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第五章:殺盗団を壊滅せよ

153:流さんは三度目のクラスチェンジをする?

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「「「お帰りなさいませ、主様」」」
「おおぅ、まさか一晩中待ってたのか!?」
「はい、それが生きがいでございますので」
「馬鹿だなぁ……メイドさんはそんな無理しちゃだめだぞ? 壱にでもやらせとけばいいのに。でも迷惑かけたな、ありがとう。でもアルジ? もう三度目か……」

 そんな流にニコリと微笑むメイド達であった。
 実際の所、中の人はこの世の人では無いので、年単位で寝なくても平気と言う事を流は知らなかった。

 嵐影を降り屋敷の扉の前まで来ると、やはり自動で扉が開く。
 するとやはりそこにも執事達、そして骨董屋さんの三人衆と夜朔が揃っていた。

「あ~お前達までいてくれたのか……色々迷惑かけてすまなかったな」
「お帰りなさいませ、古廻様。ご無事にお戻りになられ……本当に……よかったです」
「フム。悪魔が出たと聞いた時は驚きましたが、無事に成敗なされたようで何よりでした」
「壱:まったくやで~。妹が早よう気が付いてくれてホンマ良かったわ」

 三人共に流の無事を喜んでくれているようだったが、こんな時間まで待たせてしまった事に心苦しく思う流であった。
 しかも〆は涙まで流しているので、その思いは増すばかりである。

「いや、本当にすまなかった。そしてありがとうな。特にモーリス……あぁ、悪魔の事な。そいつには正直ヤバイと思ったぞ。なにせ真っ二つにしても生きてるんだからなぁ」
「まぁ! 悪魔を真っ二つですか!? 中級悪魔と報告を受けていますが、それをそこまで手玉に取るとは……ますますお慕いしちゃいます♪」
「それがそうでもないんだよ、確かに真っ二つにはしたんだが、その後が悪い。な、ジ・レ?」

 話をいきなり振られたジ・レは驚きの表情をするが、即座に何時もの人好きのする笑顔で流へと答える。

「いえいえ、それも御館様あっての事。ボクはほんの少しお手伝いをしたにすぎませんよ」
「何を言うんだ。お前が倒し方を教えてくれなかったら、下手したら大使館ごと爆発してたかもしれないんだぞ? 本当にお前には感謝している」
「お館様……」
「ジ・レ……」

 流は本当に感謝の気持ちを表し、ジ・レはそんな流に感じ入っている。
 すると隣のケモ耳娘が、ハンカチを持っていたら〝キー〟と言う感じでジットリと見つめる。

「うぅ……そんなに古廻様に感謝されるなんて! 私が行けば良かった」
「壱:また始まったでぇ、過保護は古廻様のためにならんって言うたのお前ちゃうんか?」
「フム。どうして妹は古廻様の事になると、こうもダメな娘になるのか」
「壱:あれやろ、馬鹿は死ななきゃ治らないってやつやな」
「フム。それですな! はっはっは――ッハァ!?」

 そこには可憐な娘は何処にもいなかった、ただ苛烈な縦割れの瞳孔をジットリと滾らせた、世にも恐ろしい何かがいるだけだった。

「兄上方……その言葉、身をもって証明なさってはいかがかしら?」
「フムゥ!? い、いやアレだ。言葉の綾と言う奴だ! 人は誰でも過ちを犯すものだ。そうですよね兄上!? あ、兄上?」
「壱:………………」

 そこには無残にも、すでに真っ二つになっている壱の残骸が転がっていた。

「兄上えええええええ!?」
「さて、ジ・レ……貴方もヨカッタデスネ。古廻様ニ愛サレテ」
「ひぃぃぃ!? ボ、ボクにも、とばっちりガガガガガッ!!」
「こらこら〆。あまり皆をいぢめるもんじゃないよ。〆を始めとした、みんなに感謝しているんだからな? 特に〆、お前には何時も感謝しているよ」

 瞬間、北極に裸で放り込まれたような冷気は霧散し、春の陽気が広まる。

「こ、古廻様……そんな困ったお顔で仰るなんて、ズルいです……」

 よく手入れされた一本生えた黄金の尻尾を春風に揺らしながら、〆は頬を染めて照れる。

「フム……助かりましたな」
「ええ、ボクも何とか生き延びました……」

 そんな二人の命の危機を救った流は、あらためて周りを見る。

「しかしなんだ、これは酷い。夜朔でまともに立ってるのはキルトぐらいじゃないか」

 見ると夜朔の面々はキルトを除き、部下四名は辛うじて片膝で耐えているものの、ロッキーなどは泡を吹いて倒れていた。

「まったく……。〆はもう少し手加減を覚えるんだぞ?」
「はぅ、お恥ずかしい限りです」

 シュンとするケモミミがまた魅力的だったが、そこはぐっと堪える漢である。
 そんなグダグダなエントランスホールで、この屋敷一番の良識者たるこの男、セバスがまとめる。

「さぁさぁ皆さま。お館様もお疲れのご様子、まずはお休みになられるのがよろしいかと」
「あ! それもそうでしたね。セバス、後の事は任せますよ?」
「承知致しました」
「おっと、忘れていた。今日から俺の大事な相棒が出来たんだ。紹介するよ」
「古廻様、相棒でございますか?」
「ああそうなんだ、今日と言うか最近ずっと世話になってたんだけどな、色々あって俺の相棒になったんだよ」

 そう言うと流は正面の扉へ向かって叫ぶ。

「お~い! 嵐影~入って来いよ!」

 入口からのっそりと入ってくる明るい紺碧色の獣が一匹、何時の間にか背中に二羽の赤い鳥を乗せながら、こちらへと歩いて来るラーマンを全員で見守る。

「まぁ可愛らしい! これは確か、報告でラーマンと言う動物だと聞いていますが?」
「そうなんだよ、ラーマンの嵐影って言うんだ。俺を乗せて大活躍だったんだぜ?」
「そうなんですかぁ。嵐影、今日は大義でしたね。ゆっくりとお休みなさい」
「……マ」
「あらぁ、そうなんですか? うふふ。それは興味深いですね、ぜひ後で聞かせてくださいね?」
「……マ」
「ええ、楽しみにしていますよ」

 そんな二人(?)のやりとりを聞いている流以外の者は驚愕する。
 あの女狐がこうも穏やかに話す相手だと!? と。

「何か失礼な……雰囲気を感じますが気のせいですかしら?」
「「「ええ、気のせいです。間違いなく気のせいですね」」」
「なら良かった」

 椿がボトリと落ちる寸前のような顔で〝にっこり〟と微笑む〆に、流以外は胸を一応は撫でおろす。
 そして思う。「絶対気のせいと思っていないだろう!?」と。後の事を思うと、恐ろしさで震えるのだった。
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