47 / 105
ダンジョン~〝戦極〟覚醒編
046:K i
しおりを挟む
先ほどと同じように放物線を描きながら、斜め上より戦極へと迫る藁束。
しかも直径はゆうに百十センチは超え、大人でも手が全部に回らない太さだ。
戦極は先程と同じように構えると、微動だにせず藁束が間合いに入るのを待つ。
やがて藁束が間合いに入った瞬間、「セアッ!!」と気合を込めて藁山の中心を斬る。
だが斬れた様子もなく、戦極へと迫る藁束にフェリスは「危ない!!」と声をあげる、が。
「まぁこんなものか」
「え!? うそ、何が……」
戦極へと向かった藁束は、ぶつかる直前に真っ二つに割れてしまう。
それが左右へと転がり落ちた。
「変態さん、これは一体どういうことなの?」
ふふん、驚いているな?
まぁ無理もない、俺も使えて驚いている。
こいつまで使えなかったら、確実にダンジョンで死ぬのは確定だ。
俺の古武術の流派は、ヘソの下にある丹田と呼ばれる場所へ力を込めて、それを練ったものを使う。
つまり――。
「――気力だよ。一般的には気と呼ばれたりするものだが、それを剣へ纏って斬撃力をアップさせたのさ」
「キ? いえ、気と言った方が自然な言い方かしら。それが魔力以上の力になったと言うわけ?」
「さてね。魔力を使えない俺からすれば、それも怪しい話だが……フェリス、最初と同じ藁束を放り投げてくれ」
手頃なものを見つけたフェリスは、すぐに戦極へとそれを蹴り上げる。
数メートル高くあがった、直径五十センチほどの藁束は戦極へとまっすぐ向かう。
戦極は腰を落とし、先程とは違い細身の剣を左腰の横に構えて、間合いに入った瞬間に動き出す。
左下から斜め上に斬りあげた剣筋は、陽の光を受けて白銀に線を引きながら藁束へと吸い込まれる。
つぎの瞬間、藁束が斜めに切り落とされてバサリと戦極の左右へと落ちた。
あまりの見事な切り口に、フェリスは驚きの声をあげる。
「す、すごいわね! さっきまで半分しか斬れなかったのに、ここまで綺麗に斬れるなんて! これも気の力のおかげ?」
「と、思うだろう? そうじゃないんだよ。この剣の使い勝手がわかっただけさ」
「使い勝手?」
「そう。本来藁束は、薄く幅の狭い刀剣で斬るとすんなりと斬れるんだよ。だから斬る角度を変えれば、こんなふうになる」
「へぇ~そうなんだ」
「だからこの剣のような幅の厚いものだと、なかなか綺麗には切断できないが、使い方さえわかればそれなりに使える」
フェリスは「なるほど」と頷いたのち、疑問を聞いてみる。
「ところでさっきの気だけれど、なぜ初めから使わなかったの?」
「それな。まぁ二つ理由があってさ、俺は本来は気の力で強化して戦うんだが――」
戦極の話はフェリスにはよく分からなかった。
だが現在使っている力に大きく関係しているらしい。
一つは〝妖気〟と呼ばれる力があり、それをメインとしている事で、本来使うはずの〝気〟が使いにくいとのことだ。
そして二つ目が気を即座に使えない理由。
妖気と気は本来は対局に位置するもの。だからそれを切り替えるため、あの剣舞が必要だという。
「えぇ? じゃあ変態さんは悪者なのね」
「悪者いうなし。闇属性の力ってだけだってばよ! それに俺の力が戻ったらそうだな……」
戦極は右手に持つ剣で、近くにある大木をさすと不敵に口角をあげるのだった。
しかも直径はゆうに百十センチは超え、大人でも手が全部に回らない太さだ。
戦極は先程と同じように構えると、微動だにせず藁束が間合いに入るのを待つ。
やがて藁束が間合いに入った瞬間、「セアッ!!」と気合を込めて藁山の中心を斬る。
だが斬れた様子もなく、戦極へと迫る藁束にフェリスは「危ない!!」と声をあげる、が。
「まぁこんなものか」
「え!? うそ、何が……」
戦極へと向かった藁束は、ぶつかる直前に真っ二つに割れてしまう。
それが左右へと転がり落ちた。
「変態さん、これは一体どういうことなの?」
ふふん、驚いているな?
まぁ無理もない、俺も使えて驚いている。
こいつまで使えなかったら、確実にダンジョンで死ぬのは確定だ。
俺の古武術の流派は、ヘソの下にある丹田と呼ばれる場所へ力を込めて、それを練ったものを使う。
つまり――。
「――気力だよ。一般的には気と呼ばれたりするものだが、それを剣へ纏って斬撃力をアップさせたのさ」
「キ? いえ、気と言った方が自然な言い方かしら。それが魔力以上の力になったと言うわけ?」
「さてね。魔力を使えない俺からすれば、それも怪しい話だが……フェリス、最初と同じ藁束を放り投げてくれ」
手頃なものを見つけたフェリスは、すぐに戦極へとそれを蹴り上げる。
数メートル高くあがった、直径五十センチほどの藁束は戦極へとまっすぐ向かう。
戦極は腰を落とし、先程とは違い細身の剣を左腰の横に構えて、間合いに入った瞬間に動き出す。
左下から斜め上に斬りあげた剣筋は、陽の光を受けて白銀に線を引きながら藁束へと吸い込まれる。
つぎの瞬間、藁束が斜めに切り落とされてバサリと戦極の左右へと落ちた。
あまりの見事な切り口に、フェリスは驚きの声をあげる。
「す、すごいわね! さっきまで半分しか斬れなかったのに、ここまで綺麗に斬れるなんて! これも気の力のおかげ?」
「と、思うだろう? そうじゃないんだよ。この剣の使い勝手がわかっただけさ」
「使い勝手?」
「そう。本来藁束は、薄く幅の狭い刀剣で斬るとすんなりと斬れるんだよ。だから斬る角度を変えれば、こんなふうになる」
「へぇ~そうなんだ」
「だからこの剣のような幅の厚いものだと、なかなか綺麗には切断できないが、使い方さえわかればそれなりに使える」
フェリスは「なるほど」と頷いたのち、疑問を聞いてみる。
「ところでさっきの気だけれど、なぜ初めから使わなかったの?」
「それな。まぁ二つ理由があってさ、俺は本来は気の力で強化して戦うんだが――」
戦極の話はフェリスにはよく分からなかった。
だが現在使っている力に大きく関係しているらしい。
一つは〝妖気〟と呼ばれる力があり、それをメインとしている事で、本来使うはずの〝気〟が使いにくいとのことだ。
そして二つ目が気を即座に使えない理由。
妖気と気は本来は対局に位置するもの。だからそれを切り替えるため、あの剣舞が必要だという。
「えぇ? じゃあ変態さんは悪者なのね」
「悪者いうなし。闇属性の力ってだけだってばよ! それに俺の力が戻ったらそうだな……」
戦極は右手に持つ剣で、近くにある大木をさすと不敵に口角をあげるのだった。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
【完結】大聖女の息子はやり直す
ゆるぽ
ファンタジー
大聖女の息子にして次期侯爵であるディート・ルナライズは義母と義姉に心酔し破滅してしまった。力尽き倒れた瞬間に15歳の誕生日に戻っていたのだ。今度は絶対に間違えないと誓う彼が行動していくうちに1度目では知らなかった事実がどんどんと明らかになっていく。母の身に起きた出来事と自身と実妹の秘密。義母と義姉の目的とはいったい?/完結いたしました。また念のためR15に変更。/初めて長編を書き上げることが出来ました。読んでいただいたすべての方に感謝申し上げます。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる