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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編

049:わん太郎の冒険🐾~ポコポコの章

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「うわあああん! うわあああん! 痛いんだわあああああん」
『私を置いてどこへ行くのかな? かなぁ?』

 水中へ置き去りにされてしまった美琴さん。
 水も蒸発するいきおいで激怒である。
 
 おかげで近くにいた魚は、その怒りのろいにより水面へと浮かぶ。
 あわれ、異世界初の悲恋美琴に呪い殺された最初の犠牲者は、ナズマと呼ばれるナマズみたいな魚であった。

 大きさは五十センチほどであり、泥臭くかなりマズイ。
 そんなマズイ魚でも、領主の許可なく捕獲する事は禁止だ。
 しかしそれでも密猟は後をたたず、この街の貴重なタンパク源となっていた。

 運良く? 死んだナズマを手に入れたことで、これまでの状況を美琴へとタンコブを三つ・・・・・・・作り、ポロポロと涙を流して説明する。

『ふ~んなるほどね。そういう事なら許してあげるんだよ』
「えぐっえぐっ。なら初めから、ポコポコしないでほしいんだワンよぅ」
『それとこれとは別なんだよ!!』
「ひぃッ」

 ミリーが美琴さんの怒りにより、顔を青くしてガクブルしちゃう。
 慌てて美琴はミリーへと優しい言葉をかけ、怖くないよアピールに必死だ。

『だ、大丈夫だよミリーちゃん。私は怖くないよ~♪ ほら、ちょっと呪われた妖刀なだけの、ただの幽霊なんだよ』
「ヒィィィィィッ!?」
「よけいに怖がらせてどうするワン……。こんなおかしな幽霊だけど、怖くないから平気だワン。凶暴だけど・・・・・
「ヒェェェェェェ!?」

 ミリーちゃん、もう涙目を通り越して涙が洪水のように流れ出る。
 あわあわとする二人は、なんとかミリーちゃんをなだめると、ナズマを拾い歩き出す。

『そっか……ここはそんなに酷いんだね』
「うん……みんなお腹を空かせているんだ。だから、こうやって隠さないと盗まれちゃうの」

 ミリーはナズマを服の中へとしまい込む。
 ヌルヌルのナズマを、素肌と密着させて歩くのは、そうとう気持ちが悪いだろうと美琴は思う。
 
 だがそうしないと盗まれてしまうと言うのは、ミリーをみる大人たちの視線をおえば、それが本当なのだろうと思えた。

『街中がすさんでいるんだよ』
「そうだワンねぇ。と~っても嫌な雰囲気ふんいきだワン」

 街を隠れるようにあるく三人。
 ナズマを持っているとわからないように、ゴミを途中で拾いそれを抱きながら歩くミリー。
 だがそれでも「あのガキ、何かあやしくないか」などと、陰口が聞こえてくる。
 不安になるミリーへ美琴は優しく、『大丈夫だよ』と語りかけて落ち着かせた。

 やがてミリーの家が見えたころ、家の前に一人の女が心配そうに周囲を見まわす。
 それを見たミリーは、大きく右手をふり母親へと叫ぶ。

「ママー! ただいまー!」
「ミリー!? どこへ行っていたの、心配したじゃない! それより早くお家へはりなさい」
「うん。あの、ね。子狐ちゃんもお招きしたいんだけど……いいかな?」
「小狐ちゃん?」

 ミリーの母親は彼女足元をみる。
 そこには二本足で立ち上がる、変な子狐が胸を張っていた。

「くるしゅうないんだワン。ワレはエライからして、もてなしは必要だワン」
『馬鹿なこといってないで、ちゃんと挨拶をするんだよ。こんにちわミリーちゃんのお母さん』
「え、え、ええええ!? 子狐ちゃんと、棒が話している!?」
「と、とにかくママ。お家へはいろう?」

 遠くからこちらを伺っている住民の視線を感じたミリーは、母親へ家の中へと逃げ込もうと話すのだった。
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