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第九章:奪還作戦と、国の闇
406:密告
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大勢の足音が響く。それも重厚な金属がこすり合う音と共に、町の空気を汚していく。
やがてその不快な騒音がルイジットの店の前まで来ると、その騒音の元が大声で叫ぶ。
「ここに凶悪犯罪者共が逃げ込んだとの情報があり、我ら守護騎士隊が参上した!! おとなしく降伏すれば、命だけは助けよう!!」
その宣言をうけ、店からルイジットが飛び出てくる。
「た、大変でございます! 罪人共が逃げ出しました!!」
「なにぃ? ちゃんと足止めはしたのだろうな?」
「は、はい。コレをごらんください、ヤツラがかじったパンです!! 指定された薬物もこれ、このとおり」
「この粉は……うむ、たしかに痺れ薬は入っているようだな。ではなぜ逃げ出した?」
「そ、それが分かりません。私が通報に出ている隙に、こつ然と消えてしまって。ただヤツラは東門から抜けると言っていました」
「分かった、お前の忠義は認めよう。よし、者共! 賊を追え!!」
「「「ハッ!!」」」
そう騎士隊長が指示すると、また金属の不快な音を響かせ町を走り出す。
やれやれとルイジットはため息をもらすと、店の中へと入っていく。
「ご贔屓にしていただき、まいどまいど」
ルイジットはそう笑うと、金貨の入った小袋を撫でながら後片付けをするのだった。
◇◇◇
そのころ流たちはルイジットの店の裏に繋がれていた、嵐影と馬に騎乗し北門へと向けてスラム街を走る。
その荷物に食料を沢山詰め込み、かなり重そうだ。
「うまくいったわね!」
「流石だなセリア。町中でバッタリ出くわす危険性があるなら、おびき寄せてから逃げ出すとはな」
流もセリアの采配に舌を巻く。どうせ敵だらけ、ならば引き寄せてから離脱が一番危険性がない。
その思考原理は、ルイジットの金銭に関する確かな「欲」を見越した上での指示だ。
それを完璧に見越して作戦を立案し、実行するする大胆さが眩しい。
「この食料は平気なのか?」
「ええ、問題ないはずよ。ねぇエルヴィス?」
「そうですね、彼は生粋の守銭奴が商人になったような男。だからこそ『金が支払われている間は』確実にコチラの味方でしょう」
「逞しいねぇ商人。あぁ、俺も見習わないとかね?」
「やめてよ、ナガレはそのままでいてよね」
「アイマム。しっかしうまく引き付けてくれたお陰で、こっちの警備は本当にザルだな」
セリアが渡したメモ。その内容は食料と警備兵の陽動だった。だがこの街の密告制度は何処にでもあり、完全協力をすれば自分が殺される。だからこその通報と、痺れ薬を入れたパンであった。
パンをかじることで、ルイジットの策も半ば成功したことで、彼が裏切っていないと証明させる小細工をし、セリアもルイジットへの恩を売る。
さらにルイジットの通報を逆手にとり、今回の脱出に利用したセリアの手腕にあらためて感心するも、一つ疑問が浮かぶ。
「でも食料なら、アイヅァルムから持ってくりゃいいだろう?」
「もぅ、みんなアイテムバッグをもってないのよ? 持ってるのは、あなたと私。そして」
「私ですね。ナガレも知ってる通り、あれは高価だからな。そうそう持ってるヤツはいない。まぁそんな訳で、行軍速度は出来るだけ落としたくなかったワケだ。それと、この先で使うから、少しでも新鮮な物を持っていきたいしな」
なるほどと納得する流。やがて北門まで来ると平常時と同じ状態であり、大門は開放したままであった。
「さて、マヌケにも大開放中ね。ルーセント」
「はいお嬢様。リッツは三人を連れ陽動後に北門前に来い。それを合図にリッツ達を回収し、そのまま強行突破する」
「ハ、ではいつもの手で?」
「そうだな、そいつでいこう」
リッツはルーセントの副官であり、猫科の獣人だ。その容姿は獣の比率が高く、かなり黒猫っぽい。
そんな彼は隠密や撹乱を得意とし、セリアの戦において重要な存在だ。
彼のお気に入りの部下二名をともない、褐色の肌を影に溶け込ませて建物の影へと消えていく。
昼間だというのに、その認識阻害をしようしているような動きに流は驚く。
「すごいな。いくら鎧を脱いだからと言って、あそこまで気配消せるのかよ」
「フン、貴様もすごかろうが、ワシの部下はもっと凄いんじゃ」
「こぉら、ルーセントもへんな所で張り合わないの。さて……じゃあ私達も影に隠れて待ちましょうか」
ちょうど打ち壊された大店があり、そこへと嵐影と馬を入れ全員で息を潜める。
待つこと十分。早鐘が鳴り響き、黒煙が北門から離れた場所で立ち昇る。
「来たようね。ワンコちゃん、ここから北門の近くに彼らが見えるかしら?」
「う~ん、どれどれ。あ、いるワンねぇ。余裕そうにリンゴみたいのをかじっているワン」
「よし、準備は整った。行こうナガレ!」
「じゃあ出発だ。指揮はお前に任せた」
「うん、任された。ではナガレとLさんは私と共に、エルヴィスは後方。殿はルーセントで行く。騎士各員は、騎乗後に私に続け!!」
「「「ハッ!!」」」
「はいよ~」
「私は怪我をしないようにしましょう」
「あたしはマイ・マスターの隣に♪」
「騎士は副長たちを拾い上げた後、全力離脱」
セリアはそう言うと、颯爽と騎乗し抜剣すると北門を指す。
「敵は少数、なれど魔法師がいると思え! では、行く!!」
軍馬の手綱を引き、腹を足で強く挟む。すると軍馬は強く嘶き、前足を浮かせたのちに爆走する。
それに追従する流はセリアの武者振りに、「粋だねぇ」と広角をあげて嵐影にも同じようにうながす。
そんな主の思いに嵐影も応え、「マママ!!」と力強く言うと、なぜかジャンプしてから爆走するのだった。
やがてその不快な騒音がルイジットの店の前まで来ると、その騒音の元が大声で叫ぶ。
「ここに凶悪犯罪者共が逃げ込んだとの情報があり、我ら守護騎士隊が参上した!! おとなしく降伏すれば、命だけは助けよう!!」
その宣言をうけ、店からルイジットが飛び出てくる。
「た、大変でございます! 罪人共が逃げ出しました!!」
「なにぃ? ちゃんと足止めはしたのだろうな?」
「は、はい。コレをごらんください、ヤツラがかじったパンです!! 指定された薬物もこれ、このとおり」
「この粉は……うむ、たしかに痺れ薬は入っているようだな。ではなぜ逃げ出した?」
「そ、それが分かりません。私が通報に出ている隙に、こつ然と消えてしまって。ただヤツラは東門から抜けると言っていました」
「分かった、お前の忠義は認めよう。よし、者共! 賊を追え!!」
「「「ハッ!!」」」
そう騎士隊長が指示すると、また金属の不快な音を響かせ町を走り出す。
やれやれとルイジットはため息をもらすと、店の中へと入っていく。
「ご贔屓にしていただき、まいどまいど」
ルイジットはそう笑うと、金貨の入った小袋を撫でながら後片付けをするのだった。
◇◇◇
そのころ流たちはルイジットの店の裏に繋がれていた、嵐影と馬に騎乗し北門へと向けてスラム街を走る。
その荷物に食料を沢山詰め込み、かなり重そうだ。
「うまくいったわね!」
「流石だなセリア。町中でバッタリ出くわす危険性があるなら、おびき寄せてから逃げ出すとはな」
流もセリアの采配に舌を巻く。どうせ敵だらけ、ならば引き寄せてから離脱が一番危険性がない。
その思考原理は、ルイジットの金銭に関する確かな「欲」を見越した上での指示だ。
それを完璧に見越して作戦を立案し、実行するする大胆さが眩しい。
「この食料は平気なのか?」
「ええ、問題ないはずよ。ねぇエルヴィス?」
「そうですね、彼は生粋の守銭奴が商人になったような男。だからこそ『金が支払われている間は』確実にコチラの味方でしょう」
「逞しいねぇ商人。あぁ、俺も見習わないとかね?」
「やめてよ、ナガレはそのままでいてよね」
「アイマム。しっかしうまく引き付けてくれたお陰で、こっちの警備は本当にザルだな」
セリアが渡したメモ。その内容は食料と警備兵の陽動だった。だがこの街の密告制度は何処にでもあり、完全協力をすれば自分が殺される。だからこその通報と、痺れ薬を入れたパンであった。
パンをかじることで、ルイジットの策も半ば成功したことで、彼が裏切っていないと証明させる小細工をし、セリアもルイジットへの恩を売る。
さらにルイジットの通報を逆手にとり、今回の脱出に利用したセリアの手腕にあらためて感心するも、一つ疑問が浮かぶ。
「でも食料なら、アイヅァルムから持ってくりゃいいだろう?」
「もぅ、みんなアイテムバッグをもってないのよ? 持ってるのは、あなたと私。そして」
「私ですね。ナガレも知ってる通り、あれは高価だからな。そうそう持ってるヤツはいない。まぁそんな訳で、行軍速度は出来るだけ落としたくなかったワケだ。それと、この先で使うから、少しでも新鮮な物を持っていきたいしな」
なるほどと納得する流。やがて北門まで来ると平常時と同じ状態であり、大門は開放したままであった。
「さて、マヌケにも大開放中ね。ルーセント」
「はいお嬢様。リッツは三人を連れ陽動後に北門前に来い。それを合図にリッツ達を回収し、そのまま強行突破する」
「ハ、ではいつもの手で?」
「そうだな、そいつでいこう」
リッツはルーセントの副官であり、猫科の獣人だ。その容姿は獣の比率が高く、かなり黒猫っぽい。
そんな彼は隠密や撹乱を得意とし、セリアの戦において重要な存在だ。
彼のお気に入りの部下二名をともない、褐色の肌を影に溶け込ませて建物の影へと消えていく。
昼間だというのに、その認識阻害をしようしているような動きに流は驚く。
「すごいな。いくら鎧を脱いだからと言って、あそこまで気配消せるのかよ」
「フン、貴様もすごかろうが、ワシの部下はもっと凄いんじゃ」
「こぉら、ルーセントもへんな所で張り合わないの。さて……じゃあ私達も影に隠れて待ちましょうか」
ちょうど打ち壊された大店があり、そこへと嵐影と馬を入れ全員で息を潜める。
待つこと十分。早鐘が鳴り響き、黒煙が北門から離れた場所で立ち昇る。
「来たようね。ワンコちゃん、ここから北門の近くに彼らが見えるかしら?」
「う~ん、どれどれ。あ、いるワンねぇ。余裕そうにリンゴみたいのをかじっているワン」
「よし、準備は整った。行こうナガレ!」
「じゃあ出発だ。指揮はお前に任せた」
「うん、任された。ではナガレとLさんは私と共に、エルヴィスは後方。殿はルーセントで行く。騎士各員は、騎乗後に私に続け!!」
「「「ハッ!!」」」
「はいよ~」
「私は怪我をしないようにしましょう」
「あたしはマイ・マスターの隣に♪」
「騎士は副長たちを拾い上げた後、全力離脱」
セリアはそう言うと、颯爽と騎乗し抜剣すると北門を指す。
「敵は少数、なれど魔法師がいると思え! では、行く!!」
軍馬の手綱を引き、腹を足で強く挟む。すると軍馬は強く嘶き、前足を浮かせたのちに爆走する。
それに追従する流はセリアの武者振りに、「粋だねぇ」と広角をあげて嵐影にも同じようにうながす。
そんな主の思いに嵐影も応え、「マママ!!」と力強く言うと、なぜかジャンプしてから爆走するのだった。
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