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第九章:奪還作戦と、国の闇

379:アイヅァルムへ来た理由

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「……L、お前たち二人は『どうして操られていた』んだ?」
「それがお恥ずかしい話ですが、よく覚えていないのです。ただ、Rとあたしは龍人のテリトリーへと侵入した『怪異』と戦闘するはずでした」
「怪異?」
「ぁぅ、そんな鋭い瞳で見つめないでくださぃッ(ビクンッ)」

 見た目が恐ろしくいい女なのに、このHENTAIさが残念すぎてドン引きだ。と言うか、イチイチビクンとするなと思う。だが話を聞くうちに、どうやら「怪異」とやらの存在がおぼろげだが見えてくる。

「つまり、そいつらはこの世界の奴らとは思えないと?」
「その通りでございます、マイ・マスター。この世界は『魔力』によって形成されています。そこの小石、土、草、水、空気。あらゆるものに必ず魔力が含まれます。そう、自然に魔力は宿るのです。後天的に得たモノとは違い、それは文字通り自然に。ところがその『怪異』と呼ばれるものには……それがない。マイ・マスターのように」

 そう言うとLは神を見るような目で流を見つめると、豊満な胸の前へと両手を合わせて流へと問う。

「私たち龍人、いえ。今は進化したからそれ以上の存在となっているようですが、私達はその魔力が元からのものか、後天的な魔力かが視えるのです。そしてこの世界に無い『存在』がマイ・マスターです。あなた様方は神……なのですか?」
「多分だが、その答えは半分イエスであり、残りはノーだ。なぜならお前が言う怪異とやらは、多分俺の敵であり……神の一柱だ」
「承知いたしました。マイ・マスターの敵は全てコロセ、と」
「えーと、お話聞いていましたか? 俺はそこまで言っていませんぜ?」
『無理ですよ、ホラ……』

 美琴がそういう先には、Lが震えた瞳で空に向かってだらしのない顔で笑っていた。本当にコワイ……。

「え、L。話を戻すが、その存在についてだ。そいつにお前達二人が何かされたのか?」
「はぇ……? ぁ、失礼しました。まず質問の答えですが「多分」となります。それと言うのも、今私たちが着ているような服装の女が突如現れ、魔法でない何か術のようなモノを使って私達を拘束しました。ですが我らも龍人。その術を破りかけた瞬間に意識を失い、気がつけば朦朧もうろうとした意識の中で……」
「俺と戦闘になった、か。それは俺の国から逃げ出した奴らが使う、邪法と呼ばれるものでRとLを縛ったのだろう。しかしその操ってた奴らは、お前たちに何をさせたかったんだ?」

 Lはその問に思い出すように目を閉じると、ゆっくりと苦々しく語りだす。

「先行していた私達が捕まり利用された後、朦朧とした意識のなかで寄生していた……多分、人だと思える何かが言っていました。『コマワリナガレを殺す』と。ただ慣れていない体という事もあり、それが出来なければアイヅァルムかトエトリーに、被害を与えるのが仕事だと言っていました」
「……また俺が原因かぁ。本当に〆が言っていた通り、どこでも襲ってくるんだな憚り者は。それにしてもよく短い時間でリザードマンを集めココに来れたな」
「マイ・マスターと会ったのは、私達を捉えて数時間後だと思います。父は無能ではないので、その程度で私達を探せたと思いますし……。リザードマンはここよりすこし行った場所で、コロニーを作ろうと移動中だったものを利用しました」
「トカゲ共も災難だったな」

 そう流が言うと、Lは思い出したように主へと報告する。

「あ、そうでした!? 思い出しました。あのままリザードマンを放置しておけば、確実に王の苗床になっていましたよ? それになるだろう存在を殺して、私達がアイツらを配下にしたのですから」
「それは……結果的に多くの人が救われたのか?」
「マイ・マスター。冒険者たちや兵士を差し向けても、多大な被害が出たのは間違いありません。あたしたちだからこそ、簡単に出来たのですから」

 流はリザードマンに殺された人達の事を思い出す。彼らには何の関わりもなかったが、この街、トエトリー……そして自分を始末するために、手段を選ばず襲ってくる非道の輩に巻き込まれたのだと。
 そんな事を考えていたのが美琴に伝わったのか、静かに語り始める。

『流様……人形はあなたが居なくても、いつもこうだったよ。バーツさんじゃないけど、いつかこうなっていた。皆を救おうにも、そんなにあなたの腕は広くない。だから今、救えた人達の事を考えてあげて、ね?』

 流は〆に聞いた事の一つ、人形は「楽しみ」で人を狩ると言う事を思い出す。
 それがアルマーク商会と、深く繋がりがある。だから今日こうならなくても、いつかはそうなっていただろう。
 その時、リザードマンのコロニーが成熟して凶悪な集団になった後、トエトリーへと襲うように利用されたかもと思えば、初期段階で鎮圧出来てよかったのかもと思うことにする。だからこそ――。

「そうだな……だからこそ、あの狂った神を討滅しねぇとな」
「あるじぃ~、そろそろ着くようだワン」

 嵐影の頭の上に乗っているワン太郎が、背中で寝ている流へと到着を知らせる。
 寝そべるために鞍をずらしていたが、それを直して背中に乗りながら周りを見回す。

「どこもかしこも敵だらけだねぇ」

 門の前には厳戒態勢のまま、流をいつでも攻撃できるように布陣した兵士たちで溢れている。それが防御壁の上にもズラリと並び、流を弓で歓迎するように狙われていたのだった。
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