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073:祈り~時を止めて
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【おとぎ話かと思ったが、どうやらその島には莫大な富が眠っているらしいな? まさかお前、それを独り占めしようとしたのか? ありえる事だがオレにバレた以上はオレの物だ】
そんな事を思ったこともないよ。何を言っているの?
【ついては正式にオレの島となった証として、島民全てを皆殺しにし、島で一番高い場所に作らせる、オレの黄金像の下へと埋めてやる。人柱として実に栄誉なことだろう。これよりオレが指揮する艦隊でお前を迎えに行く。しかと体を磨いて待つが良い】
あまりにも傍若。あまりにも非道。あまりにもゲス。あまりにも鬼畜。あまりにも悪魔めいた言動にひざから崩れ落ちる。
「ひどいよ……どうしてこんなひどい事ばかり……私が兄上に何かしましたか……私はそんなに悪い子でしたか……もう全てがいや……」
もう泣かないって决めたのに、また涙がどこからかやってきた。
悲しくてカナシクテしゃくりあげて泣いていると、牢屋の彼が声をかけてくる。
「……俺はアンタを殺そうと来た。が、流石に同情する。いくらアンタが聖女の力で立ち向かっても、兵士千名と軍艦十一隻に敵うはずがない。だが考えても見ろよ。アンタはここもアイツらも好きなんだろう?」
彼の言葉の意味がスっと入り、顔を上げて続きを聞く。
「いいかい聖女様。クソみてぇな話しだけどよ、アンタが我慢すりゃアイツらも命も助かると思わねぇか?」
「たす……かる……の?」
「そうだ。考えてみろ、アンタの特殊な知識と対話する力と、ここの奴ら。皇太子殿下はどっちを取ると思う?」
「そうか……私がヤマトさん達の助命を願い出て、それと引き換えに力を使えばいいんだ」
「そうだ、もうそれっきゃねぇ。いいか聖女様。今夜ここを出て仲間と合流する。その足でアンタは本国へ帰るんだ。アイツらの命を守るためにな?」
その言葉が終わる頃にはもう涙は止まっていた。
だから彼に「わかりました」と強く言いながら立ち上がる。
そのまま三歩あるいた所で、「月が真上に来た時に待つ」と言われ、一つうなずいてそのまま立ち去る。
「ヤマトさん、ロッドマンさん、わん太郎ちゃん、エマちゃん。私が必ずみんなを守るから」
そう固く誓い、右手を胸の聖石へと当てながらエマちゃんの元へと向かった。
◇◇◇
「お、帰ってきたか? おかえりアリシア。今日の朝飯はデカイ鶏みたいなのが居たから、ソイツの串焼きだ。絶対美味いから楽しみにしていてくれ」
「あはは……それは楽しみですね」
「だろ? エマージェを食べる予行演習にもなるし、一石二鳥だろ。鳥だけに」
「ぽみょももももも!?」
「すまん、エマージェ俺が悪かった。鳥さんの言葉がわからんから許せ!」
「ぽみょおおおおおおおおおん!!」
「あきらめるがいいんだワン。駄鳥の運命はきまったワンからして」
「ぴぴぴ!!」
「ワレにあざとさは通じないワン!」
『主よ、誰がうまいことを言えといいましたか。それにゾンビ娘には意味不明ですよ』
「あ! それもそうだな。いいかアリシア、一石二鳥っていうのはだな――」
あたたかい……こんな普通の時間。いつもの会話だと言うのに、何もかもが満たされる。
今にも心のあたたかさが、両目から落ちそうで怖い。落ちたらまた心配かけちゃうから。
だから目一杯笑顔で応える。「もうなんですかそれは~」と笑いながら、今この時間。
一分一秒を心に刻み、死ぬまで忘れないと魂に刻んで。
自愛の女神様。どうか叶うならば、この時間が永遠に止まりますように……。
そんな事を思ったこともないよ。何を言っているの?
【ついては正式にオレの島となった証として、島民全てを皆殺しにし、島で一番高い場所に作らせる、オレの黄金像の下へと埋めてやる。人柱として実に栄誉なことだろう。これよりオレが指揮する艦隊でお前を迎えに行く。しかと体を磨いて待つが良い】
あまりにも傍若。あまりにも非道。あまりにもゲス。あまりにも鬼畜。あまりにも悪魔めいた言動にひざから崩れ落ちる。
「ひどいよ……どうしてこんなひどい事ばかり……私が兄上に何かしましたか……私はそんなに悪い子でしたか……もう全てがいや……」
もう泣かないって决めたのに、また涙がどこからかやってきた。
悲しくてカナシクテしゃくりあげて泣いていると、牢屋の彼が声をかけてくる。
「……俺はアンタを殺そうと来た。が、流石に同情する。いくらアンタが聖女の力で立ち向かっても、兵士千名と軍艦十一隻に敵うはずがない。だが考えても見ろよ。アンタはここもアイツらも好きなんだろう?」
彼の言葉の意味がスっと入り、顔を上げて続きを聞く。
「いいかい聖女様。クソみてぇな話しだけどよ、アンタが我慢すりゃアイツらも命も助かると思わねぇか?」
「たす……かる……の?」
「そうだ。考えてみろ、アンタの特殊な知識と対話する力と、ここの奴ら。皇太子殿下はどっちを取ると思う?」
「そうか……私がヤマトさん達の助命を願い出て、それと引き換えに力を使えばいいんだ」
「そうだ、もうそれっきゃねぇ。いいか聖女様。今夜ここを出て仲間と合流する。その足でアンタは本国へ帰るんだ。アイツらの命を守るためにな?」
その言葉が終わる頃にはもう涙は止まっていた。
だから彼に「わかりました」と強く言いながら立ち上がる。
そのまま三歩あるいた所で、「月が真上に来た時に待つ」と言われ、一つうなずいてそのまま立ち去る。
「ヤマトさん、ロッドマンさん、わん太郎ちゃん、エマちゃん。私が必ずみんなを守るから」
そう固く誓い、右手を胸の聖石へと当てながらエマちゃんの元へと向かった。
◇◇◇
「お、帰ってきたか? おかえりアリシア。今日の朝飯はデカイ鶏みたいなのが居たから、ソイツの串焼きだ。絶対美味いから楽しみにしていてくれ」
「あはは……それは楽しみですね」
「だろ? エマージェを食べる予行演習にもなるし、一石二鳥だろ。鳥だけに」
「ぽみょももももも!?」
「すまん、エマージェ俺が悪かった。鳥さんの言葉がわからんから許せ!」
「ぽみょおおおおおおおおおん!!」
「あきらめるがいいんだワン。駄鳥の運命はきまったワンからして」
「ぴぴぴ!!」
「ワレにあざとさは通じないワン!」
『主よ、誰がうまいことを言えといいましたか。それにゾンビ娘には意味不明ですよ』
「あ! それもそうだな。いいかアリシア、一石二鳥っていうのはだな――」
あたたかい……こんな普通の時間。いつもの会話だと言うのに、何もかもが満たされる。
今にも心のあたたかさが、両目から落ちそうで怖い。落ちたらまた心配かけちゃうから。
だから目一杯笑顔で応える。「もうなんですかそれは~」と笑いながら、今この時間。
一分一秒を心に刻み、死ぬまで忘れないと魂に刻んで。
自愛の女神様。どうか叶うならば、この時間が永遠に止まりますように……。
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