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第五章:殺盗団を壊滅せよ
154:出来る執事
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「まぁそんな訳で、嵐影が三階まで上がれるようにしといてくれ。それとセバス、嵐影用に専用の部屋を一つ作っておいてくれ」
「承知致しました」
「じゃあ今日は寝ますかね、流石に疲れたわ~。嵐影、メイド達に良くして貰えよ?」
そう言うと流は〆と参を連れて自室へと戻って行く。
それを見送る執事達三人は早速指示通りの行動に移る。
ただセバスのみエントランスホールに残り、ある一角へ進み寄る。
「やれやれ、御可哀そうに……」
セバスはそっとカエルの折紙を手にすると、どこから取り出したのか「セロハンテープ」で壱をペタリペタリと補修し、壺を置く台座の上に豪華な敷物を出し、その上に壱をそっと安置するのだった。
「これでよし……さて、御館様は同族と戦ったらしいですからな、メイドに沐浴の支度をさせますかな」
そう独り言ちると、セバスは廊下の向こうへと消えていった。
出来る「漢」セバスがいる限り、この屋敷は大丈夫だと言う認識が広まるまで、然程時間はかからなかったのは言うまでもない。
◇◇◇
セバスが手配した破邪効果のある沐浴を済ませ、今日はこのまま屋敷で休む事にする流。
いつの間にか寝室も出来上がっており、〆は流が寝入るまで傍にいたいとの事で、そのまま眠るりに付こうと、まぶたを閉じる。
一日の光景がまぶたに浮かんでは消え、興奮して寝れないかと思ったが、不思議なほど抵抗なく深い眠りに落ちる……。
ふと目覚める。遮光した隙間から、外の明かりが漏れ出ているのに目が行く。
壁にかかっている夜は鳴かない鳩のカラクリ時計を見れば、正午を少し回った頃だった。
「ふぁ~よく寝たな……腹減ったぁ美琴おはよ~」
『…………』
「ああ、昨日は本当にありがとうな、しかしあれだな。骨董屋さんの道具を使わないで、お前の妖力を込めて奥義級に出来るのはまだ『太刀魚』だけだし、あれは元々奥義だからなぁ……まぁ威力が段違いで『改』に進化した訳だが。まだまだ修行が足りないな」
『…………』
「うん? そう言えばジジイはいつ来るんだろうな?」
『…………』
「だな、もう一度鍛え直さないとな。それと……」
流はカーテンを勢いよく開ける。
「この世界も楽しまないとな!!」
『…………』
「おう! どこまでも付いて来い。一緒に楽しもうぜ?」
美琴が嬉しそうに揺れているのを愛おし気に持つと、流は異界の間へ向かう。
異界の間、つまり流の三階執務室では既に参を始め、既に復活していた壱も待機していた。
「おはよ~さん。ギルドから何か連絡とかあるかい?」
「フム。おはようございます古廻様。商業ギルドから連絡があり、後程来て欲しいとの事でした」
「了解。壱は元に戻った? のか、それ?」
「壱:古廻様、おはようさんです。あの愚妹めに――クッ!? やられた傷は深く、未だ完治してへんのですよ」
壱を見ると微妙にずれた格好で、セロハンテープで固定されている姿が痛々しい。
「そ、そうか。大事にな」
「壱:はいな、まぁ不死鳥形態になればすぐに元通りなんでっけど、折角セバスが治してくれたさかい、もう少しこのままでいようかと思いましてん」
「戻れるんかい!? 本当にお前達は規格外だよな、色々と……」
そうこうしているとメイドが朝食を運んで来たので、食べながら話す事にする。
「そうだ、お前達に聞きたい事があるんだよ。えっと『百鬼の眼』についてなんだけど、モーリスとの戦闘中に使用したら全ての瞳が一気に閉じたんだが、原因はなんだろう?」
「壱:ほんまでっか!? おかしいなぁ、あの程度の悪魔やったらそんな事は起こらないはずやけど……」
「フム。兄の言う通りなのですが、可能性の一つとして考えられるのは、やはり『死の国へ送る短剣』と言う物かと思われますね。これも推測でしかないのですが、常時小さなゲートが開いている状態だったんじゃないでしょうか。それとの相性が最悪だったのが、『百鬼の眼』だったんじゃないかと思います」
そう言われると、モーリスとの戦闘中に感じていた忌避感とも言えるものは、悪魔だからと言うのでは無く、あの短剣のせいだと思うと納得もする。
なにせこの屋敷には悪魔がいるのだが、あのような感覚は感じないのだから。
「あ~なんか得心がいったな。だってジ・レも悪魔だろ? あいつがいても嫌などころか、逆に見ていて飽きないものな……あいつ魅了とか持ってるの?」
「壱:いやいや、そんなんは持ってないはずでっせ。あのガキは素でああなんですよって」
「フム。もし魅了など古廻様へ仕掛けたら、万年単位で塩になる事が確定しますよ」
誰とは言わないが、それを執行する恐ろしい娘を全員が思い描く。
「ははは……さて、落ちもついた事だし、俺は商業ギルドへと行って来る。壱はゆっくり養生してろよな」
身支度を整えエントリーホールへと降りると、使用人達が勢ぞろいして出立を見送る。
奥からロッティが走って来るのが見えたので、一瞬何事かと思ったが杞憂だったようだった。
「間に合って良かった、ナガレさん商業ギルドへ行くんでしょ? ならこれが役に立つかも」
「これは? あ~そう言う……。これは役に立ちそうだ。ありがたく貰っておくよ。じゃあ行って来る。嵐影、商業ギルドまで頼むよ」
「……マ」
全員に見送られながら門を潜る。嵐影はポテポテと町を進み、今日も平和だなと、流は呑気にあくびをするのだった。
「承知致しました」
「じゃあ今日は寝ますかね、流石に疲れたわ~。嵐影、メイド達に良くして貰えよ?」
そう言うと流は〆と参を連れて自室へと戻って行く。
それを見送る執事達三人は早速指示通りの行動に移る。
ただセバスのみエントランスホールに残り、ある一角へ進み寄る。
「やれやれ、御可哀そうに……」
セバスはそっとカエルの折紙を手にすると、どこから取り出したのか「セロハンテープ」で壱をペタリペタリと補修し、壺を置く台座の上に豪華な敷物を出し、その上に壱をそっと安置するのだった。
「これでよし……さて、御館様は同族と戦ったらしいですからな、メイドに沐浴の支度をさせますかな」
そう独り言ちると、セバスは廊下の向こうへと消えていった。
出来る「漢」セバスがいる限り、この屋敷は大丈夫だと言う認識が広まるまで、然程時間はかからなかったのは言うまでもない。
◇◇◇
セバスが手配した破邪効果のある沐浴を済ませ、今日はこのまま屋敷で休む事にする流。
いつの間にか寝室も出来上がっており、〆は流が寝入るまで傍にいたいとの事で、そのまま眠るりに付こうと、まぶたを閉じる。
一日の光景がまぶたに浮かんでは消え、興奮して寝れないかと思ったが、不思議なほど抵抗なく深い眠りに落ちる……。
ふと目覚める。遮光した隙間から、外の明かりが漏れ出ているのに目が行く。
壁にかかっている夜は鳴かない鳩のカラクリ時計を見れば、正午を少し回った頃だった。
「ふぁ~よく寝たな……腹減ったぁ美琴おはよ~」
『…………』
「ああ、昨日は本当にありがとうな、しかしあれだな。骨董屋さんの道具を使わないで、お前の妖力を込めて奥義級に出来るのはまだ『太刀魚』だけだし、あれは元々奥義だからなぁ……まぁ威力が段違いで『改』に進化した訳だが。まだまだ修行が足りないな」
『…………』
「うん? そう言えばジジイはいつ来るんだろうな?」
『…………』
「だな、もう一度鍛え直さないとな。それと……」
流はカーテンを勢いよく開ける。
「この世界も楽しまないとな!!」
『…………』
「おう! どこまでも付いて来い。一緒に楽しもうぜ?」
美琴が嬉しそうに揺れているのを愛おし気に持つと、流は異界の間へ向かう。
異界の間、つまり流の三階執務室では既に参を始め、既に復活していた壱も待機していた。
「おはよ~さん。ギルドから何か連絡とかあるかい?」
「フム。おはようございます古廻様。商業ギルドから連絡があり、後程来て欲しいとの事でした」
「了解。壱は元に戻った? のか、それ?」
「壱:古廻様、おはようさんです。あの愚妹めに――クッ!? やられた傷は深く、未だ完治してへんのですよ」
壱を見ると微妙にずれた格好で、セロハンテープで固定されている姿が痛々しい。
「そ、そうか。大事にな」
「壱:はいな、まぁ不死鳥形態になればすぐに元通りなんでっけど、折角セバスが治してくれたさかい、もう少しこのままでいようかと思いましてん」
「戻れるんかい!? 本当にお前達は規格外だよな、色々と……」
そうこうしているとメイドが朝食を運んで来たので、食べながら話す事にする。
「そうだ、お前達に聞きたい事があるんだよ。えっと『百鬼の眼』についてなんだけど、モーリスとの戦闘中に使用したら全ての瞳が一気に閉じたんだが、原因はなんだろう?」
「壱:ほんまでっか!? おかしいなぁ、あの程度の悪魔やったらそんな事は起こらないはずやけど……」
「フム。兄の言う通りなのですが、可能性の一つとして考えられるのは、やはり『死の国へ送る短剣』と言う物かと思われますね。これも推測でしかないのですが、常時小さなゲートが開いている状態だったんじゃないでしょうか。それとの相性が最悪だったのが、『百鬼の眼』だったんじゃないかと思います」
そう言われると、モーリスとの戦闘中に感じていた忌避感とも言えるものは、悪魔だからと言うのでは無く、あの短剣のせいだと思うと納得もする。
なにせこの屋敷には悪魔がいるのだが、あのような感覚は感じないのだから。
「あ~なんか得心がいったな。だってジ・レも悪魔だろ? あいつがいても嫌などころか、逆に見ていて飽きないものな……あいつ魅了とか持ってるの?」
「壱:いやいや、そんなんは持ってないはずでっせ。あのガキは素でああなんですよって」
「フム。もし魅了など古廻様へ仕掛けたら、万年単位で塩になる事が確定しますよ」
誰とは言わないが、それを執行する恐ろしい娘を全員が思い描く。
「ははは……さて、落ちもついた事だし、俺は商業ギルドへと行って来る。壱はゆっくり養生してろよな」
身支度を整えエントリーホールへと降りると、使用人達が勢ぞろいして出立を見送る。
奥からロッティが走って来るのが見えたので、一瞬何事かと思ったが杞憂だったようだった。
「間に合って良かった、ナガレさん商業ギルドへ行くんでしょ? ならこれが役に立つかも」
「これは? あ~そう言う……。これは役に立ちそうだ。ありがたく貰っておくよ。じゃあ行って来る。嵐影、商業ギルドまで頼むよ」
「……マ」
全員に見送られながら門を潜る。嵐影はポテポテと町を進み、今日も平和だなと、流は呑気にあくびをするのだった。
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