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054:ウロコと本体
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「命まで助けてもらったばかりか、顔の痛みまで消してもらうなんて……ヤマトさん本当にありがとうございます!!」
「あぁ気にするなって。それより少しは和らいでよかったな」
と、話してから魚鱗のタトゥーがやっぱり気になる。
てっきり民族的なタトゥーみたいなものと思っていたけど、呪いと聞いたらほってはおけない。
「その魚鱗だけどさ、ちょっと触ってもいいか?」
「え?! その……気持ち悪くないですか?」
「どうしてさ? 呪いのウロコって言うけど、何よりもその朱色・形・模様・どれをとっても最高に美しい。もしこんな魚を見たら一目惚れするに違いないからな」
「そんな……」
『まぁ貴女が驚くのも無理もないですよ。とはいえ、それには理由があるのです。私の主になり、神釣島の管理者となったという事は、並大抵の精神力と魂では務まらないのですから』
「おいおい、俺が変態みたく言うのやめていただけますぅ?」
すると三人して「ちがうの?!」みたいに言いやがる。不本意すぎて草も生えん。
「まぁ、俺はおれの価値基準があるのさ。だから他人が何と言おうと、アリシアの顔はどこの誰よりも美しい」
「うつく……そんな事言われたのはじめ……うぅぅ」
「ちょ、泣くなよ!?」
「んぁ~悪い男だワンねぇ」
『変態め』
「キミタチ!?」
「違うんです。この顔になってそんな事言われたことなくて……うれしくてつい」
「そうなのか? ソイツらは分かってないなぁ。こんなに美しいウロコなのに」
『顔じゃなくてウロコを美しいと愛でるのは、世界中探しても主と三人いればいいほうでしょうね」
その言葉を聞いたアリシアは「顔じゃなくてうろこ……アハハ」と、乾いた笑いをした後にマジメに話す。
「ヤマトさん、この魚鱗の呪いは最高位の魔女がかけたものです。もし触れた事で何かあっては私がせいじ……いえ、私のせいで酷いことになったら悔やみきれません」
そう俺の瞳をしっかりと見つめたアリシアは静かに話す。
だから「なるほど、理解した」と一言いうと、アリシアはホッとした様子で「分かってくれましたか」と言う。
「わかった、やっぱり美しい」
そう言った後に、そっとアリシアの左ほほへと手を伸ばす。
驚き「え!?」と言ったまま固まるアリシアだったが、それに構わず触れてみる。
思った通りにシットリとした質感と、肌に吸い付く感触。
その瞬間理解した。コイツは別次元に繋がっていると。
と、同時にウロコ全体に魚眼が現れ、俺をいっせに睨みつけたと同時に、魚の口に変わる。
それが一斉に噛みつこうとしたので慌てて手を引っ込めた。
「っと、危ねぇ!?」
「だ、大丈夫ですかヤマトさん?!」
「大丈夫、ほれ。指は付いている」
「はぅ、よかったぁ……」
『断りもなく娘の柔肌にふれるとは、流石は変態ですね。で……どうでしたか?』
「それなんだが、多分他の場所にコイツの本体がいる……と思う」
「別の場所? この魚鱗は単体であるのでは無いのですか?」
「あぁそうだ。さっき袋を通して感じたんだけど、呪力を吸っている時にもっと遠い場所から流れ込んでいる感じがしたんだよ」
その言葉にアリシアは少し考えると、「そう言えば」と話す。
どうやら呪いが発動する直前、いつも魚鱗が一瞬なくなるような感じがするらしく、その直後に激しい痛みがあるそうだ。
多分その時、本体と繋がって呪いを流し込むために、一瞬呪いが解けるのだろう。
「なるほどな……それなら今は無理か」
呪力を抜かれて休眠している魚鱗は、最小の防衛力だけを備えているのだろう。
今こいつを何とかしても、本体にはダメージは通らないだろうからな。
そう一人で納得していると、アリシアが「ヤマトさん?」と不思議そうに話す。
「あぁ悪い。ちょっと考え事をしていた。けれどアリシア、近いうちに何とか出来るかも知れない」
そう伝えると、目を丸くして彼女は驚くのだった。
◇◇◇
――時を同じく、アスガルド帝国の宰相の元へと一つの知らせが届く。
「あぁ気にするなって。それより少しは和らいでよかったな」
と、話してから魚鱗のタトゥーがやっぱり気になる。
てっきり民族的なタトゥーみたいなものと思っていたけど、呪いと聞いたらほってはおけない。
「その魚鱗だけどさ、ちょっと触ってもいいか?」
「え?! その……気持ち悪くないですか?」
「どうしてさ? 呪いのウロコって言うけど、何よりもその朱色・形・模様・どれをとっても最高に美しい。もしこんな魚を見たら一目惚れするに違いないからな」
「そんな……」
『まぁ貴女が驚くのも無理もないですよ。とはいえ、それには理由があるのです。私の主になり、神釣島の管理者となったという事は、並大抵の精神力と魂では務まらないのですから』
「おいおい、俺が変態みたく言うのやめていただけますぅ?」
すると三人して「ちがうの?!」みたいに言いやがる。不本意すぎて草も生えん。
「まぁ、俺はおれの価値基準があるのさ。だから他人が何と言おうと、アリシアの顔はどこの誰よりも美しい」
「うつく……そんな事言われたのはじめ……うぅぅ」
「ちょ、泣くなよ!?」
「んぁ~悪い男だワンねぇ」
『変態め』
「キミタチ!?」
「違うんです。この顔になってそんな事言われたことなくて……うれしくてつい」
「そうなのか? ソイツらは分かってないなぁ。こんなに美しいウロコなのに」
『顔じゃなくてウロコを美しいと愛でるのは、世界中探しても主と三人いればいいほうでしょうね」
その言葉を聞いたアリシアは「顔じゃなくてうろこ……アハハ」と、乾いた笑いをした後にマジメに話す。
「ヤマトさん、この魚鱗の呪いは最高位の魔女がかけたものです。もし触れた事で何かあっては私がせいじ……いえ、私のせいで酷いことになったら悔やみきれません」
そう俺の瞳をしっかりと見つめたアリシアは静かに話す。
だから「なるほど、理解した」と一言いうと、アリシアはホッとした様子で「分かってくれましたか」と言う。
「わかった、やっぱり美しい」
そう言った後に、そっとアリシアの左ほほへと手を伸ばす。
驚き「え!?」と言ったまま固まるアリシアだったが、それに構わず触れてみる。
思った通りにシットリとした質感と、肌に吸い付く感触。
その瞬間理解した。コイツは別次元に繋がっていると。
と、同時にウロコ全体に魚眼が現れ、俺をいっせに睨みつけたと同時に、魚の口に変わる。
それが一斉に噛みつこうとしたので慌てて手を引っ込めた。
「っと、危ねぇ!?」
「だ、大丈夫ですかヤマトさん?!」
「大丈夫、ほれ。指は付いている」
「はぅ、よかったぁ……」
『断りもなく娘の柔肌にふれるとは、流石は変態ですね。で……どうでしたか?』
「それなんだが、多分他の場所にコイツの本体がいる……と思う」
「別の場所? この魚鱗は単体であるのでは無いのですか?」
「あぁそうだ。さっき袋を通して感じたんだけど、呪力を吸っている時にもっと遠い場所から流れ込んでいる感じがしたんだよ」
その言葉にアリシアは少し考えると、「そう言えば」と話す。
どうやら呪いが発動する直前、いつも魚鱗が一瞬なくなるような感じがするらしく、その直後に激しい痛みがあるそうだ。
多分その時、本体と繋がって呪いを流し込むために、一瞬呪いが解けるのだろう。
「なるほどな……それなら今は無理か」
呪力を抜かれて休眠している魚鱗は、最小の防衛力だけを備えているのだろう。
今こいつを何とかしても、本体にはダメージは通らないだろうからな。
そう一人で納得していると、アリシアが「ヤマトさん?」と不思議そうに話す。
「あぁ悪い。ちょっと考え事をしていた。けれどアリシア、近いうちに何とか出来るかも知れない」
そう伝えると、目を丸くして彼女は驚くのだった。
◇◇◇
――時を同じく、アスガルド帝国の宰相の元へと一つの知らせが届く。
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