大好きだけど

根鳥 泰造

文字の大きさ
上 下
29 / 51
第三話 真っ直ぐな愛と歪んだ愛

苺ミルク 匙で潰して冷たい目

しおりを挟む
[六年以上も前の作品の書下ろしなので、渋谷・原宿は今とかなり違いますが、あしからず]

 昼食の後、買い物と称し、安君と原宿にデートに出かけた。

 買い物は、石神井公園でも、池袋でもよかったんだけど、昨日の夕食の時、「どこに買い物に行くの?」と義姉に訊かれ、原宿と応えていた。
 折角、若い子が一緒なんだから、十年振りに原宿に行きたいと思ったのだ。
 安君は、それを聞いていたみたいで、今朝は、事前に、ネットで調べてくれていた。
 けど、ラブホに関しては、余計なので、変な気を起こさない様に、釘を刺しておくことにした。
「安君って、一人っ子なんですってね。私も一人っ子。弟が欲しかったんだ。私をお姉さんだと思ってね」
 彼の事は、弟はどうしても思えないけど、こう言っておけば、ホテルに誘ったりはしない筈。
 今日は、紫のレースの勝負下着を身に付けているけど、それは下着が二着しかないだけで、これっぼっちもする気はない。

 今日の安君は、私ばかり見てくれるので本当にうれしい。それに私の事を未来みきからいろいろと訊いたみたいで、私の好物や趣味なんかも知っていて、やはり私の事が好きだったんだと知れて、嬉しかった。

 西武線の電車の中では、ダッドの話で盛り上がった。
 未来から、腕相撲の話を訊いたと切り出したら、彼が熱弁を振るい出した。
 安君も、義父の事が大好きみたい。
 いつもは、無口で聞き上手な子だけど、磯川さんやダッドの事になると、たちどころに雄弁になる。
 無口の彼も、雄弁な彼も、イケメンなので、どっちも良い。
 彼と二人で話しているだけで、とても幸せな気になれる。

 原宿駅を降りて竹下通りに向かう入口の喫茶店で、早々に休憩。だって、デートがメインだから。
「ねぇ、自分の家で、ノーパンで過ごすのって、別に恥ずかしい事じゃないよね。お義父さんに怒られちゃった」
 彼は、普通じゃ無いと思ってる様で、大人の対応で笑って、否定も肯定もしなかった。
「私の知り合いにも、ノーパン、ノーブラの子いるし、ノーブラの人って意外に多いよ。裕ちゃんは、バストが垂れるっていって、ブラは必ず付るよう躾られたけど」
「家ではノーブラの女性って、そんなに多いの?」
「多いよ。半分以上はノーブラ。彼氏が来るときは勝負下着をつけるけどね。いゃっ、失敗しちゃった。甘くて、飲めない」
 私は、話に夢中で、ガムシロップを二つも注いでしまった。
「俺、甘等なので、変えて上げるよ」
 彼は、手を付けてないアイスコーヒーと交換してくれ、ストローを差し替えた。
 どうせなら、間接キスできる状態で交換して欲しかったけど、そんな贅沢は言えない。
「実は、俺も知ってた」
「なにを? 裕ちゃんがノーパンってこと?」
「腹筋の時、頭がかなり低くなるだろう。裕ちゃんがくるりと回った時、スカートが開いて、生尻が見えた」
「やっぱり、みんな気づくよね。ダッドたら、私が悪者みたいに言うんだもの」
 彼は、それは空気を読めよ、とばかりに、苦笑いした。
「男にはわからないかもしれないけど、女性の身体って、大変なのよ。生理日じゃなくても、凄く下り物が出る日があったり、大丈夫と思ってても、パンツがぐちょぐちょになっちゃったり。下り物シートやナプキンなんかつけてると、通気が悪くてかゆくなったりするの。だから、ノーパンは合理的でいいと思う」
「男でも、汗かくと、かゆくなるから、少し分る」
「でしょう。それに、母は年明けごろ、触覚過敏症になって、服も下着も着て入らない状態になったの。脳障害の薬と、女性ホルモンを押さえる薬との飲み合わせが悪かったみたいで、一時は全裸じゃないとまともに生活できない状態だったんだって。今の内緒だから。聞かなかったことにしてね」
「それでノーパンなんだ。不思議ちゃんの理由が分かって、むしろ感謝してる」
「何、その不思議ちゃんて」
「あれ、知らない? 理解できない行動ばかりする子」
 義父も私も、母の行動原理が理解できるから、不思議な行動とは思わないけど、確かに、普通の人から見ると、理解できない様に映るのかも知れない。
「脳障害の薬って言ってたけど、意識が戻ってからも何かあったの」
「私も、ダッドから聞いただけでよく知らないけど、とんでもなかったらしいの」
 こんなこと言うべきではないとは思ったけど、彼に訊かれたので、つい調子に乗って、不器用症候群でのお漏らしして、おむつ生活していた話や、注意障害で自制できなくなって、とんでもない淫乱になった話をしてしまった。
 安君は、本当に聞き上手で、相槌だけでなく、突っ込んて質問してきたりするので、義父からは、絶対に内緒と言われていた二重人格になってしまった話も、彼にしゃべってしまった。
「実は、裕ちゃん自身からその話は聞いてるし、実際、エッチな裕ちゃんに会ったことがある。本人は全く覚えていなかったけど、夜、ノーブラのネグリジェ姿で、俺の部屋に来た」
「本当。まさか母と関係してないよね」
「勿論、社長にそんなことするわけないだろう。俺のを見たかったみたいで、見るだけ見て、貶して帰って行った」
 母がそんなことをしたなんて、信じられないが、母の話が本当なら、それは私のママと言う事になる。
 未だに、自慰迄して誘惑したエッチな裕ちゃんが、あのママだとは思えないけど、確かに家では、ハグして濃厚なキスをしていたところを何度も目撃した。
 夜の事は知らないけど、「パパが夫婦の寝室を作らなかったから、別々に寝てるのよ」と愚痴をこぼしていたことがあった。きっと、相当に激しく、毎晩のように求めてきていたということなのだろう。
 そんなママなら、そんな大それたことも、平気でするかもしれない。

 それに、母は、パパとダッドの二人としか男性経験がない。二人のアソコの大きさが、全く違ったので、皆のがどのくらいなのか、興味が湧いたとしてもおかしくない。
 私も、初めてダニエルのを見た時、こんなにも大きさに違いがあるのかと、驚かされた。
 私は、それで男性器をいろいろと見てみたいとは思わないけど、ママは、それで興味を抱いたに違いない。
 未来みきの旦那のも確認しようとしたみたいだし、義兄のもしっかり見て確認していた。
 とはいえ、好きな男に抱かれたいと大胆な行動をとるのは、私も同じ。好きな男に抱かれたいと、毎回デビットのをフェラしてあげた。

 喫茶店を出てから、一番に下着の調達に、竹下通りのランジェリーショップに入った。
 ラブホ検索していたお返しに、無理やり連れ込んで、虐めようかとも思ったけど、「一緒に入る?」と彼に選ばせてあげた。ラブホに誘うつもりの男なら、一緒に入る可能性もあるかなと、少し思っていたけど、外で待つと言ってきた。
 パンツはあと四枚は必要で、予備パンツも必要なので、ナイトブラも購入し、上下を五つずつ購入。
 そのあと、ダイアナで靴を三足、洋服やズボン、スカート、トレーナー等、いろんな店で全部で九着まとめて購入した。
 靴三足は、流石に嵩張って持ちづらそう。でも、そのための荷物持ち。
 全部、安君に持たせて、表参道に向った。

 途中、ベン&ジェリーズでアイスクリームを奢ってあげた。
 彼はB&Jは初めてだったみたいで、ハーゲンダッツは女性っぽい濃厚なアイスで、こっちは男っぽいアイスと評していた。彼の口には、合わなかったみたい。

 そのあと、表参道を右折して、青山通り沿いに渋谷に向かい、カラオケ館に入った。
 NYにもカラオケはあるが、一緒に行ってくれる人がいないので、五年振りのカラオケ。
 装置も、採点機能なんかも付いていて、知らない内に進歩していた。
 でも、一回りも齢が違うと、世代ギャップを感じる。私の好きな『ラブ・ラブ・ラブ』や『ロマンスの神様』を知らなかったのだ。あんなに有名な歌を知らないなんて、流石にショック。
 それでも、二人で、『さくらんぼ』や、『オレンジ』を歌い、楽しい時を過せた。

 すっかり恋人同士みたいになれたので、食事も一緒にしたかったけど、「夕食の時間までには帰って来なさい」と釘を刺されていたので、仕方なく帰路についた。

 帰りの電車の中では、それまで聞いても話してくれなかった不良していた時の話を、少しだけ、話してくれた。そんなことまで話してくれたことが、とても嬉しかった。
 でも、「来夢さんて、天然で楽しいから、またデートしたい」って何。夕実さんは天然だけど、私のどこが天然なのよ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

三日月の夢

便葉
ライト文芸
心の奥底に眠る深く切ない家族の物語…

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...