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第二章 ボーナス加護で人生が変わりました

2-1 魔法が使えるようになりました

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 フェイは、人里離れた山奥に住んでいるので、彼女の自宅を知るものはいない筈で、家探しは困難とは思うが、とりあえず、フェイの山小屋を訪ね、無事を確認するとともに、魔法の使い方を教わることにした。

 そのついでに、クエストも受注することにした。
 でも、適切な依頼がない。前回の様な薬草採取の依頼はないし、道中で熟せるような依頼もなかった。
 だが、ふとスライム討伐の依頼が目に入った。
 スライムは、この街に来る途中の街道で遭遇した魔物で、場所の指定がないので、どこで達成しても問題ない。
 あの時は、必死に走って逃げたが、フェイに鎌鼬の使い方を教えてもらえれば、スライムも討伐できる筈だ。
 それに、今回の拉致誘拐事件を通し、正義をなすには力が不可欠だと再認識した。
 動物退治でも、レベルアップするみたいだが、動物だとレベル2になるだけでも千匹が必要だったし、魔物討伐する方がずっと効率的だ。その意味でも、スライム討伐はレベルアップに丁度いい。

 そんな訳で、スライム十匹の討伐を受注した。
 受付嬢のローラからは、「魔法が使えないと、苦労しますのでお勧めできません」と言われたが、構わないからと引き受け、念のため、魔法の知識に詳しい人も紹介してもらった。
 
 その際、ローラから、このクエストの美味しい話も聞いた。
 このクエストは、常時受付けのクエストで、スライムが大量発生すると行商人を襲う等の被害がでるため、常にこのクエストは掲示してあるのだそう。
 つまり、スライム退治した魔石十個ごとに、際限なく報酬や冒険者ポイントを貰えるのだ。百匹退治すれば、十倍の報酬や冒険者ポイントを貰える。

 魔法本を売っていると紹介してもらった書店に行くのは後回しにして、とりあえずフェイの許へと急いだ。

 フェイはまたも居なかったが、無事にここまで帰って来たのは間違いない。食器や布団等、全てが無くなっていた。
 ここも危険だと判断して、どこかに引っ越したらしい。
 鎌鼬の使い方は聞けなくなったが、彼女が無事だと確信がもて、一安心だ。

 帰り道、早速、スライムを見つけ、ナイフで討伐を試みだが、やはり物理攻撃耐性が強く、次々増援が現れ、結局今回も、必死に逃げることしかできなかった。

 そして、ローラに教えてもらった書店に行き、店主に鎌鼬の使い方を書いてある本を教えてもらったが、その魔法書は1800ギルもして、飛んでもなく高い。
 鼠退治で沢山、お金をもらっていたのに、ほぼ一文無しになってしまった。

 早速、その本で鎌鼬の説明を読んでみたが、中級風魔法の前方放射型範囲攻撃で、詠唱や発動ポーズが必要だと分かった。
 腕を左右に伸ばした状態で、詠唱し、詠唱が終わる直前に、掌を前に押し出すようにする必要がある。
 そんな恥ずかしいポーズはしたくないが、街を出て、人目の付かない場所でやってみたら、無数の風が飛びだした気がした。
 フェイは基本魔法しか使えないのに、僕が中級魔法を使えるなんて信じられないが、ちゃんと発動できた。
 これがボーナス加護の恩恵かと、転生の女神に感謝した。

 今度は雑木林で使ってみたが、レベル1のためか、威力は大したこと無かった。でも、前方上下左右三十度くらいまで、無数に攻撃を当てることができ、スライム討伐には使えそうだ。
 スライムにどの程度効果があるのかを確認するため、早速スライム相手に使ってみることにした。
 
 ナイフよりはかなり有効だが、一撃では仕留めきれない。五回以上浴びせて、やっと倒せる程度だった。
 それでも三匹をほぼ同時に秒殺することができた。

『魔法「鎌鼬レベル1」が、「鎌鼬レベル2」に上がりました』また女神のささやき。
 魔法を使って、魔物討伐すると、魔法のレベルが上昇するらしい。
 次に見つけたスライムに使ってみたら、明らかに威力が上昇していて、五匹のスライムを三回程で倒せるようになっていた。

『能力レベルが3に上昇しました。スキル「気配感知レベル1」を習得しました。耐性「痛覚鈍化レベル1」が「痛覚鈍化レベル2」に上がりました。魔法「ファイアレベル1」を習得しました』
 やはり魔物を倒すと簡単にレベルアップする。しかも、火球ファイアまで、習得できた。
 早速魔法書でファイアを探したが、ちゃんとありました。
 中級火魔法の単体攻撃魔法で、詠唱も短く、指さす方向に飛んでいくらしい。
 早速試してみたら、時速六十キロ位の速度の火の玉がまっすぐ飛んで行った。
 
 気配感知もなかなかのもので、魔物がいる方向がなんとなくわかり、あっさりとスライムを見つけることができた。
 火球も単体魔法だけあって威力もなかなかで、レベル1でもスライムを一撃で倒すことができる。
 こっちの方が発動も早く、使い勝手がいい。
 調子に乗ってスライムを倒し続けていると、『ファイアレベル3』になり、時速百キロ以上とかなり高速で飛ぶ様になり、威力もかなりになっていた。

 ファイアばかり使わないで、鎌鼬も使わなければと、その後は鎌鼬で狩り続けていると、また女神のささやき。
『能力レベルが4に上昇しました。スキル「気配感知レベル1」が「気配感知レベル2」に上がりました。耐性「窒息耐性レベル1」を習得しました。魔法「マナヒール」を習得しました』
 今度は魔力回復魔法を習得したが、残念ながら、僕が持つ魔法書は、中級攻撃魔法の本だったので、回復魔法に関しての記載はなかった。
 でも、今度の気配感知は、周囲百メートル範囲の魔物の位置が数を含めて脳内イメージで明確にわかる。これはかなり有用だ。

 この日のスライムの落とした魔石は三十三個。
 ローラにスライムの魔石三十個を納品したら、魔法が使えたんですねと、目を丸くして驚いていた。
 報奨金も三倍なので1800ギルがもらえ、冒険者レベルも、一つ上がり、D級となり、銅色のプレートとなった。
 その登録の際、職種も変更して今度は魔導士にした。

 魔導士になったのだから、装備も魔導士用にしようと、武具屋へと足を延ばした。
 魔導士の杖は、魔力を上昇させる効果があると聞いたことがあったので、杖を買いに来たのだが、甘かった。
 杖は最低でも2000ギルもして、とても買える値段ではなかった。
 このまま帰ろうかとも思ったが、折角来たので防具を買う事にした。
 魔導用の服はいろいろと種類があるが、フェイが買ってくれたこの服と鎖帷子は思い出の品でもあるので、買うなら防寒具にもなる外套のローブだ。
 これだけなら買えそうだが、ピンキリで同じ様な見た目のローブなのに値段に差があり過ぎる
「この2つは何の違いでこんなに値段が違うんですか?」
「使っている素材が違うからに決まってるだろう。買うなら早くしてくれ」
 閉店間際に滑り込んだからか、店主の機嫌が悪く、ろくに説明してくれない。
 仕方ないので、750ギルの最も安いローブを買う事にした。

 裸ローブで変態する妄想を一瞬抱いてしまったが、それはあくまで妄想で、普段は今までの服装で、夜だけ、これを羽織る予定だ。

 今はまだ寒くはないが、これから寒くなっていくので、早速、ローブを羽織ってみた。
 鏡のようなった窓ガラスに、その姿を映してみると、確かに魔導士らしい見た目になっていた。だが、やはり杖無しは情けない。
 二千ギル貯めて杖を買う事を目標に、明日からは魔導士として頑張ると気合いを入れた。

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