僕はボーナス加護で伸し上がりました

根鳥 泰造

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第一章 のんびり異世界ライフをおくれるんじゃなかったのか

1-2 異世界転生することになりました

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 ここはどこだろう。僕は明るい真っ白な部屋のふかふかの布団の上で目を覚ました。いや、布団ではなく、雲だ。辺り一面が雲の平原になっている。
 ここは天国に違いない。
 死んだとき、全裸だったからか、一糸まとわぬ姿だ。
 恥ずかしいと一瞬思ったが、誰もいないので気にする必要はない。
 立ち上がって、足元を気にしながら、ゆっくりと雲の平原を歩き始めた。
 落ちることもなく、ちゃんと歩けるが、本当になにもない。
 すると、突然、目の前でまばゆい発光が始まった。
 直視してしまったので、目が見えなくなる。何が起きたんだ。
 視界がもどってくると、そこには水色の襦袢にスケスケの羽衣を羽織った乙姫の様な女性が立っていた。胸まである長い黒髪を稚児曲げにしている日本人美女だ。
 僕は猛烈に恥ずかしくなり、股間を両手でおおった。
「先ほど、二十二時十三分に魔物に食い殺された篠崎健斗、二十歳で間違いありませんね」
「何時に殺されたかまでは分かりませんが、僕がその篠崎健斗です」
「この度は、本当に申し訳ありませんでした。あなたはまだまだ長生きする運命だったのに、私達の対処が遅れ、あなたを神の悪戯に巻き込んでしまいました。本当に申し訳ありません」
「神の悪戯? 巻き沿い? なんだよそれ」
「悪戯好きの神が、異世界ゲートを渋谷に出現して、三体の魔物をこの世界に放ったのです。二体の魔物は直ぐに処分しましたが、一体は人間の女性に擬態して人込みに紛れて逃走し、必死に探していたのですが、見つけた時には、あなたが食い殺されていたという訳です。でも、安心してください。私は転生を司る女神なので、あなたの望む家庭に、赤ちゃんとして生まれかえらせてあげますから。どのような家庭をお望みですか」
「ちょっと待ってくれ。僕の人生を奪っておいて、人生をやり直せって、あんまりじゃないか。転生なんかじゃなく、生き返らせてくれよ。女神なら、それ位の奇跡は起こせるんじゃないか」
「できなくはないですが、それでいいんですか? あなたは、これから悲惨な人生を送ることになるんですよ。山際武が、あなたに付きまとって、童貞のまま、奴隷の様にこき使われ、就職後一年で、横領罪で実刑判決をうけ……」
「分かった。もういい。もう一度、赤ん坊からやり直すなんて最悪だが、転生を受け入れる。だが、この世界はもう嫌だ。ファンタジーの様な、魔法があって獣人やエルフが居いる異世界に転生させてくれ。転生の女神なら、それくらいできるだろう」
「御免なさい。私、この日本での生き物全般の転生を担当しているので、異世界転生はできないんです。そのそも、人間が次も人間として転生できること自体奇跡なんですよ。普通、人間は、虫や魚として次の人生を送るのです。動物や鳥になるのですら百人に一人。人間になれるのは一万人に一人もいないんですよ。それを望み通りの人間の家庭に転生させてあげるだけでも、感謝して欲しいです」
「そんなの知るか。僕はこの世界で生き直すなんて嫌だ。異世界転生で獣人を奴隷にして、楽しいハーレム生活したいんだ。あんたたちのミスで、死ぬの事になったんだから、それ位の夢、叶えてくれよ」
「本当に我儘な子ね。分かりました。一度も試したことないけど、あなたの望みに近い環境に転生させてあげましょう。でも、楽しいハーレム生活できるかは、あなたの努力次第。一生懸命努力しないと、あなたの方が奴隷になるかもしれないわよ」
「それは嫌だ。なら、何かチートスキルをくれよ。そいつが有れば、とんでもなく強くなれるようなスキルをくれ」
「本当に強欲ね。その望みを最後として、その望みにも叶えてあげましょう。初めての試みなので、失敗する可能性もあるし、私の加護の中でも取って置きの『ボーナス』を与えます。感謝しなさい。では、転生を始めます」
 彼女が魔法使いの棒の様なものを振ると、僕の身体か発光を始めた。身体が猛烈に熱くなる
「そのボーナスって、どんなスキルなんだ」
「スキルではなくて加護よ。それは……」
 彼女が説明ている最中だったが、僕の身体は分解していき、そのまま意識すらなくなっていた。


 意識喪失して、どれだけの時間が経ったのかは分からない。猛烈な空腹に襲われ、次第に意識が戻って来た。
 視界がぼやけていたが薄暗い場所で、次第に視界がハッキリしてきて、小さな木造小屋だと気づいた。
 八畳ほどの広さしかない山小屋の様な場所で、天井は高く、電灯のような照明もなく、ランタンの様なランプと薪ストーブの明かりしかない室内だ。
 僕はその部屋の隅に寝かされていて、ここより一段下になっている台所に、母親らしき女性が立っている。
 肩まであるブロンズの髪の白人だ。
 美人だといいな。どんな顔をした人なのか、早く顔を見せて欲しい。

 でも、こう考えている僕は、昔の思考のままだ。思考だけでなく、前世の知識も、僕が死んだときの状況も、女神と転生交渉したことも全てはっきりと記憶している。
 転生すると、記憶が全てリセットされると思っていたが、身体が赤ん坊になるだけらしい。

 それにしても、お腹が減った。「おぎゃあ」と鳴き声でもあげようか。

 その考えが伝わったのか、彼女がこちらを振り向いた。美女だ。想像以上に美しい。今度の僕の母は、三十歳位のロシア系の超絶美女だった。
「御免なさい。目を覚ましていたのね」
 日本語を話した。いや、この世界の言葉がネイティブに理解できるのはテンプレだ。

 母は何かを煮込んでいたようで、その鍋を薪コンロから下ろすと、手を洗って、こっちに近寄って来た。
 ゆったり目の黒いワンピースを着ていて、胸は巨乳ではないが、それなりに大きく、ノーブラなのかゆさゆさ揺れている。
「ママ、おっぱい頂戴」 赤ん坊なのに、もう言葉が話せた。うむ? 言葉も低音。この手、どう見ても僕の手だ。赤ん坊として転生されたのではなかったのか。
「失礼な人ね。私はあなたのママではないし、母乳もでないわよ。でも、お腹が空いてるのよね。ちょっと待ってて」
 そう言って、彼女は再び、台所に戻っていき、新しい鍋に米の様なものと水を入れて、火にかけ、玉ねぎを取り出して、料理を作り始めた。

 僕も起きることにして、身体を起こしたが、上半身裸だった。まさかと思い、布団を捲るとすっぽんぽん。パンツすら穿いていなかった。
 僕は慌てて、もう一度布団をかぶって寝たが、その様子をしっかり見られていて、くすっと笑われた。
「何もしてないから、安心して。一キロほど行った川の中腹の岩に、全裸でしがみつくように倒れていたの。凍死しそうだったけど、まだ生きていたので、私がここまで背負ってきて、助けてあげたというわけ。二日も眠り続けていたから、もう意識が戻らいのかなと心配したのよ」
 服を着て無かったということは、あの天国から直接、転送されたという事か。異世界転生させてやると言っていたが、初めての試みだとも言っていたので、転生に失敗したのか。
 となると、ここが異世界なのかも怪しい。
 それに、川に浸かって冷たくなっていたという事は、アソコを見られただけでなく、身体中を彼女に拭かれたということだ。もしかして、素肌で温めてくれた可能性だってある。

「どうして裸で川にいたのか全く記憶がないんだけど、ここは何処で、今は西暦何年なの」
「西暦? ああ暦のことね。ここは、ユーグリット王国の辺境のプリッツという街の更にはずれで、今はガイウス歴326年8月4日よ」
 やはり、僕のいた世界ではない異世界だった。
「エルフや獣人もいるのかな」
「いるけど、私は会ったことがない。大都市に行けば、奴隷として飼われているみたいだけど、私はプリッツからでたことないから。でも、そんなこと言うなんて、篠崎健斗さんは、やはり異世界からの召喚者なのね。珍しい名前で二十歳にもなってレベル1で、何もスキルを持っていないなんて、変だと思っていたのよ」
「どうして、僕の名前を知ってるの?」
「私。鑑定スキル持ちなの。だから、名前や年齢、あなたのレベル、スキル、能力値もすべてみえるのよ」
 望み通りの異世界に転生できてはいたが、レベル1ってなんだよ。最弱だと、前世と同じになるじゃないか。待てよ。ボーナスの加護を貰っているんだから、レベル1でも、最強だったりして。
「そうだったんだ。なら、僕の能力値がどんなだか教えてよ。凄く強かったりするのかな」
「レベル1なんて、子供くらいしかいないから、分からないけど、知力だけは、同じ年代のなかでも、飛びぬけて高いかな。後は、剣術の才能と、創造力、トラップ製作する能力ね、その2つが高い方。それ以外は全てが並以下」
 小学校の時、剣道教室に通っていたので、剣術の才能があり、こもり人だった時、フィギュア製作していたので、創造力が高かっただけの話だ。やはり、僕は以前の僕のままで何も変わっていなかった。

 その後、二十歳だと普通どのくらいのレベルなのか等を訊いた。
 最低でもレベル5で、冒険者だと20以上も沢山いるのだそう。普通に暮らしていても、スライム等の魔物や、はぐれ魔物と遭遇し、僕位の年齢になるとレベル5以上にはなるのだとか。

「大したものじゃないけど、できたわよ」
 そういって、彼女は、お盆にスープの様なものを乗せて、運んでくれた。
 箸ではなく木製スプーンで食べるらしい。
「ありがとう。ところでお姉さんは何という名前なの」
「御免なさい。自己紹介してなかったわね。私はフェイ。街の人達は、私の事を鉄の魔女と呼んでるけど、魔法はほとんど使えないし、威力もない。こんな山奥に独りで住んで、毒消しや、ポーション等を作って売って生活しているから、気味悪がって、魔女と呼ばれているだけ。篠崎健斗さんは、向うの世界で何をしていた人なの」
「僕は、大学生。経済学を勉強している」
「へぇ、あなたの世界では、その年でも働かないで、学生してるんだ。この世界では、学校に行ける子は一割ほどで、十六歳で卒業して、仕事につくのよ」
 オニオンスープだと思っていたが、お粥みたいで、コメではない穀物を柔らかく煮込んだものが沢山はいっていた。
 味も薄く、お世辞にも美味しいものではなかったが、空腹だったので、全て平らげた。
「御馳走様。おいしかった」
「お世辞も上手なのね。ずっとお腹に何も入れていないと思って、薄味の大麦粥にしたから、美味しい訳ないのに。もしかして、篠崎健斗さんの世界の食事って、栄養さえ取れればいいって考えの世界なの」
「その篠崎健斗というフルネームの呼び方、やめてくれよ。それから、僕のあまり味にはこだわらないけど、僕のいた世界には美食家が沢山いて、美味しい物が沢山ある」
「フルネームってことは、貴族の様に、家名があるのね。健斗が家名で、名前は篠崎?」
「いや、篠崎が家名と言うか苗字で、健斗が名前。それから、僕の国は日本と言う国で……」
 エルフ、獣人も居ない平和な国で、教育は、6・3・3・4と十六年間するのが普通だという事。僕の世界では存在しない魔物に食べられ死んでしまった事。その魔物は悪戯好きの神が、呼び出したもので、別の神が直ちに消去するはずだったが、不手際により遭遇し、予定外の死を迎えることになった事。その代償として、転生の女神が、好きなところに転生してくると言ったので、異世界ファンタジーの世界を指定して転生してもらった事。その全てを正直に話した。

「へぇ、魔物も居ない国だから、そんなひ弱な身体で生きてこれたのね。納得したわ。もっといろいろと健斗の世界の話をききたいけど、今日はもう遅いし、寝ましょうか」
 そう言って、彼女は薪コンロに蓋をして消火し、ランタンも消した。
 薪暖炉の炎だけは燃え続けていて、真っ暗と言う訳ではなかったが、彼女は後ろを向いて大胆に服を脱ぎ始めた。
 パンツは黒のスパッツというか一分丈の短パンの様なもので、思っていた通りにノーブラで、炎の明かりが揺れて、彼女の白い肌を垂らし出し、なんとも興奮してしまう。
 直ぐに、白いガウンを羽織ってしまい、一瞬のできごとだったが、息子は正直でビンビンに勃起していた。

 布団は僕が使っている一組しかないのか、彼女は段上の床の間のような絨毯の上に、ヨガマットのようなクッションを敷いて、横になり、毛布をかぶった。
 僕は凄く申し訳なく感じたが、流石にすっ裸では、彼女に布団を使う様には言えなかった。
 僕より一回り位年上だが、こんな美女と二人きりで、一つ屋根の下で、生活していくのかと思うと、困惑するとともに、変な期待までしてしまう。
 その日はずっと寝ていたためか、全く眠くない上に、彼女の寝息に興奮し、いつまでも寝付けなかった。

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