上 下
12 / 105
異世界の残酷な洗礼編

011:唸る牙

しおりを挟む
「うむ、お前らの紹介も終わったな! オレ様はコイツら四天王のまとめ役と言う事になっている! 今日は俺らが教育するやつだけの顔を見に来たわけだが……お前が一番強いはずだ! なぜクラスが判明していないんだ!? しかも水晶体を壊したと聞いたが、本当なのか!?」
「なぜ叫びながら話すんだよ。質問は一つまでと言いたいが、まぁどちらも本当だよ。クラスについてはこっちが聞きたいね」

 ライオスは「うむ」と頷くと、もう一度質問をする。

「それで、一番興味があるのはお前の強さなんだが!?」
「強さねぇ……まぁ歩く事が出来るくらいは足腰は強いはずだ。あ、ついでにナイフとフォークも持てるほどの力もあるぜ?」

 二人は視線をあわせ、その奥にある真意を確かめるように静かに見つめあう。
 その間八秒ほどだったが、戦極には数時間の長さに感じた。
 やがてそれも禁魔のジョルジュにより破られる。

「これこれ、初めからそう楽しむでない。と、言いたいがライオスよ。それでは腹も膨れまい?」
「ハッハッハ、流石はジョル爺! このまま寝るには惜しい月夜だし、ここはオレ様と模擬戦をしようじゃないか!!」
「模擬戦ねぇ……で、相手は当然」
「おまえしかなかろう!?」
「デスヨネ。はぁ~お手柔らかに願いますぜ」
「うむ、そうこなくてはな! ではその壁に収納されている武器を使え! 種類は問わんから好きに使うといい!!」
「それは気前のいいことで」

 武器か。日本刀意外も使える事は使えるが、西洋剣は重心の位置が変わるから苦手ではある。
 が、それでも普通以上には使いこなせる。
 敵に情報をあまり渡さないためにも、程々に手加減をして負けておくか。
 
 まずはブロードソードに似たコイツと、あとはコレもつかえそうだな。
 では気持ちよく負けてきますか。頼むぜライオンマン、優しくかじってくれよ?

「待たせた。準備が整ったから何時でもいいぜ?」
「ほぅ、やはり只者ではないか。その足運びと佇まい、まさに武人たるものよな!!」
「買いかぶり過ぎだよ。で、どうする?」
「そうだな、まぁ見ていろ。おい! 例のものを出してくれ!!」

 いちいち叫ぶ男。ライオスがそう指示を出すと、控えていた兵士が機敏に動き出す。
 武器が収納されていた壁の中にある、何かのレバーを引くと、何もなかった地面がせり上がり、円形状の石で出来た舞台が出現。
 それは直径三十メートルの闘技場であった。

「どうだセンゴクよ、立派な舞台だろう!!」
「立派すぎて、俺、もう、帰りたい。デス」
「んん? どこの部族の族長だ? まぁいい、では行くぞ!!」
「ハァ、気が乗らないが行くか」

 ライオスは身長二メートルほどであり、見たままの筋肉の塊だ。
 それが背中の大剣と共に、闘技場へと軽やかに飛び上がる。
 異常とも言えるその動きに、戦極は警戒心を最大に上げたところで、ライオスが戦極へと命ずる。

「ここだ、ここの白線の前に立て!」
「はいはい……これでいいかい?」
「うむ! それでは始めるとしよう! ではセンゴク、かかって来いッ!!」
「叫ぶ余裕があるなら――これならどうだ?」

 戦極は右手に持った剣を上段から振り下ろす。
 それに驚いた・・・ライオスは、大剣を抜刀する暇もない――と、戦極は思った。
 それほどに鋭い斬り込みであり、思わず戦極は口にする。

「もらったッ!!」
「――もらう? 何をだ!!」

 ライオスは避けもせず、左腕に装備している腕輪で剣を受け止める。
 さらに受け止めたばかりか、驚いた事にそのまま乱暴に左手に力を込め、受けた剣を払う。

「ッ、バカな!? ならこれはどうだ!」
「ほぅ? 少しは楽しめそうだな!!」

 戦極は右に回りながら剣を斜めに振り下ろし、そのまま右足を軸に左足で回し蹴りを放つ。
 ライオスは剣をまたも左の腕輪で受け止め、戦極の左足の蹴りを右足のスネで受け止めた。
 そのあまりの硬さに、流石の戦極もうなりをあげる。

「ぐぅぅぅッ、なんだよその硬さ。反則ものだろう」
「ふぅむ……センゴクよ。本気でかかって来い、まだまだ力を隠しているんだろう!?」
「チッ、そう叫ぶなよ耳が痛い。わかったよ、ならこれはどうだ」

 ライオスの顔面へ向けて右回し蹴りを放つ。
 それを顔を引くことでかわすが、その直後にライオスは驚きの光景を目撃する。
 かわしたはずの右足の向こう側から、銀色の斬撃が見えたからだ。

「ぬぅぅッ!? やりおるな!!」

 そうは言うが、この獣人の男は驚きはすれど余裕の表情は崩さない。
 逆に戦極の方が驚くこととなる。それは――。


「なッ、うっそだろう!?」
ふんふぉんその程度こうしてくれるわふぉのふぇいろふぉうしてふふぇるは!!」

 驚くことにライオスは斬撃を放った本体である、ブロードソードを獣人の牙でみ止めた。
 その直後、右足に力を入れると、戦極を思いきり蹴りつける。

「グゥゥゥゥゥッ!!」

 かなり軽くけったようだったが、戦極は五メートルほど背後へと吹き飛び、そのまま二度バウンドして停止。

「クッソ、どうなっている。斬撃を噛んで止めるとか、化け物かよ」
「化け物? やはりそうか。オレ様は最初、貴様の攻撃のふぬけさに驚いた・・・・・・・・。センゴクよ、もしや〝己の中にある力〟の使い方が分からぬのか? いや、そんな事はないだろう。さぁ、今すぐ力を開放しろ!!」

 力だと? ちょっと待て、俺が妖力を使えることを知らないはずだ。
 だがコイツの口ぶりだと、俺の妖気のことを知っているような……。
 三百年前の戦いの話が伝わっているのか? 
 チッ、だとしたら出し惜しみは許してはくれなそうだぜ……使うか、妖気とわざを?

「力、ねぇ……。アンタはどの程度まで知っているんだ?」
「俺はこの国の将軍だ。知っていて当然だがな!!」

 戦極はジトリと背中に嫌な汗を張り付かせると、そのまま妖気を練り始めるのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

星の記憶

鳳聖院 雀羅
ファンタジー
宇宙の精神とは、そして星の意思とは… 日本神話 、北欧神話、ギリシャ神話、 エジプト神話、 旧新聖書創世記 など世界中の神話や伝承等を、融合させ、独特な世界観で、謎が謎を呼ぶSFファンタジーです 人類が抱える大きな課題と試練 【神】=【『人』】=【魔】 の複雑に絡み合う壮大なるギャラクシーファンタジーです

突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます

ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。 何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。 何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。 それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。 そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。 見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。 「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」 にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。 「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。 「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

異世界で買った奴隷がやっぱ強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
「異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!」の続編です! 前編を引き継ぐストーリーとなっておりますので、初めての方は、前編から読む事を推奨します。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...