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第一話 蜘蛛の糸見つけた
野草にも蕾 一陣の青嵐
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ゴールデンウィークになり、都会は人が少なくなったが、便利屋昴は休みなし。
でも、俺はこうして、働かせてもらっているだけで、感謝している。
働き始めて、二か月しか経っていないが、捜査対象の住まい特定に関しては、俺が最も沢山熟すようになっている。
磯川部長も所長と同様に一日一件程担当するが、今は、事前確認を集中的に担当している。
今日も、俺は二件を担当する。
午前中は、元住吉の訊込み調査だ。まずは、バス利用の有無を確認してまわる。
幸い、バスの運転者は誰も彼女を見た者はいなかったので、駅前商店街を廻って、情報を入手し、それを分析整理して、調査を広げる方向を決め、絞り込んでいく。
予想以上にスムーズに進み、十一時半頃には、関東労災病院手前のアパートに捜索対象を特定できた。
俺は、そのまま午後の予定の府中本町に移動した。
そして改札を出た時だった。
「安じゃねえか」
竜王会の先輩三下ヤクザの杉山に声を掛けられた。
「こんにちは、ご無沙汰しています」
普段、哲と呼ばれているが、あまり親しくないので、杉山哲なのかも定かでない。
服装もセンスなく、如何にもチンピラ丸出しで、健さんの洋服の趣味と似ている。
因みに、今日の俺の洋服は、裕ちゃんに買ってもらった三ピースのスーツだ。
今はもう俺とは住む世界が違う。正直、もう関わりたくなかった。
「お前、足洗ったんだってな、そうだ飯、まただろ。昼食べながら聞かせろや」
仕事中なのでと断ろうと思ったが、時間は昼の少し前なので、無理がある。
止む無く、先輩について、駅前ラウンドワン内にある海鮮居酒屋に入った。
「どんな仕事をしてんだ」
「便利屋の見習い。探偵の真似事」
「へぇ、結構、いかした仕事してんじゃねぇか。よく雇ってもらえたな」
「元ヤクザと知ってるのに、みんな普通に接してくれるいい職場だ」
「みんな、お前の正体知ってんのか」
店員がやってきたので、杉山は「ビール二つ」と注文したが、午後も仕事があるからと断り、ウーロン茶と鮭親子チャーハンを注文した。
三下格はいつも金欠で、あまり金に余裕がある訳ないのに、沢山の単品料理を注文した。
集られるなと覚悟したが、この程度なら払える。
結局、俺にも食え食えと進め、俺の方が多く食う羽目になったが、ほぼ一時間目いっぱいかけて、平らげた。
杉山さんの目的は、足を洗ってから、ちゃんと生活できているかの心配と、俺の事務所に、若い女の子が居れば紹介してもらおうという魂胆だったみたいだ。
わずか五人の事務所で、女性は妊婦さんと五十八歳の美人の二人と知ると、その後は、自分の話ばかりしていた。
結局、一時十分まで、昼休憩を取る事になってしまったが、俺が堅気として頑張っているお祝いだからと、全額奢ってくれた。
嫌な先輩だと思っていたが、自分の堅気での生活を、本当に心配してくれていたのだと、少し嬉しかった。
午後の捜索対象は、バス利用者だと分かったが、そのバス運転手はどこで乗降しているかを覚えておらず、他の運転手に訊いて回ったが、やはりどの停留所かは特定できなかった。
これは、コンビニに頭を下げて回る最悪パターンになるかと思ったが、タクシー運転手の一人から、一昨日の終電時に、彼を家まで乗せて行ったと言う情報を幸運にも入手できた。
これは磯川さんから教わった裏ワザで、他にも、イベント参加者リストなんかからも情報を入手できることがある。だが、裏ワザは、ほとんど空振りに終わるのが普通で、今回は本当に幸運だった。
そのタクシー運転手のお蔭で、無事、午後の住所特定もでき、閉店前の四時頃には事務所に戻る事ができた。
だが、ヤクザは素直に堅気復帰を喜んでくれるような人種ではなかった。
俺が今日の報告書をまとめていると、あの先輩ヤクザの杉山と、その兄貴分にあたる加治木さんが、二人で、事務所にやってきたのだ。
つい名刺を渡してしまったのが、失敗だった。
杉山は、午前中と同じチンピラ風の格好だが、加治木さんはきちんとスーツを着ていて、大人のヤクザの出で立ちだ。
「いらっしゃいませ」
未来ちゃんが、来客と間違えて挨拶したが、ヤクザと気づいた様で、あわてて社長を呼んだ。
こんな時は、磯川部長がいてくれると、心強いが十六時帰社予定なのに、捜索に手こずっているようで、まだ、戻って来ていない。
「いらっしゃいませ、どのようなご用でしょうか」
裕ちゃんは、未来ちゃんに代わり、二人の応接を買って出た。
「安に用があって、寄らせてもらった」
「では、あと十分程、こちらでお待ちください。今は仕事中ですので」
「そこに、居るじゃねえか。おい、安」
「安君、そのまま、報告書をまとめて」
立ち上がった俺を制するようにして、今度は兄貴たちに、話し掛けた。
「大声出さないで下さい。来客中です。それとも営業妨害で来られたのかしら。それなら警察を呼びますよ」
「このアマ、犯すぞ」
杉山が大声でおどしても、彼女は毅然としている。さすがは社長だ。
「やめろ。しばらく待たせてもらおう」
加治木さんはソファに腰をおろし、杉山もそれに従った。
奥で接客中の所長の方を見ると、お客様に「心配ありませんから」と、ペコペコと頭を下げていた。
接客は、まだまだ、掛かりそうだ。
裕ちゃんは、未来ちゃんにお茶の準備を指示してから、彼らの前に腰かけた。
聞耳を立てたが、何を話しているのかは、俺の席からは分らない。
そうこうしている内に、五時になった。
所長の接客は、まだ終わっていないし、部長も未だに戻ってこない。どうしよう。
そう思っていると、奥から、加治木さんの声が聞こえた。
「安、仕事は終わりだ。こっちに来い」
俺は、奥のソファに行って、「ご無沙汰しています」と挨拶した。
「安君、確認したいことがあるの。ここに座って」
彼女の隣に座れと言われた。
「今、加治木さんに話を伺いましたが、あなた、ヤクザを辞めていないって本当ですか?」
「兄貴が、健の兄貴が、上と交渉してくれて、もう堅気になってると言っていた」
「やはり、安君はヤクザを卒業したと言っておりますが」
「あのね、姉ちゃん。この世界は、そんな簡単に出入りできない世界なのよ。昔は組を抜けるときは、指を詰める覚悟が必要だった。まぁ、今はうちも会社なんで、そんな野蛮な事はしないが、止めるにはそれなりの誠意が必要なのよ。誠意。わかる?」
「辞表を書いて、頭をさげて、辞めさせてくださいとお願いすると言うことかしら」
「舐めんじゃねぇ」
「やめろ。姉ちゃんも、分ってるくせに、冗談は良くない」
裕ちゃん、ヤクザ相手に挑発はまずいよ。今は、来客中だから、抑えているけど、切れると本当に不味いことになる。
加治木さんは、身を乗り出して、彼女に顔を近づけ、睨みをきかせた。
でも、裕子さんは、まったく脅えることなく、その位置関係のまま、笑顔を崩さない。
「足抜けには、お金が必要ってことですか。それはおかしいです。健さんが、上の方に掛け合って、堅気になる承認を得たのなら、その時点で、彼は堅気の身です。もう一度、足抜けのルールに従って、お金を払えって言うのはおかしいです」
加治木さんは、呆れたと言う仕草を見せて、深く座りなおし、足を組んだ。
「社長さんなら、契約は詳しいよね。姉ちゃん、勘違いしてるよ。契約は、健が鉄砲玉になる代わりに、安を堅気に戻すと言う条件だ。つまり、相手を仕留める事との交換なんだよ。わかる。仕留められなきゃ、契約不成立」
まだ、健の兄貴が鉄砲玉になった話はしていなかった。
彼女はきっと動揺していると思ったが、全く表情を変えない。
死んだと言う情報から、そこまで想定済みと言う事か。
「その契約書を見せて、頂けますか」
杉山が立ち上がって、「このアマ」と裕ちゃんの胸ぐらをつかんで、殴りかかるポーズをする。それを加治木さんが制する。ヤクザのよくつかう脅しのテクニックだ。
それでも、彼女は毅然としている。こっちは、びくびくしてるのに、この人の神経が判らない。
「姉ちゃん、こっちも、長く待たされてイライラしてるんだ。いつまでもこいつを押さえておける自信が無い」
「ちょっといいかな」
接客が終わったのか、所長が、漸く、こっちに来てくれ、もっと詰めろと合図した。助かった。
「私、ここの所長をしているこういうものです」
「所長さんですか、今、私はここの社長さんと話しているんですがね」
裕ちゃんは、「大丈夫、直ぐ済むから」と、俺越しに話した。
「判りました。具体的に、脱退に必要な金額を提示してください」
裕ちゃんは、遂に屈して、お金を出す覚悟を決めた様だ。
「だから誠意だって言ってるだろう。相場は、安い車が買える程度みたいだけどな」
「では、直ぐに用意をします」
裕ちゃんが立ち上がり、後を追うように、所長も席を外した。
杉山は「結構いい女っすね」と加治木さんに耳打ちし、「本当に、お前がヤクザと知って、雇ってたんだな」と言ってきた。
昼間は、信じていなかったようだ。つまり、俺への嫌がらせが、最初の目的だったらしい。
今度は、加治木さんが、小声で「あの所長、社長の旦那か? 気の強い女で、大変だ。ありゃ」と言った。
加治木さんは、社長が、戻って来たのに気が付いて、再び、深く腰掛け、足を組んだ。
「お待たせしました」 裕ちゃんは、紫の袱紗をテーブルに置いて、それを開いた。
中には、百万円の束が三つも入っていた。
俺なんかのために、こんな散財をさせることになり、申し訳なくてならない。
「この誓約書にサインしてください。念のため、読み上げますね」
彼女は、その誓約書を音読した。
今後、一切、安田翔と関係を持たない事を宣言するという誓約書で、三つの事を約束させるものだ。
一つは、電話連絡をしないこと、二つ目は、面会を申し出ないこと、三つ目は、関係を口外しないという内容だ。
「時間が無かったので、このような簡易書類となりますが、ここに日付とサインをお願いします」
加治木さんは、にやりと笑って、ペンを受け取り、記入を始めた。
「安君、御免なさいね。こんな人身売買みたいなこと、したくなかったのに、この方、頭が悪いみたいだから。小坂さんとは大違い。ねぇ、理事の小坂さんはお元気かしら、昨年末は、お世話になりましたと、私と主人が言っていたと伝えといてくださいね」
加治木さんの書くペンがぴたりと止まり、こっちに顔を向けた。
暫く、固まっていたが、さっと直立し、「申し訳ございませんでした」と頭を深々と下げた。
杉山は何がなんだが判らなかったようだが、加治木さんは、この便利屋が、理事長の柴村さんを刺し、アタッシュケースを盗んだ男、実際には男装した女子高生だったが、その犯人を見つけ出した探偵事務所だと気が付いたようだ。
加治木さんは、お金にも手を付けず、困惑する杉山を引っ張る様に、事務所から出て行った。
俺は、ほっとしたが、そんな奥の手があるなら、最初から使えばいいのにとも思った。
「なんだ今の奴ら。ヤクザか」
ちょうど入れ替わりに、磯川さんが戻って来た。
「おそい~。肝心な時に居ないんだから。裕ちゃん一人で大変だったんだぞっと」
未来ちゃんは、相撲取りみたいに、どこからか用意した塩を山盛り手に持って、出口から外に撒いた。
「未来、これ誰が掃除すんだよ」
「お義父さん。じゃあ、私、帰るから」
立去る彼女を見送って、皆の顔が、すっかり笑顔に戻っていた。
それにしも、ここは凄いところだ。ヤクザを完全に撃退して、平然としている。
「磯川さん、ちょっとこっちに来てください」
「なにがあった」
彼女は、奥の応接側に磯川さんを引連れて行った。
何なのだろうと、不思議そうに見ていたら、所長が、俺に言ってきた。
「お前は社長としての裕子を知らないだろうから、いい機会だ。社長の仕事ぶりを陰で勉強させてもらえ」
俺は、静かに後を追い、パーティションの陰から聞耳を立てた。
「安君の教育担当は、あなたでしたよね」
「だから何があったのよ」
「安君が所属していた暴力団が、安はまだヤクザだ、辞めるなら、それなりの誠意を出せと脅しに来ました。そんなのはどうでもいいです。問題は安君の態度。借りてきた猫みたいに小さくなってました。貴方はいったいどのように教育しているのですか」
「ははっ、あいつビビってましたか、器がちっちぇや」
「笑い事ではありません。相手に奥すると、付け込まれるだけです。一番最初に、貴方に、お願いしましたよね。暴力団の人が安君の足を引っ張りに来る可能性があるから、毅然と対応できるように指導してくださいって」
あの人は、そんなことまで考えてくれていたのか。本当に凄い人だ。
その時、後ろから、所長が、肩に、手を掛けてきた。
「あいつは、常に周りを見て、どんな苦境にあっても、最善な道を模索する奴なんだ。お前は、俺が中心だと誤解してるようだが、太陽はあいつで、俺は地球だ。そのうち分かる」
所長の言葉は、まだ良く理解できなかったが、誘拐した日の彼女の行動を思い起こし、なんとなくわかる気がした。
「まぁ、我儘で、エッチで、困ってしまう面はあるが」
この点だけは、良く理解できる。
「ヤクザの世界は、縦社会で、上の言う事は絶対だ。安はそう教育されてきた。そう簡単には、その癖は直らない」
「私、あなたに失望しました。そんなのは誰にだってわかっています。それをどうにかするのが、貴方の仕事で、それができる人だと信じていました。ヤクザを更生させるのか天職ですって。笑っちゃう。もういいです。安君の教育担当を更迭します。私が教育しますから」
「社長。悪かった。俺の責任は認める。だから、もう一度だけ、チャンスをくれ。どんな困難にも、毅然として立ち向かえる男にしてみせるから」
「それじゃあ、お願いします。本当言うと、あの子、完全に私を馬鹿にしてて、私の言う事なんか絶対聞かないからどうしようと思ってたの。任せたからね。お願いよ」
「ちっ、また嵌められたって事かよ」
「だって、主人は、人を教育するなんて無理だし、天職だと思ってる人に任せるしかないでしょう」
「お袋さんには、敵わない」
その晩、磯川部長が、俺の部屋に来た。
「社長はかよわい女だ。なのに、ヤクザに毅然と対応できた理由は、なんでだと思う。その理由を十個、明日のこの時間までに考えろ。それが宿題だ」
そう言って、戻って行った。
それから四日目の土曜日、事務所に戻った俺に客が冷たい視線を向けて来た。
「辞めさせないなら、もうここには依頼しないから」
「本当に、申し訳けありませんでした。事前に説明して、納得してもらうべきでした。私の落ち度です。申し訳けありません」
所長がペコペコと頭を下げている。
話の内容は直ぐに分った。何時もの事だ。ここは、居心地良かったし、いろいろ学びたい事は沢山あったけど、それももう終わりだ。
「お客様、私が社長の神谷です。本当に気分を害させてしまいまして、申し訳けありません。お気持ちは良く分ります。ですが、お客様の様に、恵まれた人たちばかりではありません。長い人生に一度くらい、過ちを犯してしまう事は、誰にでもあるのではないでしょうか。過去を無い事にできないのは分っております。ですが、お客様の寛容なお心で、もうすこし長い目で見て頂けませんか」
「でも、この間、この事務所にヤクザの人が来たんでしょう」
「はい。現役の暴力団の方が二名、うちの事務所に脅迫しに見えました。ですが、うちには元刑事の従業員もおりますし、きちんと説明して、何事も無く、お帰り頂きました。お客様が心配なされるような事は、二度と起きません。私か保証します」
「本当に、お客様の寛容なお心づかい、痛み入ります。今後も、お気づきの点がありましたら、ご指導、よろしくお願いします」
「私からも、改めて、お礼を言わせて頂きます。本当に、お許し頂きありがとうございました」
所長と社長の二人からまくし立てられ、客は、何も文句を言えなくなり、帰って行った。
「いま、『あの客』って思ったでしょう」
えっ、なんでわかる。一瞬おもったが、裕ちゃんは不思議ちゃんだ。
「お客様は神様なの。どんなことがあっても、『お客様』。『客』なんて思ったら承知しないから」
裕ちゃんはそう言い残して、自分の机に戻って行った。
その後、未来ちゃんがやってきて、あの日からクレームが殺到していると教えてくれた。今回で、四件目の依頼キャンセルなのだそう。
あの日のお客は、一組だけだったが、ヤクザが押しかけきたことや、元ヤクザの従業員がいることが、知れ渡ってしまったらしい。
理由も言わない依頼キャンセルもあり、予約していた相談者のキャンセルも多いらしい。
「今は、貴方自身が試されてるの。ここでいじけて、負け犬に戻るか、毅然として踏ん張って、お客様を見直させせるか。ちゃんと自分で考えてから、裕ちゃんに謝罪しにいきなさいよ」
未来ちゃんは、そう言って、席に戻って行った。
俺は、報告書を作成しなければならなかったが、直ぐに、社長の所に行き、「ご迷惑をおかけしました」と謝った。
「あなた、私に何か悪い事でもしたの」
あの日と同じ言葉が返ってきた。あの時は、いたたまれなくなって、逃げ出したが、もう逃げない。
「いえ、何もしてはいません。ですが、お客様の依頼キャンセルが相次いでるのは、俺が此処で働いているからです。その意味で責任を感じています」
「責任を感じているなら、貴方はどうする気。ここを辞めるの?」
「いえ、今まで以上に、頑張って働きます」
「はい、少しはうちの従業員らしくなったじゃない。ここんところ、少し忙しすぎたから、このぐらいの方が丁度いいのよ。でも、それも一ヶ月と言うとこね。来月は反動で辞めたいと言う位忙しくなるわよ。きっと」
俺は、『かあさん』とまた言いそうになって、その言葉を飲み込んだ。
もう俺は迷わない。どんなことがあっても、ここを辞めない。ここで必死に勉強して、早く一人前になって、死ぬまでここで働く。
そう心に誓った。
でも、俺はこうして、働かせてもらっているだけで、感謝している。
働き始めて、二か月しか経っていないが、捜査対象の住まい特定に関しては、俺が最も沢山熟すようになっている。
磯川部長も所長と同様に一日一件程担当するが、今は、事前確認を集中的に担当している。
今日も、俺は二件を担当する。
午前中は、元住吉の訊込み調査だ。まずは、バス利用の有無を確認してまわる。
幸い、バスの運転者は誰も彼女を見た者はいなかったので、駅前商店街を廻って、情報を入手し、それを分析整理して、調査を広げる方向を決め、絞り込んでいく。
予想以上にスムーズに進み、十一時半頃には、関東労災病院手前のアパートに捜索対象を特定できた。
俺は、そのまま午後の予定の府中本町に移動した。
そして改札を出た時だった。
「安じゃねえか」
竜王会の先輩三下ヤクザの杉山に声を掛けられた。
「こんにちは、ご無沙汰しています」
普段、哲と呼ばれているが、あまり親しくないので、杉山哲なのかも定かでない。
服装もセンスなく、如何にもチンピラ丸出しで、健さんの洋服の趣味と似ている。
因みに、今日の俺の洋服は、裕ちゃんに買ってもらった三ピースのスーツだ。
今はもう俺とは住む世界が違う。正直、もう関わりたくなかった。
「お前、足洗ったんだってな、そうだ飯、まただろ。昼食べながら聞かせろや」
仕事中なのでと断ろうと思ったが、時間は昼の少し前なので、無理がある。
止む無く、先輩について、駅前ラウンドワン内にある海鮮居酒屋に入った。
「どんな仕事をしてんだ」
「便利屋の見習い。探偵の真似事」
「へぇ、結構、いかした仕事してんじゃねぇか。よく雇ってもらえたな」
「元ヤクザと知ってるのに、みんな普通に接してくれるいい職場だ」
「みんな、お前の正体知ってんのか」
店員がやってきたので、杉山は「ビール二つ」と注文したが、午後も仕事があるからと断り、ウーロン茶と鮭親子チャーハンを注文した。
三下格はいつも金欠で、あまり金に余裕がある訳ないのに、沢山の単品料理を注文した。
集られるなと覚悟したが、この程度なら払える。
結局、俺にも食え食えと進め、俺の方が多く食う羽目になったが、ほぼ一時間目いっぱいかけて、平らげた。
杉山さんの目的は、足を洗ってから、ちゃんと生活できているかの心配と、俺の事務所に、若い女の子が居れば紹介してもらおうという魂胆だったみたいだ。
わずか五人の事務所で、女性は妊婦さんと五十八歳の美人の二人と知ると、その後は、自分の話ばかりしていた。
結局、一時十分まで、昼休憩を取る事になってしまったが、俺が堅気として頑張っているお祝いだからと、全額奢ってくれた。
嫌な先輩だと思っていたが、自分の堅気での生活を、本当に心配してくれていたのだと、少し嬉しかった。
午後の捜索対象は、バス利用者だと分かったが、そのバス運転手はどこで乗降しているかを覚えておらず、他の運転手に訊いて回ったが、やはりどの停留所かは特定できなかった。
これは、コンビニに頭を下げて回る最悪パターンになるかと思ったが、タクシー運転手の一人から、一昨日の終電時に、彼を家まで乗せて行ったと言う情報を幸運にも入手できた。
これは磯川さんから教わった裏ワザで、他にも、イベント参加者リストなんかからも情報を入手できることがある。だが、裏ワザは、ほとんど空振りに終わるのが普通で、今回は本当に幸運だった。
そのタクシー運転手のお蔭で、無事、午後の住所特定もでき、閉店前の四時頃には事務所に戻る事ができた。
だが、ヤクザは素直に堅気復帰を喜んでくれるような人種ではなかった。
俺が今日の報告書をまとめていると、あの先輩ヤクザの杉山と、その兄貴分にあたる加治木さんが、二人で、事務所にやってきたのだ。
つい名刺を渡してしまったのが、失敗だった。
杉山は、午前中と同じチンピラ風の格好だが、加治木さんはきちんとスーツを着ていて、大人のヤクザの出で立ちだ。
「いらっしゃいませ」
未来ちゃんが、来客と間違えて挨拶したが、ヤクザと気づいた様で、あわてて社長を呼んだ。
こんな時は、磯川部長がいてくれると、心強いが十六時帰社予定なのに、捜索に手こずっているようで、まだ、戻って来ていない。
「いらっしゃいませ、どのようなご用でしょうか」
裕ちゃんは、未来ちゃんに代わり、二人の応接を買って出た。
「安に用があって、寄らせてもらった」
「では、あと十分程、こちらでお待ちください。今は仕事中ですので」
「そこに、居るじゃねえか。おい、安」
「安君、そのまま、報告書をまとめて」
立ち上がった俺を制するようにして、今度は兄貴たちに、話し掛けた。
「大声出さないで下さい。来客中です。それとも営業妨害で来られたのかしら。それなら警察を呼びますよ」
「このアマ、犯すぞ」
杉山が大声でおどしても、彼女は毅然としている。さすがは社長だ。
「やめろ。しばらく待たせてもらおう」
加治木さんはソファに腰をおろし、杉山もそれに従った。
奥で接客中の所長の方を見ると、お客様に「心配ありませんから」と、ペコペコと頭を下げていた。
接客は、まだまだ、掛かりそうだ。
裕ちゃんは、未来ちゃんにお茶の準備を指示してから、彼らの前に腰かけた。
聞耳を立てたが、何を話しているのかは、俺の席からは分らない。
そうこうしている内に、五時になった。
所長の接客は、まだ終わっていないし、部長も未だに戻ってこない。どうしよう。
そう思っていると、奥から、加治木さんの声が聞こえた。
「安、仕事は終わりだ。こっちに来い」
俺は、奥のソファに行って、「ご無沙汰しています」と挨拶した。
「安君、確認したいことがあるの。ここに座って」
彼女の隣に座れと言われた。
「今、加治木さんに話を伺いましたが、あなた、ヤクザを辞めていないって本当ですか?」
「兄貴が、健の兄貴が、上と交渉してくれて、もう堅気になってると言っていた」
「やはり、安君はヤクザを卒業したと言っておりますが」
「あのね、姉ちゃん。この世界は、そんな簡単に出入りできない世界なのよ。昔は組を抜けるときは、指を詰める覚悟が必要だった。まぁ、今はうちも会社なんで、そんな野蛮な事はしないが、止めるにはそれなりの誠意が必要なのよ。誠意。わかる?」
「辞表を書いて、頭をさげて、辞めさせてくださいとお願いすると言うことかしら」
「舐めんじゃねぇ」
「やめろ。姉ちゃんも、分ってるくせに、冗談は良くない」
裕ちゃん、ヤクザ相手に挑発はまずいよ。今は、来客中だから、抑えているけど、切れると本当に不味いことになる。
加治木さんは、身を乗り出して、彼女に顔を近づけ、睨みをきかせた。
でも、裕子さんは、まったく脅えることなく、その位置関係のまま、笑顔を崩さない。
「足抜けには、お金が必要ってことですか。それはおかしいです。健さんが、上の方に掛け合って、堅気になる承認を得たのなら、その時点で、彼は堅気の身です。もう一度、足抜けのルールに従って、お金を払えって言うのはおかしいです」
加治木さんは、呆れたと言う仕草を見せて、深く座りなおし、足を組んだ。
「社長さんなら、契約は詳しいよね。姉ちゃん、勘違いしてるよ。契約は、健が鉄砲玉になる代わりに、安を堅気に戻すと言う条件だ。つまり、相手を仕留める事との交換なんだよ。わかる。仕留められなきゃ、契約不成立」
まだ、健の兄貴が鉄砲玉になった話はしていなかった。
彼女はきっと動揺していると思ったが、全く表情を変えない。
死んだと言う情報から、そこまで想定済みと言う事か。
「その契約書を見せて、頂けますか」
杉山が立ち上がって、「このアマ」と裕ちゃんの胸ぐらをつかんで、殴りかかるポーズをする。それを加治木さんが制する。ヤクザのよくつかう脅しのテクニックだ。
それでも、彼女は毅然としている。こっちは、びくびくしてるのに、この人の神経が判らない。
「姉ちゃん、こっちも、長く待たされてイライラしてるんだ。いつまでもこいつを押さえておける自信が無い」
「ちょっといいかな」
接客が終わったのか、所長が、漸く、こっちに来てくれ、もっと詰めろと合図した。助かった。
「私、ここの所長をしているこういうものです」
「所長さんですか、今、私はここの社長さんと話しているんですがね」
裕ちゃんは、「大丈夫、直ぐ済むから」と、俺越しに話した。
「判りました。具体的に、脱退に必要な金額を提示してください」
裕ちゃんは、遂に屈して、お金を出す覚悟を決めた様だ。
「だから誠意だって言ってるだろう。相場は、安い車が買える程度みたいだけどな」
「では、直ぐに用意をします」
裕ちゃんが立ち上がり、後を追うように、所長も席を外した。
杉山は「結構いい女っすね」と加治木さんに耳打ちし、「本当に、お前がヤクザと知って、雇ってたんだな」と言ってきた。
昼間は、信じていなかったようだ。つまり、俺への嫌がらせが、最初の目的だったらしい。
今度は、加治木さんが、小声で「あの所長、社長の旦那か? 気の強い女で、大変だ。ありゃ」と言った。
加治木さんは、社長が、戻って来たのに気が付いて、再び、深く腰掛け、足を組んだ。
「お待たせしました」 裕ちゃんは、紫の袱紗をテーブルに置いて、それを開いた。
中には、百万円の束が三つも入っていた。
俺なんかのために、こんな散財をさせることになり、申し訳なくてならない。
「この誓約書にサインしてください。念のため、読み上げますね」
彼女は、その誓約書を音読した。
今後、一切、安田翔と関係を持たない事を宣言するという誓約書で、三つの事を約束させるものだ。
一つは、電話連絡をしないこと、二つ目は、面会を申し出ないこと、三つ目は、関係を口外しないという内容だ。
「時間が無かったので、このような簡易書類となりますが、ここに日付とサインをお願いします」
加治木さんは、にやりと笑って、ペンを受け取り、記入を始めた。
「安君、御免なさいね。こんな人身売買みたいなこと、したくなかったのに、この方、頭が悪いみたいだから。小坂さんとは大違い。ねぇ、理事の小坂さんはお元気かしら、昨年末は、お世話になりましたと、私と主人が言っていたと伝えといてくださいね」
加治木さんの書くペンがぴたりと止まり、こっちに顔を向けた。
暫く、固まっていたが、さっと直立し、「申し訳ございませんでした」と頭を深々と下げた。
杉山は何がなんだが判らなかったようだが、加治木さんは、この便利屋が、理事長の柴村さんを刺し、アタッシュケースを盗んだ男、実際には男装した女子高生だったが、その犯人を見つけ出した探偵事務所だと気が付いたようだ。
加治木さんは、お金にも手を付けず、困惑する杉山を引っ張る様に、事務所から出て行った。
俺は、ほっとしたが、そんな奥の手があるなら、最初から使えばいいのにとも思った。
「なんだ今の奴ら。ヤクザか」
ちょうど入れ替わりに、磯川さんが戻って来た。
「おそい~。肝心な時に居ないんだから。裕ちゃん一人で大変だったんだぞっと」
未来ちゃんは、相撲取りみたいに、どこからか用意した塩を山盛り手に持って、出口から外に撒いた。
「未来、これ誰が掃除すんだよ」
「お義父さん。じゃあ、私、帰るから」
立去る彼女を見送って、皆の顔が、すっかり笑顔に戻っていた。
それにしも、ここは凄いところだ。ヤクザを完全に撃退して、平然としている。
「磯川さん、ちょっとこっちに来てください」
「なにがあった」
彼女は、奥の応接側に磯川さんを引連れて行った。
何なのだろうと、不思議そうに見ていたら、所長が、俺に言ってきた。
「お前は社長としての裕子を知らないだろうから、いい機会だ。社長の仕事ぶりを陰で勉強させてもらえ」
俺は、静かに後を追い、パーティションの陰から聞耳を立てた。
「安君の教育担当は、あなたでしたよね」
「だから何があったのよ」
「安君が所属していた暴力団が、安はまだヤクザだ、辞めるなら、それなりの誠意を出せと脅しに来ました。そんなのはどうでもいいです。問題は安君の態度。借りてきた猫みたいに小さくなってました。貴方はいったいどのように教育しているのですか」
「ははっ、あいつビビってましたか、器がちっちぇや」
「笑い事ではありません。相手に奥すると、付け込まれるだけです。一番最初に、貴方に、お願いしましたよね。暴力団の人が安君の足を引っ張りに来る可能性があるから、毅然と対応できるように指導してくださいって」
あの人は、そんなことまで考えてくれていたのか。本当に凄い人だ。
その時、後ろから、所長が、肩に、手を掛けてきた。
「あいつは、常に周りを見て、どんな苦境にあっても、最善な道を模索する奴なんだ。お前は、俺が中心だと誤解してるようだが、太陽はあいつで、俺は地球だ。そのうち分かる」
所長の言葉は、まだ良く理解できなかったが、誘拐した日の彼女の行動を思い起こし、なんとなくわかる気がした。
「まぁ、我儘で、エッチで、困ってしまう面はあるが」
この点だけは、良く理解できる。
「ヤクザの世界は、縦社会で、上の言う事は絶対だ。安はそう教育されてきた。そう簡単には、その癖は直らない」
「私、あなたに失望しました。そんなのは誰にだってわかっています。それをどうにかするのが、貴方の仕事で、それができる人だと信じていました。ヤクザを更生させるのか天職ですって。笑っちゃう。もういいです。安君の教育担当を更迭します。私が教育しますから」
「社長。悪かった。俺の責任は認める。だから、もう一度だけ、チャンスをくれ。どんな困難にも、毅然として立ち向かえる男にしてみせるから」
「それじゃあ、お願いします。本当言うと、あの子、完全に私を馬鹿にしてて、私の言う事なんか絶対聞かないからどうしようと思ってたの。任せたからね。お願いよ」
「ちっ、また嵌められたって事かよ」
「だって、主人は、人を教育するなんて無理だし、天職だと思ってる人に任せるしかないでしょう」
「お袋さんには、敵わない」
その晩、磯川部長が、俺の部屋に来た。
「社長はかよわい女だ。なのに、ヤクザに毅然と対応できた理由は、なんでだと思う。その理由を十個、明日のこの時間までに考えろ。それが宿題だ」
そう言って、戻って行った。
それから四日目の土曜日、事務所に戻った俺に客が冷たい視線を向けて来た。
「辞めさせないなら、もうここには依頼しないから」
「本当に、申し訳けありませんでした。事前に説明して、納得してもらうべきでした。私の落ち度です。申し訳けありません」
所長がペコペコと頭を下げている。
話の内容は直ぐに分った。何時もの事だ。ここは、居心地良かったし、いろいろ学びたい事は沢山あったけど、それももう終わりだ。
「お客様、私が社長の神谷です。本当に気分を害させてしまいまして、申し訳けありません。お気持ちは良く分ります。ですが、お客様の様に、恵まれた人たちばかりではありません。長い人生に一度くらい、過ちを犯してしまう事は、誰にでもあるのではないでしょうか。過去を無い事にできないのは分っております。ですが、お客様の寛容なお心で、もうすこし長い目で見て頂けませんか」
「でも、この間、この事務所にヤクザの人が来たんでしょう」
「はい。現役の暴力団の方が二名、うちの事務所に脅迫しに見えました。ですが、うちには元刑事の従業員もおりますし、きちんと説明して、何事も無く、お帰り頂きました。お客様が心配なされるような事は、二度と起きません。私か保証します」
「本当に、お客様の寛容なお心づかい、痛み入ります。今後も、お気づきの点がありましたら、ご指導、よろしくお願いします」
「私からも、改めて、お礼を言わせて頂きます。本当に、お許し頂きありがとうございました」
所長と社長の二人からまくし立てられ、客は、何も文句を言えなくなり、帰って行った。
「いま、『あの客』って思ったでしょう」
えっ、なんでわかる。一瞬おもったが、裕ちゃんは不思議ちゃんだ。
「お客様は神様なの。どんなことがあっても、『お客様』。『客』なんて思ったら承知しないから」
裕ちゃんはそう言い残して、自分の机に戻って行った。
その後、未来ちゃんがやってきて、あの日からクレームが殺到していると教えてくれた。今回で、四件目の依頼キャンセルなのだそう。
あの日のお客は、一組だけだったが、ヤクザが押しかけきたことや、元ヤクザの従業員がいることが、知れ渡ってしまったらしい。
理由も言わない依頼キャンセルもあり、予約していた相談者のキャンセルも多いらしい。
「今は、貴方自身が試されてるの。ここでいじけて、負け犬に戻るか、毅然として踏ん張って、お客様を見直させせるか。ちゃんと自分で考えてから、裕ちゃんに謝罪しにいきなさいよ」
未来ちゃんは、そう言って、席に戻って行った。
俺は、報告書を作成しなければならなかったが、直ぐに、社長の所に行き、「ご迷惑をおかけしました」と謝った。
「あなた、私に何か悪い事でもしたの」
あの日と同じ言葉が返ってきた。あの時は、いたたまれなくなって、逃げ出したが、もう逃げない。
「いえ、何もしてはいません。ですが、お客様の依頼キャンセルが相次いでるのは、俺が此処で働いているからです。その意味で責任を感じています」
「責任を感じているなら、貴方はどうする気。ここを辞めるの?」
「いえ、今まで以上に、頑張って働きます」
「はい、少しはうちの従業員らしくなったじゃない。ここんところ、少し忙しすぎたから、このぐらいの方が丁度いいのよ。でも、それも一ヶ月と言うとこね。来月は反動で辞めたいと言う位忙しくなるわよ。きっと」
俺は、『かあさん』とまた言いそうになって、その言葉を飲み込んだ。
もう俺は迷わない。どんなことがあっても、ここを辞めない。ここで必死に勉強して、早く一人前になって、死ぬまでここで働く。
そう心に誓った。
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