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ダンジョン~〝戦極〟覚醒編
048:わん太郎の冒険🐾~小娘の章
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わん太郎は立ち上がり、がんばって短い手をのばす。
溺れるものは藁をもつかむ。そんな言葉どおり、悲恋美琴を子供へとのばすと、それをしっかりつかむ。
「やったワン! そのままこっちへ~ってえええええ!?」
『キャアアアア!?』
「うわぁぁぁぁ!?」
わん太郎は足を滑らせて、水路へと落ちてしまう。
せっかく手繰り寄せた子供も、また水中へと落ちてしまった。
「た、大変だワン。あ、そうだった~! ワレがお口で引っ張ればいいんだワン!」
そう言うと水中へと消えていくわん太郎。
すると目の前に子供がおり、襟を加えて水面へと持ち上げる。
小さな体のくせに、意外とパワフルなわん太郎は、階段のところまで子供を連れて行く。
「もう大丈夫だワン。ほれぇそこに手を掴んで少しだけ頑張るワン!」
「ぅ、うん!」
子供が階段のふちに手をかけたのを確認したわん太郎は、水中へと潜り足元から子供を押し上げる。
すごい勢いで子供が水中から飛び出すと、そのまま階段の踊り場へと尻から着地した。
「うわわわ!? あ痛ぁ~、けほっけほっ」
「大丈夫だったワン?」
わん太郎は小さな顔を水面から出すと、子供を見ながら水面から飛び出す。
踊り場へと着地すると、〝へにょり〟とした体毛をブルルとして水を弾く。
「うわわわわ!?」
「ぁ、ごめんワン。普通は氷になって飛んでいっちゃうんだけどね、今はできないの。だからブルブルしちゃんだな、これが」
「あ、ありがとぅ! お陰で助かったよ、えっと……え? 子狐が話している? えええ!?」
「ふふふ。ワレはえらいんだワン。だから話す事なんて、あったりまえなのだワンよ!」
「ほぇぇ~そうだったんだねぇ。あ、忘れていた。ママにいつも言われていたの」
子供は立ち上がると、丁寧に頭をさげる。
先程まで水中であったがために、容姿はよくわからなかったが、年齢は七歳ほどの可愛らしい顔つきだ。
そばかすが少々目立つが、愛嬌のある顔を〝にぱっ〟と笑うと、自己紹介をした。
「あらためて、助けてくれてありがとう子狐ちゃん。あたしはミリーって言うんだ、小狐ちゃんは?」
「ワレの名前を知りたいワン? ふふふ……教えてやるのも、やぶさかでもないワン! 聞いて驚くがいいワン! 蒼い王様わん太郎だワン!!」
「あははは、変なお名前だね」
「失敬な小娘だワンねぇ。それでなんで落ちたんだワン?」
「えっと……内緒にしてね? 実は――」
どうやらミリーはお腹が減っていたらしく、水路にいた魚を取ろうと思ったらしい。
家から内緒で持ってきた、モリを手に魚をつこうとしたが、足を滑らせて落ちてしまったそうだ。
だがこの水路では魚を取ってはいけないらしく、黙ってきたから親も近くにはいなかった。
それでこんな場所まで流れてしまったと言うことであったが。
「そんなにお腹がへったワン?」
「うん……もう二日も、水と麦を薄く煮たものしか食べれてないんだ」
「それはお腹すいちゃうんだワンねぇ。ちゃんと食べないとダメなんだワン」
「食べたいよ、食べたいけれど……無いんだもん」
ミリーはそういうと、ぽろぽろと泣き出す。
驚いたわん太郎は、ミリーからそのワケを聞くと、プリプリと怒り出す。
「なんて酷いんだワン! じゃあこの街の人は、領主にほぼ全部持っていかれてしまうんだワン?」
「うん、そうママが言っていたの」
「許せないんだワンねぇ。とにかく、このままじゃ風邪をひいちゃうんだワン、お家まで送っていくワンよ」
「わぁ本当? ありがとう子狐ちゃん」
「じゃあ行くんだワン!」
二人は階段を上る。
だが水中から妙な声で、『わ゛ん゛た゛ろ゛う゛う゛う゛う゛!!』と聞こえる気がするのだった。
溺れるものは藁をもつかむ。そんな言葉どおり、悲恋美琴を子供へとのばすと、それをしっかりつかむ。
「やったワン! そのままこっちへ~ってえええええ!?」
『キャアアアア!?』
「うわぁぁぁぁ!?」
わん太郎は足を滑らせて、水路へと落ちてしまう。
せっかく手繰り寄せた子供も、また水中へと落ちてしまった。
「た、大変だワン。あ、そうだった~! ワレがお口で引っ張ればいいんだワン!」
そう言うと水中へと消えていくわん太郎。
すると目の前に子供がおり、襟を加えて水面へと持ち上げる。
小さな体のくせに、意外とパワフルなわん太郎は、階段のところまで子供を連れて行く。
「もう大丈夫だワン。ほれぇそこに手を掴んで少しだけ頑張るワン!」
「ぅ、うん!」
子供が階段のふちに手をかけたのを確認したわん太郎は、水中へと潜り足元から子供を押し上げる。
すごい勢いで子供が水中から飛び出すと、そのまま階段の踊り場へと尻から着地した。
「うわわわ!? あ痛ぁ~、けほっけほっ」
「大丈夫だったワン?」
わん太郎は小さな顔を水面から出すと、子供を見ながら水面から飛び出す。
踊り場へと着地すると、〝へにょり〟とした体毛をブルルとして水を弾く。
「うわわわわ!?」
「ぁ、ごめんワン。普通は氷になって飛んでいっちゃうんだけどね、今はできないの。だからブルブルしちゃんだな、これが」
「あ、ありがとぅ! お陰で助かったよ、えっと……え? 子狐が話している? えええ!?」
「ふふふ。ワレはえらいんだワン。だから話す事なんて、あったりまえなのだワンよ!」
「ほぇぇ~そうだったんだねぇ。あ、忘れていた。ママにいつも言われていたの」
子供は立ち上がると、丁寧に頭をさげる。
先程まで水中であったがために、容姿はよくわからなかったが、年齢は七歳ほどの可愛らしい顔つきだ。
そばかすが少々目立つが、愛嬌のある顔を〝にぱっ〟と笑うと、自己紹介をした。
「あらためて、助けてくれてありがとう子狐ちゃん。あたしはミリーって言うんだ、小狐ちゃんは?」
「ワレの名前を知りたいワン? ふふふ……教えてやるのも、やぶさかでもないワン! 聞いて驚くがいいワン! 蒼い王様わん太郎だワン!!」
「あははは、変なお名前だね」
「失敬な小娘だワンねぇ。それでなんで落ちたんだワン?」
「えっと……内緒にしてね? 実は――」
どうやらミリーはお腹が減っていたらしく、水路にいた魚を取ろうと思ったらしい。
家から内緒で持ってきた、モリを手に魚をつこうとしたが、足を滑らせて落ちてしまったそうだ。
だがこの水路では魚を取ってはいけないらしく、黙ってきたから親も近くにはいなかった。
それでこんな場所まで流れてしまったと言うことであったが。
「そんなにお腹がへったワン?」
「うん……もう二日も、水と麦を薄く煮たものしか食べれてないんだ」
「それはお腹すいちゃうんだワンねぇ。ちゃんと食べないとダメなんだワン」
「食べたいよ、食べたいけれど……無いんだもん」
ミリーはそういうと、ぽろぽろと泣き出す。
驚いたわん太郎は、ミリーからそのワケを聞くと、プリプリと怒り出す。
「なんて酷いんだワン! じゃあこの街の人は、領主にほぼ全部持っていかれてしまうんだワン?」
「うん、そうママが言っていたの」
「許せないんだワンねぇ。とにかく、このままじゃ風邪をひいちゃうんだワン、お家まで送っていくワンよ」
「わぁ本当? ありがとう子狐ちゃん」
「じゃあ行くんだワン!」
二人は階段を上る。
だが水中から妙な声で、『わ゛ん゛た゛ろ゛う゛う゛う゛う゛!!』と聞こえる気がするのだった。
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