大好きだけど

根鳥 泰造

文字の大きさ
上 下
32 / 51
第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛

迎へ梅雨 相合傘の影重なり

しおりを挟む
 今日は、ディズニーランドに出かけるので、朝から安君と外出。
 でもあいにくの曇り空で、午後から雨の予想。
 私の心も、楽しいデートの筈なのに、曇り空。

 理由は、アメリカに帰りたくて、仕方がないから。

 私の研究開発の理論フェーズがなんとか終わり、実験検証したと切実に思っている。
 昨日、デビットにその意向を伝えると、今、戻るとFBIに捕まるし、今から実験を頑張っても、六月末の報告会には間に合わないだろうと、反対された。
 確かに、その通りだけど、数日捕まって監禁され、こってり説教されたとしても、それで実験できるようになるなら、それでもいいと考えている。
 でも、アメリカに帰りたい本当の理由は、安君とこれ以上一緒に居たくないから。
 嫌いになったのではなく、日に日に好きになっていて、このまま付き合っていくと、絶対に彼と離れたくないと思ってしまう。
 だから、彼と深い関係になる前に、アメリカに戻りたいのだ。
 勿論、彼とはセックスもしないし、キスもしないつもりだけど、彼に全てを捧げたいと思う自分も居る。
 今日は夜まで彼とデートするので、彼にホテルに誘われたら、断れる自信がない。

 昨日は、父の命日のお墓参りの日まで、ここにいると決めたけど、そんなに長い間、安君といれば、絶対に関係してしまうに決まっている。
 私は、フューチャーネットラボの副社長だし、研究開発は、私の人生そのもの。
 だから、ニューヨークには必ず戻るつもりだのに、安君の事が、単なる楽しい思い出とは思えなくなる。
 母が、ババの亡霊にとらわれて、ずっと再婚できなかったように、私は安君の亡霊にとらわれて、デビットに抱かるのを拒絶する気がする。デビットと上手く付き合っていく、自信がない。

 そうならないためにも、早くアメリカに戻りたいのに、今日もこうして、朝から安君とのデートにでかけてしまった。
 だから、私の心は、雨でも晴でもなく、曇り空なのだ。
 
 六月の平日ということもあり、アトラクション待ちの人も少なく、私達はいろんなアトラクションを満喫できた。
 この時だけは、素直になれて、安君とのデートを満喫できる。
 スペースマウンテンを二連続で乗ったら、安君が気持ち悪いので休ませてくれと言ってきて、乗り物酔いする人だったんだと、彼の意外な面も知ることができた。
 買い物も沢山して、本当に楽しく、今日を思い出にして、このまま、さよならしたい気分。
 でも、雨が降り始め、彼に肩を抱かれて引き寄せられて相合傘したらもうだめ。
 彼とふれあい、彼の匂いもしたので、アソコが疼き出し、彼に抱かれたくなってしまった。
 彼とは何もなく別れると決めているのに、本当に情けない。

 雨が強くなってきたので、少し早めに出て、夕食を食べることにした。
 安君はもんじゃ焼きを食べたことが無いという話だったので、月島にでて、彼にもんじゃ焼きをご馳走することにした。
 餅明太子と、豚チーズと、キムチ焼きそばの三種類のもんじゃと、ビールとを注文し、先ずは、私が作りからの見本を見せてあげた。
 二つ目は、安君が作るというので、「美味しく焼くのは難しいのよ」というと、「要は、最初に細かく切り刻んで、それで土手を作るのがコツなんだろう」と一発で見抜かれた。悔しいので、「それもあるけど、それぞれの寝かせる時間がその美味しさを決めるのよ」とか言ってやったら、訝しがられた。
 その時、大失敗。鉄板の上に、小手をおいたままにして、火傷してしまった。
「大丈夫か」安君がこっちにやって来て、私の指をしゃぶってきた。
「天然ちゃんでもいいけど、怪我するなよな」とまた天然だと言われ、悔しかったけど、私は、もう彼に抱かれたくておかしくなっていた。
 早く、アメリカに帰らないと、絶対に彼を忘れられなくなってしまう。

 安君は、三種類とも、とても気に入って満足してくれ、私も満腹だったけど、デザートとして、月島名物のあんこ巻きも食べさせてあげることにした。
 今日は、少しリッチに、一度も注文した事がない、いちごアイスあんこ巻きを注文した。
 あんこ巻きは、お店の人に目の前で作ってくれるのだけど、これはあんこ巻きの中でも絶品だった。
 安君も美味しいと感激してくれ、このお店に連れて来てくれてありがとうと、感謝してくれた。

 そんな訳で、更に彼に、東京湾の夜景を見せてあげたくなったけど、そのまま帰ることにした。
 あんな素敵な夜景を二人でみると、絶対にキスすることになり、そのあと自然な流れで、ホテルにいくことに決まっているから。

 けど、それでも駄目だった。
 石神井公園に着いた時は、雨もやんでいたので、少し遠回りして、公園を散歩することになり、その途中でキスしてしまった。
 彼が突然、私の肩を掴んで正面から私を見つめてきて、私はつい了承するかのように、目を瞑ってしまったのだ。
 その時の彼の心臓は、信じられない程高鳴っていて、まるでファーストキスかのよう。
 先週も童貞じゃないアピールしてきたけど、叔母さんとは未遂だった筈だし、もしかして本当は童貞なんじゃないと思ってしまう程。
 でも、ちゃんとした恋愛をしたことないだけだったみたい。
 キスすると直ぐに狼になっていて、勃起したアソコを押し付けて、私のお尻を揉み、舌を入れようとしてきた。
 私も興奮していたので、舌を絡め返しても良かったけど、「姉弟同士は舌なんていれないものよ」と必死に自制して、押し返し、拒絶した。
「御免」と直ぐに謝って申し訳そうな顔をした彼を見て、私はもう二度と拒絶できないなと悟った。
 
 私は、これからどうすればいいんだろう。
 その夜、私は枕を抱えて、悩み続けた。
 安田翔とセックスしたいけど、今すると、もう彼とは遊びという訳にはいかなくなる。
 翔との思い出を、胸に抱いて、一生、独身で生きていくのも悪くないか。
 そんな結論の出ない不毛な葛藤に捕らわれて、私はその夜はいつまでも寝むれない時間を過ごすことになった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私と継母の極めて平凡な日常

当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。 残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。 「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」 そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。 そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

兄の悪戯

廣瀬純一
大衆娯楽
悪戯好きな兄が弟と妹に催眠術をかける話

処理中です...