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第九章:奪還作戦と、国の闇
431:恋多き女
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突然ここの領主と言う女が目の前にいる。その事に驚きつつも、最大の疑問が気になる。それは……。
「あのさ、イルミスってここの町の名前だろ? 領主様の名――」
「領主様はやめて? イルミス。そう、わたくしはね、イルミスの名をついで二十代目よ。だから、ね。イルミスって呼んでちょうだい? ふふ、ナガレなら呼び捨てにしてもよ・く・て・よ?」
イルミスと名乗った女。この町の領主にして、神出鬼没の恋大多き女と自称する美女は、流の言葉にかぶせるように自己紹介を重ねる。
さらにそう言いながら、流の胸からのどに指を這わせ、下アゴから唇へと指をすべらせ静かにタッチする。
その指を流の唇から戻し、自分の濡れたような唇に押し付けると、投げキッスをしてから豊満な双丘を押し上げるように自分を抱きしめる。
「あぁ~ん。ステキ、やっぱり貴方……アレなのね? その腰の黒くてたくましい……ハァンッ♪ ねぇ……もぅ我慢できないわ。ねぇ、その、黒いソレでわたくしを……」
「『ちょ、ま、待って!? 一体何を言っているの!!』」
突如イルミスに抱きつかれ、さらに熱い吐息が首筋にかかるほど密着され、二つの魅力の塊を押し付けられる。
それに流と美琴は声を悲鳴をあげるようにうわずる。美琴はたまらず悲恋から抜け出るが。
「ちょっと! 貴女! 流様になにをっ――」
「キャアア! 貴女! 中から出ましたわよね? ねぇ? そうでしょ? 今、ずるっと出ましたわ♪」
イルミスはそう言うと美琴に抱きつく。それは流にしたよりも、濃厚に顔を上気させ、まるで〝とろけそう〟な表情で。
「い、いやあああ! はーなーしーてー」
「だめよ~だぁめぇ~だぁめぇ。だって、貴女……日本刀でしょぅ?」
流と美琴は違和感を覚える。それはこの女が「日本語」を話し、さらに全てを理解していると。
流はつぎの瞬間、拒絶するように妖気を放ち、イルミスに叩きつける。それにイルミスはビクリとするが。
「あぁん。意地悪な事はしちゃ嫌ですわ」
「……アンタ、なぜ日本語を話せる? そしてどうして俺の剣が『日本刀』だと分かる?」
「そこまでだ。今すぐイルミス様より離れろ。さもなければどうなるか、分かるな?」
気がつけば、いたる所から殺気が出ている。気配察知で探れば、口を開いた目の前の男は当然、斜め前の木の裏。背後の木箱の裏。正面の建物の屋根の上。囲んでいる野次馬の中。
などなど、ぐるりと総勢三十八の殺気に囲まれていた。
「へぇ……三十八人か。おーけー理解した。スミマセンでした、だから命ばかりはお助けください、もう二度としません――などと言うと思ったか?」
流は妖人になり、周囲を強烈に威圧する。そして口を開いた男へ歩み寄ると、流は静かに口を開く。
「たかが三十八人なぞ、どうと言うことはない。死にたいヤツから剣を抜け。だがよく考えろよ? 抜いていいのは、俺に美琴を抜かれる覚悟のあるやつだけだ」
「クッ……こ、このッ!? 全員抜と――」
「待ちなさい。誰がそんな命をくだしましたかしら? もぅ! せっかく、わたくしとナガレの愛の語らいを邪魔するなんて、許せませんことよ?」
イルミスが呆れたように怒る。その言葉が全てとばかりに、殺気は霧散して消え去る。
流は「ほぅ」と感心すると、イルミスへ向けて話す。
「で、こんな俺でも怖くないのかな?」
「ええ、それは怖くない……と、言えば嘘になるかもしれませんわね。でも本当にいたのですね、お侍様は」
「……詳しく聞かせてもらっても?」
「ふふ。そのつもりで、わたくしが参りましたのですわ。さぁ、馬車にお乗りあそばせ。みなさんもどうぞ」
その様子を呆れるように見る男、エルヴィスは歩をすすめ、イルミスの隣へとくる。
お互い視線を合わせず、にこやかに話すがどうも様子がおかしい。
「これはこれは、イルミス様。随分早いおつきで。グゥッ!?」
「あらあら、これはエルヴィスじゃないですか。随分と遅いおつきで。アゥッ!?」
「いい加減、例のものをお支払いしていただきたいのですがねぇ? ツゥッ!?」
「何のことかしらね? 商人なら商人らしく、まともな品をお持ちになられたらいかが? キャゥッ!?」
話すたびに、お互いの顔が苦痛にゆがむ。見れば二人は足を踏みつけあっており、そのたびにおかしな声が出るしまつ。
何をしているのかと流は思い、乗った馬車から顔を出すと呆れる。
「おいおい、何をしているんだよアンタら?」
「あらいやだ。ナガレに見られちゃいましたわ。もぅ、これと言うのも強欲商人の貴方がいけなくてよ? ギィッ!?」
「何を言うのです。私は貴女の言うことを忠実に守ったのに、契約を破ったじゃないですか? ツゥッ!?」
「仲がいいのが分かったから、そろそろ行かないか? もう暗くなったぞ」
「いたしかたないですわね。エルヴィス、ここは休戦といたしましょう」
「ナガレに感謝するのですね、強欲領主様と、噂になるのも近いでしょうけど」
お互い額に青筋をうかべ、それはもう〝にこやか〟に笑い合う。
そんな大人の世界を見た美琴は、『異世界ってコワイね』とポツリとこぼすのだった。
「あのさ、イルミスってここの町の名前だろ? 領主様の名――」
「領主様はやめて? イルミス。そう、わたくしはね、イルミスの名をついで二十代目よ。だから、ね。イルミスって呼んでちょうだい? ふふ、ナガレなら呼び捨てにしてもよ・く・て・よ?」
イルミスと名乗った女。この町の領主にして、神出鬼没の恋大多き女と自称する美女は、流の言葉にかぶせるように自己紹介を重ねる。
さらにそう言いながら、流の胸からのどに指を這わせ、下アゴから唇へと指をすべらせ静かにタッチする。
その指を流の唇から戻し、自分の濡れたような唇に押し付けると、投げキッスをしてから豊満な双丘を押し上げるように自分を抱きしめる。
「あぁ~ん。ステキ、やっぱり貴方……アレなのね? その腰の黒くてたくましい……ハァンッ♪ ねぇ……もぅ我慢できないわ。ねぇ、その、黒いソレでわたくしを……」
「『ちょ、ま、待って!? 一体何を言っているの!!』」
突如イルミスに抱きつかれ、さらに熱い吐息が首筋にかかるほど密着され、二つの魅力の塊を押し付けられる。
それに流と美琴は声を悲鳴をあげるようにうわずる。美琴はたまらず悲恋から抜け出るが。
「ちょっと! 貴女! 流様になにをっ――」
「キャアア! 貴女! 中から出ましたわよね? ねぇ? そうでしょ? 今、ずるっと出ましたわ♪」
イルミスはそう言うと美琴に抱きつく。それは流にしたよりも、濃厚に顔を上気させ、まるで〝とろけそう〟な表情で。
「い、いやあああ! はーなーしーてー」
「だめよ~だぁめぇ~だぁめぇ。だって、貴女……日本刀でしょぅ?」
流と美琴は違和感を覚える。それはこの女が「日本語」を話し、さらに全てを理解していると。
流はつぎの瞬間、拒絶するように妖気を放ち、イルミスに叩きつける。それにイルミスはビクリとするが。
「あぁん。意地悪な事はしちゃ嫌ですわ」
「……アンタ、なぜ日本語を話せる? そしてどうして俺の剣が『日本刀』だと分かる?」
「そこまでだ。今すぐイルミス様より離れろ。さもなければどうなるか、分かるな?」
気がつけば、いたる所から殺気が出ている。気配察知で探れば、口を開いた目の前の男は当然、斜め前の木の裏。背後の木箱の裏。正面の建物の屋根の上。囲んでいる野次馬の中。
などなど、ぐるりと総勢三十八の殺気に囲まれていた。
「へぇ……三十八人か。おーけー理解した。スミマセンでした、だから命ばかりはお助けください、もう二度としません――などと言うと思ったか?」
流は妖人になり、周囲を強烈に威圧する。そして口を開いた男へ歩み寄ると、流は静かに口を開く。
「たかが三十八人なぞ、どうと言うことはない。死にたいヤツから剣を抜け。だがよく考えろよ? 抜いていいのは、俺に美琴を抜かれる覚悟のあるやつだけだ」
「クッ……こ、このッ!? 全員抜と――」
「待ちなさい。誰がそんな命をくだしましたかしら? もぅ! せっかく、わたくしとナガレの愛の語らいを邪魔するなんて、許せませんことよ?」
イルミスが呆れたように怒る。その言葉が全てとばかりに、殺気は霧散して消え去る。
流は「ほぅ」と感心すると、イルミスへ向けて話す。
「で、こんな俺でも怖くないのかな?」
「ええ、それは怖くない……と、言えば嘘になるかもしれませんわね。でも本当にいたのですね、お侍様は」
「……詳しく聞かせてもらっても?」
「ふふ。そのつもりで、わたくしが参りましたのですわ。さぁ、馬車にお乗りあそばせ。みなさんもどうぞ」
その様子を呆れるように見る男、エルヴィスは歩をすすめ、イルミスの隣へとくる。
お互い視線を合わせず、にこやかに話すがどうも様子がおかしい。
「これはこれは、イルミス様。随分早いおつきで。グゥッ!?」
「あらあら、これはエルヴィスじゃないですか。随分と遅いおつきで。アゥッ!?」
「いい加減、例のものをお支払いしていただきたいのですがねぇ? ツゥッ!?」
「何のことかしらね? 商人なら商人らしく、まともな品をお持ちになられたらいかが? キャゥッ!?」
話すたびに、お互いの顔が苦痛にゆがむ。見れば二人は足を踏みつけあっており、そのたびにおかしな声が出るしまつ。
何をしているのかと流は思い、乗った馬車から顔を出すと呆れる。
「おいおい、何をしているんだよアンタら?」
「あらいやだ。ナガレに見られちゃいましたわ。もぅ、これと言うのも強欲商人の貴方がいけなくてよ? ギィッ!?」
「何を言うのです。私は貴女の言うことを忠実に守ったのに、契約を破ったじゃないですか? ツゥッ!?」
「仲がいいのが分かったから、そろそろ行かないか? もう暗くなったぞ」
「いたしかたないですわね。エルヴィス、ここは休戦といたしましょう」
「ナガレに感謝するのですね、強欲領主様と、噂になるのも近いでしょうけど」
お互い額に青筋をうかべ、それはもう〝にこやか〟に笑い合う。
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