上 下
119 / 486
第五章:殺盗団を壊滅せよ

118:〆オススメのアトラクション施設

しおりを挟む
「圧巻すぎて何も考えられなくなりそうだ……。っと、いつまでもボーっとしてられん。お前達、手分けして運び出せ」
「「「ハッ!」」」

 その時だった。キルトが指示を出した途端、背後から大きな音が地下室に響き渡る。
 静かだった地下室に轟音と錯覚するかのような音で〝ギィ~バタンッ〟と何かがぶつかるような音がする。

「は?」

 先程まで音もなく静かに開いていた扉が、何故か油切れを起こしたかのように大きな音を立てて閉まる。
 その音があまりにも大きかったので、全員の視線は背後の扉へとくぎ付けになる。

「オイ、誰もいなかったはずだ。お前ら二人は扉を開けて、そのまま入口には二人見張りに立て」
「はい、分かりまし……た?」
「どうした?」
「う、後ろに豪華な椅子に座った女がいます……」
「後ろ? ――ッ!?」

 そこにはまるで玉座のような形をした豪華な椅子に座る、この世の物とは思えない、美しい顔をした女が財宝の山を背景に上品に静かに座っていた。

「フフ、よく来ましたね。人と戯れるのは何時ぶりでしょうか……少し、楽しみです」

 そう女が言うと、牡丹クビオチの花が咲いたように笑ったのを見て、キルトはゾっとした。

(クッ!? こいつは絶対マズイ、俺の長年生き抜いた直感が逃げろと言っている!)

「へへへ……豪華なお宝と、秘宝の数々! そしてこの女もオマケとか、最高じゃねーですか」
「ちげーね~ぜ! キルトさん、俺が一番にとっ捕まえて来ますんで、後で味見させてくださいよ~」

 キルトは今から行うであろう、部下の蛮行に絶句する。
 即それを止めようと口を開こうとうするが、それが無理だと悟る。

(ま、待て!! くぅ、恐怖で口が開かん!! 馬鹿共が、なぜ気が付かない!!)

「さ~って、まずはその綺麗な顔をよ~く見せてもらいま――」

 無造作に〆に近づいた男は、一瞬キラリと光った一筋の何かに眉間を貫かれると、そのまま背後へとニヤケタ顔のまま倒れる。

「……? え、死んで――」

 隣にいた賊も今死んだ仲間を確認した瞬間、光に眉間を貫かれ死んでしまう。

「はぁ~情けないですね。愚兄ならこの程度では死にませんよ?」
「フザケヤガッテ!! キルトさん、囲ってやっちまいましょう!!」
「? どうしたんですか、キルトさん。それにアニキ達も固まったまま動かないで?」

(馬鹿野郎! 動けねーんだよ!!)

 見るとキルト以外に五人の部下達も動けないようだった。

「キルトさん? 一体どーしちまったんだ?」
「仕方ねえ、俺らであの女を捕まえよう。三方から行け、逃げられねえようにな」

(ば、馬っか野郎! 逃げれねえのは俺達だと、なぜ気が付かねぇんだ!!)

「オラ行け!」

 男がそう掛け声をかけると、左右から同時に男達が〆を拘束しようと襲い掛かる。
 〆はその様子を見るでもなく、視線すら合わせずキルトを見据えて動かない。

 ついに賊の汚いその手が〆へと届く刹那、賊達の『影』が蠢き、そのまま賊を影の中に飲み込む。
 その数は〆を拘束しようとした、全員が消える事となった。
 残された賊の数は五名と、キルトのみとなる。

「お行儀の悪い人は嫌いです。でも感謝して欲しいですね……地下室とは言え、あの方のお屋敷を汚すわけにはいきませんので、直接『向こうへ』送らせていただきました」

 どうやら口だけは動かせる賊が一人がいるようで、思わず震える声で聞いてしまう。

「む、向こうってどこだよ……?」

(アド!? 余計な事を聞くんじゃねえ!!)

「向こうって言えば決まっているじゃないですか、それは――」

 ◇◇◇

 エッゾは黒い闇に落ちたかと思ったら、いきなりゴツゴツとした岩場へといた。
 周りを見ると、先程まで地下室にいた仲間達もいるのを確認すると、近くにいた呆然としているヤルンに声をかける。

「ヤルン! 無事だったか?」
「エッゾか、ああ無事だったが……ここは何処だ?」
「俺が聞きたい……あの女を捕まえうとしたらいきなりココにいたからな」

 周りの仲間達もあり得ない状況に混乱しているようだった。
 すると一陣の風が吹く。すると何とも言えない、死臭漂う嫌な匂いがしてきた。

「エッゾ、これは何の臭いだ?」
「分からん、が。何かヤバイのは分かる。それに聞こえないか、この声みたいなの?」

 そうエッゾに言われて、ヤルンは聞き耳を立てる。
 すると腐臭漂う風に混ざり何かが聞こえて来る。それは悲鳴のようでもあり、嗚咽のようなものでもあった。

「ほ、本当だ。呻き声……か? 泣き声まで聞こえるぞ!」

 その時だった、近くの岩山の陰から五メートル程の影が、ゆっくりと現れる。

「何だ~あ? どうして生きた人間がここさいるだ?」
「「「ヒィッ!?」」」

 賊達は硬直する。そこにいたのは真っ赤な素肌で、衣服はトラの皮で作ったような腰簑をはいただけの男がそこにいた。
 良く見ると頭部の天辺には、一つの角が生えている。

 それはどう見ても、人間でも無ければ噂でも聞いたことのない、赤い化け物の姿だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。  しかし、ある日―― 「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」  父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。 「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」  ライルは必死にそうすがりつく。 「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」  弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。  失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。 「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」  ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。  だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

処理中です...