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第九章:奪還作戦と、国の闇

411:レッドフィッシュ

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 爪はすでに生え変わっているが、流を警戒し降りてこようとしない。
 だがここから離れるつもりもなく、威圧するように時折野太い声で叫ぶ。
 やがて痺れを切らしたか、大きく一羽ばたきすると急降下で降りてくる。
 それを流は待ってましたと言わんばかりに、美琴を天に向けて縦に持つ、八相の構えにて待つ。

「ギャヴァアアア!! バケモノ、オマエ、コロス!!」
「話せるのか!! 魔法も使えるようだから当然なのか? まぁどうでもいいが――ジジイ流・肆式よんしき! 四連斬!!」

 一撃集中型の四連斬を放つ。エッジ・エッジドラゴンも負けじと右足の爪を四本飛ばし、
それに対応しつつ、残った左足で鷲掴みに流に襲いかかる。
 それに美琴を左斜めしたから斬り上げ対抗するが、巨体から来る速度と重さに流は吹き飛ばされてしまう。

『『『ナガレ!!』』』

 全員の声が思わず揃い、流が櫓の上部から吹き飛んで行くのを、どうしようもなく見る事しか出来ない。
 放物線を描くように、そのまま水面へ着水し、さらに水中へと沈み込む。

「クッテヤル!!」
 
 エッジ・エッジドラゴンは空中で、グルリと一回転した後、その勢いのまま水中へと大口を開いたまま飛び込む――。
 寸前だった。水面から突如現れる二頭のみずち! それが着水間際のエッジ・エッジドラゴンの足へと噛みつき、大きな足の指片方四本で左右あわせて八本斬り飛ばす。

 たまらず頭から水面へ落下し、無様な様子でもがいた瞬間だった。
 水面が突如氷結し、その中心部から氷の円柱が突き出る。それが割れたと思えば、中から頭にワン太郎を乗せた流が現れる。

「――ジジイ流・水斬術すいざんじゅつ 水昇双牙すいしょうそうが【改】だ、馬鹿ヤロウ。自慢の御御足おみあしも台無しだな?」

  凍った湖を歩く流。それを見たエッジ・エッジドラゴンは、「ギイイイイイ」と悲鳴とも叫びとも言える恐怖心を、隠しもせずに咆える。
 徐々に迫る氷る湖。飛び立とうにも水を蹴り上げる足はまだ復活しておらず、羽だけで飛ぶには目の前の恐怖てきから距離が近すぎた。
 このまま嬲るように殺されるのかと恐怖が限界に達した刹那、妙案を思いつく。

「ジャバの子供の恨みだ、ジジイ流刺突術――なにッ!?」

 エッジ・エッジドラゴンは飛ぶことを諦め、翼をたたむ。
 それを流は驚きの表情で見る。が、それが何を意味しているか次の瞬間理解する。
 湖面を蝕むように迫る氷、それを翼を折りたたみ水中へと潜り、魔力でブーストしたのか、驚くような速さで湖の深部へと潜航していったのだった。

「うっそだろ……」
「びっくりだワンねぇ……」

 開口し呆然とする二人の元へと黄緑色がハデに目立つ、ジャバ・ケロックがやってくる。
 どうやらとても寒いらしく、ブルブルと震えながら舌をだす。

「ケロケロ。突然の事で言うの忘れてたんだケロ、悪いやつは水中へ潜れるだケロリ」
「そうだったのか。でも、どうやって泳いでいるんだあれ?」
「翼をたたむとね、魔力でその隙間から水を吸って、後ろへ出してるみたいケロ。変な生き物ケロ」
「そうなのか。すまないな、討伐出来なくて」
「うーんうん、あれは仕方ないケロ。でもかなりの痛手みたいだし~もうここには来なさそうケロ。だからちょっと安心ケロケロ」
「ならまぁ……安心か?」
「ケロリン」

 その後ジャバが長い舌で、流たちを背中に乗せる。ちょっぴりネトっとしたが、意外にも匂いもなく、逆にミントのようなハーブ系の香りすらした。
 理由を聞くと「えちけっと」らしい。納得。

 中間の島へと付いた頃にはすでに日も落ち、予定より大幅に遅れた事と、エッジ・エッジドラゴンが夜に襲って来ないとも限らず、島のキャンプ場で一泊する事にする一行。
 ジャバはお礼をしたいと言うことで、湖へ戻ると言って早々に立ち去る。
 それから少しした後の事だった。水面が光だし、中から不思議な魚が飛び上がった。
 全体に薄く発光しており、緑・黄・紫・青と実に美しい。

「うーん、ファンタスティック」
『本当ですねぇ、異世界って美しい場所がいっぱいだね』
「おまたせケロ~。これこれ食べてケロケロ」
「「「でかッ!?」」」
「ジャバ、私もそんなの見たの初めてだが?」
「ケロケロ。人間さんが頑張ってくれたから、特別に振る舞うケロロ」

 エルヴィスも驚く、ジャバが持ってきた魚。それは真っ赤に輝く鱗が実に美しく、それが透けていた。
 その鱗の奥はピンク色の実に綺麗な体が見え、神々しくも食欲をそそる肉体が見える。
 さらにその体は十メートル近くあり、二十五人で食しても食べ切れない量でだろう。

「こいつはなんとも……生でも食べれそうだな。と言うより食べたい」
「え!? ナガレは生でお魚食べるの? お腹こわしちゃうよ?」
『日本人はね、生食に命をかけて食べる民族なんです。生の食材には、それだけの魅力があるんだよ』
「ハッハッハ、セリア様。遠く離れた土地に住む、東の民と呼ばれる民族も同じようですよ。私も何度か行商で行きましたからよく知っています。そう言えば顔もどことなく、彼らとナガレは似ているな」
「東の民? へぇ、そんな人たちがいるのか。会ってみたいな、そいつらに……」


 流はエルヴィスが言う、自分によく似た東の民に興味がわく。
 もしかしたら、それはあの「人形討伐遠征隊」に、関わりのある者かもしれないのだから。
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