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第五章:殺盗団を壊滅せよ
178:マリーと言う名の娘
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「マリー、ちょっといいかニャ?」
「はい、何ですか室長?」
マリーと呼ばれた十代後半くらいのカワウソの獣人の娘は、キョトンとした顔でミャレリナを見る。
どうやらマリーは小爪カワウソらしく、ペンを持っている指の爪は小さく可愛い。
容姿は愛嬌ある丸顔で、ベースは人間そのものに丸いケモ耳が特徴的な獣人だった。
また髪は茶色で、瞳が黒く目がクリっとした娘で、体形は子供のようにストンとした感じだ。
呼ばれた事で立ち上がったが、尻尾は見えないので小さいのだろうと流は思う。
「今さらだけど、ナガレ様の事は知ってるニャ?」
「はい! それは知っていますよ。逆に知らない人がこのギルドにいるとは思えない程に」
「ニャハハ。そりゃそうニャ。それでナガレ様は今後、素材の買い取りを依頼する事になるから、マリーが専属で対応するようにニャ」
「えええ!? わ、私があの巨滅の英雄様の専属ですか!? き、緊張します……」
そんな会話を聞いた流は、ミャレリナの背後から出てきてマリーへ挨拶する。
今日は人も多いので、まさかその本人がいるとは思わなかったマリーは、思わず二度見する程に驚く。
「おいおい、俺はそんなに偉くないと言うか、ギルドに入ったばかりの素人なんだから気楽にな?」
「ひゃ!? 巨滅の英雄様だぁ……愛してます!!」
「「……はぃぃぃ?」」
いきなりの愛の告白に呆然とする二人。その様子を見て、マリーも流石にやってしまったと思い、内心焦りながらも平静を装う。
「ひゃぅ!! ち、違いました。ようこそ買い取り所へ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いや、だから買い取りして欲しいんだが……」
「そ、そうですよね!! ここ買い取り所なんですから!?」
「マリー落ち着くのニャ。ま、まぁこんな娘ですけど、仕事はキチンとこなすので安心して欲しいのニャ」
「安心する要素が一ミリも見えないんだが?」
流の的確なツッコミに、ミャレリナは額に冷や汗を一筋浮かべる。
そんな喧騒なギルド内で、ここだけが微妙な空気の中、マリーが真面目な顔つきで仕事を始める。
「こほん。それで何を買い取りますか?」
「その前に持って来て欲しい物があるニャ。先日保管預かりになった、ゴブリンリーダーと酋長の魔核を持って来て欲しいニャ」
「あぁ、あの魔核ですね。承知しました、少々お待ちください」
マリーは席を立ち、背後の棚にあるスイッチのような物を操作すると、棚が縦に割れて奥へと通じる道になる。
どうやら棚が保管庫の扉の役割をしているらしく、そしてマリーが入るとまた閉じるのだった。
程なくしてマリーが戻ってくると、手には箱を二つ持っていた。
「お待たせいたしました、こちらがリーダーと酋長の魔核となります」
「これが魔核か……」
「大きい方が酋長の魔核となりますニャ」
見ると色は同じだが、大きさの違う黒光りした歪な物体があった。
例えるならば金平糖のような形をした、それが大きくなったと言うような物である。
「ナガレ様、こちらをどうしますかニャ? ここで売却も出来ますが、そのまま持ち帰ってもかまいませんニャ」
「ふむ……このまま今回は持ち帰るとするかな」
「分かりましたのニャ。それじゃあマリー、魔核を箱に戻してナガレ様へ」
「は、はい!」
マリーはそそくさと箱に詰めると、ナガレへと手渡す。
「ナガレ様……あの、これ私の気持ちです、好きです! 受け取ってください!」
マリーは魔核の箱を流れに手渡し、愛の告白をする。
それは乙女から女性へと昇華する、実に美しい刹那を切り取った人生一場面。
そんな人の営みの一番輝いている情景切り取り、まるで映写を見ているかのような場面だった。
「いや、それは俺のだし……」
「あひゃぅ!? 間違えました! 普通にお受け取りください?」
「ナ、ナガレ様! 仕事は出来る娘なのでその……安心してくださいニャ!?」
「ミャレリナ、俺の目を見てもう一度言って見ろ? ん?」
そっと視線を天井へと向けるミャレリナは、こめかみに一筋の汗を流す。
よく見ると尻尾が〝ぷるぷる〟と小刻みに震えている。
「……まぁいい。それよりメインの買い取りを頼む。あ、そう言えば今は無いんだが……ミャレリナ、どうしたらいい?」
「それは既に買取所の職員に通知済みなので、ご安心くださいニャ」
「はい、お任せください! えっと、確かラミアと聞いていますが、現物はまだこちらへ届いていないので、後日精算となりますがよろしいですか?」
「ああ、それでかまわない。確定したら俺の口座へ入金しといてくれよな?」
「はい、了解しました」
「口座情報は後でミャレリナに聞いてくれ。さてと、ミャレリナ。次は換金だが、どうすればいい?」
「それはエルシアの所ですニャ! 行きましょう!! 迅速に!! 今すぐに!!」
一刻も早くここを離脱したいミャレリナは、流の背を押しつつ人混みの中へと消える。
そんな流を見るマリーは、ため息を漏らしながら一言呟く。
「ハァ~。ナガレ様素敵だなぁ……」
ここにも一人、骨董系鈍感王の被害者が誕生していたようだった。
「はい、何ですか室長?」
マリーと呼ばれた十代後半くらいのカワウソの獣人の娘は、キョトンとした顔でミャレリナを見る。
どうやらマリーは小爪カワウソらしく、ペンを持っている指の爪は小さく可愛い。
容姿は愛嬌ある丸顔で、ベースは人間そのものに丸いケモ耳が特徴的な獣人だった。
また髪は茶色で、瞳が黒く目がクリっとした娘で、体形は子供のようにストンとした感じだ。
呼ばれた事で立ち上がったが、尻尾は見えないので小さいのだろうと流は思う。
「今さらだけど、ナガレ様の事は知ってるニャ?」
「はい! それは知っていますよ。逆に知らない人がこのギルドにいるとは思えない程に」
「ニャハハ。そりゃそうニャ。それでナガレ様は今後、素材の買い取りを依頼する事になるから、マリーが専属で対応するようにニャ」
「えええ!? わ、私があの巨滅の英雄様の専属ですか!? き、緊張します……」
そんな会話を聞いた流は、ミャレリナの背後から出てきてマリーへ挨拶する。
今日は人も多いので、まさかその本人がいるとは思わなかったマリーは、思わず二度見する程に驚く。
「おいおい、俺はそんなに偉くないと言うか、ギルドに入ったばかりの素人なんだから気楽にな?」
「ひゃ!? 巨滅の英雄様だぁ……愛してます!!」
「「……はぃぃぃ?」」
いきなりの愛の告白に呆然とする二人。その様子を見て、マリーも流石にやってしまったと思い、内心焦りながらも平静を装う。
「ひゃぅ!! ち、違いました。ようこそ買い取り所へ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いや、だから買い取りして欲しいんだが……」
「そ、そうですよね!! ここ買い取り所なんですから!?」
「マリー落ち着くのニャ。ま、まぁこんな娘ですけど、仕事はキチンとこなすので安心して欲しいのニャ」
「安心する要素が一ミリも見えないんだが?」
流の的確なツッコミに、ミャレリナは額に冷や汗を一筋浮かべる。
そんな喧騒なギルド内で、ここだけが微妙な空気の中、マリーが真面目な顔つきで仕事を始める。
「こほん。それで何を買い取りますか?」
「その前に持って来て欲しい物があるニャ。先日保管預かりになった、ゴブリンリーダーと酋長の魔核を持って来て欲しいニャ」
「あぁ、あの魔核ですね。承知しました、少々お待ちください」
マリーは席を立ち、背後の棚にあるスイッチのような物を操作すると、棚が縦に割れて奥へと通じる道になる。
どうやら棚が保管庫の扉の役割をしているらしく、そしてマリーが入るとまた閉じるのだった。
程なくしてマリーが戻ってくると、手には箱を二つ持っていた。
「お待たせいたしました、こちらがリーダーと酋長の魔核となります」
「これが魔核か……」
「大きい方が酋長の魔核となりますニャ」
見ると色は同じだが、大きさの違う黒光りした歪な物体があった。
例えるならば金平糖のような形をした、それが大きくなったと言うような物である。
「ナガレ様、こちらをどうしますかニャ? ここで売却も出来ますが、そのまま持ち帰ってもかまいませんニャ」
「ふむ……このまま今回は持ち帰るとするかな」
「分かりましたのニャ。それじゃあマリー、魔核を箱に戻してナガレ様へ」
「は、はい!」
マリーはそそくさと箱に詰めると、ナガレへと手渡す。
「ナガレ様……あの、これ私の気持ちです、好きです! 受け取ってください!」
マリーは魔核の箱を流れに手渡し、愛の告白をする。
それは乙女から女性へと昇華する、実に美しい刹那を切り取った人生一場面。
そんな人の営みの一番輝いている情景切り取り、まるで映写を見ているかのような場面だった。
「いや、それは俺のだし……」
「あひゃぅ!? 間違えました! 普通にお受け取りください?」
「ナ、ナガレ様! 仕事は出来る娘なのでその……安心してくださいニャ!?」
「ミャレリナ、俺の目を見てもう一度言って見ろ? ん?」
そっと視線を天井へと向けるミャレリナは、こめかみに一筋の汗を流す。
よく見ると尻尾が〝ぷるぷる〟と小刻みに震えている。
「……まぁいい。それよりメインの買い取りを頼む。あ、そう言えば今は無いんだが……ミャレリナ、どうしたらいい?」
「それは既に買取所の職員に通知済みなので、ご安心くださいニャ」
「はい、お任せください! えっと、確かラミアと聞いていますが、現物はまだこちらへ届いていないので、後日精算となりますがよろしいですか?」
「ああ、それでかまわない。確定したら俺の口座へ入金しといてくれよな?」
「はい、了解しました」
「口座情報は後でミャレリナに聞いてくれ。さてと、ミャレリナ。次は換金だが、どうすればいい?」
「それはエルシアの所ですニャ! 行きましょう!! 迅速に!! 今すぐに!!」
一刻も早くここを離脱したいミャレリナは、流の背を押しつつ人混みの中へと消える。
そんな流を見るマリーは、ため息を漏らしながら一言呟く。
「ハァ~。ナガレ様素敵だなぁ……」
ここにも一人、骨董系鈍感王の被害者が誕生していたようだった。
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