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第五章:殺盗団を壊滅せよ
123:三兄妹の制約
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「ず……随分とリアルな鬼と、命懸の追いかけっこデスネ」
「壱:古廻はん、違いまっせ? それ、本当の鬼ですねん。愚妹が地獄へ落としたんでっせ」
「お前そんな事も出来るのか!?」
「いえ!! あの……はぃ……」
〆は消え入りそうな声で恥ずかしがっている。
「壱:何でそこで顔を真っ赤にしとんねん!?」
「もう何でもありだな、お前達は……」
「フム、古廻様! 私もですか!?」
「壱:僕はまともでっせ!」
「少なくても兄達よりは数千段まともです」
「お前達……俺の目を見てもう一度言ってみろ? ん?」
流がそう言うと〝すうっ〟と視線を逸らす三人組。
そんな三人に呆れる流だったが、メイドが食事を持って来たので食べる事とする。
「お待たせ致しました。簡単な物との事でしたので、アメリカンクラブハウスサンドをご用意致しました」
「お? 美味そうだな。ありがとうよ」
メイドは嬉しそうに頭を下げると、四人分のお茶を入れて退出する。
「さて、それでどこまで話したか? ああ、そうそう。〆が賊を地獄へ落とした所までか」
「それは忘れていただければ……」
なぜか恥ずかしそうにしている〆を見ながら、ふと思う事を聞いてみる。
「なぜ恥ずかしそうに頬を染める!? それで〆、お前達の事だから地獄へは何時でも行けるのだろう?」
「はい、何時でも行く事は可能です」
「やはり行けるのかよ……で、戻る事も可能なんだろう?」
「人を送る事は比較的に簡単なのですが、そこから連れ出す事はかなり大変ではありますね」
「つまり条件がある、と? まあ当然だわな。地獄からの帰還となると……あれか、金だな? 地獄の沙汰も何とやらってやつで」
〆はその発想に驚く、何故ならそれは当たっているからだ。
「よ、よくお分かりで。はい、実はお金と言うか、帰還者が持っていた財の全てを差し出せば帰還可能な事もあります」
「可能な事もある……か。するとそれ以外にも条件があると?」
「はい、地区の管理者と交渉して、了承を得られれば戻る事が可能です。ただし今回私が『賊達を生きたままの状態で』送ったように、対象が生者である事が条件になります」
なるほどと、静かに頷くと流は少し考える。
「〆達は自由に出入り出来るのだろう?」
「はい、私達クラスならば問題無く。ただ古廻様は右手の紋章が覚醒すれば、私達が同伴すれば自由に行き来出来ます」
「そうなのか……」
流は右手にある、未完成の紋章を見つめる。紋章は最初より、心持ち形が
「近いうちにコイツも何とかしないとな」
その言葉に〆達三人は無言で頷く。
「それで地獄送りは何時でも可能なのか?」
「出入りできるのは私達三名なら問題なく行えますが、古廻様以外の生者を送る事が出来るのは私だけで、現在は行動範囲に縛りがありますので、この屋敷の敷地が限界ですね。また、送れる対象は脆弱な魂を持つ者のみとなります」
「なるほどなぁ……とりあえずその事は分かった。ああ、そう言えば捕えた賊達はどうなっている?」
参は窓へ向かい、その下を一瞥してから答える。
「フム。屋敷の中へ置いておくのも、はばかられますので、庭の隅にまとめて捨ておきました。ただ……精神的に疲弊はしているようですが」
「お前達もやらかしたのか……」
「フム。申し訳ありません、私の監督不行き届きです」
「? まあいいさ。相手は殺盗団だしな」
参は疑問に思っていた事を流に聞く。
「フム。古廻様、屋敷に侵入した賊をなぜ生け捕りに?」
「ああ~ それはな、あいつ等は裏の顔だろ? 先日の打ち合わせで、お前達の行動限界を聞いてたからな。だからお前達がいかに能力が高いとはいえ、行動範囲が限定されているのは痛い。特に〆と参はこの屋敷限定みたいなものだし、壱は健康手帳を媒体としての活動だから、戦闘参加は今のところはダメだって言っていたろう? だからある程度、こちらの人員も必要かと思ってさ。裏の奴らで使える者が居たらいいなって、思いつきで頼んだんだよ」
その答えに三人は頷く。
異世界へ自由に行き来できる程の神格を持っているとは言え、行動が無制限に出来る訳ではなかった。
まず〆だが、彼女は異怪骨董やさんの道具が反乱を起こさない様に、店から長時間離れる事は出来ない。
次に壱だが、彼は大昔からしている健康手帳の管理者として、流にどこまでも付いて行く事が可能だが、攻撃的な戦闘行為をするには手帳の管理者をやめる必要がある「万物の理」がある。
理を破る実力はあるが、相応のペナルティも発生するために、これは最後の手段となる。
最後に参だが、拠点防衛としてこの屋敷に力を注いでいるために、式神の制御で力をかなり割いている。
一度その制御を解いてしまうと、拠点としての結界術が消えてしまい、新しく構築するためには、長時間屋敷が無防備になってしまうのと、現在行っている屋敷の「この世界では無理」な改装が出来なくなるデメリットがあった。
無理をすれば〆と参は屋敷から離れて戦闘も出来るので、流が来る前に敵のアジトを壊滅しようかと思ったが、それはリスクが大きいので今に至る。
ただしこの縛りは絶対不変と言う訳では無く、流の紋章が解放されれば、次第に緩和されると〆達は考えていた。
そして何より流の成長する糧としての経験と、異世界の全てを「自分の目で見て欲しい」と言う思いがあるのも、〆達の自重の理由になった。
「壱:古廻はん、違いまっせ? それ、本当の鬼ですねん。愚妹が地獄へ落としたんでっせ」
「お前そんな事も出来るのか!?」
「いえ!! あの……はぃ……」
〆は消え入りそうな声で恥ずかしがっている。
「壱:何でそこで顔を真っ赤にしとんねん!?」
「もう何でもありだな、お前達は……」
「フム、古廻様! 私もですか!?」
「壱:僕はまともでっせ!」
「少なくても兄達よりは数千段まともです」
「お前達……俺の目を見てもう一度言ってみろ? ん?」
流がそう言うと〝すうっ〟と視線を逸らす三人組。
そんな三人に呆れる流だったが、メイドが食事を持って来たので食べる事とする。
「お待たせ致しました。簡単な物との事でしたので、アメリカンクラブハウスサンドをご用意致しました」
「お? 美味そうだな。ありがとうよ」
メイドは嬉しそうに頭を下げると、四人分のお茶を入れて退出する。
「さて、それでどこまで話したか? ああ、そうそう。〆が賊を地獄へ落とした所までか」
「それは忘れていただければ……」
なぜか恥ずかしそうにしている〆を見ながら、ふと思う事を聞いてみる。
「なぜ恥ずかしそうに頬を染める!? それで〆、お前達の事だから地獄へは何時でも行けるのだろう?」
「はい、何時でも行く事は可能です」
「やはり行けるのかよ……で、戻る事も可能なんだろう?」
「人を送る事は比較的に簡単なのですが、そこから連れ出す事はかなり大変ではありますね」
「つまり条件がある、と? まあ当然だわな。地獄からの帰還となると……あれか、金だな? 地獄の沙汰も何とやらってやつで」
〆はその発想に驚く、何故ならそれは当たっているからだ。
「よ、よくお分かりで。はい、実はお金と言うか、帰還者が持っていた財の全てを差し出せば帰還可能な事もあります」
「可能な事もある……か。するとそれ以外にも条件があると?」
「はい、地区の管理者と交渉して、了承を得られれば戻る事が可能です。ただし今回私が『賊達を生きたままの状態で』送ったように、対象が生者である事が条件になります」
なるほどと、静かに頷くと流は少し考える。
「〆達は自由に出入り出来るのだろう?」
「はい、私達クラスならば問題無く。ただ古廻様は右手の紋章が覚醒すれば、私達が同伴すれば自由に行き来出来ます」
「そうなのか……」
流は右手にある、未完成の紋章を見つめる。紋章は最初より、心持ち形が
「近いうちにコイツも何とかしないとな」
その言葉に〆達三人は無言で頷く。
「それで地獄送りは何時でも可能なのか?」
「出入りできるのは私達三名なら問題なく行えますが、古廻様以外の生者を送る事が出来るのは私だけで、現在は行動範囲に縛りがありますので、この屋敷の敷地が限界ですね。また、送れる対象は脆弱な魂を持つ者のみとなります」
「なるほどなぁ……とりあえずその事は分かった。ああ、そう言えば捕えた賊達はどうなっている?」
参は窓へ向かい、その下を一瞥してから答える。
「フム。屋敷の中へ置いておくのも、はばかられますので、庭の隅にまとめて捨ておきました。ただ……精神的に疲弊はしているようですが」
「お前達もやらかしたのか……」
「フム。申し訳ありません、私の監督不行き届きです」
「? まあいいさ。相手は殺盗団だしな」
参は疑問に思っていた事を流に聞く。
「フム。古廻様、屋敷に侵入した賊をなぜ生け捕りに?」
「ああ~ それはな、あいつ等は裏の顔だろ? 先日の打ち合わせで、お前達の行動限界を聞いてたからな。だからお前達がいかに能力が高いとはいえ、行動範囲が限定されているのは痛い。特に〆と参はこの屋敷限定みたいなものだし、壱は健康手帳を媒体としての活動だから、戦闘参加は今のところはダメだって言っていたろう? だからある程度、こちらの人員も必要かと思ってさ。裏の奴らで使える者が居たらいいなって、思いつきで頼んだんだよ」
その答えに三人は頷く。
異世界へ自由に行き来できる程の神格を持っているとは言え、行動が無制限に出来る訳ではなかった。
まず〆だが、彼女は異怪骨董やさんの道具が反乱を起こさない様に、店から長時間離れる事は出来ない。
次に壱だが、彼は大昔からしている健康手帳の管理者として、流にどこまでも付いて行く事が可能だが、攻撃的な戦闘行為をするには手帳の管理者をやめる必要がある「万物の理」がある。
理を破る実力はあるが、相応のペナルティも発生するために、これは最後の手段となる。
最後に参だが、拠点防衛としてこの屋敷に力を注いでいるために、式神の制御で力をかなり割いている。
一度その制御を解いてしまうと、拠点としての結界術が消えてしまい、新しく構築するためには、長時間屋敷が無防備になってしまうのと、現在行っている屋敷の「この世界では無理」な改装が出来なくなるデメリットがあった。
無理をすれば〆と参は屋敷から離れて戦闘も出来るので、流が来る前に敵のアジトを壊滅しようかと思ったが、それはリスクが大きいので今に至る。
ただしこの縛りは絶対不変と言う訳では無く、流の紋章が解放されれば、次第に緩和されると〆達は考えていた。
そして何より流の成長する糧としての経験と、異世界の全てを「自分の目で見て欲しい」と言う思いがあるのも、〆達の自重の理由になった。
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