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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編

073:ジジイ流

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「くッ、俺の迷いが最悪な状況を招いたか……」

 動く巨体は〝う゛ぇしょり〟と内臓を落としつつ、戦極へと完全に向き直るドラゴンゾンビ。
 それが一瞬動きを止めると、〝ぬらり〟とした口を開きひしゃげた・・・・・声で話す。

「ヴォルル……惜しい。もう少しで食えたものを……時に、キサマはあの一族と言うのは本当か?」
「あの一族? それは何のことだ?」
「とぼけるでないわ。あの憎き一族なのだろう、古廻の!」

 ちッ、ご先祖様恨むぜぇ。こんな置き土産しやがって。
 付喪神の手助けもなく、どうやって倒せばいい?
 弱点は眉間の奥にあるという、玉――つまりはコアだろう。
 
 そこを潰さない限り、この腐った体は止まらない。
 だがコアは厚い頭蓋ずがいの奥。よほど正確に狙い穿うがた無い限り、穴を開ける事は出来ないよな。
 
 先ほどとは違い、確実にガードもするし動くだろう……どうする。

「沈黙は答えと受け止めよう。キサマの一族は大罪を犯した。見よ! この溶ける肉体、きしむ関節、こぼれ落ちる眼球……すべてキサマらが悪い!!」
「ならばどうする?」
「決まっておろう、この王をここまでコケにしたのだ。だが喜べ、贖罪しょくざいの機会を与えてやろう」
「それはありがたいが、遠慮させてもらおう」
「それはムリだ。この王が決めたことゆえな。だから憎き一族の血肉を触媒しょくばいに、完全復活させてもらおう!!」

 王はそう言うと、腐る体を動かし戦極へと迫る。
 腐っているはずの体だが、その動きは野生の熊なみに早く、あっという間に戦極へと迫り攻撃。

「死ねいッ!!」

 骨が見え隠れする、右手の四本指を高くあげると同時に振り下ろす。
 その威力は、受け止めるなどと言うことは今の装備では不可能。

 戦極はそう判断すると、バックステップで背後へと飛ぶ。
 着地と同時に勢いよく前へでると、振り下ろされた右腕を駆け上る。
 そのまま肩へと登りきり、勢いをつけて眉間へと攻撃するが。

「ぐッ、硬てえええ! 本当に骨なのかよ!?」
「王の顔を踏みつけるとは不遜ふそんなり!」

 左手で戦極を、ハエのように払い除ける王。
 その手に飛び乗ると、勢いよく吹き飛び空中で体勢を整えて着地。
 と、同時に戦極は王の右側より走り、まずは機動力を奪うために右足へと攻撃。

「俺が何者かと聞いたな? 教えてやるよ……これが答えだッ!!」

 戦極は細身の剣へと気を込める。
 瞬間、うす白く発光した細身の剣は、刃へと光が集約し輝きを増す。
 その動きはこれまでと明らかにちがうのは、素人でもわかるほどだ。

 剣を左斜め後ろへと構えつつ、前かがみ気味に右後ろ足へと狙いを定める。
 狙うは大腿骨だいたいこつの下にある、膝関節ひざかんせつへとわざを放つ。

「ジジイ流 連斬術! 壱式・五連斬!!」

 ――ジジイ流。

 戦極が魂へと刻み込まれた一子相伝いっしそうでんの古武術名だ。
 だが未だ戦極は中伝であり、皆伝かいでんになって初めて流派が明かされる。
 ゆえにクソ師匠たる祖父に愛情をこめて・・・・・・、ジジイ流と呼ぶ。

 その業が、三百年ぶりに異世界で放たれた。
 
 壱式・五連斬とは、なにも適当に斬りつけるだけではない。
 すべてが同じ力と同じ速度。そして全て同じ場所・・・・・・へと寸分の狂いなく叩き込む業だ。
 
 威力は厚みのあるオノで切り込むより、さらに高威力!
 それが一度に五連、腐り落ちたとはいえ、まだ立派な太もも下の関節へと斬撃の銀光が噛みつく。

「グゴオオオオオム!?」

 王の関節は〝ムヂィ〟と、苦しそうな音と共に断ち斬られた。
 思わずバランスを崩す王は、右手を床につけ体勢をグルリと戦極へと向き直るのだった。
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