287 / 486
第七章:新たな力を求めるもの
287:おひさしぶり
しおりを挟む
「それで〆が馬鹿なのはよく分かったが、俺を何とかしてくれ。寒くて体が動かん」
「酷いです、古廻様ぁ……グスン」
「おっと、失礼致しました。フム、これは死後硬直ですな。少々お待ちを」
参は懐から札を五枚放り投げると、五芒星の形になりて流を黄色い光が包む。次第に関節が動くようになり、全身に血がながれていくのを感じる。
「フム。これでどうですかな?」
「お。おお動くぞ! サンキューな参! それと多分だが、俺のために喧嘩してたんだろう? 壱も参も、そして〆もありがとうな。あと復活させてくれた事に感謝してる」
「こ、古廻しゃま……ぐすん」
「いえいえ、ちょっと死にそうになっただけですよって、お気になさらず」
「ちょっとそこまで出かける気軽さで、死にそうになるなよ。まぁ無事で良かった」
四人はこれまであった事を話し、情報のすり合わせをする。どうやら本当にこちらの世界でも大変だったようだ。
「それで、この神殿みたいな建物が俺の墓標だったと?」
「はぃ……。お言いつけ通り、古廻様が『人間はやめるつもりは無い』と仰っていたので。人のままここに安置しようかと」
「はぁ~。それで壱と参が人ならざる者にしても、俺を復活させようとしたと?」
「堪忍なぁ~。僕達も最初はそれを受け入れてたんでっけど、やっぱり古廻はんは僕らにとって特別な存在と改めて思いましてん。それで参を巻き込んで愚妹の討伐に乗り出したワケでっけど、逆に殺されそうになったチュ~、なんともしまらない話ですねん」
「フム。兄に同意したとは言え、ご意思を違えてしまい申し訳も無く……」
三人が申し訳なさそうにシュンと項垂れているのを見る流は、さらに申し訳なさそうに右手の小指で額をかきながら話す。
「い、いやぁ……。それがさぁ、俺ってば人間やめちゃったみたいよ? 何て言うの、え~っと?」
『妖人化ですよ、流様』
突如聞こえる懐かしい声。
その声に聞き覚えのある三人は、うなだれていた顔を上げて声の主を見る。
悲恋から抜け出た美琴は、実に美しかった。
絹のような白肌に、新月の夜の海を思わせる黒髪はとても艶が良く、目鼻がくっきりとし、口元も佐藤錦のような〝ぷっくり〟とした瑞々しい質感であり、誰が見ても「美少女」と言える顔立ちだった。
そんな美琴の着物は、デザインは古いが品の良い下が濃い桃色だが、徐々に上に行くほど淡い色になっている、京友禅の艶やかな振袖に身を包み立っていた。
そんな美琴の瞳は呆れた感じで流を見ているが、その姿は実に嬉しそうだった。
「あらあら、まぁまぁ! 美琴じゃないですか!! よく出る気になりましたね、古廻様が倒れた時に異界骨董屋さんで会った時以来、いえ。それより人前に出るのは百年以上無かったのでは?」
「おお! 美こっちゃんや、久しいな~。僕もそのくらいは会ってないで!」
「フム、美琴ではないですか。久しいですね、元気そうで何よりです。死んでますけど」
「あ、あのその……。皆さんお久しぶりです。とても恥ずかしいですけど、流様が私の主になってくれたので、頑張って出てきました!」
そう言うと美琴は〝フンスッ〟と両手を握りしめ気合を入れる。その表情は生気に満ち、美琴の強い覚悟を行動でしめす。幽霊だけど……。
「お前は頑張らないと出て来れないのかよ、おばけの癖に」
「あ、またそう言う事を言うんだから! 知りません、フンだ」
そんなやり取りを見る三人は、心底良かったと思う。
あの呪いそのものだった悲恋美琴の呪縛から解放され、一人の少女として明るく生きている美琴を見て。
でも三人は思う。幽霊なのに元気だな……と。
「まぁ良かったで~。これからは幸せになるんやで?」
「フム。生前の分まで楽しむのですよ?」
「うん! 壱と参のおじさん、そして〆さんも、またこれからよろしくね!」
「お、おじ……。あぁ任せとかんかい!」
「見た目は若いと思いますが……。フム、古廻様を頼みましたよ」
「うふふ。本当に御めでたいですね。あ、そう言えば美琴の事で忘れていましたが、その……先程の話は?」
「あぁ、それなぁ」
流は自分の棺替わりだった、無駄に豪華な彫刻が施された安置台に腰掛け美琴を見るが、なにやら困ったような表情で愛想笑いをしている。それを訝しげに思うが、とりあえず話を進めることにする。
「お前達は神の存在を信じるか? ……って、今さらだったな。良く分かってないんだが、時空神って言うの? あと、おかしな無機質の変な声達に改造って言うか、改変されちまってな。気が付けば妖人ってのになってた。ほら、見た目が違うだろう? いかにも人間ヤメマシタって顔つきでさ」
〆をはじめ、三兄妹は首を傾げた後、お互いを見ながら不思議そうにしている。
そう流が言うが、見た目は普通である事を、自分はまだ知らなかったのだから。
「酷いです、古廻様ぁ……グスン」
「おっと、失礼致しました。フム、これは死後硬直ですな。少々お待ちを」
参は懐から札を五枚放り投げると、五芒星の形になりて流を黄色い光が包む。次第に関節が動くようになり、全身に血がながれていくのを感じる。
「フム。これでどうですかな?」
「お。おお動くぞ! サンキューな参! それと多分だが、俺のために喧嘩してたんだろう? 壱も参も、そして〆もありがとうな。あと復活させてくれた事に感謝してる」
「こ、古廻しゃま……ぐすん」
「いえいえ、ちょっと死にそうになっただけですよって、お気になさらず」
「ちょっとそこまで出かける気軽さで、死にそうになるなよ。まぁ無事で良かった」
四人はこれまであった事を話し、情報のすり合わせをする。どうやら本当にこちらの世界でも大変だったようだ。
「それで、この神殿みたいな建物が俺の墓標だったと?」
「はぃ……。お言いつけ通り、古廻様が『人間はやめるつもりは無い』と仰っていたので。人のままここに安置しようかと」
「はぁ~。それで壱と参が人ならざる者にしても、俺を復活させようとしたと?」
「堪忍なぁ~。僕達も最初はそれを受け入れてたんでっけど、やっぱり古廻はんは僕らにとって特別な存在と改めて思いましてん。それで参を巻き込んで愚妹の討伐に乗り出したワケでっけど、逆に殺されそうになったチュ~、なんともしまらない話ですねん」
「フム。兄に同意したとは言え、ご意思を違えてしまい申し訳も無く……」
三人が申し訳なさそうにシュンと項垂れているのを見る流は、さらに申し訳なさそうに右手の小指で額をかきながら話す。
「い、いやぁ……。それがさぁ、俺ってば人間やめちゃったみたいよ? 何て言うの、え~っと?」
『妖人化ですよ、流様』
突如聞こえる懐かしい声。
その声に聞き覚えのある三人は、うなだれていた顔を上げて声の主を見る。
悲恋から抜け出た美琴は、実に美しかった。
絹のような白肌に、新月の夜の海を思わせる黒髪はとても艶が良く、目鼻がくっきりとし、口元も佐藤錦のような〝ぷっくり〟とした瑞々しい質感であり、誰が見ても「美少女」と言える顔立ちだった。
そんな美琴の着物は、デザインは古いが品の良い下が濃い桃色だが、徐々に上に行くほど淡い色になっている、京友禅の艶やかな振袖に身を包み立っていた。
そんな美琴の瞳は呆れた感じで流を見ているが、その姿は実に嬉しそうだった。
「あらあら、まぁまぁ! 美琴じゃないですか!! よく出る気になりましたね、古廻様が倒れた時に異界骨董屋さんで会った時以来、いえ。それより人前に出るのは百年以上無かったのでは?」
「おお! 美こっちゃんや、久しいな~。僕もそのくらいは会ってないで!」
「フム、美琴ではないですか。久しいですね、元気そうで何よりです。死んでますけど」
「あ、あのその……。皆さんお久しぶりです。とても恥ずかしいですけど、流様が私の主になってくれたので、頑張って出てきました!」
そう言うと美琴は〝フンスッ〟と両手を握りしめ気合を入れる。その表情は生気に満ち、美琴の強い覚悟を行動でしめす。幽霊だけど……。
「お前は頑張らないと出て来れないのかよ、おばけの癖に」
「あ、またそう言う事を言うんだから! 知りません、フンだ」
そんなやり取りを見る三人は、心底良かったと思う。
あの呪いそのものだった悲恋美琴の呪縛から解放され、一人の少女として明るく生きている美琴を見て。
でも三人は思う。幽霊なのに元気だな……と。
「まぁ良かったで~。これからは幸せになるんやで?」
「フム。生前の分まで楽しむのですよ?」
「うん! 壱と参のおじさん、そして〆さんも、またこれからよろしくね!」
「お、おじ……。あぁ任せとかんかい!」
「見た目は若いと思いますが……。フム、古廻様を頼みましたよ」
「うふふ。本当に御めでたいですね。あ、そう言えば美琴の事で忘れていましたが、その……先程の話は?」
「あぁ、それなぁ」
流は自分の棺替わりだった、無駄に豪華な彫刻が施された安置台に腰掛け美琴を見るが、なにやら困ったような表情で愛想笑いをしている。それを訝しげに思うが、とりあえず話を進めることにする。
「お前達は神の存在を信じるか? ……って、今さらだったな。良く分かってないんだが、時空神って言うの? あと、おかしな無機質の変な声達に改造って言うか、改変されちまってな。気が付けば妖人ってのになってた。ほら、見た目が違うだろう? いかにも人間ヤメマシタって顔つきでさ」
〆をはじめ、三兄妹は首を傾げた後、お互いを見ながら不思議そうにしている。
そう流が言うが、見た目は普通である事を、自分はまだ知らなかったのだから。
0
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる