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第九章:奪還作戦と、国の闇
461:真の敵
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「クッ、この人でなしッ!!」
女は地面の砂を流へとぶつける。その砂がかかるのが嫌だった流は、左に避けた瞬間、女は行動を起こす。
肩に刺さった妖気で出来たクナイを抜くと、それを手に流へと襲いかかる。
突然の事に流も驚いたのか、口を大きくあけ驚いている。
「馬鹿めッ!! 油断したのが悪いのよ!!」
「ナンダトオオオオオ」
間抜けな叫びをあげ、流は迫るクナイをその腹に迎い入れる。〝ドン〟とした鈍い感覚が女の手に伝わり、流も苦しげに唸る。
「馬鹿にするからこうなるのよ!!」
『馬鹿にしすぎるからこうなるのです』
「へ……なん……で?」
女は刺したと思った流が無傷であり、逆に自分の腹にクナイが突き刺さる痛みに気がつく。
「馬鹿かお前。それ、俺の妖気で作ったクナイだぞ? 消すも出すも自由自在だ」
「ぐッ……ガッハッ……本当に酷い人……だからこそ好きよ、流」
そう女は言いながら、口から血をボタボタと落としながら一言呟く。
「――パラダイス・シフト」
瞬間、村に響く悲鳴は消え失せ、炎も盗賊も消え去る。分かってはいたが、その異常さに思わず息を呑む。
刺された女も特徴のない村娘から、先程まで見たナツカシイ顔に戻っていた。そう、イルミスに。
「ハァ~、やっぱりお前だったかイルミス。それで、これは一体どういう事だ?」
「その前に、よく気が付きましたわね? 違和感は無いはずですわ」
「何言ってやがる。違和感の塊だったぞ? まず入り口の商店に使われた形跡がない。お前の所から来て最初の店だ。普通は一番に開く好立地の場所だ」
「なるほど。他には?」
「他にもまだあるが、まぁ決めては馬車の車輪跡だな」
「……そういう事でしたの」
イルミスはその意味を理解する。通常馬車が入れば車輪の後が「続く」はずだ。
この村が滅んだとは言え、そこを通過する馬車は今でもいる。
しかしこの村に入った馬車の車輪の後は、「ズレていた」と言うこと。つまり、村の空間自体がズレていると言うことだった。
「と、言うわけだ。まぁ、俺は何かおかしいと思っただけで、それがよく分からなかったが、エルヴィスが的確に見破ってな。流石プロの商人と言ったところか」
「チッ、困った殿方ですわねぇホント。ええ、その通りですわ。パラダイス・シフトで過去にあった、わたくしの思い出を再現したのですわ」
「そういう事も出来るのか……。それでなぜこんな事を?」
「もぅ、知っているくせにぃ。わたしくしを置いて逃げるから、ちょっとしたお仕置きですわ」
「デスヨネ。はぁ~やっぱりこうなったか……」
流はこうなる事を予想して、イルミスの屋敷から逃げ出したのだった。
Lでお腹いっぱいなところに、これ以上面倒な仲間が増えると、どこかのお嬢様がたのジト目が痛いからと言う理由でもあったが。
「お前。俺たちに難癖つけて、屋敷に軟禁するつもりだったろ?」
「さてさて、なんの事かさっぱり分かりませんわね。ふふふ」
「しかもお前、俺を襲う気だったろ? 今度こそ俺に噛みつこうとしたろ!?」
イルミスはそれに答えず、実に良い笑顔で微笑む。キバを見せて。
流はその白く光るキバに背筋を震わせ、戦闘中の事を思い出す。
接近戦の隙を狙い、イルミスは何度も流の首筋を噛もうとしていたのだから。
「うぅ。やっぱり襲う気だったなお前……」
「まぁ嫌ですわ。まるでわたくしが、下品な女みたいな言い方は関心しませんわ」
「お前が上品なら、世界中の娘が社交界のダンスを踊れるだろうよ。で、過去の映像を具現化したんだろ? するとこれが、先日あった村が滅んだ原因か?」
「いえ違いますわ。過去……三百年前にあった出来事ですわ。この村は幾度も滅んでいますの。ただウチと王都との中間で、立地も良いので何度も蘇るんですけど、色々な理由でその都度滅ぶ呪われた土地ですわ」
「呪われた土地ねぇ……」
流は先程斬り倒した巨木を見る。そして切り株の中央へ行くと、おもむろに中心に悲恋を突き立てる。
そして美琴へと語りかけると、妖力を譲渡してもらう。さらに自分の妖力と混ぜ合わせ、思い切り悲恋より切り株へ注ぐ。
次の瞬間、切り株が「ギャアアアア!?」と、木とは思えない叫び声を上げたかと思うと、その切り株が徐々に黒ずんでくる。
直径三メートルほどの切り株が徐々に盛り上がってくると、デカイ顔のようになり、やがて巨大な顔だけの化け物になる。
その見た目はイースター島のモアイを、醜悪に歪めたような顔つきで、顔中に吹き出物のような物が出来ていた。
「うへぇ。気持ち悪いなぁ……」
『やだぁ!? あんなの斬らないでくださいよ?』
流と美琴は心底嫌そうに、吐き捨てるようにデカイ顔に悪態をつく。しかしイルミスは驚きの表情を浮かべた。
「ったく、だ~れだよ~。俺がきもちよ~く負の感情でリラックスしてたつーのに?」
「ッ!? キサマは黒土!! どうしてこんな所にいるッ!?」
「あ~ん? …………お、おお!! イルミスじゃね~かよ。久しいなぁ。どうだ俺のモノになる決心はついたんかよ?」
「誰がキサマのような汚物のモノになる!!」
「ったく、つれねぇなぁ~。いいかイルミス。お前は俺のモノだって数百年前から決まってるんだ。おとなしく俺のものになっとけや? アン?」
どうやら知り合いのような二人の会話。だがどう見ても友好的ではなさそうだった。
女は地面の砂を流へとぶつける。その砂がかかるのが嫌だった流は、左に避けた瞬間、女は行動を起こす。
肩に刺さった妖気で出来たクナイを抜くと、それを手に流へと襲いかかる。
突然の事に流も驚いたのか、口を大きくあけ驚いている。
「馬鹿めッ!! 油断したのが悪いのよ!!」
「ナンダトオオオオオ」
間抜けな叫びをあげ、流は迫るクナイをその腹に迎い入れる。〝ドン〟とした鈍い感覚が女の手に伝わり、流も苦しげに唸る。
「馬鹿にするからこうなるのよ!!」
『馬鹿にしすぎるからこうなるのです』
「へ……なん……で?」
女は刺したと思った流が無傷であり、逆に自分の腹にクナイが突き刺さる痛みに気がつく。
「馬鹿かお前。それ、俺の妖気で作ったクナイだぞ? 消すも出すも自由自在だ」
「ぐッ……ガッハッ……本当に酷い人……だからこそ好きよ、流」
そう女は言いながら、口から血をボタボタと落としながら一言呟く。
「――パラダイス・シフト」
瞬間、村に響く悲鳴は消え失せ、炎も盗賊も消え去る。分かってはいたが、その異常さに思わず息を呑む。
刺された女も特徴のない村娘から、先程まで見たナツカシイ顔に戻っていた。そう、イルミスに。
「ハァ~、やっぱりお前だったかイルミス。それで、これは一体どういう事だ?」
「その前に、よく気が付きましたわね? 違和感は無いはずですわ」
「何言ってやがる。違和感の塊だったぞ? まず入り口の商店に使われた形跡がない。お前の所から来て最初の店だ。普通は一番に開く好立地の場所だ」
「なるほど。他には?」
「他にもまだあるが、まぁ決めては馬車の車輪跡だな」
「……そういう事でしたの」
イルミスはその意味を理解する。通常馬車が入れば車輪の後が「続く」はずだ。
この村が滅んだとは言え、そこを通過する馬車は今でもいる。
しかしこの村に入った馬車の車輪の後は、「ズレていた」と言うこと。つまり、村の空間自体がズレていると言うことだった。
「と、言うわけだ。まぁ、俺は何かおかしいと思っただけで、それがよく分からなかったが、エルヴィスが的確に見破ってな。流石プロの商人と言ったところか」
「チッ、困った殿方ですわねぇホント。ええ、その通りですわ。パラダイス・シフトで過去にあった、わたくしの思い出を再現したのですわ」
「そういう事も出来るのか……。それでなぜこんな事を?」
「もぅ、知っているくせにぃ。わたしくしを置いて逃げるから、ちょっとしたお仕置きですわ」
「デスヨネ。はぁ~やっぱりこうなったか……」
流はこうなる事を予想して、イルミスの屋敷から逃げ出したのだった。
Lでお腹いっぱいなところに、これ以上面倒な仲間が増えると、どこかのお嬢様がたのジト目が痛いからと言う理由でもあったが。
「お前。俺たちに難癖つけて、屋敷に軟禁するつもりだったろ?」
「さてさて、なんの事かさっぱり分かりませんわね。ふふふ」
「しかもお前、俺を襲う気だったろ? 今度こそ俺に噛みつこうとしたろ!?」
イルミスはそれに答えず、実に良い笑顔で微笑む。キバを見せて。
流はその白く光るキバに背筋を震わせ、戦闘中の事を思い出す。
接近戦の隙を狙い、イルミスは何度も流の首筋を噛もうとしていたのだから。
「うぅ。やっぱり襲う気だったなお前……」
「まぁ嫌ですわ。まるでわたくしが、下品な女みたいな言い方は関心しませんわ」
「お前が上品なら、世界中の娘が社交界のダンスを踊れるだろうよ。で、過去の映像を具現化したんだろ? するとこれが、先日あった村が滅んだ原因か?」
「いえ違いますわ。過去……三百年前にあった出来事ですわ。この村は幾度も滅んでいますの。ただウチと王都との中間で、立地も良いので何度も蘇るんですけど、色々な理由でその都度滅ぶ呪われた土地ですわ」
「呪われた土地ねぇ……」
流は先程斬り倒した巨木を見る。そして切り株の中央へ行くと、おもむろに中心に悲恋を突き立てる。
そして美琴へと語りかけると、妖力を譲渡してもらう。さらに自分の妖力と混ぜ合わせ、思い切り悲恋より切り株へ注ぐ。
次の瞬間、切り株が「ギャアアアア!?」と、木とは思えない叫び声を上げたかと思うと、その切り株が徐々に黒ずんでくる。
直径三メートルほどの切り株が徐々に盛り上がってくると、デカイ顔のようになり、やがて巨大な顔だけの化け物になる。
その見た目はイースター島のモアイを、醜悪に歪めたような顔つきで、顔中に吹き出物のような物が出来ていた。
「うへぇ。気持ち悪いなぁ……」
『やだぁ!? あんなの斬らないでくださいよ?』
流と美琴は心底嫌そうに、吐き捨てるようにデカイ顔に悪態をつく。しかしイルミスは驚きの表情を浮かべた。
「ったく、だ~れだよ~。俺がきもちよ~く負の感情でリラックスしてたつーのに?」
「ッ!? キサマは黒土!! どうしてこんな所にいるッ!?」
「あ~ん? …………お、おお!! イルミスじゃね~かよ。久しいなぁ。どうだ俺のモノになる決心はついたんかよ?」
「誰がキサマのような汚物のモノになる!!」
「ったく、つれねぇなぁ~。いいかイルミス。お前は俺のモノだって数百年前から決まってるんだ。おとなしく俺のものになっとけや? アン?」
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