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第九章:奪還作戦と、国の闇
352:切り札
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「因幡のおかげで、何とか有効な手札も手に入ったし来てよかったな」
「もぅ! 無茶はだめなのです! 気をつけるのですよ?」
流は「分かったよ」と、白々しく返事して札をしまっている。美琴が不思議そうな顔で、その様子を見て話す。
「流様、その札持っていけるのかな?」
「それな、俺も思ったんだが多分大丈夫だ。この札からはこの店特有の骨董品の気配が全くしないし、なんつーか……そう、ヒトのようなモノだと思う。多分だが封座の一部を使ってるからかもしれない」
「封座さんか~懐かしぃなぁ。昔はボクをよく可愛がってくれたのです。それにしてもその御札、本当に封座さんの体の一部なのです?」
「それは間違いないと思うぞ? 俺は子孫らしいからか、なんか分かるんだよなぁ。そう考えるとちょっと不気味だよな……」
「一体どこを使っているんでしょうね? ちょっと怖い」
子孫に不気味だと言われ、もっと不気味な女幽霊に怖いと言われる封座だったモノ……。実に哀れである。
「もぅ! そんなこと言ったら、封座さんがかわいそうなのです! そのうち出てきて、頭ゴチンってされるのです」
「マジで出て来そうだから困る……」
「それ、なんかワカリマス」
本当に哀れである。そんなご先祖様の話がポツリと途切れ、因幡が思い出したように話す。
「あ! そう言えば自然に話していたのです。美琴ちゃん久しぶりなのですよ」
「そう言えばそうだったね! 因幡ちゃんをいつも見ていたから、自然にお話してたよ」
「うちのヒキコモリが、やっとお外へ出れるようになったんだ。褒めてくれ」
「もぅッ!! でも本当のことだから、何も言えないのがクヤシィ」
「あははは、でもまた会えて嬉しいのです。あ、そうそう。お客人に後で渡すものがあるのです。裏磐梯山という所に生えている黄金笹と、恐山の湖の水と、その水中に生えている黄泉茸。そして羅臼岳山頂に生えている、氷華茸などなど、で作ったお薬があるのです」
「福島・青森・北海道まで行ってたのか……しかもまたレアそうな名前だけど、やっぱりそうなんだろう? それとあの水飲めないと思うけど?」
「それはそうなのです、ド○キで買えたらそこで買うのです。そのままなら飲めないけど、ボクが材料にする時点で問題ないのです」
そりゃそうだと、納得する流と美琴。そのあとしばらく旅の話を聞いて、驚きと感動をすることになる。どうやらチョットした冒険があったようだ。
その後店内に戻ると三人が待っており、そのままトエトリーへと戻ることになった。
「古廻様、くれぐれもお気をつけて。あの女は本当に嫌らしいですからね」
「せやでぇ? まだここにおった時に、あの分体を仕込んでいたほどですねん」
「フム、憚り者への注意もそうですが、あの札の取り扱いには十分にご注意を」
「分かったって、そう心配するなよ。あぁ、そうだ。戻った時の時間はどのくらいずれている?」
「そこは大丈夫でっせ。ほぼ異怪骨董やさんへ来た時間から、さほど進んでいまへん」
「助かる、じゃあ今度こそ王都へ行ってくる」
「はい。夜朔も向かっておりますので、向こうで役に立てるかと思います」
「お客人、気をつけてね?」
「ありがと因幡、色々助かった。じゃあ行ってくる!!」
流はそう言うと異超門に消えていく。それを見守る四人は、心中穏やかではなかった。
「あのクソ女め、必ず息の根をとめてやるさかい覚悟してまっとけ」
「フム、ますます拠点の整備を急ぎませんとなぁ」
「弐……貴女だけは必ず」
(お客人、御札が触れるようになったからと言って、無理はだめなのです……)
それぞれが思いを胸に刻んでいる頃、流はトエトリーの屋敷へと戻ってきた。
「おかえりなさいませ旦那様」
「セバス、待っててくれたのか?」
「あれからさほど時間はたっておりませんので。それと嵐影に旅支度を済ませ、外で待たせてあります」
「それは助かる、流石はセバスだな」
「恐悦至極に存じます」
話しながらエントリーホールへと向かう流たちは、そこにいるメイドと執事に挨拶すると、扉の前にいる嵐影へと乗りこむ。
「スパイス関連については、〆達に伝えてあるからその通りに動いてくれ。それと、ここの所在が憚り者と呼ばれる存在にバレた。今後は何時襲ってきてもおかしくないから、皆も大変だけど頼むな?」
「「「承知致しました」」」
「じゃあよろしく!!」
そう流は言うと、嵐影に北門へと急がせる。
「……マ?」
「そうだ、屋根の上を走ってくれ」
「……マ!」
時速にしたら五十キロは出ていそうな速さで、頑丈な石造りの屋根のみ選び疾走する。
そんな嵐影背中から見る景色は賑わっているのに、たった一人いないだけで妙に寂しく見える。
やがて北門付近に近づくと、嵐影は家々の間の岩壁を蹴るようにして地面へと着地する。
北門へと近づくにつれ、何やら人だかりが出来ている。見れば氷のドームが出来ており、その中に人が恐る恐る入るようだった。
『流様……あれって』
「やめろ、聞きたくない」
「……マァ?」
「お前まで中へ行きたいとか言わないでくれ」
そんな流達を見つけたのか、氷のドームより氷狐王が出てくる。すると門番達が血相を変えて大騒ぎしはじめ、槍や剣を構えて威圧する。
しかしいくら威圧しようとも、氷狐王は何事も無かったように流への元へと歩いてくる。
当然、北門は大パニックであった。
「もぅ! 無茶はだめなのです! 気をつけるのですよ?」
流は「分かったよ」と、白々しく返事して札をしまっている。美琴が不思議そうな顔で、その様子を見て話す。
「流様、その札持っていけるのかな?」
「それな、俺も思ったんだが多分大丈夫だ。この札からはこの店特有の骨董品の気配が全くしないし、なんつーか……そう、ヒトのようなモノだと思う。多分だが封座の一部を使ってるからかもしれない」
「封座さんか~懐かしぃなぁ。昔はボクをよく可愛がってくれたのです。それにしてもその御札、本当に封座さんの体の一部なのです?」
「それは間違いないと思うぞ? 俺は子孫らしいからか、なんか分かるんだよなぁ。そう考えるとちょっと不気味だよな……」
「一体どこを使っているんでしょうね? ちょっと怖い」
子孫に不気味だと言われ、もっと不気味な女幽霊に怖いと言われる封座だったモノ……。実に哀れである。
「もぅ! そんなこと言ったら、封座さんがかわいそうなのです! そのうち出てきて、頭ゴチンってされるのです」
「マジで出て来そうだから困る……」
「それ、なんかワカリマス」
本当に哀れである。そんなご先祖様の話がポツリと途切れ、因幡が思い出したように話す。
「あ! そう言えば自然に話していたのです。美琴ちゃん久しぶりなのですよ」
「そう言えばそうだったね! 因幡ちゃんをいつも見ていたから、自然にお話してたよ」
「うちのヒキコモリが、やっとお外へ出れるようになったんだ。褒めてくれ」
「もぅッ!! でも本当のことだから、何も言えないのがクヤシィ」
「あははは、でもまた会えて嬉しいのです。あ、そうそう。お客人に後で渡すものがあるのです。裏磐梯山という所に生えている黄金笹と、恐山の湖の水と、その水中に生えている黄泉茸。そして羅臼岳山頂に生えている、氷華茸などなど、で作ったお薬があるのです」
「福島・青森・北海道まで行ってたのか……しかもまたレアそうな名前だけど、やっぱりそうなんだろう? それとあの水飲めないと思うけど?」
「それはそうなのです、ド○キで買えたらそこで買うのです。そのままなら飲めないけど、ボクが材料にする時点で問題ないのです」
そりゃそうだと、納得する流と美琴。そのあとしばらく旅の話を聞いて、驚きと感動をすることになる。どうやらチョットした冒険があったようだ。
その後店内に戻ると三人が待っており、そのままトエトリーへと戻ることになった。
「古廻様、くれぐれもお気をつけて。あの女は本当に嫌らしいですからね」
「せやでぇ? まだここにおった時に、あの分体を仕込んでいたほどですねん」
「フム、憚り者への注意もそうですが、あの札の取り扱いには十分にご注意を」
「分かったって、そう心配するなよ。あぁ、そうだ。戻った時の時間はどのくらいずれている?」
「そこは大丈夫でっせ。ほぼ異怪骨董やさんへ来た時間から、さほど進んでいまへん」
「助かる、じゃあ今度こそ王都へ行ってくる」
「はい。夜朔も向かっておりますので、向こうで役に立てるかと思います」
「お客人、気をつけてね?」
「ありがと因幡、色々助かった。じゃあ行ってくる!!」
流はそう言うと異超門に消えていく。それを見守る四人は、心中穏やかではなかった。
「あのクソ女め、必ず息の根をとめてやるさかい覚悟してまっとけ」
「フム、ますます拠点の整備を急ぎませんとなぁ」
「弐……貴女だけは必ず」
(お客人、御札が触れるようになったからと言って、無理はだめなのです……)
それぞれが思いを胸に刻んでいる頃、流はトエトリーの屋敷へと戻ってきた。
「おかえりなさいませ旦那様」
「セバス、待っててくれたのか?」
「あれからさほど時間はたっておりませんので。それと嵐影に旅支度を済ませ、外で待たせてあります」
「それは助かる、流石はセバスだな」
「恐悦至極に存じます」
話しながらエントリーホールへと向かう流たちは、そこにいるメイドと執事に挨拶すると、扉の前にいる嵐影へと乗りこむ。
「スパイス関連については、〆達に伝えてあるからその通りに動いてくれ。それと、ここの所在が憚り者と呼ばれる存在にバレた。今後は何時襲ってきてもおかしくないから、皆も大変だけど頼むな?」
「「「承知致しました」」」
「じゃあよろしく!!」
そう流は言うと、嵐影に北門へと急がせる。
「……マ?」
「そうだ、屋根の上を走ってくれ」
「……マ!」
時速にしたら五十キロは出ていそうな速さで、頑丈な石造りの屋根のみ選び疾走する。
そんな嵐影背中から見る景色は賑わっているのに、たった一人いないだけで妙に寂しく見える。
やがて北門付近に近づくと、嵐影は家々の間の岩壁を蹴るようにして地面へと着地する。
北門へと近づくにつれ、何やら人だかりが出来ている。見れば氷のドームが出来ており、その中に人が恐る恐る入るようだった。
『流様……あれって』
「やめろ、聞きたくない」
「……マァ?」
「お前まで中へ行きたいとか言わないでくれ」
そんな流達を見つけたのか、氷のドームより氷狐王が出てくる。すると門番達が血相を変えて大騒ぎしはじめ、槍や剣を構えて威圧する。
しかしいくら威圧しようとも、氷狐王は何事も無かったように流への元へと歩いてくる。
当然、北門は大パニックであった。
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