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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編

050:わん太郎の冒険🐾~ナズマの章

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「ふぅ……本当に嫌ね。みんな荒んでしまって。何もない家だけど、よかったら遊んでいってね。ミリーもよろこぶから」

 そういうとミリーの母親は家の扉をひらく。
 わん太郎は無邪気に「一番のりだワン!」と、〝ぽむむむ〟と走って家の中へとはいる。
 それを追うように全員が家に入ると、母親は静かにドアをしめた。 

『すみません、駄犬が駄犬すぎて』
「え、ワンちゃんなの? てっきり子狐かと思ったんだけど……ふぅ、ここなら安全ね。それでミリー。お腹に抱えているモノはなぁに?」

 さすがは母親である。
 瞬時にミリーが何かを持っていると見破り、少し怖い顔で彼女の顔をのぞき見た。
 
 一瞬「うぅ」となるミリーだったが、観念して服の中からナズマをずるりと取り出す。
 それを見て全てを察した母親は、膝立ちになりミリーを抱きしめた。

「そう……ごめんなさいね。ひもじい思いをさせてしまって」
「違うの。ミリーもお腹がへっているけど、ママに食べさせたかったの。だってミリーよりずっと食べていないし」
「ミリー……あなたって子は……」

 母親は涙ぐむと、ミリーをしっかりと抱き直す。
 そんな感動的な光景に、美琴は幽霊だが目頭があつくなる。

 きっとわん太郎も胸を熱くしているのに違いない。
 そんな思いから、わん太郎を見る美琴だったが。

「おなかすいたワ~ン。何か美味しいのを山盛りおくれ~」
『……よろしかろう。ならばゴチン・・・をくれてやるんだよ』

 ミリーと母親が抱き合っている背後から、悲痛な声が聞こえてきた。
 ふりかえれば黒い棒に、小狐がコツンと頭をなでられていたのだから。

「ふぇぇん! 痛いんだワンよ~!」
『まったくもぅ……あ、こっちは気にしないで大丈夫だよ。お魚が新鮮なうちに、二人で食べちゃってほしいんだよ』
「いえ、そういうワケにはいきません。それにこんな立派なナズマを、この子が捕獲できないのは知っています。あなた達が助けてくれたのね?」

 美琴は『えぇ~っと』と言葉をにごすが、そこに颯爽さっそうと頭にコブを作った駄犬があらわれる。
 いつの間にかテーブルへと上った駄犬は、立ち上がるとナズマを指差し言い放つ。

「ワレが溺れているのを助けてあげたんだワン! お魚もプレゼントしたの。だからすっごくエライんだワンよ。えっへん!!」
「まぁ!? そうだったんですか。ミリー! なんて危ないことをしたの!?」
「ご、ごめんなさいママ……」
「でも、本当に……本当にあなたが無事で良かった。パパだけじゃなく、あなたまでいなくなたらもぅ……」

 母親は涙を流しミリーの頭を抱きしめる。
 その意味を知っているミリーは、「本当にごめんなさい」と一緒に泣くのだった。
 
「ありがとう子狐さん。それと黒い棒さん。お二人のお陰でこの子も助かりました。これからナズマを料理しますので、よかったら食べていってくださいね」
「わーい、やったワン! 楽しみだなぁ~美味しいといいなぁ~」
『まったくもぅ。すみません、貴重な食事を分けてもらって心苦しいんだよ』
「気にしないでください。それに結構大物ですし、二人じゃ食べきれませんから。じゃあミリーは着替えてから、小狐ちゃんたちを頼んだわよ?」
「うん! まかせてママ!」

 そう言うとミリーの母親は、キッチンへとナズマを持って行く。
 少しすると小気味いい包丁音がきこえ、極上のナズマ料理ができるのだろうと美琴は思うのだった。
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