大好きだけど

根鳥 泰造

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第二話 ライムライトの灯

三日の湾岸線 横顔の母くすり

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[この小説は、六年前に投稿した小説の書きおろしてのため、羽田がすっかり変わっているとか、少し違和感を感じるかもしれませんが、ご容赦下さい]

 来夢が、年末に帰ってきた時、やたらとあの人の事を毛嫌いしていたので、もしやと言う気はしたものの、そんなはずはないと、自分に言い聞かせた。
 だから、昴さんとのキスやセックスの話も聞かせ、男がいると幸せだよと訴えかけた。
 ワーキングレディであっても所詮は女。好きな男が傍にいるのが、一番の幸せなのは間違いないもの。

 でも、一緒に生活していると、最初の時の予感が正しかったと分かった。
 あの子には、少し悪いことをしてしまった。傷心の身で、人の惚気話を聞かされる程、嫌な事は無い。
 今日は、彼女に「惚気話なんかして、ごめんなさいね」と謝るつもり。

 でも、誰でもいい。あなたを愛してくれ、心から身を預けられる人を見つけ、早く結婚してほしい。失恋の一つや二つ、気にする必要はない。最終的に幸せになれれば、それでいい。

 彼女の乗る便は、成田ではなく、十時二十分の全日空羽田発との事だったので、私が車で送っていくことにした。

 いつものように私が昴さんにハグすると、続けてあの子が「お義父さん、母をよろしくお願いします」と、彼にハグしたのは印象的だった。
 昨日、二人の間に何があったのかは知らないけど、もう昴さんを私の再婚相手としてではなくなく、父親と見ていくれているという証拠にほかならないから。

 車中でも、「本当に、正直で、優しくて、いろいろと知ってて、良い人だね」と言ってくれた。
「あの人の事、ずっと見続けてるけど、未だに測りきれないの。とんでもない底なしの人だから」
「どういう意味」
「海のような感じ。綺麗に見えたり、汚く見えたり、戯れて楽しかったり、しょっぱかったり、優しかったり、厳しかったり、どこまで潜っても、その先に未開の神秘が眠っている」
「でも、必要不可欠の生命の源なんだ」
「そんな大げさなものじゃないけど、私は本当に幸せだと思ってる。それだけは本当」
 それから、暫く、未来と武生の話をしているうちに、首都高速湾岸線に来てしまった。
 まもなく、羽田についてしまう。来夢に、謝るには今しかない。
「あなたが帰ってきた理由に、気づかなくて御免なさいね。あんな惚気話なんかして、母親失格よね」
「えっ」
「あの人が言ってたの。来夢は私の娘なんだから、自分で乗り切るって。ただ傍で温かく見守っていれば十分だって」
「やっぱり、皆、分ってたんだ」
「何の事?」
「なんでもない」
 二人で、くすくすと笑ったが、あの子の目が少し潤んでいた。

 空港では、日本でのお土産を二人で仲良く選んだ。
 羽田には暫く来ていなかったけど、すっかりおしゃれな店が沢山並ぶターミナルになっていた。
 少し早く着きすぎたけど、店を見て回ると、時間はあっという間に流れた。
「じゃあ、今度は、三月二日に戻ってくるから」
 三月二日は、未来と武生との結婚式。
 私たちもその前に入籍を済ませておきたいけど、その前にしておかなければならないことがある。
 昴さんに、仕事についてもらうという責任重大な任務。
 彼は偏屈なので、一体どうなる事やら。

「無事ついたら連絡するのよ。それから、二週間毎の定期連絡、忘れないでね」
「はい、はい」
 彼女は、搭乗ゲートを潜った先で、振り向いてこっちにもう一度手を振ってから、行ってしまった


 その日の夜、私は夜伽に行くか、迷っていた。クリスマスイブにして以来なので、もう十日が経つ。
 少し前なら、何か月も自慰しなくても平気だけど、あの日、昴としてから、私の色欲が異常に増して、一週間しないとイライラし始め、激しい欲求不満状態に陥る様になってしまった。
 これもきっとあの運命が私達に課した業の一つだと思うけど、私のアソコは疼きどおし。
 でも、来夢が帰ってきた日、「あなたが運命で私の事を抱いたと思っているなら、今後一切、セックスはしません」と宣言してしまった以上、彼の部屋に私から行くわけにはいかない。
 でも、したい。来夢を言い訳にして、抱かれにいこうか。
 そんなことを考えていると、昴も欲求不満だったのか、彼からノックしてきた。

「何か用?」何も言わずに迎い入れるべきなのに、昴の顔を見ると、素直になれない。
「いや、来夢ちゃんが、自分のこと、父親と認めてくれたかのかなって」
「車の中でも、良い人だと言ってたし、合格点を貰えたみたいよ。それで何?」
「いや、それならいいんだ。それじゃあ、風呂に入ってくるから」
 パジャマになってるってるってことは、もうお風呂から出てきたということだのに、彼も素直じゃない。

 そして、数分して、今度は腰にバスタオルを巻いて現れた。
「今度は何?」
「いや、夜のハグをしてないんじゃないかって思って」
「ちゃんと、私がお風呂に入る前にしたでしょう。お休みなさい」
「ああ、おやすみなさい」
 きっと謝って来ると確信しての発言だったのに、彼は寂しそうにドアを閉めて出て行った。
 私は、少し意地悪し過ぎたかなと思って、彼に部屋にいこうと決めたら、またノック。
「今度は何?」
 私は、ドアをあけた彼の恰好を見て、思わず噴き出してしまった。
 アソコを勃起させ、バスタオルをそこに掛けていたのだ。
「何してるの、もう。したいなら、したいと素直に言いなさい」
「最初の時も、今も、裕子を抱きたくて、こんなにビンビンになってます」
 もう、六十三歳だというのに、本当に子ども。
「なら、抱かせてあげるけど、一つだけ条件を聞いてくれる。私、貴方に仕事して欲しいの」
 私は、以前から考えていた思い出の品の修理を売り物にした便利屋の仕事を彼に提案した。
 嫌だと断ったとしても、私もしたいから、セックスするつもりだけど、彼も凄く私としたかったみたいで、真剣に考えてみるよと言ってくれた。

 それからは、十日ぶりの熱いセックス。
 私もする度に若返るけど、彼もますます元気で、新年最初のセックスは今まで最高の快感の嵐に包まれた。

 昴とも仲直りになれたし、今年はいい年になりそうな予感で一杯だった。

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