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告白から始まる夏休み
014:黒ちゃんの……
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黒ちゃんを抱きかかえたと同時に、先程から何か生ぬるいものを感じた。
それが何かを考えるよりも、今は黒ちゃんの舌が冷たいのが気になる。
だから彼女の瞳を見つめながら、優しく問いかけた。
「黒ちゃん? ねぇどうし……い、嫌ああああああああああああ!?」
左前腕部へねぷりとさらに生暖かい感触を感じた刹那、腕を粘着性のある凹凸が滑り落ちる。
それを思わず見て叫ぶ――だってそれは。
「嫌……ダメ……出ちゃやだああああああ!!」
黒ちゃんのお腹から次々とこぼれ落ちる臓物。
門灯に照らされ真っ赤な光を反射して、ぬぷぷぷと指から腸がこぼれ落ちた。
と同時に、鯖と臓物の香りが鼻をつき、涙と吐き気がこみ上げ息が詰まる。
それでも叫びながら、黒ちゃんの体を元に戻そうとこぼれ落ちた腸を必死に掴み、お腹の中へと戻す。
ビクリと震える黒ちゃんは、苦しげに「にゃぁ゛……」と一鳴きすると、私の胸の中へと顔を埋めて動かなくなる。
「嫌だよおおおこんなのダメだよおおおお黒ちゃんイヤアアアアアアアアア」
錯乱しこぼれ落ちた赤い血潮を掬い戻そうと、右手で地面を掴む。
ジャリっとした感触と、赤く染まった白詰草をむしり取り、それを黒ちゃんの中へと入れようとした瞬間、背後から思い切り抱きかかえられた。
「紗奈!! 落ち着け何があった?」
「お父さん黒ちゃんが黒ちゃんがあああああ」
「紗奈、お父ちゃん、一体……黒ちゃん!?」
お父さんとお母さんが何かを叫んでいる。
でもその声が次第に薄れてきて、腕の中の黒ちゃんのぬくもりが徐々に消失して行くのを感じた。
さらに視界も急速に狭まり、黒ちゃんの後頭部を見たのを最後になり記憶が…………。
◇◇◇
――七月二十二日・午後三時。小豆島内・安田駐在所付近。
何の因果か、こんなド田舎まで来ちまったのが運の尽き。
まぁ、やる気のねぇ僕を厄介払いするために、巷で話題のペット惨殺事件をぶん投げて来た上役様には頭がさがりますわ。
けどねぇ、どうして相棒が堅物で有名な岩山遊吉なんだよ。
どうせこんな島へ遊びに来るなら、もっといい女がいいんだけどねぇ。
大体この相棒、自由すぎだろうが。
突然「潮風を感じたくありませんか? 感じたいですよね? 運転手さん止めてください」とか言いやがる。
おかげでタクシー止めてまで、馬鹿みてぇにテクテクと徒歩で行かなきゃならねぇのよ。
しかもあれだ、海なんて見えねぇし。
だからこうも言いたくなるだろ?
「あちぃねぇ……」
「後藤警部、熱いって言うのは鬱陶しいので禁止です」
「そうは言ってもさぁ遊吉ちゃん。僕ぁ困るのよ~キミと違って、ピンクの乳帯が見えるほどの薄着じゃないし~」
「遊吉って呼ばないでください。セクハラで訴えますよ」
「名前呼んだだけでセクハラ!? しかも薄着の件じゃねぇのかよッ!!」
「後藤警部の存在が、小豆島最強のHENTAIって事で訴えますが」
「すげぇ最強規模で僕ぁびっくりだが?」
ったく、なんて女だ。
僕ぁ一応クールビズスタイルなのに、自分だけスケスケの涼しそうな白のワンピ着やがって。
徳島の有名店の特注だか知らねぇが、残念なお乳に見栄を張るから胸元が遊んでるぞ?
黙ってりゃ顔だきゃぁ、ミスコン優勝なのにねぇ。
「卑猥な気配ですね。刑法百七十五条で斬首刑に処しますが?」
「僕ぁ猥褻物でもねぇし、日本に斬首刑なんてねぇし!?」
「本気ですか後藤警部? 存在事態が斬首に値しますが」
「星五つで存在の完全否定いただきました! っと、見えてきたなぁ」
遠くで手を振る男の姿が見えた。
アイツは僕の同僚だった崎山で、年も同じ四十だったはずだ。
僕と違って若い時から肥えていたが、今はもっとすげぇなオイ。
そんな事を思っていると、崎山は白チャリを揺らしながらゆっくりとこっちへと来た。
それが何かを考えるよりも、今は黒ちゃんの舌が冷たいのが気になる。
だから彼女の瞳を見つめながら、優しく問いかけた。
「黒ちゃん? ねぇどうし……い、嫌ああああああああああああ!?」
左前腕部へねぷりとさらに生暖かい感触を感じた刹那、腕を粘着性のある凹凸が滑り落ちる。
それを思わず見て叫ぶ――だってそれは。
「嫌……ダメ……出ちゃやだああああああ!!」
黒ちゃんのお腹から次々とこぼれ落ちる臓物。
門灯に照らされ真っ赤な光を反射して、ぬぷぷぷと指から腸がこぼれ落ちた。
と同時に、鯖と臓物の香りが鼻をつき、涙と吐き気がこみ上げ息が詰まる。
それでも叫びながら、黒ちゃんの体を元に戻そうとこぼれ落ちた腸を必死に掴み、お腹の中へと戻す。
ビクリと震える黒ちゃんは、苦しげに「にゃぁ゛……」と一鳴きすると、私の胸の中へと顔を埋めて動かなくなる。
「嫌だよおおおこんなのダメだよおおおお黒ちゃんイヤアアアアアアアアア」
錯乱しこぼれ落ちた赤い血潮を掬い戻そうと、右手で地面を掴む。
ジャリっとした感触と、赤く染まった白詰草をむしり取り、それを黒ちゃんの中へと入れようとした瞬間、背後から思い切り抱きかかえられた。
「紗奈!! 落ち着け何があった?」
「お父さん黒ちゃんが黒ちゃんがあああああ」
「紗奈、お父ちゃん、一体……黒ちゃん!?」
お父さんとお母さんが何かを叫んでいる。
でもその声が次第に薄れてきて、腕の中の黒ちゃんのぬくもりが徐々に消失して行くのを感じた。
さらに視界も急速に狭まり、黒ちゃんの後頭部を見たのを最後になり記憶が…………。
◇◇◇
――七月二十二日・午後三時。小豆島内・安田駐在所付近。
何の因果か、こんなド田舎まで来ちまったのが運の尽き。
まぁ、やる気のねぇ僕を厄介払いするために、巷で話題のペット惨殺事件をぶん投げて来た上役様には頭がさがりますわ。
けどねぇ、どうして相棒が堅物で有名な岩山遊吉なんだよ。
どうせこんな島へ遊びに来るなら、もっといい女がいいんだけどねぇ。
大体この相棒、自由すぎだろうが。
突然「潮風を感じたくありませんか? 感じたいですよね? 運転手さん止めてください」とか言いやがる。
おかげでタクシー止めてまで、馬鹿みてぇにテクテクと徒歩で行かなきゃならねぇのよ。
しかもあれだ、海なんて見えねぇし。
だからこうも言いたくなるだろ?
「あちぃねぇ……」
「後藤警部、熱いって言うのは鬱陶しいので禁止です」
「そうは言ってもさぁ遊吉ちゃん。僕ぁ困るのよ~キミと違って、ピンクの乳帯が見えるほどの薄着じゃないし~」
「遊吉って呼ばないでください。セクハラで訴えますよ」
「名前呼んだだけでセクハラ!? しかも薄着の件じゃねぇのかよッ!!」
「後藤警部の存在が、小豆島最強のHENTAIって事で訴えますが」
「すげぇ最強規模で僕ぁびっくりだが?」
ったく、なんて女だ。
僕ぁ一応クールビズスタイルなのに、自分だけスケスケの涼しそうな白のワンピ着やがって。
徳島の有名店の特注だか知らねぇが、残念なお乳に見栄を張るから胸元が遊んでるぞ?
黙ってりゃ顔だきゃぁ、ミスコン優勝なのにねぇ。
「卑猥な気配ですね。刑法百七十五条で斬首刑に処しますが?」
「僕ぁ猥褻物でもねぇし、日本に斬首刑なんてねぇし!?」
「本気ですか後藤警部? 存在事態が斬首に値しますが」
「星五つで存在の完全否定いただきました! っと、見えてきたなぁ」
遠くで手を振る男の姿が見えた。
アイツは僕の同僚だった崎山で、年も同じ四十だったはずだ。
僕と違って若い時から肥えていたが、今はもっとすげぇなオイ。
そんな事を思っていると、崎山は白チャリを揺らしながらゆっくりとこっちへと来た。
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