62 / 105
ダンジョン~〝戦極〟覚醒編
061:戦極の片鱗
しおりを挟む
「……聞いていたのとは多少ちがいますわね」
エカテリーナが呟きながら見る先。
そこには墓地が広がっていた。しかもなぜか夜空まで見え、現在いる地下通路とはまるで違う場所だ。
人の高さほどもある墓石の影から、ちらほらと蠢く影がみえる。
どうやらここもアンデッドが徘徊しているようだ。
「予定が狂いましたわ。これより二つに分かれて行動しますわ。わたくし、マリエ、ショウジと。あとは残りで組みなさい」
「そ、そんな僕たちだけですか!?」
「そうですわ。この程度なら、これまで学んだことを実行すれば勝てますわ」
「……わかりました。私たちは別に行動します」
「よき覚悟ですわサクラ。聞き分けのいい子は好きですわ」
「了解。で、俺たちはどうすりゃいいんだ、しっしょ~?」
戦極の物言いが気に食わないのか、「チッ」と吐き捨て説明をするエカテリーナ。
「階段を見つけて報告なさい。時間は今から二時間後、ここに戻って来なさい」
「はいよ~。んじゃ行こうぜ?」
「は、はい」
「わかりました戦極さん。私に出来ることがあれば言ってくださいね」
「俺は二人のサポートだからな、おまえたちが困らないようにはするさ」
去っていく三人……いや、一人を苦々しく見つめた後、エカテリーナは三人とは逆の方向へと歩き出す。
そこへ真乃依が小走りによってくると、告げ口をするように話す。
「しっしょ~。いいのぉ? あんな事言わせてさぁ? あいつ、アタシのこと馬鹿にしすぎだしぃ」
「いいんじゃなくて? どうせ無事に地上には出れませんし」
エカテリーナの言葉に、思わず足をとめる真乃依。
その言葉の意味が分からずも、なんとなく不穏な空気を感じてニヤリと口角をあげる。
「流石しっしょ~! 楽しくなりすぎぃ」
「ち、下品な女だぜ。まぁ同意だがな」
三人は怪しく揺らめく魔具の明かり中、暗い墓地の中を進む。
エカテリーナが切り刻む、アンデッドの断末魔を聞きながら……。
◇◇◇
「せ、戦極さん。僕の後ろへ」
「大丈夫だよ、今のところは――なっとッ!!」
戦極と桜。そして剛流の三人は墓地を進む。
ゾンビ型のアンデッドが、時たま現れて先頭の戦極を襲うが、苦もなくそれを駆逐する。
それを見た桜が、どうして以前と違って、ここまで戦えるのかを不思議そうに戦極へとたずねた。
「あぁそれは気の力ってやつだよ。胡散臭いだろうが、マジであるんだって気ってのはな」
「気ですか……それは魔力と同じものなんですか?」
「それとは違うな。魔力ってのは、体の中から湧いてくるんだろう?」
「ええそうです。たしかに消費しますが、時間をかければまた元に戻る感じですね」
「だろう? それに引き換え、気力ってやつは体の中で練らないと使えないのさ。だから燃費が凄く悪い」
剛流は戦極が大木の下で、九日間静かに過ごしていたことを思い出す。
「だ、だから九日もの間、大木の下で気を練っていたんですね?」
「剛流もわかるようになったじゃん。結構大変なんだぜ、アレ?」
「結構ですんじゃうのが凄いですよ。私なんか一日すらムリかも」
「そこはなぁ……昔からやらされていたからな……」
「「戦極さん!?」」
また遠い目で、右目より涙をポロリと落とす戦極に二人は驚く。
が、そんな状況でゾンビが襲いかかってきても、適切に駆逐する戦極に二人は目を見開く。
その剣さばき、足の運び、上半身の体捌きと、どれを見ても一般人のソレではなかったのだから。
「す、すごい……。僕の動きとはまるで違う」
「うん。私は魔法しか教えてもらっていないけど、戦士の戦い方は教えてもらったよ。だからこそわかるんだ。戦極さんは違うって」
今も前方より三体のゾンビが襲ってきているが、ほぼ動かず柳のように体をしならせ、攻撃を躱してゾンビの腕を斬り飛ばす。
さらに左から襲ってくるゾンビへ蹴りを放ち、倒れたと同時に右のゾンビの首をハネる。
首をハネ飛ばされたゾンビの体は、混乱したのか中央のゾンビへと掴みかかり、動きが鈍ったところで脳天へと剣を突き刺す。
それで二体が背後へと倒れたゾンビへと、同時に覆いかぶさることで身動きがとれなくなったのを確認し、戦極は剣を高速で倒れたゾンビへと突き刺すのだった。
「ま、こんなところか。ん? どうした二人とも、そんな顔をして」
あまりの動きと技の的確さに、二人はますます驚くのだった。
エカテリーナが呟きながら見る先。
そこには墓地が広がっていた。しかもなぜか夜空まで見え、現在いる地下通路とはまるで違う場所だ。
人の高さほどもある墓石の影から、ちらほらと蠢く影がみえる。
どうやらここもアンデッドが徘徊しているようだ。
「予定が狂いましたわ。これより二つに分かれて行動しますわ。わたくし、マリエ、ショウジと。あとは残りで組みなさい」
「そ、そんな僕たちだけですか!?」
「そうですわ。この程度なら、これまで学んだことを実行すれば勝てますわ」
「……わかりました。私たちは別に行動します」
「よき覚悟ですわサクラ。聞き分けのいい子は好きですわ」
「了解。で、俺たちはどうすりゃいいんだ、しっしょ~?」
戦極の物言いが気に食わないのか、「チッ」と吐き捨て説明をするエカテリーナ。
「階段を見つけて報告なさい。時間は今から二時間後、ここに戻って来なさい」
「はいよ~。んじゃ行こうぜ?」
「は、はい」
「わかりました戦極さん。私に出来ることがあれば言ってくださいね」
「俺は二人のサポートだからな、おまえたちが困らないようにはするさ」
去っていく三人……いや、一人を苦々しく見つめた後、エカテリーナは三人とは逆の方向へと歩き出す。
そこへ真乃依が小走りによってくると、告げ口をするように話す。
「しっしょ~。いいのぉ? あんな事言わせてさぁ? あいつ、アタシのこと馬鹿にしすぎだしぃ」
「いいんじゃなくて? どうせ無事に地上には出れませんし」
エカテリーナの言葉に、思わず足をとめる真乃依。
その言葉の意味が分からずも、なんとなく不穏な空気を感じてニヤリと口角をあげる。
「流石しっしょ~! 楽しくなりすぎぃ」
「ち、下品な女だぜ。まぁ同意だがな」
三人は怪しく揺らめく魔具の明かり中、暗い墓地の中を進む。
エカテリーナが切り刻む、アンデッドの断末魔を聞きながら……。
◇◇◇
「せ、戦極さん。僕の後ろへ」
「大丈夫だよ、今のところは――なっとッ!!」
戦極と桜。そして剛流の三人は墓地を進む。
ゾンビ型のアンデッドが、時たま現れて先頭の戦極を襲うが、苦もなくそれを駆逐する。
それを見た桜が、どうして以前と違って、ここまで戦えるのかを不思議そうに戦極へとたずねた。
「あぁそれは気の力ってやつだよ。胡散臭いだろうが、マジであるんだって気ってのはな」
「気ですか……それは魔力と同じものなんですか?」
「それとは違うな。魔力ってのは、体の中から湧いてくるんだろう?」
「ええそうです。たしかに消費しますが、時間をかければまた元に戻る感じですね」
「だろう? それに引き換え、気力ってやつは体の中で練らないと使えないのさ。だから燃費が凄く悪い」
剛流は戦極が大木の下で、九日間静かに過ごしていたことを思い出す。
「だ、だから九日もの間、大木の下で気を練っていたんですね?」
「剛流もわかるようになったじゃん。結構大変なんだぜ、アレ?」
「結構ですんじゃうのが凄いですよ。私なんか一日すらムリかも」
「そこはなぁ……昔からやらされていたからな……」
「「戦極さん!?」」
また遠い目で、右目より涙をポロリと落とす戦極に二人は驚く。
が、そんな状況でゾンビが襲いかかってきても、適切に駆逐する戦極に二人は目を見開く。
その剣さばき、足の運び、上半身の体捌きと、どれを見ても一般人のソレではなかったのだから。
「す、すごい……。僕の動きとはまるで違う」
「うん。私は魔法しか教えてもらっていないけど、戦士の戦い方は教えてもらったよ。だからこそわかるんだ。戦極さんは違うって」
今も前方より三体のゾンビが襲ってきているが、ほぼ動かず柳のように体をしならせ、攻撃を躱してゾンビの腕を斬り飛ばす。
さらに左から襲ってくるゾンビへ蹴りを放ち、倒れたと同時に右のゾンビの首をハネる。
首をハネ飛ばされたゾンビの体は、混乱したのか中央のゾンビへと掴みかかり、動きが鈍ったところで脳天へと剣を突き刺す。
それで二体が背後へと倒れたゾンビへと、同時に覆いかぶさることで身動きがとれなくなったのを確認し、戦極は剣を高速で倒れたゾンビへと突き刺すのだった。
「ま、こんなところか。ん? どうした二人とも、そんな顔をして」
あまりの動きと技の的確さに、二人はますます驚くのだった。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
星の記憶
鳳聖院 雀羅
ファンタジー
宇宙の精神とは、そして星の意思とは…
日本神話 、北欧神話、ギリシャ神話、 エジプト神話、 旧新聖書創世記 など世界中の神話や伝承等を、融合させ、独特な世界観で、謎が謎を呼ぶSFファンタジーです
人類が抱える大きな課題と試練
【神】=【『人』】=【魔】 の複雑に絡み合う壮大なるギャラクシーファンタジーです
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる