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8月5日 9:30
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この日の捜査方針も、引き続き、犯行の目撃者捜しに重点が置かれ、半数以上の捜査員がそれに割り当てられた。
しかし、殺人犯捜査第七係を含む残りのメンバーには、チェットの仕事が終わってからの日常の行動を追い、彼の恋人を見つけ出せと新たな指示がでた。といっても、やることは、病院までの経路の防犯カメラを全ての確認と、聞き込みという地道な捜査に変わりはない。
七係の阿川は、三人を防犯カメラチェックに回し、残りの六名に、音無親水公園及び、その近くの醸造試験場跡地公園で聞き込みするようにと、指示を出した。
お蔭で、午前中の内に、女性と二人でいる所を見たと言う二人目の目撃者を発見できた。
一人目の婦人は、七月の始め頃に見かけただけで、彼女に関しては記憶があいまいだったが、もう一人の七十歳位の男性は、同じく七月の始め頃に一度だけ目撃しただけだったが、彼女の事をしっかりと記憶していた。しかも、彼女の職場も知っていて、王子駅前のしゃぶ葉と言う大衆しゃぶしゃぶ店の店員だと有力情報まで提供してくれた。
阿川は、チェットの恋人らしき人物の目撃情報を管理官に報告すると、高原、阿川、宗像の三人で、しゃぶ葉に向うこにした。残り三人は、引き続き別の目撃者捜しを継続する。
しゃぶ葉は、すかいらーく系列店で、今年の五月末に、北とぴあの隣にオープンしたばかりだ。
うちの刑事組織犯罪対策課でも、一度、食べに行こうと話題になったが、まだ行った事はない。
この日は日曜日の為か、ランチタイムを過ぎているのに、店は一杯で繁盛していた。
店長に言って、フロア担当の女性を、一人一人、控室に呼び出してもらって、チェットの写真を見せ、この男を知っているかと訊いた。だが、誰も彼を知っているものは居なかった。
店長は、「シフトや、アルバイト・パートも居るから、聞いて上げます」と親切に申し出てくれ、写真を渡してお願いすることにした。同時に、アルバイトを含む全従業員の履歴書を出してもらい、フロア担当女性の顔写真と氏名と現住所とを写真に収めて、目撃者の元気な老人に会いにいくことにした。
店を出ると、阿川が言ってきた。
「あの店長、左利きね」
阿川は、七課の誰かに電話し、「北とぴあの所にあるシャブ葉の店長を徹底的に洗って」と指示を出した。
「左利きだけで、容疑者にしてたら、埒が明かない」
「私も、犯人とは思っていない。店長という肩書まで持った人間だから、あんな殺人計画は立てない。でも、キッチンに立たないのに、爪は丸めて綺麗にしてあった。彼は結婚指輪していたから、単に愛妻家かもしれないけど、あのタイプはお店の女の子に手をだしている人が多いの。だから、念のため」
高原が、きょとんとして理解できずにいるのに気づき、彼女は補足説明した。
「彼がチェットの彼女と不倫関係で、彼女が『急に彼氏ができたから別れる』と言ったとしたら? ねっ、十分に、殺人の動機になるでしょう」
殺人の動機のある人物なら、捜査する必要はあるが、それはチェットの彼女と不倫していたらの話だ。あれだけの会話で浮気癖がありそうと判断したのには恐れ入るが、チェットの彼女と不倫している可能性は極めて低い。もし、本当に浮気してたら、おみそれしましたと、土下座してやる。
高原は、内心で彼女を嘲笑っていた。
目撃者の老人に、スマホに撮った履歴書の写真を次々と見せて確認していくと、迷うことなく、この人だと、一枚の写真を選び、チェットの彼女が判明した。
滝野川病院の近くにあるアパートに住む、水谷美咲三十二歳だ。
履歴書の写真でも、相当な美人だったので、男なら鮮明に記憶が残っていても、可笑しくは無いなと高原は納得した。
しかし、殺人犯捜査第七係を含む残りのメンバーには、チェットの仕事が終わってからの日常の行動を追い、彼の恋人を見つけ出せと新たな指示がでた。といっても、やることは、病院までの経路の防犯カメラを全ての確認と、聞き込みという地道な捜査に変わりはない。
七係の阿川は、三人を防犯カメラチェックに回し、残りの六名に、音無親水公園及び、その近くの醸造試験場跡地公園で聞き込みするようにと、指示を出した。
お蔭で、午前中の内に、女性と二人でいる所を見たと言う二人目の目撃者を発見できた。
一人目の婦人は、七月の始め頃に見かけただけで、彼女に関しては記憶があいまいだったが、もう一人の七十歳位の男性は、同じく七月の始め頃に一度だけ目撃しただけだったが、彼女の事をしっかりと記憶していた。しかも、彼女の職場も知っていて、王子駅前のしゃぶ葉と言う大衆しゃぶしゃぶ店の店員だと有力情報まで提供してくれた。
阿川は、チェットの恋人らしき人物の目撃情報を管理官に報告すると、高原、阿川、宗像の三人で、しゃぶ葉に向うこにした。残り三人は、引き続き別の目撃者捜しを継続する。
しゃぶ葉は、すかいらーく系列店で、今年の五月末に、北とぴあの隣にオープンしたばかりだ。
うちの刑事組織犯罪対策課でも、一度、食べに行こうと話題になったが、まだ行った事はない。
この日は日曜日の為か、ランチタイムを過ぎているのに、店は一杯で繁盛していた。
店長に言って、フロア担当の女性を、一人一人、控室に呼び出してもらって、チェットの写真を見せ、この男を知っているかと訊いた。だが、誰も彼を知っているものは居なかった。
店長は、「シフトや、アルバイト・パートも居るから、聞いて上げます」と親切に申し出てくれ、写真を渡してお願いすることにした。同時に、アルバイトを含む全従業員の履歴書を出してもらい、フロア担当女性の顔写真と氏名と現住所とを写真に収めて、目撃者の元気な老人に会いにいくことにした。
店を出ると、阿川が言ってきた。
「あの店長、左利きね」
阿川は、七課の誰かに電話し、「北とぴあの所にあるシャブ葉の店長を徹底的に洗って」と指示を出した。
「左利きだけで、容疑者にしてたら、埒が明かない」
「私も、犯人とは思っていない。店長という肩書まで持った人間だから、あんな殺人計画は立てない。でも、キッチンに立たないのに、爪は丸めて綺麗にしてあった。彼は結婚指輪していたから、単に愛妻家かもしれないけど、あのタイプはお店の女の子に手をだしている人が多いの。だから、念のため」
高原が、きょとんとして理解できずにいるのに気づき、彼女は補足説明した。
「彼がチェットの彼女と不倫関係で、彼女が『急に彼氏ができたから別れる』と言ったとしたら? ねっ、十分に、殺人の動機になるでしょう」
殺人の動機のある人物なら、捜査する必要はあるが、それはチェットの彼女と不倫していたらの話だ。あれだけの会話で浮気癖がありそうと判断したのには恐れ入るが、チェットの彼女と不倫している可能性は極めて低い。もし、本当に浮気してたら、おみそれしましたと、土下座してやる。
高原は、内心で彼女を嘲笑っていた。
目撃者の老人に、スマホに撮った履歴書の写真を次々と見せて確認していくと、迷うことなく、この人だと、一枚の写真を選び、チェットの彼女が判明した。
滝野川病院の近くにあるアパートに住む、水谷美咲三十二歳だ。
履歴書の写真でも、相当な美人だったので、男なら鮮明に記憶が残っていても、可笑しくは無いなと高原は納得した。
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