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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
325:九条三左衛門
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流は走りながら懐に手を入れ、石亀の置物を取り出しそれに話しかける。
「さっきは礼を言えなかったが、ありがとう助かったよ」
『良かったね、堅亀の守りを持ってきて。今頃亀さんはどこにいるのかな……』
先程、流を守った緑の球体の正体――。
それは「堅亀の守り」と言う中からは攻撃可能で、外からは使用中は完全防御できるが、動けないのが欠点の骨董だった。また、内部からの攻撃後は、一定の時間でその力が消失するので、使いどころが難しい骨董でもある。
強力な守りの力を行使するため、使用後は中の付喪神が契約を解除し、その後は好きに行動出来ると言う条件での絶対障壁だった。
なので今はただの石の亀であり、また別の付喪神が合力してくれるなら再発動が可能となる、使い切りの骨董品である。
「ッ!? 崩壊が進んでるな……」
足場にしている水路と並んでいるパイプが突如破裂し、内部の水が勢いよく吹き出す。
さらには水が行く手を遮りはじめる――が。
「今なら問題ないッ!!」
左横から高圧で吹き出す水を避けるため、足場のない右の空間へと大きくジャンプした流は、そこにある壁を蹴って水を躱し元の水路の上へと戻る。
『よくあの距離を……ますます人間離れしてきましたね』
「違いない。自分でも驚く……」
途中何度か同じような状況に遭遇しながらも、身体能力と美琴の斬撃で難なく回避してエスポワールを追う。
だが向かった方向は分かるが、水塔の構造が不明なのと、内部が迷路のようになっているので道に迷う。
「くそ……どっちへ行ったんだ。美琴分かるか?」
『ごめんね、よくは分からないかな』
「ワン太郎がいてくれればな……あいつ、うまく救助出来たかな」
『ワンちゃんは大丈夫だよ、だって王様だしね。あ! それで思い出した! 流様、私を床に刺してみて』
突然の美琴の提案だったが、一瞬の迷いなく床へと突き刺す。
すると美琴が抜け出し、悲恋に手を添えると〝ゾゥ〟っとした妖力を開放する。
それはまるで――。
「ウォ!? そ、それは〝呪い〟か!?」
「うん……本当は嫌だけど、流様も覚悟を決めた以上、私も嫌だなんて言ってられないしね」
「そっか……美琴、ありがとう」
それに美琴は苦笑いを浮かべて答える。そのドス黒い本流にはよく見れば〝顔〟が付いているのが見える。
「美琴さんや、何か顔のようなものが見えるが……」
「あはは、やっぱり分かるよね……これはね、私の『家臣』達なんだよ」
「家臣って、お前の家来って事か?」
「そんな感じかな。昔、悲恋に取り込まれた魂たちの成れの果てだよ……。私が覚醒してから、開放しようとしたんだけどね、なんか嫌だって言われて――」
その言葉が終わらないうちに、顔の一人が実体化して話し出す。
「姫!? またそのような世迷い言を! 我らは貴女様に忠誠を誓い、未来永劫忠実な下僕にてございます!」
「ナンカ暑苦しいのが出たぞ!?」
「おおお!? 貴男様は姫の主人!! つまり我らの大殿と言うことでございまするな!! ワシは三左衛門と申す。昔々、姫を手に入れようとして、呪い殺された馬鹿者でござる! これからもよしなにお願いし申す!!」
「あ、ハイ……」
あまりの暑苦しさに思わず真顔で答える流。ふと見ると、美琴はこれまた苦笑いに一筋の汗を浮かべていた……幽霊なのに。
「こ、こんな感じで私の話を何百年も聞いてくれないんだよ。だから諦めたの……」
美琴は遠い目で壊れた壁から空を見る。
「ハッハッハ!! さぁ、姫! 我らにご下知を!!」
いつのまにか、見ればかなりの人数が実体化していた。
実体化した人物たちは実に多様であり、武将や陰陽師のような出で立ちから、坊主や浪人や商人までいた。
その代表格の男、三左衛門は老練の武士であり、右目に刀傷が勲章のようにある男であった。
よく見れば、亡霊たちは清々しい実にいい笑顔でこっちを見ている……コワイ。
流は思う。「お前ら呪い殺されたのにいい笑顔だな!!」と。
それを見た美琴は、「はぁ~」と溜息一つ。
「コホン、いいですか皆さん。何度もいいますけど私は姫でなく美琴です! 分かりましたね?」
「「「はっ!! 承知いたしました姫!!」」」
「どっかで見た光景だな……」
「と、とにかくです! 今は緊急なので、あなた達と馬鹿をやってる暇はないのです! いいですか、この水塔のどこかに私より少し年増で、む、胸の大きい娘さんが囚われています。一緒にいかにもな小物臭い男もいます。それを見つけ出してください」
「ハッハッハ!! 姫は胸が小さくてございますからなぁ」
「な!? 叩き斬りますよ三左衛門!!」
「おぉ~怖や怖や……して、此度の敵はこの肥溜め臭さからすると……」
「ええ、予想通り死人です。ですから『いつものように』……ね?」
「ハッハッハ!! それは腕がなりますわい! 承知いたしましたぞ姫! 者共、姫様の仰せじゃ! 久しぶりに狩りを楽しもうぞ!!」
「「「姫様の仰せのままに!!」」」
そう一斉に叫ぶ亡霊たち。よく見れば後ろの方に先日美琴に呪い殺された盗賊の顔があり、隣の侍に思いっきり頭を殴られて教育されていた。色々哀れだ。
三左衛門は亡霊たちの返事に、実に満足そうに頷く。
「では参る!! 散ッ!!」
三左衛門の号令一つ、その瞬間亡霊たちはおぼろげな存在になり消え失せたのだった。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
【あなた様に大感謝♪】
☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
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「さっきは礼を言えなかったが、ありがとう助かったよ」
『良かったね、堅亀の守りを持ってきて。今頃亀さんはどこにいるのかな……』
先程、流を守った緑の球体の正体――。
それは「堅亀の守り」と言う中からは攻撃可能で、外からは使用中は完全防御できるが、動けないのが欠点の骨董だった。また、内部からの攻撃後は、一定の時間でその力が消失するので、使いどころが難しい骨董でもある。
強力な守りの力を行使するため、使用後は中の付喪神が契約を解除し、その後は好きに行動出来ると言う条件での絶対障壁だった。
なので今はただの石の亀であり、また別の付喪神が合力してくれるなら再発動が可能となる、使い切りの骨董品である。
「ッ!? 崩壊が進んでるな……」
足場にしている水路と並んでいるパイプが突如破裂し、内部の水が勢いよく吹き出す。
さらには水が行く手を遮りはじめる――が。
「今なら問題ないッ!!」
左横から高圧で吹き出す水を避けるため、足場のない右の空間へと大きくジャンプした流は、そこにある壁を蹴って水を躱し元の水路の上へと戻る。
『よくあの距離を……ますます人間離れしてきましたね』
「違いない。自分でも驚く……」
途中何度か同じような状況に遭遇しながらも、身体能力と美琴の斬撃で難なく回避してエスポワールを追う。
だが向かった方向は分かるが、水塔の構造が不明なのと、内部が迷路のようになっているので道に迷う。
「くそ……どっちへ行ったんだ。美琴分かるか?」
『ごめんね、よくは分からないかな』
「ワン太郎がいてくれればな……あいつ、うまく救助出来たかな」
『ワンちゃんは大丈夫だよ、だって王様だしね。あ! それで思い出した! 流様、私を床に刺してみて』
突然の美琴の提案だったが、一瞬の迷いなく床へと突き刺す。
すると美琴が抜け出し、悲恋に手を添えると〝ゾゥ〟っとした妖力を開放する。
それはまるで――。
「ウォ!? そ、それは〝呪い〟か!?」
「うん……本当は嫌だけど、流様も覚悟を決めた以上、私も嫌だなんて言ってられないしね」
「そっか……美琴、ありがとう」
それに美琴は苦笑いを浮かべて答える。そのドス黒い本流にはよく見れば〝顔〟が付いているのが見える。
「美琴さんや、何か顔のようなものが見えるが……」
「あはは、やっぱり分かるよね……これはね、私の『家臣』達なんだよ」
「家臣って、お前の家来って事か?」
「そんな感じかな。昔、悲恋に取り込まれた魂たちの成れの果てだよ……。私が覚醒してから、開放しようとしたんだけどね、なんか嫌だって言われて――」
その言葉が終わらないうちに、顔の一人が実体化して話し出す。
「姫!? またそのような世迷い言を! 我らは貴女様に忠誠を誓い、未来永劫忠実な下僕にてございます!」
「ナンカ暑苦しいのが出たぞ!?」
「おおお!? 貴男様は姫の主人!! つまり我らの大殿と言うことでございまするな!! ワシは三左衛門と申す。昔々、姫を手に入れようとして、呪い殺された馬鹿者でござる! これからもよしなにお願いし申す!!」
「あ、ハイ……」
あまりの暑苦しさに思わず真顔で答える流。ふと見ると、美琴はこれまた苦笑いに一筋の汗を浮かべていた……幽霊なのに。
「こ、こんな感じで私の話を何百年も聞いてくれないんだよ。だから諦めたの……」
美琴は遠い目で壊れた壁から空を見る。
「ハッハッハ!! さぁ、姫! 我らにご下知を!!」
いつのまにか、見ればかなりの人数が実体化していた。
実体化した人物たちは実に多様であり、武将や陰陽師のような出で立ちから、坊主や浪人や商人までいた。
その代表格の男、三左衛門は老練の武士であり、右目に刀傷が勲章のようにある男であった。
よく見れば、亡霊たちは清々しい実にいい笑顔でこっちを見ている……コワイ。
流は思う。「お前ら呪い殺されたのにいい笑顔だな!!」と。
それを見た美琴は、「はぁ~」と溜息一つ。
「コホン、いいですか皆さん。何度もいいますけど私は姫でなく美琴です! 分かりましたね?」
「「「はっ!! 承知いたしました姫!!」」」
「どっかで見た光景だな……」
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「ハッハッハ!! 姫は胸が小さくてございますからなぁ」
「な!? 叩き斬りますよ三左衛門!!」
「おぉ~怖や怖や……して、此度の敵はこの肥溜め臭さからすると……」
「ええ、予想通り死人です。ですから『いつものように』……ね?」
「ハッハッハ!! それは腕がなりますわい! 承知いたしましたぞ姫! 者共、姫様の仰せじゃ! 久しぶりに狩りを楽しもうぞ!!」
「「「姫様の仰せのままに!!」」」
そう一斉に叫ぶ亡霊たち。よく見れば後ろの方に先日美琴に呪い殺された盗賊の顔があり、隣の侍に思いっきり頭を殴られて教育されていた。色々哀れだ。
三左衛門は亡霊たちの返事に、実に満足そうに頷く。
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三左衛門の号令一つ、その瞬間亡霊たちはおぼろげな存在になり消え失せたのだった。
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