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第九章:奪還作戦と、国の闇
466:お爺ちゃん、昔を思い出す
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「すまない。足手まといになっちまったな」
イルミスは流を引き上げると、胸の位置に顔を埋める。
「いいのよ……もう貴方がいるし。それに貴方と一緒の攻撃だったから、あの鉄壁顔を崩すことも出来たのですわ」
「そう言ってもらえると嬉しいが……あの、離してくれない? 苦しいんだけど」
「嫌ですわ。わたくしを置いて行こうとした罰ですわ」
「うぅッ!? くるぢぃぃぃ」
流はますます胸に生められる。不死者とは言え心音は聞こえており、さらにぬくもりさえもある。
そしてこの体。なんとも言えない、とてもよい香りを放っているようだ。何かおかしい。
「……イルミスお前、何か魔法で俺を魅了しようとしているな!?」
「はて、何のことやら? 分かりませんわ。ホホホホホ」
とぼけるイルミスに、流は丁寧に問いただす。そのおかしな理由は、後に聞いた話で判明した。
実は流を掴む瞬間と同時に、魔法ではなく、最上級ヴァンパイアのスキルである「束縛の魂」を発動させていた。
その効果、「心酔」「感応」「性的欲求増大」「恋心」である。
「うぅ~酷いですわぁ……」
「戦闘中に何をしているんだお前は? 酷いのはお前の頭の中身だわ。ったく」
その後セリアたちと合流後、エルヴィスの元へと向かう。
イルミスは頭に小さなコブを作っており、そこを撫でて涙をながす。
どうやら流にお仕置きされたようだ。
「そうよ、あんな空中で何をイチャついているのよ!」
「まったくだわ。お嬢様、やはり此奴はダメですぞ? まぁ、分からなくもありませんがな」
「まぁ無事で良かった。それでナガレ、一体何があったんだ? それに、なぜイルミス様まで……」
「あぁ実はな――」
流とイルミスはここまでの経緯を話す。驚く全員。そしてエルヴィスが口を開く。
「なるほど。ここまでは理解しました。しかしなぜイルミス様はこんな事を?」
「なぜって貴方。乙女を捨てていく酷い男に、恋の復讐をしようと思ったからですよ」
「お前は乙女でもなければ、拾ったつもりもないが?」
「まぁ酷い! 流は先程言ったじゃないですの?」
流は嫌な予感がするが、思わず聞いてしまう。「何を?」と。
「わたくし覚えていますわ!! 黒土にわたくしが陵辱されそうになった時、「俺の女だ」と言って守ってくれた事を!!」
「待て! 俺のモノだとは言ったが、女だとは一言も言っていないぞ!」
「『うわぁ……最低ぇ……』」
刺さるジトメを背中にぶっ刺しながらも、懸命に言い返す。
「ち、違うんだ。言葉のあやと言うか、適当に出た言葉だ!!」
「うぅぅぅ流。貴方酷いですわぁ(棒)」
「『ますます最低ぇ……』」
嫌な汗で、びっしょりと背中が濡れる。そこに右肩へゴツゴツとした感覚が優しく触れる。
見るとルーセントが、とても優しい瞳で流を見ていた。
「小僧……分かるぞ。男ってやつはそういう生き物だからな」
「爺さんアンタ……」
「はぁ~ルーセント。過去の自分を見るような瞳で、流を見るのはやめなさいよね」
「はっはっは。お嬢様をやるわけにはいきませぬが、何となくコヤツに親近感がわきますなぁ。のぅ小僧?」
「分かってくれるか! ルーセント将軍!!」
「うむうむ。不可抗力と言うものじゃな。はっはっは!」
『もぅ……。それでイルミスさん、彼らは何者なの?』
「ええ、そうでしたわね。それもお話しますわ」
イルミスは右手で指を鳴らすと、暗闇から先程見たゾンビもどきや、村人が出てくる。
一瞬また敵襲かと身構えた一同だが、どうやらイルミスの完全支配下にあるようだ。
「まずこの子たちですが、この村で死した過去の遺体と、魂ですわ。それをわたくしが契約の元で利用している。そのような存在ですの」
「流石ヴァンパイアの上級職と言うべきか……それに契約? 無理矢理ではないと?」
「ええ。流の言う通り、この子達はこの地に縛られてしまった哀れな存在。あの箱を見たでしょう?」
「ああ。聖遺物と言ったらいいのか、そう言う雰囲気と存在力があった」
「ええ、わたくしも知らなかったのですけど、アレがあったがために、輪廻に戻ることが出来なかったと推測しますわ。輪廻に還る魂すら引き寄せる……つまり、極端な「聖」の力があり、人形に支配された村人の悪意を抑えていた」
流はこれまでの内容から推測する。いくら聖なる力とは言え、そこまで悪意を隠蔽できるものかと?
「だが千石ほどの。鍵鈴の当主をも、騙せるほどの事が出来るのか? 確かに俺もこの村にあんな物があるなどと、気配すら感じなかったが……」
「そこですわ。多分あの箱の中身は聖骸の一部。ただ汚されていると思いますわ」
「汚されている? そしたらそんな強力な力など、発揮出来ないと思うが?」
「ええ、だからこそ限定的な使い方に向く。通常あのレベルの物であれば、この辺り一帯がその恩恵にあるでしょう。しかしそうでは無いどころか、ある事すら分からない状態まで存在が分からなくなっていた」
その答えで流も頷くように言葉を続ける。
「なるほど……特化型と言うわけか?」
「ええ。霊魂になれば、力が極限まで弱まるので簡単に惹き寄せられるのでしょう。が、生者や力ある、わたくしたちは違う。あの箱は悪意を浄化し、それを生者へと戻すことで『心が清い人間』と、誤解させる事に特化した物だったのでしょう」
「霊魂からは詳細は聞けないのか?」
「だめですわ。彼らに意思はありませんわね。ただ、私に従うかどうかの、意思を決めれるくらいですわ」
その話で全員頷くと、哀れな亡者たちを見つめるのだった。
イルミスは流を引き上げると、胸の位置に顔を埋める。
「いいのよ……もう貴方がいるし。それに貴方と一緒の攻撃だったから、あの鉄壁顔を崩すことも出来たのですわ」
「そう言ってもらえると嬉しいが……あの、離してくれない? 苦しいんだけど」
「嫌ですわ。わたくしを置いて行こうとした罰ですわ」
「うぅッ!? くるぢぃぃぃ」
流はますます胸に生められる。不死者とは言え心音は聞こえており、さらにぬくもりさえもある。
そしてこの体。なんとも言えない、とてもよい香りを放っているようだ。何かおかしい。
「……イルミスお前、何か魔法で俺を魅了しようとしているな!?」
「はて、何のことやら? 分かりませんわ。ホホホホホ」
とぼけるイルミスに、流は丁寧に問いただす。そのおかしな理由は、後に聞いた話で判明した。
実は流を掴む瞬間と同時に、魔法ではなく、最上級ヴァンパイアのスキルである「束縛の魂」を発動させていた。
その効果、「心酔」「感応」「性的欲求増大」「恋心」である。
「うぅ~酷いですわぁ……」
「戦闘中に何をしているんだお前は? 酷いのはお前の頭の中身だわ。ったく」
その後セリアたちと合流後、エルヴィスの元へと向かう。
イルミスは頭に小さなコブを作っており、そこを撫でて涙をながす。
どうやら流にお仕置きされたようだ。
「そうよ、あんな空中で何をイチャついているのよ!」
「まったくだわ。お嬢様、やはり此奴はダメですぞ? まぁ、分からなくもありませんがな」
「まぁ無事で良かった。それでナガレ、一体何があったんだ? それに、なぜイルミス様まで……」
「あぁ実はな――」
流とイルミスはここまでの経緯を話す。驚く全員。そしてエルヴィスが口を開く。
「なるほど。ここまでは理解しました。しかしなぜイルミス様はこんな事を?」
「なぜって貴方。乙女を捨てていく酷い男に、恋の復讐をしようと思ったからですよ」
「お前は乙女でもなければ、拾ったつもりもないが?」
「まぁ酷い! 流は先程言ったじゃないですの?」
流は嫌な予感がするが、思わず聞いてしまう。「何を?」と。
「わたくし覚えていますわ!! 黒土にわたくしが陵辱されそうになった時、「俺の女だ」と言って守ってくれた事を!!」
「待て! 俺のモノだとは言ったが、女だとは一言も言っていないぞ!」
「『うわぁ……最低ぇ……』」
刺さるジトメを背中にぶっ刺しながらも、懸命に言い返す。
「ち、違うんだ。言葉のあやと言うか、適当に出た言葉だ!!」
「うぅぅぅ流。貴方酷いですわぁ(棒)」
「『ますます最低ぇ……』」
嫌な汗で、びっしょりと背中が濡れる。そこに右肩へゴツゴツとした感覚が優しく触れる。
見るとルーセントが、とても優しい瞳で流を見ていた。
「小僧……分かるぞ。男ってやつはそういう生き物だからな」
「爺さんアンタ……」
「はぁ~ルーセント。過去の自分を見るような瞳で、流を見るのはやめなさいよね」
「はっはっは。お嬢様をやるわけにはいきませぬが、何となくコヤツに親近感がわきますなぁ。のぅ小僧?」
「分かってくれるか! ルーセント将軍!!」
「うむうむ。不可抗力と言うものじゃな。はっはっは!」
『もぅ……。それでイルミスさん、彼らは何者なの?』
「ええ、そうでしたわね。それもお話しますわ」
イルミスは右手で指を鳴らすと、暗闇から先程見たゾンビもどきや、村人が出てくる。
一瞬また敵襲かと身構えた一同だが、どうやらイルミスの完全支配下にあるようだ。
「まずこの子たちですが、この村で死した過去の遺体と、魂ですわ。それをわたくしが契約の元で利用している。そのような存在ですの」
「流石ヴァンパイアの上級職と言うべきか……それに契約? 無理矢理ではないと?」
「ええ。流の言う通り、この子達はこの地に縛られてしまった哀れな存在。あの箱を見たでしょう?」
「ああ。聖遺物と言ったらいいのか、そう言う雰囲気と存在力があった」
「ええ、わたくしも知らなかったのですけど、アレがあったがために、輪廻に戻ることが出来なかったと推測しますわ。輪廻に還る魂すら引き寄せる……つまり、極端な「聖」の力があり、人形に支配された村人の悪意を抑えていた」
流はこれまでの内容から推測する。いくら聖なる力とは言え、そこまで悪意を隠蔽できるものかと?
「だが千石ほどの。鍵鈴の当主をも、騙せるほどの事が出来るのか? 確かに俺もこの村にあんな物があるなどと、気配すら感じなかったが……」
「そこですわ。多分あの箱の中身は聖骸の一部。ただ汚されていると思いますわ」
「汚されている? そしたらそんな強力な力など、発揮出来ないと思うが?」
「ええ、だからこそ限定的な使い方に向く。通常あのレベルの物であれば、この辺り一帯がその恩恵にあるでしょう。しかしそうでは無いどころか、ある事すら分からない状態まで存在が分からなくなっていた」
その答えで流も頷くように言葉を続ける。
「なるほど……特化型と言うわけか?」
「ええ。霊魂になれば、力が極限まで弱まるので簡単に惹き寄せられるのでしょう。が、生者や力ある、わたくしたちは違う。あの箱は悪意を浄化し、それを生者へと戻すことで『心が清い人間』と、誤解させる事に特化した物だったのでしょう」
「霊魂からは詳細は聞けないのか?」
「だめですわ。彼らに意思はありませんわね。ただ、私に従うかどうかの、意思を決めれるくらいですわ」
その話で全員頷くと、哀れな亡者たちを見つめるのだった。
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