35 / 105
異世界の残酷な洗礼編
034:自愛あふれる聖女様になろう
しおりを挟む
「はぁ~着いたし。今日はあそこで、戦極を調教するんだってさぁ」
「調教ねぇ……G1で走れるくらいにして欲しいね」
「ハァ? イミフな事いっていないで、人権ないんだから早く行けばぁ~」
そう言うと真乃依は、右手首をプラプラと振りながら歩いて行く。
どうやら戦極と話すもの嫌なようだ。
諦めたように「困ったねぇ」と呟くと、戦極は桜と剛流へと向き挨拶をする。
「ここまで送ってくれてありがとうな。二人とも無事に一日がんばれよ」
「戦極さん、それはこっちのセリフですよ……」
「う、うん。僕もすごく心配です、本当にムリだけはしないでくださいね」
まぁムリはしたくないが、強制だからしかたないんだが。
っと、こんな事を言ったらまた心配かけちまうな。
「はいよ~、無理そうなら泣いて許しをこうさ」
戦極は左眉をあげ、苦笑いをしつつ真乃依の後を追う。
その姿に二人は不安を感じると同時に、無事に戻ってこれるようにと、この世界の知らない神様へ祈るのだった。
◇◇◇
「へぇ……こんな場所もあるんだな」
戦極が到着した場所。
そこは美しい水辺であり、人工池の中央から十メートルほどの水柱が見えた。
中央には噴水が吹き出す塔があり、白亜の柱と屋根だけの建物が人工池を囲む。
こんな癒やしの空間だが、建物の一つに木製のガゼボがあり、そこでくつろぐ女――聖眼のエカテリーナを見て、それが間違いだと気がつく。
明らかに楽しんでいるのが分かる、ジットリとした瞳で戦極を見つめていたのだから。
「しっしょ~連れて来たわ~。マジダルなんですけどぉ」
「ご苦労でしたわねマリエ。とは言え……何か匂いませんこと?」
「そらそ~っしょ。戦極サマは、バッチィ馬小屋住みだしぃ。マジくせぇ~」
「あらイヤですわね。そんな汚物は、本来は見たくもないのですが」
熱烈な歓迎、嬉しい限りだねぇ。
だが、馬小屋を悪く言うのは許さんぞ真乃依クン。
最近あそこも気に入っているんだからな。多分。
「馬小屋臭も慣れればいいものですがね? 今日はよろしくお願いしますよ、センセイ」
「よろしくされたくないですわ。が、王命ですので仕方なく教えてあげましょう。とは言え、魔力が無いクズには何が出来るというのか……」
ならとっとと帰りたいのですがね。
つか、追い出してくれて構いませんのよ? って、真乃依……なんだその顔は。
なに〝ぴこーん〟みたいな擬音が、背後に見えるようなんだが?
カンベンしてくれよ、最悪な提案だけは。
「はいは~い、しっしょ~! アタシ思いついたかも~」
「なんですのマリエ、言ってごらんなさい?」
「えへへへ……ほら昨日やったっしょ? アレの変わりにみたいな感じぃ」
おい、エカテリーナ。なに恍惚とした表情で身震いしている。
真性の変態か? やめてくれよ、そんな目で俺をみるのは……照れる。
「流石は、わたくしの弟子ですわね。よろしくてよ、なら弟子の頼みを叶えるのも師のつとめと言うもの」
「甘やかすと後々ロクな事にはならないと思うぜ、センセイ」
「褒めて育てるのが、わたくしのスタイル。では始めましょうか……治療術を」
チッ、やっぱりそうなるかよ! って――!?
「グゥッ! どこから攻撃をしやがった!?」
チッ、左の上腕二頭筋が切られただと?
一体どこから攻撃をしたんだ、一切なにも見えなかったし感じなかったぞ。
「あらイヤですわねぇ、いいこと下等種。アナタはそのまま動かないでジットしていなさい」
「しっしょ~、戦極避けたから切りかた甘くね?」
「本当に運がいい。まぁいいですわ、マリエ。昨日教えた通りやってみなさい」
真乃依は「りょ」と言いながら右手で敬礼をすると、戦極へと右手を向けてスペルを唱える。
右手に白い光が集約し、それが徐々に濃密な塊に変化した瞬間、マリエの口から聞き覚えのある言葉が紡がれた。
「癒やしの光よ、この手に集まり彼の者を癒せ――ライトヒ~ル~」
そう、真乃依が唱えた呪文。桜が戦極を連日癒やしている回復魔法。ライトヒールを。
だが桜のと違い、効果が薄い。
その原因を師匠のエカテリーナが呆れ口調で話す。
「マリエ、最後の間の抜けた感じはなんですの? いいですこと、ヒ~ル~ではなく、ヒールですわよ?」
「えええ~? アタシちゃんと言ったつもりだしぃ」
「ええ~じゃありませんよ。マリエのスペルではよくて七割。見なさい、下等種の左腕が完治していないですわ」
クソッ! 最悪な予想を引きやがったか。
聖女=回復魔法。そんなイメージがあったが、その回復の実験体にされるんじゃねぇかと思ったが、クリティカル大当たり。
俺の感の良さが恨めしい。
このままでは切り刻まれちまうぞ……何とか四肢が無事な状態で躱さねぇと。
だが一体、どこからさっきの攻撃が来た? それを見極めねぇと、一応殺すなとはなっているが、事故って死ぬ事になるな。
「調教ねぇ……G1で走れるくらいにして欲しいね」
「ハァ? イミフな事いっていないで、人権ないんだから早く行けばぁ~」
そう言うと真乃依は、右手首をプラプラと振りながら歩いて行く。
どうやら戦極と話すもの嫌なようだ。
諦めたように「困ったねぇ」と呟くと、戦極は桜と剛流へと向き挨拶をする。
「ここまで送ってくれてありがとうな。二人とも無事に一日がんばれよ」
「戦極さん、それはこっちのセリフですよ……」
「う、うん。僕もすごく心配です、本当にムリだけはしないでくださいね」
まぁムリはしたくないが、強制だからしかたないんだが。
っと、こんな事を言ったらまた心配かけちまうな。
「はいよ~、無理そうなら泣いて許しをこうさ」
戦極は左眉をあげ、苦笑いをしつつ真乃依の後を追う。
その姿に二人は不安を感じると同時に、無事に戻ってこれるようにと、この世界の知らない神様へ祈るのだった。
◇◇◇
「へぇ……こんな場所もあるんだな」
戦極が到着した場所。
そこは美しい水辺であり、人工池の中央から十メートルほどの水柱が見えた。
中央には噴水が吹き出す塔があり、白亜の柱と屋根だけの建物が人工池を囲む。
こんな癒やしの空間だが、建物の一つに木製のガゼボがあり、そこでくつろぐ女――聖眼のエカテリーナを見て、それが間違いだと気がつく。
明らかに楽しんでいるのが分かる、ジットリとした瞳で戦極を見つめていたのだから。
「しっしょ~連れて来たわ~。マジダルなんですけどぉ」
「ご苦労でしたわねマリエ。とは言え……何か匂いませんこと?」
「そらそ~っしょ。戦極サマは、バッチィ馬小屋住みだしぃ。マジくせぇ~」
「あらイヤですわね。そんな汚物は、本来は見たくもないのですが」
熱烈な歓迎、嬉しい限りだねぇ。
だが、馬小屋を悪く言うのは許さんぞ真乃依クン。
最近あそこも気に入っているんだからな。多分。
「馬小屋臭も慣れればいいものですがね? 今日はよろしくお願いしますよ、センセイ」
「よろしくされたくないですわ。が、王命ですので仕方なく教えてあげましょう。とは言え、魔力が無いクズには何が出来るというのか……」
ならとっとと帰りたいのですがね。
つか、追い出してくれて構いませんのよ? って、真乃依……なんだその顔は。
なに〝ぴこーん〟みたいな擬音が、背後に見えるようなんだが?
カンベンしてくれよ、最悪な提案だけは。
「はいは~い、しっしょ~! アタシ思いついたかも~」
「なんですのマリエ、言ってごらんなさい?」
「えへへへ……ほら昨日やったっしょ? アレの変わりにみたいな感じぃ」
おい、エカテリーナ。なに恍惚とした表情で身震いしている。
真性の変態か? やめてくれよ、そんな目で俺をみるのは……照れる。
「流石は、わたくしの弟子ですわね。よろしくてよ、なら弟子の頼みを叶えるのも師のつとめと言うもの」
「甘やかすと後々ロクな事にはならないと思うぜ、センセイ」
「褒めて育てるのが、わたくしのスタイル。では始めましょうか……治療術を」
チッ、やっぱりそうなるかよ! って――!?
「グゥッ! どこから攻撃をしやがった!?」
チッ、左の上腕二頭筋が切られただと?
一体どこから攻撃をしたんだ、一切なにも見えなかったし感じなかったぞ。
「あらイヤですわねぇ、いいこと下等種。アナタはそのまま動かないでジットしていなさい」
「しっしょ~、戦極避けたから切りかた甘くね?」
「本当に運がいい。まぁいいですわ、マリエ。昨日教えた通りやってみなさい」
真乃依は「りょ」と言いながら右手で敬礼をすると、戦極へと右手を向けてスペルを唱える。
右手に白い光が集約し、それが徐々に濃密な塊に変化した瞬間、マリエの口から聞き覚えのある言葉が紡がれた。
「癒やしの光よ、この手に集まり彼の者を癒せ――ライトヒ~ル~」
そう、真乃依が唱えた呪文。桜が戦極を連日癒やしている回復魔法。ライトヒールを。
だが桜のと違い、効果が薄い。
その原因を師匠のエカテリーナが呆れ口調で話す。
「マリエ、最後の間の抜けた感じはなんですの? いいですこと、ヒ~ル~ではなく、ヒールですわよ?」
「えええ~? アタシちゃんと言ったつもりだしぃ」
「ええ~じゃありませんよ。マリエのスペルではよくて七割。見なさい、下等種の左腕が完治していないですわ」
クソッ! 最悪な予想を引きやがったか。
聖女=回復魔法。そんなイメージがあったが、その回復の実験体にされるんじゃねぇかと思ったが、クリティカル大当たり。
俺の感の良さが恨めしい。
このままでは切り刻まれちまうぞ……何とか四肢が無事な状態で躱さねぇと。
だが一体、どこからさっきの攻撃が来た? それを見極めねぇと、一応殺すなとはなっているが、事故って死ぬ事になるな。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
拾った子犬がケルベロスでした~実は古代魔法の使い手だった少年、本気出すとコワい(?)愛犬と楽しく暮らします~
荒井竜馬
ファンタジー
旧題: ケルベロスを拾った少年、パーティ追放されたけど実は絶滅した古代魔法の使い手だったので、愛犬と共に成り上がります。
=========================
<<<<第4回次世代ファンタジーカップ参加中>>>>
参加時325位 → 現在5位!
応援よろしくお願いします!(´▽`)
=========================
S級パーティに所属していたソータは、ある日依頼最中に仲間に崖から突き落とされる。
ソータは基礎的な魔法しか使えないことを理由に、仲間に裏切られたのだった。
崖から落とされたソータが死を覚悟したとき、ソータは地獄を追放されたというケルベロスに偶然命を助けられる。
そして、どう見ても可愛らしい子犬しか見えない自称ケルベロスは、ソータの従魔になりたいと言い出すだけでなく、ソータが使っている魔法が古代魔であることに気づく。
今まで自分が規格外の古代魔法でパーティを守っていたことを知ったソータは、古代魔法を扱って冒険者として成長していく。
そして、ソータを崖から突き落とした本当の理由も徐々に判明していくのだった。
それと同時に、ソータを追放したパーティは、本当の力が明るみになっていってしまう。
ソータの支援魔法に頼り切っていたパーティは、C級ダンジョンにも苦戦するのだった……。
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる