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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編
051:わん太郎の冒険🐾🦊~指輪の章
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やがてキッチンから香ばしい匂いがただようと、母親がミリーを呼ぶ声がする。
どうやら完成したようで、それを運んでくるように呼んだようだ。
「おまちどうさまー! ママ特性のナズマ料理だよ!」
「もぅこの子ったら。本当はクスの葉や調味料が豊富だった頃は、臭みを上手に消せたんですけどね……今じゃそれも難しくて」
「ふふふ。ワレにかかれば、臭みも美味しくいただくんだワン」
見た目は白身の魚であり、外見のグロテスクさとかけ離れた美しいもの。
香りも香草をつかったからか、レモングラス似の爽やかな香りが部屋に広がった。
母親が切り分けて、わん太郎へも大きな部位が置かれたことで、お待ちかねの食事がはじまる。
どうやらかなり美味しかったらしく、わん太郎は「美味しいんだわーーーーん!!」とご満悦。
そんなわん太郎を見て、美琴もほっこりとするのだった。
やがて楽しい食事も終わり、わん太郎がミリーに抱かれて腹天でスピスピ寝息を立てた頃、美琴は気になっていた事を聞いてみる。
『あのね、ちょっと聞きたいことがあるんだよ?』
「はいなんでしょうか? 私が答えられることなら、なんでも聞いてください」
『ちょっと聞きづらいんだけどね、ミリーちゃんのパパがいないみたいな事を言っていたけれど、何か理由があるのかな?』
わん太郎と一緒に寝ているミリーへと、母親は視線を向ける。
よほどモフモフが気持ちいいのか、満足そうに寝ている娘を見つめながら話し出す。
「あれはこの近くで、新しいダンジョンが発見された時の事です――」
母親はこの近くで起きたことを話す。
どうやらダンジョンが突如出現し、その中へと高ランクの冒険者たちが探索へ行ったが、帰還者がだれもいなかったらしい。
そこで一旦は国がダンジョンへの侵入を禁止したが、最近また再会されたそうだ。
しかもその探索者の一員として、ミリーの父親が志願したという。
そのまますでに九日がたち、まだ父親は戻って来ない。
だから毎日が不安な母親を元気づけるため、ミリーは一人であんなムチャをしたんだろうと言う話だった。
『そんな事が……』
「はい。今帰って来ないことを考えると、もしかしてと悪いことばかり考えてしまいます」
無言がリビングを支配しそうになったころ、間の抜けた声がソファーから聞こえる。
見れば、わん太郎がお腹をポリポリとかきながら、小さなお口でアクビをしていた。
「ふわぁ~ん、寝ちゃったワン。えへへ」
『おきらく極楽太郎なんだよ、ホント』
「失礼な女幽霊だワンねぇ。ワレはちゃ~んと今の話を聞いていたし、今後の捜索場所もめぼしがついたワン」
『ほんとうなの、わん太郎!?』
「本当だワン! あるじぃならキット、危険な香りがする場所――ダンジョンが好きなんだワン」
『た、たしかに戦極様なら行きそうかも!』
「そうだワン。だから次の捜索場所は、ダンジョンで決まりなんだワン!!」
わん太郎は自信たっぷりに言うが、ミリーにしっかりとホールドされて、可愛らしいヌイグルミのようだ。
そんなわん太郎と美琴を見て、母親はダメ元で話す。
「あの……もしお願いできるのなら、うちのひとを探してはもらえないでしょうか? 何もお礼は出来ないのですが」
母親はそういうと右薬指へと視線をおとし、「ふぅ」とため息の後に指輪を外す。
それを美琴が置かれているテーブルへと置くと、真剣な表情で口をひらく。
「どうかこれでお願いします。今はこれが精一杯ですが、かならずお礼はいたしますので」
『そんなのじゃダメなんだよ』
「そ、そこをなんとか」
「う~ん。ワレもそんなんじゃ、ぜ~んぜん足りないと思うワン」
「そんな……」
絶望に顔をそめる母親。
だがその決定はかわらず、美琴が続けて話す。
『そう、足りないんだよ。だからね……今度来た時に戦極様と、わん太郎へナズマをごちそうしてくれたら嬉しいんだよ』
「ワレもそれでいいワン。また食べさせてほしいんだワン」
母親は一瞬あっけに取られるが、その意味を理解し涙を流して感謝するのだった。
どうやら完成したようで、それを運んでくるように呼んだようだ。
「おまちどうさまー! ママ特性のナズマ料理だよ!」
「もぅこの子ったら。本当はクスの葉や調味料が豊富だった頃は、臭みを上手に消せたんですけどね……今じゃそれも難しくて」
「ふふふ。ワレにかかれば、臭みも美味しくいただくんだワン」
見た目は白身の魚であり、外見のグロテスクさとかけ離れた美しいもの。
香りも香草をつかったからか、レモングラス似の爽やかな香りが部屋に広がった。
母親が切り分けて、わん太郎へも大きな部位が置かれたことで、お待ちかねの食事がはじまる。
どうやらかなり美味しかったらしく、わん太郎は「美味しいんだわーーーーん!!」とご満悦。
そんなわん太郎を見て、美琴もほっこりとするのだった。
やがて楽しい食事も終わり、わん太郎がミリーに抱かれて腹天でスピスピ寝息を立てた頃、美琴は気になっていた事を聞いてみる。
『あのね、ちょっと聞きたいことがあるんだよ?』
「はいなんでしょうか? 私が答えられることなら、なんでも聞いてください」
『ちょっと聞きづらいんだけどね、ミリーちゃんのパパがいないみたいな事を言っていたけれど、何か理由があるのかな?』
わん太郎と一緒に寝ているミリーへと、母親は視線を向ける。
よほどモフモフが気持ちいいのか、満足そうに寝ている娘を見つめながら話し出す。
「あれはこの近くで、新しいダンジョンが発見された時の事です――」
母親はこの近くで起きたことを話す。
どうやらダンジョンが突如出現し、その中へと高ランクの冒険者たちが探索へ行ったが、帰還者がだれもいなかったらしい。
そこで一旦は国がダンジョンへの侵入を禁止したが、最近また再会されたそうだ。
しかもその探索者の一員として、ミリーの父親が志願したという。
そのまますでに九日がたち、まだ父親は戻って来ない。
だから毎日が不安な母親を元気づけるため、ミリーは一人であんなムチャをしたんだろうと言う話だった。
『そんな事が……』
「はい。今帰って来ないことを考えると、もしかしてと悪いことばかり考えてしまいます」
無言がリビングを支配しそうになったころ、間の抜けた声がソファーから聞こえる。
見れば、わん太郎がお腹をポリポリとかきながら、小さなお口でアクビをしていた。
「ふわぁ~ん、寝ちゃったワン。えへへ」
『おきらく極楽太郎なんだよ、ホント』
「失礼な女幽霊だワンねぇ。ワレはちゃ~んと今の話を聞いていたし、今後の捜索場所もめぼしがついたワン」
『ほんとうなの、わん太郎!?』
「本当だワン! あるじぃならキット、危険な香りがする場所――ダンジョンが好きなんだワン」
『た、たしかに戦極様なら行きそうかも!』
「そうだワン。だから次の捜索場所は、ダンジョンで決まりなんだワン!!」
わん太郎は自信たっぷりに言うが、ミリーにしっかりとホールドされて、可愛らしいヌイグルミのようだ。
そんなわん太郎と美琴を見て、母親はダメ元で話す。
「あの……もしお願いできるのなら、うちのひとを探してはもらえないでしょうか? 何もお礼は出来ないのですが」
母親はそういうと右薬指へと視線をおとし、「ふぅ」とため息の後に指輪を外す。
それを美琴が置かれているテーブルへと置くと、真剣な表情で口をひらく。
「どうかこれでお願いします。今はこれが精一杯ですが、かならずお礼はいたしますので」
『そんなのじゃダメなんだよ』
「そ、そこをなんとか」
「う~ん。ワレもそんなんじゃ、ぜ~んぜん足りないと思うワン」
「そんな……」
絶望に顔をそめる母親。
だがその決定はかわらず、美琴が続けて話す。
『そう、足りないんだよ。だからね……今度来た時に戦極様と、わん太郎へナズマをごちそうしてくれたら嬉しいんだよ』
「ワレもそれでいいワン。また食べさせてほしいんだワン」
母親は一瞬あっけに取られるが、その意味を理解し涙を流して感謝するのだった。
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