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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編

059:びっくり

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「やっと来ましたの? 本当に下等種はどこまでいっても、下等なのですわね」
「下等種ねぇ。それはいいことなんだぜ、しっしょ~?」
「どういう意味ですの?」
「簡単なことだ。最下位なら、あとは上るだけですむ。これほど恵まれているポジションもないだろう?」
「減らず口を……まぁいいですわ。先へ進みますわよ?」

 このドS女は、何をそんなに急いでいるんだ?
 先程からダンジョンの基礎を学ばそうという、感じをまったく感じない。
 むしろ何か目的があって、そこへと急いでいるとしか思えない……何か臭いな。

「あ、あの。向こうにみえる箱はなんでしょうか?」
「箱ですって!? どこにあるんですわ?」

 剛流が指をさす方角。
 そこには壁の中がくり抜かれ、すっぽりとまりこむ木で出来た箱があった。
 大きさは横三十センチほどであり、奥行きは不明だ。
 エカテリーナはそれを見てニヤリと口角をあげると、振り返り戦極へ命令する。

「下等種の出番ですわね。そこの箱を取ってきて開けてみなさい」
「嫌だと言ったら?」
「言えると思って?」

 チッ、これが俺の使い道かよ。
 となれば、この箱がらみでトラップがあるのは確実。
 絶対ではないにせよ、何かトラップが発動すると思って対処しねぇとまずいか。

 だが逆に言えばチャンスではある。
 俺が最初に触れる機会があれば、解呪の札をゲットできるってことだしな。
 札の特徴は桜の師匠の、ジョル爺から聞いているからわかる。
 ……よし、慎重にあけてみるか。

「この箱を取り出せばいいのか?」
「そうですわ。ただ用心なさい、いきなり噛みつかれる事もありますので」
「それは嫌だねぇ……ほかには?」
「毒・爆発・矢が飛ぶ・刃物が飛び出るなどですわ」
「おい、洒落になってないんだが?」
「ホホホ。そのための下等種ゆうしゃさまでしょう? さ、早く開けなさい」

 クソッ、本当に性格が悪いやつだ。
 だがやるしか無い。剣を下に差し込みゆっくりと引き出すのがいいか?

 しょっ……と。結構重いが、問題なく引き出せたな。
 おい、ドS女。残念そうな顔で俺をみるんじゃないよ。
 今のところトラップは無さそうだが……とりあえず床に置くか。

「ここに置くぞ?」
「すぐに開けなさい。さ、勇者たちは少し離れた場所へ行きますわよ」
「そんな!? 酷いですエカテリーナさん!」
「そ、そうですよ。戦極さんだけおいてくなんて!」

 優しいねぇ二人とも。
 だが、もっと優しい二人は遠くから応援してくれているぞ?

「ばっか! お前らこっちこいよ! 爆発したらどうすんだよ!?」
「そうだわ~毒とかお肌荒れちゃうかもだしぃ~」
「だ、そうよ二人とも。さ、行きますわよ」
「だ、そうだ二人とも。俺は大丈夫だから離れていてくれ。もし何かあったら桜に頼るさ」
「わ、わかりました。行こう桜ちゃん」
「うん……気をつけてくださいね」

 そんな顔で見るなよ……俺も少し泣きたくなるってばよ。
 さてと、開けてみるか。
 鍵はない。押して開けるギミックもなさそうだし、単純に蓋を上に開けばいいのか?

 いや、それは危険だ。まずはそうだな……。
 お? ちょうどいい所に石があった。それを当ててみるか。

「ジジイ流 投擲術とうてきじゅつってな!」

 戦極は水切りをするように、斜めした方向から石を箱へと向けて投げる。
 一度床へバウンドした石は、弾かれて上へと起動が変わることにより、箱の蓋の中心部分へとヒット。
 次の瞬間、〝ヴォン〟と空気が弾け飛ぶ音と共に、中から炎が二メートルほど吹き上がる。

 背後から四人の悲鳴と驚き。
 そして「やはりね」と言う声が聞こえて来たことで、戦極はエカテリーナがこうなるのを知っていたと確信。

「オマエ……知っていたな?」
「当然ですわ。あの木箱の紋様は、火が出やすいのですわ。ただ絶対というわけではなく、それが出なかった時にレアアイテムが出現しやすいのですわ」

 そう言うとエカテリーナは木箱に興味をなくし、前へと進むのだった。
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