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032:シン・帰ってきたウルトラなアレ

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 投げる瞬間、ゴッド・ルアーを最初の形態である、捕食型の十センチほどの黄金の小魚ミノーにする。

 飛ぶ瞬間、ゴッド・ルアーの赤い瞳が高速で動き、獲物を見つけると口角を上げながら突っこむ。
 ちょっと不気味なソレは、透き通るエメラルドグリーンの水面へと音もなく侵入し、その驚異的な能力に驚く。

 普通なら着水音がして魚が逃げてしまうが、このゴッド・ルアーは格が違う。
 しずかに違和感なく黒い魚影へ向かって行くと、自然に存在をアピール。

 ハデなカラーと見た目で一気に興味を持った黒い魚は、即座に頭から喰らいつく。

「フィィィッシュ!! 来たぞ、淡水で全長四十五センチはある結構な大物だ!」

 逃げる黒い魚の力で竿先が綺麗に曲がり、魚の動きを制御しつつ体力を奪う。
 徐々に動きが鈍くなるが、まだまだ動きに余裕がある。
 だが同時に釣り竿ロッドだけの動きでは、魚をとりきれないほどのパワーに苦戦。

「ッぅ~、こんな時にあの糸巻き機械星座のリールがあれば取り込みも楽なんだけどな!」

 それを聞いた相棒が、『もしかして今なら……』とつぶやく。
 一体何がと聞こうと思ったけれど、そのまえに相棒が話す。

『主よ。魚とファイトしている今なら出来るかも知れません! 左手にリールを持ったパーミングした感覚を思い出し、右手はリールの糸巻きハンドルを思い浮かべてください! もちろん変態スキルを使ってです!!』
「変態スキルって約すなし! けど――分かったやってみる!!」

 マナポインちょうを手に持った相棒へと強烈に込める。

 瞬間、いっきに体から力が抜け出る脱力感に似たものを感じたと同時に、相棒が『うわッ!? ちょ、主やり過ぎです!!』と叫ぶがもう遅い。だってもう出ちゃったし。

 その時だった。〝ヌぞぅ〟とした感触が両手に伝わり、徐々にソレが形となってくる。

 左手の中にしっかりとしたあの感覚・・・・を感じ、思わずそれを握りしめたと同時に、右手も人差し指と親指で固くて弾力のあるハンドルノブを掴む。

「ッ!? キタ! この感触は間違いない! 俺の右半身たる、23式の電子制御のリール……だよな?」

 見れば手の中にスッポリと収まっているのは、木製で出来た糸巻き機械ベイトリールだった。

 その木製ゆえのあたたかさと、しっとり具合がなんとも言えず「おお……高級感がある」と言ったのち、「って違うだろ!」とセルフツッコミ。

「おい相棒! なんだよこのオモチャは!? こんなんじゃすぐに壊れるってば!!」
『え……あれだけのMP釣を使用したのに、出来たのがコレ? そんなバカな』
「そうは言っても今は使うっきゃねぇ。壊れるなよ~ブチ上がれッ!!」

 右手でハンドルをしっかり持ち、思いっきり巻き取る。
 一瞬〝ぎしぃ〟と苦しげに音がなり、ハンドルが折れるのかと思った瞬間、軽快に回り始めた。

「おお?! 意外と丈夫だし、元のヌルヌルな巻心地と同等――いや、それ以上かも!!」

 木製だからすごく巻心地も悪いのかと思ったら、そんな事もなく気持ちよくハンドルが回る。
 予想外の使い心地の良さに、さらに巻き取る力が増し、一気に水面から黒光りした魚が浮いてきた。

 そのまま腰を落としながら、強引に魚を滝つぼからブチ抜く!
 太陽の光をうけた黒い魚体は、きらめく水しぶきを虹色に輝かせて、を描き足元へと落ちてきた。

 激しく七度はねながら黒光りした魚は大人しくなり、口をゆっくりと開け閉めしていたのを見て、「やったぜ相棒!」と叫ぶ。

『お見事! 流石は我が主です。完璧なキャッチでした』
「だろ? いぁ~やっぱりちゃんとした魚釣りはいいなぁ。めっちゃ楽しい♪ よし、早速焼いて食べよう。ハラヘリの民が暴動一歩手前だからな」


 ◇◇◇


 そう言いながら主は黒い魚を持っていく。
 右手に魚。左手には転がしておいた駄犬を抱えながら、鼻歌交じりに歩く。

 そんな主を見て、ここまで私を使いこなせる事を嬉しく思いつつ、その急成長している姿に不安すら感じた。
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