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第六章:商いをする漢
182:開放的な食事処で楽しもう
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運ばれてくる料理は、どれも見たことが無い食材で満たされていた。
最初に運ばれて来た物は、赤色のスープで染色したんじゃないかと思うような、色鮮やかな野菜が入っている。
「これはまた凄い色だな。現地の野菜か?」
その質問にセバスが気品ある仕草で一礼をし、その後説明を始める。
「そちらは現地の物で色味茸と申しまして、流星の降る夜に生えるキノコとなっています。食感は元世界のエリンギに近く、香は白トリュフが熟成したような芳醇な香りが特徴です」
「何だか凄そうだな、じゃあ早速……。これは凄い! 本当に濃厚な白トリュフみたいな香がするが、こっちの方が舌に絡みつく美味さがある。これは食べた事のない美味しさだな!」
そんな流の様子を微笑ましく見ている三人。壱に至っては落書きのような顔が綻んでいた。
「うん、お前達も一緒に食べようぜ? 俺一人でこんな美味い物を食べるのも勿体ない」
「いえいえ、そんな古廻様と一緒になんて」
「フム。そうですな、我らは仕える者ですから」
「壱:あ~。ダメだなお前らは。違うって言うんや、古廻はんはご一緒に僕らと食べたいと言うてくれてるんやから、ここはご相伴にあずかろうやん」
「ははは、流石壱だな。せっかくの美味い飯だ、一緒に食べようぜ?」
「もう兄上ったら……でもそう言う事なら、いただきましょうか」
「フム。ですな。セバス、すまないが私達のも頼む」
「承知しました」
その後に来たのは魚料理で、こちらも見た目が変わっていた。
マヒノと言う魚で赤身が特徴だが、それが特徴がありすぎる。
まず異様に「美しい程の生」であり、その生身のような赤さは「太陽に透かしたルビーのよう」なのだから。
「こちらはこちらの世界で産で、マヒノと言う赤身の魚を蒸した後に、この世界では出汁と言う物がありませんので、日本から取り寄せた羅臼昆布とトビウオ節から取ったものを、こちらの世界で一般的なクースと呼ばれる野菜で巻いたゼリー状のソースでお召し上がりください」
赤身でも熱を通すと普通は少し白くなる物も多いが、この魚はまるで生のような赤身と照りだった。
「わぁ、これは美味しいですね。昆布の風味が心地よく、トビ節との調和が見事です」
「フム。さらにこの野菜、クースですか? これもまた異世界の食材ですが、魚の味を濃厚にさせるようですね」
「壱:ほんまや、魚だけだと淡泊な味なのに、全部絡めると濃厚な味わいになるなぁ」
「本当だなぁ。この世界の食材って、合わせると化けるのが多いのか?」
壱はどうやって食べているのか、折紙のクチバシでパクパク食べている。しかしあちこちが汚れているようだ。
それらを食べ終ると、メイン料理が運ばれてくる。
「メインは養殖オークのステーキです。農場管理者から直接仕入れているので、新鮮でジューシーさがウリとの事ですので、是非お試しください」
その一言で流の顔が曇る。
「ちょっと待て……オークって養殖出来るのか? って言うか、オークってやっぱり食べるのかよ!?」
「はいお館様。この世界では一般的な食材のようです。また養殖と言うのは、オークの小さい集落を発見した冒険者が、逃げ出さない様にオークを囲み、その隙に養豚家が周りに魔法で壁を作り、その中で飼育されているようです」
「すげぇ……命懸の養豚かよ……」
オークが人をさらい、悪逆非道な行いをするのに人は眉を顰める。
しかし人も似たような事をしていると言う現実を知り、異世界の逞しさに絶句していると、アツアツのステーキがテーブルへ並ぶ。
「まぁ食べてみるかな……ッ!?」
「これはッーー!?」
「フムゥーー!?」
「壱:うっまーー!?」
驚く四人を見てセバスは満足気に、ニコリと微笑む。
「元世界の豚肉は生食は危険とされていますが、このオークは生でも食べれるのです。見た目に反して綺麗な肉体らしく、細菌や寄生虫が全くいないようです」
ナイフを入れると、軽く弾力があり、そのあと〝プリッ〟と弾けるように切れる。
ただ不思議な事があった。そのミデァムレアに焼かれたオークのステーキは切っても「肉汁が出ない」と言う一見不味そうな感じだったが、しかし……。
「なんだこれは、噛んだ瞬間に肉汁が肉から弾け飛んだぞ!」
「まるでジューシーな果物をほおばったかのよう……」
「ふむぅ~。ワイルドな料理に見えますが、弾ける肉汁と、柑橘系のソースがまたなんとも上品にまとまっている」
「壱:ちょい待ちぃ~な! つついた瞬間『肉汁ぶしゃ~』ってぶっかかったやん!? でもウマー!」
流達は肉汁の猛攻と戦い、返り血まみれになりながらも完食する。
「何かあれだ……すっごい食べきった感がある……」
「ええ、本当ですね……世の中にこんな食べ物があったなんて……」
「フム。特に最後の肉汁が弾ける調理法には驚きましたなぁ……」
「壱:まったくや、お陰で今火い着いたら勢いよく燃えそうやん……」
全員が満足気に空を眺めているのを確認したセバスは、会心のタイミングで最後のデザートを運ばせる。
最初に運ばれて来た物は、赤色のスープで染色したんじゃないかと思うような、色鮮やかな野菜が入っている。
「これはまた凄い色だな。現地の野菜か?」
その質問にセバスが気品ある仕草で一礼をし、その後説明を始める。
「そちらは現地の物で色味茸と申しまして、流星の降る夜に生えるキノコとなっています。食感は元世界のエリンギに近く、香は白トリュフが熟成したような芳醇な香りが特徴です」
「何だか凄そうだな、じゃあ早速……。これは凄い! 本当に濃厚な白トリュフみたいな香がするが、こっちの方が舌に絡みつく美味さがある。これは食べた事のない美味しさだな!」
そんな流の様子を微笑ましく見ている三人。壱に至っては落書きのような顔が綻んでいた。
「うん、お前達も一緒に食べようぜ? 俺一人でこんな美味い物を食べるのも勿体ない」
「いえいえ、そんな古廻様と一緒になんて」
「フム。そうですな、我らは仕える者ですから」
「壱:あ~。ダメだなお前らは。違うって言うんや、古廻はんはご一緒に僕らと食べたいと言うてくれてるんやから、ここはご相伴にあずかろうやん」
「ははは、流石壱だな。せっかくの美味い飯だ、一緒に食べようぜ?」
「もう兄上ったら……でもそう言う事なら、いただきましょうか」
「フム。ですな。セバス、すまないが私達のも頼む」
「承知しました」
その後に来たのは魚料理で、こちらも見た目が変わっていた。
マヒノと言う魚で赤身が特徴だが、それが特徴がありすぎる。
まず異様に「美しい程の生」であり、その生身のような赤さは「太陽に透かしたルビーのよう」なのだから。
「こちらはこちらの世界で産で、マヒノと言う赤身の魚を蒸した後に、この世界では出汁と言う物がありませんので、日本から取り寄せた羅臼昆布とトビウオ節から取ったものを、こちらの世界で一般的なクースと呼ばれる野菜で巻いたゼリー状のソースでお召し上がりください」
赤身でも熱を通すと普通は少し白くなる物も多いが、この魚はまるで生のような赤身と照りだった。
「わぁ、これは美味しいですね。昆布の風味が心地よく、トビ節との調和が見事です」
「フム。さらにこの野菜、クースですか? これもまた異世界の食材ですが、魚の味を濃厚にさせるようですね」
「壱:ほんまや、魚だけだと淡泊な味なのに、全部絡めると濃厚な味わいになるなぁ」
「本当だなぁ。この世界の食材って、合わせると化けるのが多いのか?」
壱はどうやって食べているのか、折紙のクチバシでパクパク食べている。しかしあちこちが汚れているようだ。
それらを食べ終ると、メイン料理が運ばれてくる。
「メインは養殖オークのステーキです。農場管理者から直接仕入れているので、新鮮でジューシーさがウリとの事ですので、是非お試しください」
その一言で流の顔が曇る。
「ちょっと待て……オークって養殖出来るのか? って言うか、オークってやっぱり食べるのかよ!?」
「はいお館様。この世界では一般的な食材のようです。また養殖と言うのは、オークの小さい集落を発見した冒険者が、逃げ出さない様にオークを囲み、その隙に養豚家が周りに魔法で壁を作り、その中で飼育されているようです」
「すげぇ……命懸の養豚かよ……」
オークが人をさらい、悪逆非道な行いをするのに人は眉を顰める。
しかし人も似たような事をしていると言う現実を知り、異世界の逞しさに絶句していると、アツアツのステーキがテーブルへ並ぶ。
「まぁ食べてみるかな……ッ!?」
「これはッーー!?」
「フムゥーー!?」
「壱:うっまーー!?」
驚く四人を見てセバスは満足気に、ニコリと微笑む。
「元世界の豚肉は生食は危険とされていますが、このオークは生でも食べれるのです。見た目に反して綺麗な肉体らしく、細菌や寄生虫が全くいないようです」
ナイフを入れると、軽く弾力があり、そのあと〝プリッ〟と弾けるように切れる。
ただ不思議な事があった。そのミデァムレアに焼かれたオークのステーキは切っても「肉汁が出ない」と言う一見不味そうな感じだったが、しかし……。
「なんだこれは、噛んだ瞬間に肉汁が肉から弾け飛んだぞ!」
「まるでジューシーな果物をほおばったかのよう……」
「ふむぅ~。ワイルドな料理に見えますが、弾ける肉汁と、柑橘系のソースがまたなんとも上品にまとまっている」
「壱:ちょい待ちぃ~な! つついた瞬間『肉汁ぶしゃ~』ってぶっかかったやん!? でもウマー!」
流達は肉汁の猛攻と戦い、返り血まみれになりながらも完食する。
「何かあれだ……すっごい食べきった感がある……」
「ええ、本当ですね……世の中にこんな食べ物があったなんて……」
「フム。特に最後の肉汁が弾ける調理法には驚きましたなぁ……」
「壱:まったくや、お陰で今火い着いたら勢いよく燃えそうやん……」
全員が満足気に空を眺めているのを確認したセバスは、会心のタイミングで最後のデザートを運ばせる。
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