がある。山田組のチンピラだ」
「そうみたいね。磯川さんも、車の中に、山田組の代紋の付いた駐車許可証が有ったって言ってたから。でも、狙いは来夢。あの子に、私達の捜査から手を引かせるための嫌がらせが目的。もう二度と協力したくない、一刻も早くアメリカに戻りたい、そう思わせられればと言う暴挙だったみたい」
「何の事かわからない」
「着いたみたい。ここはみんな良い先生ばかりだから。家に帰れるようになったら、全て話す。今は、一刻も早く、身体を直してね」
そう言って、彼女が先に救急車をおり、僕もストレッチャーに乗せられて運ばれたが、裕ちゃんが、別れ際に、意味深な事を言ってきた。
「来夢は、貴方に任せるけど、あの子を悲しませたら、この程度で済まないから」
これって、俺の嫁にくれるという事?
腕がじんじん痛かったが、俺はもう痛みなんて、どうでもいい程有頂天になっていた。
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